フェイスブックの写真が商標の使用に該当するかについては、そのレイアウト位置、表示方法及び全体数量に占める比率をもって考えることができる。
2022-05-24 2021年
■ 判決分類:商標権
I フェイスブックの写真が商標の使用に該当するかについては、そのレイアウト位置、表示方法及び全体数量に占める比率をもって考えることができる。
II 判決内容の要約
知的財産及び商事裁判所民事判決
【裁判番号】110年度民商上易字第1号
【裁判期日】2021年7月29日
【裁判事由】商標権侵害に関する財産権紛争
控 訴 人 林孟伶
控 訴 人 妍雅緻国際商貿有限公司
法定代理人 張軒銘
被控訴人 林渤洲
上記当事者間の商標権侵害に関する財産権紛争等事件につき、控訴人が2020年12月22日付本裁判所による108年度民商訴字第54号第一審判決に対して控訴を提起した。本裁判所は、2021年7月8日に口頭弁論を終結し、次のとおり判決する。
主文
控訴を棄却する。
第二審訴訟費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
一、控訴人主張:
控訴人である妍雅緻公司はもとより登録商標第01820259号「H」設計図(以下係争商標という。付図一に示す通り)の商標権者であり、医療、病院、治療サービス、クリニック、形成外科、植毛、医療支援、介護、医療相談等役務に使用指定していた。その後、2018年5月1日に控訴人林孟伶と商標出願権譲渡同意及び売買契約書を締結し、係争商標を林孟伶に譲渡したことについて、経済部知的財産局も2019年4月16日に係争商標が既に林孟伶に譲渡されたと公告した。係争商標は、現在○○美容医療クリニック(医美整形診所)(以下○○クリニックという。○○クリニックは双方の提携関係を終了した後、台北○○糖果整形外科医美診所に名称変更した)が運営及び販売促進のためにこれを使用している。妍雅緻公司は2016年10月31日に被控訴人と「医美診所経営提携契約書」(以下係争契約という)を締結し、妍雅緻公司が○○クリニックの運営と管理を担当し、被控訴人の名義をもって、対外的に○○クリニックを代表し、対内的にも実際に院長として、医師の業務を遂行すると約定した。その後、妍雅緻公司は2017年8月7日付内容証明郵便をもって、林渤洲との係争契約を解約した。林渤洲が内容証明郵便を受け取った後、つまり同年月9日に、弁護士に依頼して、係争契約の解約に同意するという書簡を送付したため、係争契約第13条の規定に基づけば、林渤洲に○○クリニックに関する如何なる財産(係争商標を含む)等を使用する権利もないことは明らかである。しかし、被控訴人は林孟伶又は妍雅緻公司の同意や許諾を得ずに、その開設している「花様-林渤洲医師」フェイスブックのファンページ(以下係争ファンページという)で係争商標を使用した。そして控訴人は2017年10月5日に公証人に依頼し、被控訴人が確かに係争商標をそのフェイスブックのページカバーに使用していることについて事実実験公証を行ったほか、2017年12月4日及び2019年7月4日に再度公証人に事実実験公証を依頼した際には、そのファンページに、2017年5月21日、2月17日、2月5日に係争商標の写真等があったので、関連消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあり、林孟伶の商標権を侵害する故意があった。
二、被控訴人の答弁:
(一) 双方による係争提携協議の解約については、2017年11月30日に協議書を締結して始めて解約の効力が生じた。
(二) 被控訴人に係争商標をもって販売する目的がないので、商標の使用要件に合致しないことは当然である。
(三) 控訴人は、被控訴人が係争商標を使用したため、関連消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあると証明しなければならない。
(四) 控訴人は実際に損害を受けたことを挙証して証明せず、損害賠償の金額も開示していないので、その請求は棄却されるべきである。
三、心証を得た理由:
(一) 妍雅緻公司と被控訴人の係争契約の解約時点は何時か?
