商標法第30条第1項第11号後段でいう著名商標は、その著名程度が関連の消費者を超えて、一般消費者に普遍的に知られている程度だと解釈する必要はない
2023-12-25 2023年
■ 判決分類:商標権
I 商標法第30条第1項第11号後段でいう著名商標は、その著名程度が関連の消費者を超えて、一般消費者に普遍的に知られている程度だと解釈する必要はない
■ ハイライト
上訴人は第1920292号商標に商標法第30条第1項第10号及び第11号規定の状況があるとして、異議を申立てた。被上訴人は審査したうえで、2019年11月26日付中台異字第G01070605号商標異議決定書を以って「異議不成立」の処分(以下原処分という)を下した。上訴人はこれを不服として、行政訴訟を提起した。知的財産裁判所では、本件の判決結果で、もし訴願決定及び原処分を取り消すべきだと認めた場合、参加人の権利または法律上の利益に損害が生じるので、職権により参加人に本件の被上訴人の訴訟に独立参加するよう命じた。原審109年度行商訴字第55号行政判決でその訴えが棄却された後、上訴人はこれを不服として、上訴を提起した。上訴を受理した合議廷は、裁判基礎の法律見解が、以前の裁判(本裁判所106年度判字第607号、第608号、第609号、107年度判字第446号、109年度上字第982号判決)の法律見解と異なると認定し、本件を提案した。
提案の法律争議について、最高行政裁判所の判決は以下の通りである。:
一、商標法第30条第1項第11号の著名商標保護審査基準3.2では、「第30条第1項第11号後段の商標希釈化保護規定は、その商標の著名程度に対する要求が同号前段の規定より高いはずである。……商標の著名程度がもし一般の公衆の普遍的な認知程度まで高くなっている場合、第30条第1項第11号後段規定が適用される可能性がある。」となっている。前記の審査基準規定によっても、商標法第30条第1項第11号後段でいう著名商標について、その著名程度が関連の消費者を超えて、一般消費者に普遍的に知られている程度に達して、始めて当該後段規定の適用があると解釈すべきであるとまでは要求していない。
二、1999年9月にWIPOが公布した著名商標に関する保護規定共同決議事項によれば、著名商標の減損またはその著名程度の希釈化について、一般の公衆に普遍的に知られている程度に達していることを要求するかどうかは、会員が自ら決定することができる。また台湾商標法に2003年に新設された著名商標の減損に関する規定は、行政院提案の説明記載、及び商標法施行細則第31条規定:「本法でいう著名とは、既に関連する事業者または消費者に広く認識されていると認定できるに足りる客観的証拠を有していることをいう。」に基けば、いずれも商標法第30条第1項第11号後段でいう著名商標の著名程度について、一般消費者に普遍的に知られている程度に達して始めて当該後段規定の適用があるとは要求していない。
三、結論:商標法第30条第1項第11号後段規定でいう「著名商標」とは、客観的な証拠があって、広く関連事業者または消費者に普遍的に知られている商標であると認定できるものであり、一般の消費者に普遍的に知られている程度に達して始めて当該号後段規定の適用があるとする必要はない。
II 判決内容要約
最高行政裁判所決定
【裁判番号】111年度大字第1号
【裁判期日】2023年03月17日
【裁判事由】商標異議
上訴人 義大利商法倫提諾公司(ValentinoS.p.A.)
被上訴人 経済部知的財産局
参加人 優尼士国際股份有限公司
本裁判所大法廷の第四廷は、2022年10月6日付111年度徵字第2号商標異議事件に関する提案の法律争議について、以下の通り決定を下す。:
商標法第30条第1項第11号後段規定でいう「著名商標」とは、客観的な証拠があって、広く関連事業または消費者の普遍的に知られている商標であると認定できるものであり、一般の消費者に普遍的に知られている程度に達して始めて当該号後段規定の適用があるとする必要はない。
一 事実要約
2017年5月3日に訴外人イギリス籍アナベル・ヴァレンティノ(安娜貝拉范侖鐵諾)は「GIOVANNIVALENTINOITALY」商標(その後、商標を変更して、名称及び図案を「GIOVANNIVALENTINO」とした)を以って、当時商標法施行細則第19条の商品及び役務分類表第24類の「生地、ティッシュ、テキスタイルのタペストリー、テキスタイルの壁掛け、家具カバー、トイレタリー手袋…」等商品に使用指定して、被上訴人に登録を出願し、且つ2018年2月7日に出願人を参加人に変更したが、被上訴人が審査したうえで、第1920292号商標登録を許可した(以下係争商標という)。その後、上訴人は当該商標に商標法第30条第1項第10号及び第11号規定の状況があるとして、異議を提起した。被上訴人が審査したうえで、2019年11月26日付中台異字第G01070605号商標異議決定書をもって「異議不成立」処分(以下原処分という)を下した。上訴人はこれを不服として、行政訴訟を提起し、且つ以下の通り請求した。:1.訴願決定及び原処分の取り消し。2.被上訴人は係争商標の登録を取り消すべきとの処分を下すべきである。知的財産裁判所(2021年7月1日に知的財産及び商事裁判所に改変。以下原審という)は本件の判決結果について、もし訴願決定及び原処分を取り消すべきと認定した場合、参加人の権利または法律上の利益に損害が生じるので、職権により本件の被上訴人の訴訟に独立して参加するよう参加人に命じた。原審109年度行商訴字第55号行政判決(以下原判決という)によりその訴えが棄却された後、上訴人はこれを不服として上訴を提起した。上訴を受理した合議廷は、裁判基礎の法律見解が、以前の裁判(本裁判所106年度判字第607号、第608号、第609号、107年度判字第446号、109年度上字第982号判決)の法律見解と異なると認めて、本件を提案した。
二 提案の法律争議
商標法第30条第1項第11号後段でいう「著名商標」は、その著名程度が関連消費者を超えて、一般消費者の普遍的に知られている程度になって始めて当該後段規定が適用されると解釈する必要があるか?
