二社には業務提携関係があるが、相手方によるその著名商標の使用に商標権者が黙示的に同意したことを意味するものではない。
2026-07-22 2025年
■ 判決分類:商標権
I 二社には業務提携関係があるが、相手方によるその著名商標の使用に商標権者が黙示的に同意したことを意味するものではない。
II 判決内容要約
知的財産及び商事裁判所民事判決
【裁判番号】113年度民商上字第11号
【裁判期日】2025年05月28日
【裁判事由】商標権侵害における財産権争議等
上訴人 台湾万事達金流股份有限公司
兼法定代理人 胡世均
被上訴人 MASTERCARD INTERNATIONAL INCORPORATED
(米国企業・万事達卡国際股份有限公司)
前記当事者間の商標権侵害に関わる財産権争議等の事件について、上訴人が2024年3月29日当裁判所112年度民商訴字第25号第一審判決を不服として上訴した。2025年4月16日に当裁判所における口頭弁論が終結したので、以下のとおり判決する。
主文
一、上訴を棄却する。
二、第二審訴訟費用は上訴人が連帯負担する。
一 事実要約
被上訴人の主張は次のとおりである。被上訴人は係争商標の商標権者である。上訴人である台湾万事達金流股份有限公司(以下「上訴人会社」という)は同意または許諾を得ずに「万事達」文字を自社名称の主要部分として使用し、係争商標を使用して関連する決済、クレジットカード取引サービスに従事したことは、原審判決(以下省略)添付図面7~12のとおりであり、これにより関連消費者に誤認混同を生じさせ、係争商標の識別性及び信用を毀損し、被上訴人の商標権を侵害した。一方、上訴人は、被上訴人が遅くとも2015年頃には上訴人が係争会社名を使用して第三者決済業務を運営していることを知っていたにもかかわらず、何ら反対の意思を示さず、現在に至るまで上訴人との提携を継続していることから、被上訴人が上訴人の「万事達」商標及び係争会社名の使用を黙示的に同意していたと推知できると主張した。
二 双方当事者の請求内容
(一)上訴人上訴の請求
原判決における上訴人に不利な部分を破棄する。上記破棄の部分について、被上訴人の第一審の上訴及び仮執行の請求をすべて棄却する。もし、不利な判決が下された場合、上訴人は担保を供託して、仮執行免除の宣告を請求する。
(二)被上訴人の答弁
上訴人の上訴を棄却する。
三 判決理由要約
(一) 1.係争商標1、2と上訴人会社の前記の使用図案を比較すると、両者いずれも目を引き、識別及び呼称に用いる主要識別部分である「万事達」があり、 「卡」「台湾」「金流」の記載、及び三角柱図案及び線条等のデザインの有無のわずかな差異があるのみで、全体的な外観、発音及び観念において類似しており、通常の知識と経験を有する消費者が通常の注意をもって、異なる時間、場所で全体を分離して観察したり、または実際の取引において呼称する際、区別が困難であり、類似商標に該当すると認められ、且つその類似度も低くない。2.係争商標3の外国語「MASTERCARD」と上訴人会社が前記の商標において使用している主要識別部分である、即ち中国語「万事達」を比較すると、中国語と英語の違いはあるものの、「MASTERCARD」は著名商標であり、その中国語訳は「万事達」、「万事達卡」と同一であり、関連消費者が取引時につなげて呼称する際、「万事達」は外国語「MASTERCARD」の中国語訳であると考えるうえ、両者の観念も極めて類似しているため、類似度が低くない商標に該当する。
(二) 係争商標はそれぞれ付図1~3の第3類及び第36類各種銀行サービス、クレジットカード業務又は金融サービスに使用指定され、上訴人会社が使用する 「台湾万事達」、「台湾万事達金流」及び付図4~6の文字及び図案をキャッシュフローサービスに使用するものと比較すると、いずれも金融に関連し、消費者が金融取引を円滑に行うニーズを満たすものであり、両サービスの性質、目的及び消費者のニーズを満たす点において共通点または関連性があり、一般社会通念及び市場取引状況に基づき、高度に類似するサービスに該当する。
(三) 係争商標の中国語「万事達」、外国語「MASTERCARD」及び全体図案はいずれも指定使用付図1~3のサービスと直接関連せず、消費者はこれを出所の指示識別の標識と見なしであり、且つ被上訴人による長期かつ広範な使用により著名商標となっているので、高い識別性を有するため、第三者が少しでも便乗すれば消費者の誤認混同を招く可能性がある。
(四) 係争商標と上訴人会社の前記の使用図案との類似程度は低くなく、前記の指定サービスと高度に類似しており、且つ係争商標には相当な識別性がある等の要素を総合的に判断すると、 関連消費者が両商標のサービスが同一の出所、または異なる出所であっても関連性のある出所から提供されていると誤認する恐れがある。または両商標の使用者の間に関連企業、ライセンス関係、フランチャイズ関係、その他の類似関係があると誤認混同する恐れがあるので、上訴人会社が金融サービス行為において「万事達」を使用することは、商標法第68条第3号に定める商標権侵害を構成する。
上訴人は、遅くとも2015年2月には被上訴人が係争会社名を使用して第三者決済業務を運営していることを知っていたにもかかわらず、反対の意思も一切示さず、上訴人との提携を継続してきたことから、被上訴人が上訴人の「万事達」商標及び係争会社名の使用に黙示的に同意していたと推知できると抗弁した。しかし「知悉」は「同意」と同義ではなく、業務上の提携関係と「万事達」商標及び係争会社名の使用同意とは別のことであり、上訴人も被上訴人が「万事達」商標及び係争会社名の使用に同意したことを挙証していないので、単に双方に業務提携関係があったことのみをもって、 被上訴人が「万事達」商標及び係争会社名の使用に黙示的に同意していたと推認することは困難である。
以上をまとめると、被上訴人による、商標法第69条第1項及び第2項に基づく、原審判決主文第1項及び第2項のとおりの判決の請求、並びに商標法第69条第3項及び会社法第23条第2項に基づく、原審判決主文第3項のとおりの判決の請求にはいずれも理由があり、これを認容すべきである。従って、原審が上訴人のこの部分について敗訴の判決を下したことは、不合理ではない。上訴の主張が原判決のこの部分を不当であると指摘し、破棄のうえ改めて判決を下すように求めたことには理由がなく、上訴を棄却すべきである。
本件の証拠はすでに明確であり、双方のその他の主張及び攻撃防御方法についても、本裁判所で審理した結果、判決結果に影響しないと認めたので、逐一論述はしない。
以上をまとめて結論を述べると、本件上訴人の上訴には理由がない。改正前の知的財産案件審理法第1条、民事訴訟法第449条第1項、第85条第2項の規定に基づき、主文のとおり判決する。
2025年5月28日
知的財産裁判所第一法廷
審判長裁判官 汪漢卿
裁判官 蔡恵如
裁判官 陳端宜









