オンラインゲームの個人サーバーは著作権に違反しない
2014-08-27 2013年
■ 判決分類:著作権
I オンラインゲームの個人サーバーは著作権に違反しない
台湾オンラインゲーム人口はおよそ5百万人、産業規模も2百億元を超えているので、一部の業者はそのおこぼれに与ろうと、「私服」と呼ばれるプライベートサーバーを設置し、ログインショートカットファイルを改変して、プレイヤーが廉価なゲームプレイやアイテム購入ができるようにしている。そして、プライベートサーバーとオフィシャルゲームの内容が同一であることから、多数のオフィシャルサーバーのプレイヤーを奪ってしまっている。
合議審は、プライベートサーバーでの攻撃方法、レベルアップ等はいずれも正規版ゲームの内容であり、不法に複製したゲーム内容ではなく、IPアドレスの改変は創作の改変ではないので、著作権を侵害していないと認め、何等三名に無罪を判決した。但し、本件は更に上訴することができる。【2013-04-29/聯合報/A10版/社会】
II 判決内容の要約
上記上訴人らが被告等による著作権法違反事件について、台湾台中地方裁判所99年度智訴字第4号、2012年1月20日付第一審判決(起訴案件番号:台湾台中地方裁判所検察署98年度調偵字第576号)を不服として上訴を提起したが、本裁判所の判決は次のとおりである。:
(二)本件の公訴人は次のように認定した。即ち被告等による告訴人著作財産権の侵害は、主に被告による下記行為である。:1.被告何成煌等は先ず、ゲームプログラム中のプレイヤーに提供する「『ログイン』してゲームを使用するプログラム著作のプログラム」を、無断で改作し、ログインショートカットからプライベートサーバーに導くプログラムを完全に改変した。2.さらに、その改変したログインプログラムを上記魔力プレイヤーコミュニティーのウェブサイトに設置し3.プライベートサーバーゲームにログインしようとする不特定のプレイヤーに先ず茂為公司、吉恩立公司が提供するオフィシャル版のユーザー端末用のソフトウェアをコピーさせた後4.プレイヤーが上記魔力luna、魔力天堂IIウェブサイトにアクセスして上記の改作を完了したプライベートサーバー専用ログインプログラムをダウンロードした後で、ゲームのログインショートカットを改変した何成煌等が架設したプライベートサーバーゲーム「Luna Online Game」、「天堂II」オンラインゲームにアクセスしてプレイすることができる。
(三)本件の「Luna OnlineGame」、「天堂II」等インターネットオンラインゲームのユーザーは、告訴人オフィシャルサイト又は被告のプライベートサーバーのどちらにログインしても、告訴人が提供するユーザー端末用のオフィシャル版ゲームソフトを使用するのであり、その差はわずかに「ログインプログラム」の部分が、オフィシャルサイトとプライベートサーバーとで異なるだけである。
(四)いわゆる「ログインプログラム」が一種のコンピュータプログラムであることから、そのプログラムがログインを実行する際に、いったいどのIPアドレスにログインするのかは、ユーザーが入力する「パラメーター」や「IPアドレス」により決まるものである。つまり、当該ログインプログラムは全く改変する必要がなく、唯一変更が必要なのは、当該パラメーター又はIPアドレスのみである。例を挙げると、郵便配達員による配達は(これはログインプログラムの機能のようなもの)、配達員がその郵便物をどの家、どの住所に届けるかは、その郵便物上に記載された住所(この住所はIPアドレスまたはパラメーターのようなもの)によって決まるものなので、もし配達員に本来届けるはずの一号番地ではなく三号番地に届けさせたいのなら、その郵便物上の宛先住所を書き換えるだけでよく、配達員を変える必要はない。
(五)本件において被告がいうログインショートカットの改変行為は即ちこのようなものであり、被告はやはり告訴人のオフィシャルサイトが提供するオリジナルのログインプログラムを利用してログインを実行するので、被告は単にログインプログラムの中の電信業者がオフィシャルサイト業者に割り当てたIPアドレスパラメーターの数値を、プライベートサーバー業者のIPアドレスに変更しただけであり、同一ログインプログラムがその本来設計された実行すべきログイン機能を実行するのである。
(六)いわゆるIPアドレスは、単に一系列の数字のパラメーターであり、この種のパラメーターはある「アドレス」を表すもので、文学、科学、芸術又はその他が学術分野ではなく、創作と見なすべきではない。更に郵便物を例にすると、封筒上に記載された宛先住所は文学、芸術創作ではないが、封筒内の文書は文学や芸術創作である可能性があり、つまり、封筒の住所の変更は創作の改作ではなく、IPアドレスパラメーターの変更も「創作」(著作)の改作ではない。よって、IPアドレスが改変されたからといって、直ちに、全ログインプログラムが改作されたと認めることはできず、これは封筒の住所が改変(作)されたからといって、直ちに、郵便配達員の配達機能が改変(作)されたと認めることができないのと同様である。なお且つこのあるIPアドレスは電信業者が提供しており、プログラム設計者が自身で設計したものではなく、このあるIPアドレスのパラメーターにはコピーガード機能が一切ない。即ち、IPアドレスパラメーターの変更も、コピーガードの破壊であるとは認められないことに、疑問の余地はない。IPアドレスパラメーターの書き換えについて、「ログインプログラム」のコピーガードを破壊する必要があるかどうか、又は本件の「ログインプログラム」にコピーガード設計があるのかどうかについて、告訴人からの挙証証明は見られなかったので、必然的に被告がコピーガードを破壊してIPアドレスのパラメーターを書き換えたと認定することはできない。
