行為者によるオークションサイトへの商品写真掲載は、不特定の者に商品の出所を明確にさせるため、著作権法第91条の1第2項の陳列行為に該当
2014-11-14 2013年
■ 判決分類:著作権
I 行為者によるオークションサイトへの商品写真掲載は、不特定の者に商品の出所を明確にさせるため、著作権法第91条の1第2項の陳列行為に該当
■ ハイライト
「著作財産権侵害に係る複製物であることを明らかに知っていながら、これを頒布し、又は頒布を意図して公開に陳列する」犯罪の様態は従来、行為者が他人の著作財産権侵害に係る商品を直接商品棚に陳列することが常態であった。しかしながら時代の変遷と取引形態の変化にともない、実体の販路の助けを借りる必要なく、インターネットで商品を取引できるようになり、これは情報時代の重要なトレンドとなっている。著作権法の陳列に関する定義は、従来の形態に局在してはならず、文義的解釈を逸脱しない範囲において、法条規範の趣旨に基づき適宜調整すべきである。行為者が頒布しようとする商品の外観及びその細微な設計を撮影によって画像とし、オークションサイトに掲載し、不特定多数の者がいずれも直接上記画像を閲覧できる時、行為者がその侵害する著作物に対して主張するものとなり、相手方の買い手も表彰される該商品の出所を明確に識別できるので、上記取引方法で達成できる効果は実体の商店が商品を陳列するのと同じであり、いずれも著作権法第91条の1第2項でいう陳列行為に該当し、同じ法律の規範を受けるべきである。行為者が商品の内容を識別できる図や画像を付していないならば、「不特定多数の者がオークションサイトを直接閲覧した時、該商品の出所を明確に識別でき、商品棚に商品を陳列するのと同じである」とは認め難い。よって公開陳列の程度に達しているか否かは、その他の証拠と組み合わせて認定すべきであり、さもなければ行為がすでに公開陳列されているとは認め難い。(裁判の要旨内容は「法源資訊」が整理)
II 判決内容の要約
知的財産裁判所刑事判決
【裁判番号】102年度刑智上易字第31号
【裁判期日】2013年7月11日
【裁判事由】著作権法違反
上訴人 劉○国
即ち被告
上記上訴人即ち被告は著作権法違反事件について、台湾台中地方裁判所102年度智易字第9号、2013年3月19日第一審判決(起訴案件番号:台湾台中地方裁判所検察署101年度偵字第22473号)を不服として上訴を提起した。本裁判所は以下の通り判決する。
主文
原判決を取り消す。
劉○国は著作財産権侵害に係る光ディスク複製物であることを明らかに知っていながら、頒布を意図して所持していた。累犯であり、6ヵ月の懲役に処し、罰金へ転換するときは、1,000新台湾ドルを1日で換算する。押収された海賊版ゲーム光ディスク1枚は没収する。
一 事実要約
劉○国は以前、著作権法違反事件により、台湾桃園地方裁判所98年度桃簡字第3561号刑事判決で懲役6ヵ月が確定し、2010年6月14日罰金に転換して刑執行を完了している。ところが悔い改めず、「三国志3」、「三国志5」、「大航海時代」等のゲームソフトが、台湾光栄特庫摩股份有限公司(以下、「台湾光栄公司」)が著作財産権を享有するプログラムソフトの著作物であり、著作財産権者の同意又は利用許諾を受けておらず、これらは無断で頒布又は、頒布を意図して公開陳列又は所持してはならないことを明らかに知っており、さらに2011年10月に、不詳の人物から上記コンピュータプログラムの著作物であるゲーム光ディスクを入手し、著作財産権者の利用許諾を受けていない海賊版光ディスクと知りながら、2012年7月1日より前の某時、コンピュータ本体を利用してインターネットを通じオークションサイト「露天拍賣網站」へアクセスし、サイト上に「PSP專用世嘉SEGAMD+遊戲ROM 1250種(PSP専用SEGAのMD+ゲームROM1250種類)」という情報を掲載し、不特定の者が閲覧及び入札・購入するのに供して、このように他人の著作財産権を侵害する海賊版光ディスクの頒布を意図して所持した。警察がネット上で上記情報を発見し、同年7月1日に入札・購入し、劉○国が使用を申請した中華郵政股份有限公司○○郵局○○分局第0000000号の口座に代金を振り込み、劉○国はその後前述の光ディスクを台中市○○区○○郵便局第000-000号私書箱に郵送し、警察は足跡をたどり上記事情をつきとめ、前記ゲーム光ディスク1枚を押収した。本件は台湾台中地方裁判所検察署の検察官が取調べを行い起訴した。
二 本件の争点
(一)被告は著作権法第91条の1第3項の著作財産権侵害に係る光ディスク複製物であることを明らかに知っていながら、これを頒布した罪を構成しているか否か。
(二)被告は著作件法第91条の1第2項の著作財産権侵害に係る複製物であることを明らかに知っていながら、頒布を意図してこれを公開に陳列した罪を構成しているか否か。
三 判決理由の要約