双方が、2017年11月30日になって始めて協議書を締結し、係争契約による紛争をスムーズに解決したため、係争契約は2017年11月30日になって、始めて解約の効力が生じたと認定すべきである。
(二) 被控訴人のフェイスブックファンページにある係争商標は商標の使用を構成するか?関連消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるか?
1. 2017年10月5日付事実実験公正証書から分かるように、被控訴人によるフェイスブックファンページカバーの中央に係争商標図案(アルファベット「H」をベースに、円柱体鳥瞰図と類似する図案をデザインした)を表示し、下方に「NICE CLINIC」英文字、左側に「花様林渤洲医師」と記載し、投稿にも消費者の手術前、手術後の比較写真、美容医療の紹介があり、一般の消費者に、係争商標図案が美容医療のサービス等役務を表彰する標識として認識させるので、当然商標の使用に該当する。しかし、係争契約が2017年11月30日に解約の効力が生じたことは前述の通りであり、前記ウェブページは、係争契約の存続期間内であったので、被控訴人が○○クリニックの院長、医師として、係争商標を使用する権利があったことは言うまでもない。
2. 2017年12月4日、2019年7月4日付事実実験公正証書から分かるように、被控訴人が既にフェイスブックページカバーの写真を外国女性の顔写真に変更し、右側に中国語文字の「医学美容—找回您美麗的歳月」(美容医療―あなたの美しさを取り戻す)、ページの左側に「花様—林渤洲医師」と記載していて、数多くの「全ての写真」の中で、係争商標図案及び下方の「NICE CLINIC」英文字またはQR codeと結合した写真(名刺に類似の方法)(アップロード期日はそれぞれ2017年2月5日、2017年2月17日、2017年5月21日であり、そのうちの2017年5月21日の写真が重複している)は三枚だけである。また、被控訴人のフェイスブックファンページに写真が合計279枚あり、係争商標の写真はその約百分の一を占めるだけであるので、数量から見れば、当該写真を販売の目的としているとは認定し難い。更に前記ファンページの表示方法は、2017年10月5日に係争商標図案をカバー中央の目立つ位置に表示した方法と異なるので、商標が商品又は役務の出所を識別するものとして、他人が提供する商品又は役務の出所と区別する標識であることを酌量し、もし一つの図案を自己の商標として使用する場合は、関連消費者に一目で当該図案を商標の使用としていることを理解させるために、フェイスブックトップページ又は目立つ箇所にこれを表示すべきである。しかし、原証8、9のフェイスブックファンページにおいて、係争商標のある写真は全ての写真の中に散在しているので、関連消費者も被控訴人のフェイスブックファンページを見たとき、係争商標図案のある写真は、単に被控訴人が○○クリニックに勤めた職歴を示す資料であると思い、被控訴人による美容医療サービス提供を表彰する標識だとは思わない。よって、本裁判所は、被控訴人が2017年12月4日、2019年7月4日のフェイスブックファンページにある全ての写真のうち、3枚の写真に係争商標図案があっても、一般の社会通念及び市場取引状況に基づき、それが商標の使用行為に該当するものではないと認定する。
四、前記を総合すると、被控訴人に係争商標権侵害の行為がないので、控訴人が、商標法第68条第1号、第2号、第69条第3項、第71条第1項第1号、第2号、第4号、民事訴訟法第222条第2項の規定により、被控訴人から林孟伶に100万台湾ドル及び法定の遅延利息を支払うべきと申立てた主位的請求、被控訴人から林孟伶、妍雅緻公司にそれぞれ15万、85万台湾ドル及び法定遅延利息を支払うべきと申立てた予備的請求には理由がないので、原審で控訴人の訴え及び仮執行の申立を棄却したことは法に合致しないものではない。控訴の趣旨で、原判決が不適切だと指摘し、これを破棄し改めて判決するよう求めたことには理由がないので、棄却しなければならない。
2021年7月29日
知的財産第二法廷
審判長裁判官 汪漢卿
裁判官 曾啓謀
裁判官 彭洪英