(七)本件告訴人の係争「Luna Online Game」、「天堂II」等インターネットオンラインゲームは韓国から独占的使用権を取得していて、係争ゲームプログラムが台湾だけに存在しているのではなく、他の国々(例えば中国、アメリカ等)にも現地の被許諾者がいるので、被告サーバーのゲームのメインプログラムが、たとえ不法に複製されたものだとしても、その出所が本件告訴人であると証明することはできない。もし本件告訴人の所からのものではないならば、告訴人が本件告訴を提起できるかのについても疑問がある。
(八)台湾地区のユーザー端末用のゲームソフトウェアは告訴人のウェブサイトや通常のルート(例えばコンビニエンスストア、コンピューター展示会、路上配布)から入手してCDコピーすることができ、ひとたびプレイヤーが正規版ゲームソフトをコピーすれば、そのゲームインターフェイスには繁体中国語が現れる。この際に、もしプレイヤーが被告が提供したIPアドレス改変のパッチファイルをダウンロードした後に、再度プログラムを実行しても、単に初期設定のオフィシャルサイトIPアドレスが被告のプライベートサーバーアドレスに変更されているだけであり、繁体中国語インターフェイスが改変されたわけではない。同じく、もしユーザー端末がコピーした正規版ゲームソフトが韓国語、英語または簡体中国語版であっても、IPアドレスの改変が元のインターフェイスのテキストを変えることはない。つまり、単に繁体中国語インターフェイスにより被告プライベートサーバーのゲームのメインプログラムが告訴人のオフィシャルサイトからコピーされたものだ云云とすることは、不正確である。
(九)また、告訴人は被告プライベートサーバー上で不法にオフィシャルサイトの画像が盗用されている云云と主張したが、調べたところ、本件被告のサーバー端末用のゲームメインプログラムと告訴人のものは同一であり、実質的にはオフィシャルサイトとプライベートサーバーの唯一の差異は、僅かにサーバーログインに導くIPアドレスが異なるだけである。つまり、ゲーム画面に現れる画像も当然同一であり、画像が同一であるのは、同一のプログラムの実行により自ずと生じる状況であるのだから、当然のことである。
(十)たとえ、被告プライベートサーバー上に現れた画面と告訴人の画面が同一で、被告には確かに不法にサーバー端末用のゲームプログラムをコピーした行為があったとしても、被告サーバーのゲームのメインプログラムがいったいどの国のどのバージョンからコピーされたものであるのかについては、告訴人も明確な主張をしていない。つまり、被告のプライベートサーバー上に現れる画像が告訴人の著作財産権を侵害していることについて、告訴人がこの部分の告訴を提起する権利を有しているのかにも疑問がある。また、消費者即ちユーザー端末用のゲームプログラムは告訴人により発行された正規版のソフトウェアであるのだから、ゲームプロセスに於いて出現する告訴人のゲームと同一の画像画面についても、当然のことながら、被告が不法に告訴人の画像をコピーしたものだと認定することは出来ないことを、ここに併せて説明しておく。
(十一)本件の公訴人及び告訴人はいずれも、被告サーバー上のゲームのメインプログラムが不法に告訴人の著作をコピーしたものであることを証明できない。ユーザー端末用のゲームプログラムも告訴人が発行したオフィシャル版ソフトウェアであるので、つまり、ユーザー端末用のゲームプログラムについて、被告に不法なコピー行為があったことは証明できていない。またログインプログラムの部分の、被告がプライベートサーバーを開設するのに必要な変更の部分については、IPアドレスパラメーターのみであり、IPアドレスパラメーターは著作権法が保護する所謂文学、科学、芸術又はその他学術範囲の創作ではないので、著作権法が保護する客体(著作)ではない。よって、たとえ被告にログインIPアドレスパラメーターの改変行為があったとしても、やはり「著作」の「改作」行為であると認めることはできない。
(十二)以上をまとめると、被告何成煌、陳珮琳、何博軒の部分は、公訴人が挙げた事実証拠では、なお裁判所に確信の心証を持たせることができないので、本裁判所により原判決を破棄し、改めて被告を無罪とする判決を下さなければならない。なお被告何鴻源の部分について、原審が被告を有罪と認定することが困難だとして、被告無罪と判決したことに誤りはない。検察官が上訴により判決の破棄及び有罪判決を請求したことには、理由がなく、上訴を棄却すべきである。以上の論断は刑事訴訟法第368条、第369条第1項前段、第364条、第301条第1項に依拠し、判決を主文のとおりとする。
本件は検察官鍾鳳玲が出廷して職務を執行した。