乳酸菌商品に実際に使用したことをもって、漢方薬と西洋薬に使用した証拠とすることはできない。
2022-08-23 2021年
■ 判決分類:商標権
I 乳酸菌商品に実際に使用したことをもって、漢方薬と西洋薬に使用した証拠とすることはできない。
■ ハイライト
訴外人である大亜薬品工業股份有限公司は2000年1月7日に「茯敏」商標を第5区分の「漢方薬、西洋薬」商品に使用指定して登録出願した。被告(知的財産局)は第949519号商標として登録査定し、また2005年5月20日に係争商標を原告婦潔薬品有限公司に譲渡することも許可した。参加人である民間全民電視股份有限公司は2020年4月9日に係争商標が商標法第63条第1項第2号の規定に該当するとして、不使用取消審判を請求した。その後、被告は係争商標を取り消すべきであるとの処分を下した。原告がこれを不服とし、訴願を提起したが、経済部から訴願決定により棄却されたので、原告はこれを不服とし、行政訴訟を提起した。
II 判決内容の要約
知的財産裁判所民事判決
【裁判番号】110年度行商訴字第22号
【裁判期日】2021年8月19日
【裁判事由】登録商標の不使用取消審判請求
原 告 婦潔薬品有限公司
被 告 経済部知的財産局
参 加 人 民間全民電視股份有限公司
上記当事者間の商標不使用取消審判につき、原告が経済部による中華民国110年1月20日付経訴字第11006300040号訴願決定を不服とし、行政訴訟を提起した。本裁判所は、参加人に被告の訴訟に独立参加を命じ、且つ次のとおり判決する。
主文
原告の訴えを棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
一 事実概要
訴外人である大亜薬品工業股份有限公司(以下大亜公司という)は、2000年1月7日に「茯敏」商標を当時商標法施行細則第49条所定の商品及び役務第5区分の「漢方薬、西洋薬」商品に使用指定し、且つ被告に登録出願した。被告は第949519号商標(以下係争商標という)として、登録査定し、2005年5月20日に係争商標の原告への譲渡を許可し、且つ権利存続期間の2031年7月15日への更新申請も許可した。参加人は2020年4月9日に係争商標が商標法第63条第1項第2号所定の事由に該当するとして、その登録を取消すよう請求した。被告は同年9月10日に中台廃字第L01090179号商標廃止処分書をもって、係争商標を取り消すべきであるとの処分を下した。原告はこれを不服とし、訴願を提起したが、経済部は2021年1月20日付経訴字第11006300040号訴願決定をもってこれを棄却した。原告は訴願決定を不服とし、本裁判所に行政訴訟を提起した。また、本裁判所は本件判決の結果が、もし原処分及び訴願決定を取り消すべきであると認定するものである場合、参加人の権利又は法的利益に影響すると判断したので、職権により、参加人に被告の訴訟に独立参加を命じた。
二 両方当事者の請求
(一)原告の請求:原処分と訴願決定を取り消す。
(二)被告の請求:原告の訴えを却下する。
(三)参加人は準備期日及び口頭弁論期日に出頭しておらず、本件について具体的な陳述書も提出していない。
三 本件の争点
本件当事者の主な争点は、係争商標が商標法第63条第1項第2号の規定に違反するかどうかである。よって、本裁判所は、原告が係争商標の不使用取消請求日である2020年4月9日の3年前から、「漢方薬、西洋薬」に指定使用した商品において係争商標の使用行為があったかどうかを斟酌しなければならない。また、原告は係争商標を使用していたと権利維持を証明するための挙証を行わなければならない。
四 理由
(一)係争商標不使用取消請求事件の準拠法:
係争商標の出願日は2000年1月7日であり、査定公告日は2001年8月16日であった。また、現行商標法は2016年12月15日に施行されており、参加人が2020年4月9日に不使用取消審判を請求し、且つ被告が審査のうえ、2020年9月10日に原処分を下した。本件は現行商標法が改正後に施行されてから、始めての法的手続きによる商標取消事件であった。これに準じ、係争商標を取り消すべきかの判断については、現行商標法によらなければならない。
(二)係争商標は商標法第63条第1項第2号の規定に違反する。
原告は、訴訟を提起して、原処分及び本裁判所訴訟階段において提出した証拠をもって、係争商標が取消請求日の3年前から、「漢方薬、西洋薬」商品に指定使用されていたことを十分証明できる云々と主張した。しかし、被告と参加人はいずれも、原告が係争商標登録取消請求日の3年前から、登録の商品にこれを指定使用していない云々と抗弁した。よって、本裁判所は、まず商標使用の権利維持要件を説明し、次いで原告が、参加人による取消請求日の三年前から係争商標を指定商品に使用していたかどうかを斟酌しなければならない。
