商標の使用について、その前提は「販売の目的」でなければならず、いわゆる「販売の目的」とは、商業取引の目的に基づき、市場で販促したり、その商品、役務を販売することを指し、また、いわゆる「十分に消費者にそれが商標であることを認識させる」ということは、客観的に消費者がそれをもって商品、役務の出所を識別することができることを指す。

2022-04-22 2021年
■ 判決分類:商標権

I 商標の使用について、その前提は「販売の目的」でなければならず、いわゆる「販売の目的」とは、商業取引の目的に基づき、市場で販促したり、その商品、役務を販売することを指し、また、いわゆる「十分に消費者にそれが商標であることを認識させる」ということは、客観的に消費者がそれをもって商品、役務の出所を識別することができることを指す。

■ ハイライト
被告人の控訴趣旨の要約は、被告人が法令規定に基づき、本件商品の外包装に「品名」を「循易寧錠(イチョウ)食品」と表示したことは、販売の目的のために行ったことではないので、商標使用を構成しない云々となっていた。

上記について、知的財産裁判所の判決は次のように指摘した。
食品安全衛生管理法第22条規定によると、食品の容器または外包装に品名をあきらかに表示しなければならず、また同法施行細則にも品名は食品の本質に合致しなければならないと規定されている。前記規定により、係争商品の品名には「イチョウ」と表示することができなくても、「何々抽出物(イチョウの実が含まれる)」等類似の方式で表示することができるが、被告人は「循易寧錠(イチョウ)食品」と表示し、一方「循易寧」には固有の意味がなく、原料でも成分の名称でもないので、あきらかに表示する食品の本質と一致しない。また、被告人は告訴人の「循利寧」を知っているが、便利で使いやすいと思ったので、本件商品を「循易寧」等と名づけたことを認めた。被告人がそう命名したことは主観として商品出所の識別に用い、客観的に商品出所を識別する機能を果たしているので、商標使用を構成するほか、他人の商標権を侵害する故意があることはあきらかである。

II 判決内容の要約

知的財産裁判所刑事判決
【裁判番号】109年度刑智上易字第85号
【裁判期日】2021年4月29日
【裁判事由】商標法違反

控訴人     蔡懷徳
即ち被告人
選任弁護人 許庭禎弁護士
           施宣旭弁護士

上記控訴人による商標法違反の件について、控訴人が台湾士林地方裁判所109年度智易字第4号、2020年8月25日第一審判決(起訴番号:台湾士林地方検察署108年度偵字第06439号)を不服として控訴したので、本裁判所より以下のとおり判決を下す。

主文
控訴を棄却する。

一 事実概要
被告人は天承公司の責任者であり、天承公司が販売している循易寧錠商品包装箱に「循易寧錠」文字を表示していたが、告訴人会社従業員が2017年10月20日某時にYahooオークションサイト「Beautyオンラインドラッグ」、「小喬健康管理站」等から循易寧錠商品計6箱を購入した。又「循利寧」商標図形は告訴人が知財局に商標登録を出願し(登録/商標査定番号:00000000号)、新薬、血液循環改善薬剤の商品に使用指定しており、存続期間は2004年12月21日から2025年7月31日までとなっている(第二審判決は第一審判決書の記載事実、証拠及び理由を引用)。

二 本件争点
被告人が本件商品外包装には「品名」を「循易寧錠(イチョウ)食品」と表示したことは、商標法第95条第3号の罪を構成するか?

三 判決理由
(一)本件商品の外包装の正面に「GINGKOTABLET」英文字及び葉の図案、背面には「循易寧錠(イチョウ)食品」中国語文字が表示されており、且つ「循易寧錠」字体は「(イチョウ)食品」のより太く大きくなっており、正面の「GINKGO」英文字は商品出所の識別効果を発揮しているかをひとまず論じないとしても、台湾において中国語を慣用している消費者が、背面の太く大きい中国語「循易寧錠」を商品出所を識別する表示とするのは当然であり、関連消費者にそれが商標であることを十分に認識させることができ、それに加えて本件商品は市場に流通しているので、販売の目的による使用に該当する。よって、被告人が本件商品の外包装に「循易寧錠」を使用して陳列したり、販売したことは商標法第5条の商標使用を構成する。
(二)被告人は法令規定に基づいて品名を表示したのであり、販売の目的のためではない云々と弁解したが、食品安全衛生管理法第22条規定では、食品の容器または外包装に品名をあきらかに表示しなければならず、同法施行細則の規定では、その名称は食品の本質と一致しなければならないとなっている。「循易寧」には固有の意味がなく、原料でも成分でもない名称なので、表示する食品の本質とあきらかに一致していない。被告人がドイツの「循利寧」という薬品を知っており、被告人の薬局でも販売しており、当初本件商品に「循易寧」を使用したのは、この名称がとても便利で使いやすいと称していて、「循易寧」が原料または成分名称と関係ないこともあきらかであり、被告人が法令規定により「品名」を表示した云々との弁解したことはあきらかに責任逃れのものであり、採用することができない。
(三)本件商品「循易寧錠」は「循利寧」と同じくイチョウ成分を含む商品であり、且つ同時に薬局またはドラッグストアで販売されており、関連消費者がイチョウ成分の商品を選ぶ時、異時異地で観察すると、本件商品と告訴人「循利寧」商品とは同一出所、または両者の使用者の間に関連企業、許諾関係、加盟関係またはその他類似関係が存在すると誤認混同するおそれがあるので、被告人は客観的に商標法第95条第3号の要件を構成しており、被告人による誤認混同を生じるおそれはない云々の弁解は採用することができない。

知的財産裁判所第一法廷   
審判長裁判官 李維心
裁判官 林洲富
裁判官 蔡如琪

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