(一)著作権法第91条の1第3項の著作財産権侵害に係る光ディスク複製物であると明らかに知りながら頒布した罪とは、行為者が著作財産権侵害に係る光ディスク複製物の所有権を著作財産権者又は捜査機関以外の不特定な対象に移譲し、著作財産権侵害の状況が拡大し続ける危険があるものである(司法院98年知的財産法律座談会刑事訴訟類第15号結論)。調べたところ、本件において警官が購入者を装って被告から上記海賊版光ディスクを購入したが、実際には購入する真意はなく、証拠収集、捜査を目的として購入を装ったものである。形式上は売買の約定があるが、実際には売買契約の意思はなく、前記説明から引証して、被告の行為はすでに頒布の結果が発生したとは認め難く、頒布の構成要件に該当しない。
(二)著作財産権侵害に係る複製物であることを明らかに知っていながら、これを頒布し、又は頒布を意図して公開に陳列する犯罪の様態は従来、行為者が他人の著作財産権侵害に係る商品を直接商品棚に陳列することが常態であった。しかしながら時代の変遷と取引形態の変化にともない、実体の販路の助けを借りる必要なく、インターネットで商品を取引し、店舗テナント料や在庫コストを削減できることは、情報時代の重要なトレンドとなっている。ゆえに著作権法の陳列に関する定義は、従来の形態に局在してはならず、文義的解釈を逸脱しない範囲において、法条規範の趣旨に基づき適宜調整すべきである。行為者が頒布しようとする商品の外観及びその細微な設計を単一又は複数の角度から撮影することによって画像とし、オークションサイトに掲載し、不特定多数の者がいずれも直接上記画像を閲覧できる時、行為者がその侵害する著作物に対して主張するものとなり、相手方の買い手も表彰される該商品の出所を明確に識別できるので、上記取引方法で達成できる効果は実体の商店が商品を陳列するのと同じであり、いずれも著作権法第91条の1第2項でいう陳列行為に該当し、同じ法律の規範を受けるべきである。被告は「PSP專用世嘉SEGAMD+遊戲ROM1250種」等の文字をオークション情報として掲載したが、商品の内容を識別できる図や画像を付しておらず、「不特定多数の者がオークションサイトを直接閲覧した時、該商品の出所を明確に識別でき、商品棚に商品を陳列するのと同じである」とは認め難いため、公開陳列の程度に達しているか否かは疑問の余地がないとはいえない。「疑わしきは罰せず」の原則に基づき、本件は被告の行為がすでに散布を意図して公開に陳列した事実を構成しているとは認め難い。
(二)著作財産権侵害に係る複製物であることを明らかに知っていながら、これを頒布し、又は頒布を意図して公開に陳列する犯罪の様態は従来、行為者が他人の著作財産権侵害に係る商品を直接商品棚に陳列することが常態であった。しかしながら時代の変遷と取引形態の変化にともない、実体の販路の助けを借りる必要なく、インターネットで商品を取引し、店舗テナント料や在庫コストを削減できることは、情報時代の重要なトレンドとなっている。ゆえに著作権法の陳列に関する定義は、従来の形態に局在してはならず、文義的解釈を逸脱しない範囲において、法条規範の趣旨に基づき適宜調整すべきである。行為者が頒布しようとする商品の外観及びその細微な設計を単一又は複数の角度から撮影することによって画像とし、オークションサイトに掲載し、不特定多数の者がいずれも直接上記画像を閲覧できる時、行為者がその侵害する著作物に対して主張するものとなり、相手方の買い手も表彰される該商品の出所を明確に識別できるので、上記取引方法で達成できる効果は実体の商店が商品を陳列するのと同じであり、いずれも著作権法第91条の1第2項でいう陳列行為に該当し、同じ法律の規範を受けるべきである。被告は「PSP專用世嘉SEGAMD+遊戲ROM1250種」等の文字をオークション情報として掲載したが、商品の内容を識別できる図や画像を付しておらず、「不特定多数の者がオークションサイトを直接閲覧した時、該商品の出所を明確に識別でき、商品棚に商品を陳列するのと同じである」とは認め難いため、公開陳列の程度に達しているか否かは疑問の余地がないとはいえない。「疑わしきは罰せず」の原則に基づき、本件は被告の行為がすでに散布を意図して公開に陳列した事実を構成しているとは認め難い。
(三)以上をまとめると、被告の行為は著作権法第91条の1第3項前段の著作財産権侵害に係る光ディスク複製物であると明らかに知りながら頒布を意図して所持した罪に違反している。
以上の次第で、依刑事訴訟法第369条第1項前段、第364条、第299条第1項前段,著作權法第91条の1第3項前段、第98条,刑法第11条前段、第41条第1項前段、第47条、第59条に基づき、主文の通り判決する。
本件は検察官の洪光煊が法廷にて職務を執行した。
2013年7月11日
知的財産裁判所第二法廷
裁判長 陳忠行
裁判官 熊誦梅
裁判官 林洲富