商標の誤認混同のおそれに関する判断基準
2026-07-30 2025年
■ 判決分類:商標権
I 商標の誤認混同のおそれに関する判断基準
■ ハイライト
役務の類似とは、役務の性質、内容又は目的が、消費者の需要を満たす上で、及び役務提供者、販路又は販売の場所、消費者群又は他の要素において、共通する又は関連する点を備えており、同一又は類似の商標が表示された場合、一般的社会通念及び市場取引状況に基づいて、役務を受ける者にその商品が同一の又は同一ではないが関連のある出所に由来するものであると誤認させやすいことを指し、この二つの役務には類似の関係が存在するものとなる。
II 判決内容の要約
最高行政裁判所判決
【裁判番号】113年度上字第142号
【裁判期日】2025年7月10日
【裁判事由】商標登録
上訴人 德商卡爾蔡司醫技股份有限公司
(ドイツ企業CARL ZEISS MEDITEC AG)
被上訴人 経済部知的財産局
上記当事者間の商標登録事件について、上訴人は2023年11月30日知的財産及び商事裁判所112年度行商訴字第28号行政判決に対して上訴を提起した。本裁判所は次の通り判決する:
主文
一、上訴を棄却する。
二、上訴審の訴訟費用は上訴人の負担とする。
一 事実要約
上訴人であるドイツ企業の卡爾蔡司公司は、2020年7月13日に「SMILE」商標を以って、第9、10、42、44類の商品及び役務での使用を指定して出願し、後に3件の商標登録出願に分割した。分割後の本件出願第110880106号商標(以下「係争出願商標」、添付図1の通り)について、知的財産局(以下「被上訴人」)が審査を行った結果、本件商標には商標法第30條第1項第10号規定の状況に該当すると認め、登録第01108399号「SMILE及び図」商標(以下「引用商標」、添付図2の通り)を添付して拒絶査定処分を下した。上訴人はこれを不服として訴願を提起したが、経済部に棄却された。上訴人はこれを不服として次に行政訴訟を提起し、知的財産及び商事裁判所(以下「原審」)の行政判決にて請求を棄却され、本件上訴を提起した。
二 判決理由の要約
(一)「商標が次に掲げる状況の一に該当するときは、登録を受けることができない:……十、同一又は類似の商品又は役務における他人の登録商標又は先に出願された商標と同一又は類似のもので、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるもの。……」と商標法第30条第1項第10号に規定されている。両商標における誤認混同のおそれの有無を判断するには、(1)商標識別性の強弱、(2)商標の類否とその類似度、(3)商品/役務の類否とその類似度、(4)先権利者の多角化経営の状況、(5)実際の誤認混同の事情、(6)関連の消費者の各商標に対する熟知度、(7)係争商標の出願人の善意の有無、(8)その他の誤認混同の要素等を参酌して、関連の消費者に誤認混同を生じさせるおそれに至っているかを総合的に認定しなければならない。
(二)商標の類否とその類似度の判断は、商標の図案全体を観察しなければならない。ただし、全体観察の原則においても、なおいわゆる要部がある。商標は図形全体で提示されるが、商品又は役務に係る消費者が比較的注目する、又は事後に印象に残るものがその出所を識別する場合、商標の図形において最も顕著な要部である。要部観察と全体観察は互いに対立するものではなく、要部は最終的になお商標が商品又は役務に係る消費者に与える全体の印象に影響をもたらし、両者は商標の類否判断に対して互いに補い合うものである。調べたところ、係争出願商標はデザインが施されていないシンプルで黒く大きな外国語「SMILE」で構成されている。一方、引用商標は黒く丸い図形の背景の中に、ややデザインが施された白い字体の外国語「Smile」が上に、一本の弧を描くラインが下に配置されて構成されている。消費者が見た時に与える印象が深く、呼称を以って識別する要部はいずれも外国語の「SMILE」、「Smile」であり、全体の外観、呼称及び観念が極めて類似しており、通常の知識経験を有する消費者が、時間と場所を異にして隔離的かつ全体的に観察する時、又は実際の取引で呼称する時に区別するのが容易でなく、原審がこれに基づき係争出願商標と引用商標が近似を構成する商標であり、類似度が高いと認定したことには、前述の説明に基づいて、誤りはない。