三 判決理由の要約
(一)商標法第30条第1項第11号規定では、「商標が次に掲げる状況の一に該当するときは、登録を受けることができない。:……十一、他人の著名な商標又は標章と同一又は類似し、関連する公衆に誤認混同を生じさせるおそれがあり、又は著名商標又は標章の識別性又は信用・名声に損害を生じさせるおそれがあるもの。但し、当該商標又は標章の所有者の同意を得て登録出願するときはこの限りでない。」となっている。商標法施行細則第31条規定では、「本法でいう著名とは、既に関連する事業者または消費者に広く認識されていると認定できるに足りる客観的証拠を有していることをいう。」とあり、客観的な証拠があって、広く関連事業または消費者に普遍的に認知されている程度だと認定できるならば、商標法でいう著名商標であり、商標法第30条第1項第11号前段、後段でいう著名商標について、それぞれ違う定義をすることはないことが既に明文で定められている。
(二)商標法第30条第1項第11号の著名商標保護審査基準3.2では、「第30条第1項第11号後段の商標希釈化保護規定について、その商標の著名程度に対する要求は同号前段の規定より高いはずである。……商標の著名程度がもし一般の公衆の普遍的な認知程度より高い場合、第30条第1項第11号後段規定が適用される可能性がある。」となっている。前記審査基準規定によっても、商標法第30条第1項第11号後段でいう著名商標について、その著名程度が関連消費者を超えて、一般消費者に普遍的に知られている程度に達して始めて当該後段規定の適用があると解釈すべきであるとまでは要求していない。
(三)2003年に新設された商標法第23条(即ち現行法第30条)著名商標減損規定及び行政院提案の説明要旨には、著名商標または標章の識別性もしくは信用評判減損のおそれがある商標の著名程度を、一般消費者に普遍的に知られている程度にまで引き上げて始めて登録できない規定の適用があるという趣旨がない。なお且つ当該提案説明によれば、当該法改正で著名商標と誤認混同を生じるおそれを防止することができるほか、著名商標の減損(dilution)も防げるはずである。またAPECの2000年3月決議の会員国が遵守すべきWIPO決議に基づき、「公衆」を「関連公衆」に修正し、且つ著名商標または標章の識別性もしくは信用評判減損のおそれがある場合、登録することができないとの規定が新設された。よって、著名商標または標章の識別性もしくは信用評判減損のおそれについて、著名商標の認定にあたっては、商品または役務の関連公衆の認識を考慮すべきであり、一般公衆の認知をもって判断するものではないことは、当該提案の説明趣旨と一致する。
(四)1999年9月に公布されたWIPOの著名商標保護規定に関する共同決議事項によれば、著名商標の減損またはその著名程度の希釈化について、一般公衆に普遍的に知られている程度に達していることを要求するかについては、会員が自ら決定することができる。また2003年に新設された台湾商標法の著名商標減損規定について、前記行政院提案の説明記載、及び商標法施行細則第31条規定の「本法でいう著名とは、既に関連する事業者または消費者に広く認識されていると認定できるに足りる客観的証拠を有していることをいう。」によっても、商標法第30条第1項第11号後段でいう著名商標について、その著名程度が関連の消費者を超えて、一般消費者に普遍的に知られている程度に達して始めて当該後段規定の適用があるとはしていない。
(五)商標法第30条第1項第11号後段でいう「著名商標」の定義規定と商標法の他の「著名商標」の用語は同一用語、同一内容の法理に基づき、すべて同一の定義を採用しており、即ち「著名商標」とは、客観的な証拠があって既に広く関連事業または消費者に普遍的に知られている商標だと認定できるものであり、判断基準が不明確であるという問題もない。
(六)結論:商標法第30条第1項第11号後段規定でいう「著名商標」とは、客観的な証拠があって、広く関連事業または消費者に普遍的に知られている商標であると認定できるものであり、一般の消費者に普遍的に知られている程度に達して始めて当該号後段規定の適用があるとする必要はない。
2023年03月17日
最高行政裁判所大法廷
審判長裁判官 呉明鴻
裁判官 呉東都
裁判官 帥嘉寶
裁判官 胡方新
裁判官 蕭惠芳
裁判官 王碧芳
裁判官 簡慧娟
裁判官 蔡如琪
裁判官 陳国成