立体商標における商品包装容器形状の識別性認定
2024-06-24 2023年
■ 判決分類:商標権
I 立体商標における商品包装容器形状の識別性認定
II 判決内容の要約
知的財産及び商事裁判所行政判決
【裁判番号】111年度行商訴字第83号
【裁判日期】2023年4月27日
【裁判事由】商標登録
原告 宝齢富錦生技股份有限公司
被告 経済部知的財産局
上記当事者間の商標登録事件について、原告が経済部による2022年9月20日経訴字第11106307460号訴願の決定を不服として行政訴訟を提起したので、本裁判所は以下のとおり判決を下す。
主文
原告の訴えを棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
一 事実要約
原告は2020年11月27日に「宝齢富錦公司瓶器立体商標」立体商標(以下係争商標という)を当時商標法施行細則第19条に定められた商品及びサービス分類第5類の商品(以下係争商標商品という)への使用に指定して、被告に登録出願した。審査を経て、被告は係争商標が商標法第29条第1項第3号規定の状況があり、登録することができないと認め、2022年4月29日付第422375号査定書により拒絶査定の処分を下した。原告がこれを不服として、訴願を提起したところ、経済部により申立てが棄却されたが、原告はなお承服できないため、法に基づき本件行政訴訟を提起した。
二 双方当事者の請求内容
原告の主張:(一)訴願決定及び原処分をすべて取消す。(二)被告は第109084186号「宝齢富錦公司瓶器立体商標」商標の登録出願について登録査定すべきである。
被告の主張:原告の訴えを棄却する。
三 本件の争点
係争商標の登録には商標法第29条第1項第3号規定の状況があったか?
四 本裁判心証の理由
(一)立体商標識別性の判断にあたっては、業界での使用状況、例えば当該立体形状が関連業者に通常に使用されているか、またはその外観形状に多様性があるかを考量しなければならず、使用されておらず、多様性がない場合、当該形状は出所を区別する効果がないので、識別性を有しないと認めるべきである。係争商標は「円筒のキャップ、ボトルネック及びボディにより構成されたボトルであり、容器の外形は特殊なデザインであり、その特徴はキャップが円形で、ボトルネックが内側に凹んでおり、キャップ、ボトルネック及びボディの三部分が垂直で且つ円心が同一の円筒であり、キャップ、ボトルネック及びボディの円直径比率が約57:38:70で、円筒高度の比率が約15:11:38」である立体商標である。前記説明により係争立体商標の全体的外観は円筒の薬瓶であり、いずれの文字、図案または色彩も含まれていないことがわかる。しかし調べたところ、係争商標のボトルネックの部分はよく見られる薬瓶のボトルネックより高くなっているが、薬瓶のボトルネック部分はキャップ及びボディより内側に凹んでいるというよく見られる意匠を逸脱しておらず、文字、図案または色彩を除けば、関連消費者が狭いハイネックのデザインだけでその製造業者の出所を判断することが難しいので、係争商標がは先天的識別性を有していると判断することは当然ながら難しい。係争商標は第5類商品に使用を指定しており、この種類の商品には処方箋不要医薬品が多くあり、関連消費者が含まれる範囲は解釈上、医者等専門技術を有する者に限らず、薬局で市販薬を購入する一般市民も含まれるはずである。一般市民は薬局で市販薬を購入するとき、主に薬品の名称、適応症及び製薬会社等表示を参考とするので、瓶の差異で直接購入する者は少ない。よって、係争商標に薬瓶のデザインの差異があるので、消費者にとって先天的識別の効果があると認めることは困難なので、原告の前記主張も採用できるものではない。
(二)原告は、2014年以来、係争商標の国内の各中・大規模の病院、薬局、診療所に販売しており、年間販売額は数千万元に達し、1年間に販売した瓶数も百万瓶を超えており、医療バイオテクノロジー展示会会に定期的に参加しており、展示会場に係争商標の商品画像を掲げていたほか、係争商標のビデオもインターネット上にアップロードしていたので、係争商標は関連する消費者によく知られており、後天的識別性もある云々と主張した。しかし調べたところ、原告が述べたマーケティング画像でボディの中央に「克菌寧」という文字が書かれたラベルステッカーが見られるが、これは係争商標の別個使用ではない。原告が提出した販売発(領収書)票に係争立体商標図案は付されていないので(申請ファイル第17頁裏面から第59頁まで)、消費者が係争立体ボディ商標かまたはボディのラベルに表示されている薬品名称をもって商品出所を識別する根拠としたのか、上記証拠資料から判断することができない。上記の証拠資料のほか、原告はその他消費者が係争商標のデザインを商品出所の判断根拠としていることを十分に証明できる証拠資料を提出しなかったので、原告による係争商標がすでに広く使用されて後天的識別性がある云々の主張も採用できない。
以上をまとめると、係争商標のよくみられる薬瓶に加えてボトルネックが内側に凹んでいる比率を高めたデザインは、よく見られる薬瓶との差異が大きくないので、先天的識別性を有しないと認めるべきである。また、係争商標は実際の使用時に、単純にボディのデザインだけを識別の根拠としているのではなく、薬品名称ラベル等を貼り付ける方法で販売しており、係争商標(即びボディのデザイン)がすでに後天的識別性を取得していることを証明することが困難なので、被告が係争商標の出願は商標法第29条第1項第3号規定の状況があると認め、係争商標の登録出願を許可すべきではないとした処分に間違いはなく、訴願決定を維持したことも不適法はない。原告の原処分及び訴願決定をすべて取消し、被告も出願番号第109084186号「宝齢富錦公司瓶器立体商標」商標の登録出願について登録査定すべきであるとの訴えには理由がないので、棄却すべきである。
前述を総じて論結すると、本件原告の訴えには理由がなく、知的財産案件審理法第1条、行政訴訟法第98条第1項前段により、主文のとおり判決を下す。
2023年4月27日
知的財産裁判所第二法廷
審判長裁判官 彭洪英
裁判官 曾啓謀
裁判官 汪漢卿