1. 原告は取消請求日の3年前から係争商標を使用していたと証明しなければならない。
原告は係争商標の商標権者であり、取消請求日である2020年4月9日の三年前から、係争商標を第5区分の「漢方薬、西洋薬」に指定使用し、且つその使用が商業的取引慣習に合致するので、原告に商標を使用していない消極的な事実がないことについて挙証しなければならない。
2. 原告は取消請求日の3年前から係争商標を使用していない。
(1)係争商標を商品に実際に使用していたかを判断する具体的な使用証拠が必要である:原告は取消手続きにおいて次のような証拠、つまり(1)医薬品許可証コピー;(2)許諾書;(3)食薬署「西洋薬、医療器材、化粧品許可証検索」ウェブページを提出した。確かに前記証拠をもって、原告に許可を得た「茯敏膠囊(カプセル)」医薬品を製造する権限があるほか、その旧名が「大亜茯敏膠囊」であり、及び幸一公司に係争商標の使用を許諾した事実があると認定できる。しかし、係争商標が実際に「漢方薬、西洋薬」商品に指定使用されていたかの判断は、具体的な使用証拠によらなければならない。
(2)原告の証拠では、係争商標の指定商品の販売と許諾をした事実を十分証明できない。原告は他人に係争商標の使用を許諾した事実を証明するために、下記の関連証拠、つまり(1)中国の輸入申告書及び台湾の輸出申告書;(2)CBME中国の妊婦児童展覧会の招待状、展覧会の写真;(3)商品カタログ写真;(4)実物写真;(5)幸一公司の製品宣伝チラシを提出した。しかし前記申告書、輸出申告書、招待状と展覧会写真のいずれにも係争商標は見当たらなかった。また、商品カタログ写真、実物写真において、2018年5月23日付製造期日及び係争商標が「利撒爾益生菌100」等商品のパッケージに表示されていたことが分かるが、原告が本件取消請求日の3年前から、係争商標を乳酸菌商品に使用したことを証明できるだけにとどまり、やはり係争商標を「漢方薬、西洋薬」商品に指定使用していたことは証明できない。
(3)原告に、係争商標の指定商品の販売と許諾をした事実はない。原告は、係争商標を実際に使用した乳酸菌商品が「漢方薬、西洋薬」の指定商品と同一の医療保健機能を有する同一の商品であり、且つ乳酸菌商品に継続して使用していたことは、漢方薬、西洋薬商品における使用に相当する云々と主張した。且つ次の証拠、①「台湾医界」、「家庭医学と基層医療」雑誌、台湾乳酸菌協会ウェブサイト等文章及び医薬品の外観検索プリントアウト;②「馬偕一号」の関連文献;③各国の論文、日本特許と関連文献リリースコピー;④ニース分類第七、八、十バージョンコピー;⑤食薬署による「茯敏Ⓡ益敏舒晶球益生菌(善玉菌)」許可書、輸入申告書、製品紹介、実物写真、実店舗及びバーチャル店舗の陳列写真を提出した。しかし、「乳酸菌」商品は特殊菌の提供を目的とし、保健機能を有するものであり、「サプリメント」商品群に該当する。一方、「漢方薬、西洋薬」商品は人間の病気の治療と矯正を目的とする医薬品であるので、両者の用途、機能及び目的が異なるほか、従属関係、包括的関係、重複関係、または同等の関係もないものである。たとえ、栄養食品が、栄養補給、ウェルネス及び保健の機能を有し、国民が、医食同源の食文化があるために、よく保健テーマとして同じく議論しているとしても、医薬品、食品をそれぞれ区別して管理すべきことは、前述の通りである。前記の各見解によれば、同一の商品ではないので、係争商標が「乳酸菌」商品に使用されていた証拠をもって、「漢方薬、西洋薬」商品に使用されていた根拠とすることはできない。
五 本判決の結論
前記を踏まえて、本裁判所で弁論の全趣旨を酌量し、証拠を調べた結果、原告は参加人による不使用取消請求日の3年前から、係争商標を第5区分の「漢方薬、西洋薬」商品において指定使用していなかったので、関連消費者が取引市場で○○○○○○○○○○商品の出所を区別することも出来ないことが証明できる。前記から見れば、係争商標は商標法第63条第1項第2号所定の不使用取消事由に該当する。これに準じ、被告が本件の係争商標取消成立処分を下したことには、誤りがないので、訴願決定を維持することは、筋が通ることである。原告がそれでも前言をもって、原処分及び訴願決定の取消しを請求したことには理由がないので、棄却しなければならない。
以上を総じて、原告の訴えに理由がないので、知的財産案件審理法第1条、行政訴訟法第98条第1項前段に基づき、主文の通り判決する。
2021年8月19日
知的財産第一法廷
審判長裁判官 李維心
裁判官 蔡如琪
裁判官 林洲富