(三)役務の類似とは、 役務の性質、内容又は目的が、消費者の需要を満たす上で、及び役務提供者、販路又は販売の場所、消費者群又は他の要素において、共通する又は関連する点を備えており、同一又は類似の商標が表示された場合、一般的社会通念及び市場取引状況に基づいて、役務を受ける者にその商品が同一の又は同一ではないが関連のある出所に由来するものであると誤認させやすいことを指し、この二つの役務には類似の関係が存在するものとなる。また、テクノロジーの発展及び経済形態の変化に伴い、絶えず革新が行われ、社会及び産業の分業がより細分化される傾向にあり、審査の上で、市場取引状況及び各産業別の性質により、個別案件について二つの役務の間の類似度を判定しなければならない。被上訴人が作成した「商品・役務の区分及び相互検索参考資料」は検索の参考のために用いるものであり、役務の類否の判定において、役務区分の制限は受けるものの、参考資料とできないものではなく、一般的社会通念及び市場での取引状況を参酌して、商品又は役務の各種関連要素を総合的に判断するべきである。また「役務の類否」の判定は、二商標の(出願)登録で指定された役務で上記原則に基づき対比するものであり、実際に使用している役務を根拠とするものではない。
(四)調べたところ、係争出願商標は「医療サービス、即ち眼科医療サービス及び眼科手術サービス」での使用を指定し、引用商標は「歯科医療及び薬剤調合、医療及び医療コンサルティングのサービス」での使用を指定している。原審は両者のいずれも「商品及び役務区分及び相互検索に関する参考資料」に記載されている4403「医療;民間療法マッサージ」のグループに属し、かつ人体の病気や痛みを治療するための専門知識と技術に関わる医療分野の役務であり、引用商標の指定役務の範囲には歯科以外に上位概念である「医療及び医療コンサルティングのサービス」等の一般的な医療サービスも含まれており、「眼科」又は「歯科」に関わらずいずれの医療サービスも人体の病気や痛みを治療するための専門知識と技術に関わる医療分野の役務に属し、市場においては総合クリニック、総合病院など同時に両方の医療サービスを提供する経営形態は少なからずあり、係争出願商標と引用商標のいずれも国民が日常生活に必要で、容易にアクセス又は取得できる医療関連サービスであり、消費者群は専門家に限らず、一般消費者も受けることが可能な役務であり、関連の消費者が高い注意力をもって両商標の違いを区別する必要はなく、両商標が役務の性質、内容、販路又は販売の場所、対象、役務提供者、又は他の要素において、共通する又は関連する点を備えており、同一又は類似の商標が表示された場合、一般的社会通念及び市場取引状況に基づいて、一般的な役務消費者にその商品が同一の又は同一ではないが関連のある出所に由来するものであると誤認させやすく、この二つの役務には高度な類似の関係が存在するものとなる。前述の説明に基づいて、法に合わないところはない。係争出願商標が眼科医療サービスに用いられ、引用商標が実際に歯科医療サービスにしか使用されておらず、両者が異なる医療の専業科目に属するため、類似度は極めて低いとする上訴人の主張について、原審は、採用するに十分ではないとして、その論駁は極めて明確であり、判決が理由を欠いているという事情はない。
(五)以上をまとめると、原判決が上訴人による原審での訴えを棄却したことに誤りはない。上訴の趣旨は、以前からの主張に徒にこだわり、原判決に法令違背があると指摘して破棄を請求することは理由がないため、これを棄却する。
以上の次第で、本件上訴に理由はない。改正前の知的財産事件審理法第1条及び行政訴訟法第255条第1項、第98条第1項前段により、主文の通り判決する。
2025年7月10日
最高行政裁判所第二法廷
裁判長 陳國成
裁判官 張國勳
裁判官 簡慧娟
裁判官 高愈杰
裁判官 蔡如琪
添付図1:係争出願商標
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出願第110880106号(拒絶査定第0425728号) 第44類:医療サービス、即ち眼科医療サービス及び眼科手術サービス。 |
添付図 2:引用商標
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登録第01108399号 第44類:歯科医療及び薬剤調合、医療及び医療コンサルティングのサービス。 |











