台湾の法令により輸入禁止されている肉製品を中国の通販サイトで販売することは、商標法第5条で定める台湾国内市場における販売を目的とするものに該当しない。
2024-03-26 2023年
■ 判決分類:商標権
I 台湾の法令により輸入禁止されている肉製品を中国の通販サイトで販売することは、商標法第5条で定める台湾国内市場における販売を目的とするものに該当しない。
II 判決内容の要約
知的財産及び商事裁判所刑事判決
【裁判番号】111年度刑智上易字第33号
【裁判期日】2023年4月27日
【裁判事由】商標法違反
控訴人 台湾桃園地方検察署検察官
被告人 邱水山
上記控訴人が、被告人による商標法違反事件について、台湾桃園地方裁判所110年度智易字第30号・2022年5月16日第一審判決(起訴番号:台湾桃園地方検察署110年度偵字第9953号)を不服として控訴を申立てた。これに対し、本裁判所は次の通り判決する。
主文
控訴を棄却する。
理由
一、検察官の控訴の主旨は概して以下の通りである。本件被告人は、告訴人が登録した商標名称及び図案に類似するものを商品の包装に表示して、アリババ、淘宝網等の通販プラットフォームで販売していた。その内、アリババのプラットフォームにおいては、台湾国内への配送サービスを提供しており、且つサイトにおける会社住所も○○県○○郷○○路と表示していた。一方、淘宝網のプラットフォームにおいて、商品の陳列ページに「中国台湾」の表示があったほか、「tw」をアドレスとする内容もあり、且つ繁体字中国語変更をすすめる表示もあった。その商業活動が台湾国内の会社と商業関係を結んでいると示すために、店舗紹介の内容において「台湾金門高坑食品有限公司は福建アモイ及び広東江門でそれぞれ販売会社及び生産工場を設立している」等の記載もあり、また、さらに台湾国内への配送という選択肢を提供し、台湾ドルによる支払い、及びセブンイレブン、財金資訊股份有限公司及び玉山商業銀行等の台湾国内で使われている支払方法を利用できると注記を付けていたことにより、被告人の行為が明らかに台湾市場での販売を目的とし、台湾市場の消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあることがわかる。
二、調べたところ、本案件製品の包装に「KOW KUN」、「高坑」商標図案と表示したビーフジャーキーは、被告人が中国において生産し、且つ中国の「アリババ」、「淘宝網」等のウェブサイトで販売・出品するものであるとの情状については、それを被告人も否認していないとの記録の裏付けがある。また、もし一般大衆がアリババサイトから中国生産・製造のビーフジャーキー等の肉製品を購入した場合、台湾に輸入することができるかについては、本裁判所を経由して行政院農業委員会動植物防疫検疫局(以下、農委会と称す)に書簡で問い合わせた。これに対し、農委会は2022年9月27日に書簡で、概して以下の通りに回答した。「確認したところ、中国大陸は農委会より公告された口蹄疫、牛肺疫、豚熱〔豚コレラ〕及びアフリカ豚熱の非流行地域の国ではないため、民衆が中国大陸のウェブサイトから購入したビーフジャーキー等の肉製品が、宅配または郵便小包で台湾に輸入される際に、本局または財政部関務署がそれを摘発した場合、輸入品を返送または廃棄し、動物伝染病防治条例の関連規定に基づいて違法な輸入者を警察当局に移送するか、または行政処分を行う。」等。したがって、被告人が「アリババ」、「淘宝網」のウェブサイトにおいて販売していた上記包装のビーフジャーキーがそもそも台湾に輸入できないものであることを証明するに十分であることは間違いない。
よって、被告人による「アリババ」、「淘宝網」における上記包装のビーフジャーキーの販売は、台湾国内市場での販売が目的だと明らかに認定することは難しい。検察官が控訴審において依然として上記の情状を理由とし、被告人の行為は明らかに台湾市場での販売を目的としており、台湾市場の消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあると主張していることは、主張として採用することができない。
三、上記を総じると、原審で検察官が指摘した被告人による犯罪の証明方法は、通常の一般大衆が疑いなく、真実と確信できる程度には至っておらず、被告人の犯罪を証明できないため、原審が被告人無罪の判決言い渡しをしたことについて、不当はない。検察官が依然として前記の理由を以て控訴し、原審の無罪判決は不当であると指摘したことには、理由がなく、棄却すべきである。
2023年4月27日
知的財産第五法廷
裁判長裁判官 李維心
裁判官 彭凱璐
裁判官 蔡慧雯