一日100件、いっそのことコピー 販促資料を剽窃、誤字までそのまま
2015-04-09 2014年
■ 判決分類:著作権
I 一日100件、いっそのことコピー
販促資料を剽窃、誤字までそのまま
販促資料を剽窃、誤字までそのまま
■ ハイライト
25歳の男性、周○宏は2年余りにわたって燦坤実業股份有限公司(Tsann Kuen Enterprise Co., Ltd.、以下「燦坤公司」)ネットマーケティング事業部でアルバイトとして働いていた時、網路家庭国際資訊股份有限公司 ( PChome Online Inc.、「以下、「網路家庭公司」)の商品販促資料を剽窃し、著作法に違反しているとして告訴された。士林地方裁判所は2万新台湾ドルの罰金を科し、2年の執行猶予を付した。
裁判官は、燦坤公司の払込資本金は17億新台湾ドル近くに達しているにもかかわらず、アルバイトに合理的な量を超えた作業をさせたことが原因でこのような事態を招いたと認め、燦坤公司に25万新台湾ドルの罰金を科した。民事訴訟部分については、燦坤に網路家庭公司に対する賠償金40万新台湾ドルの支払いを命じた。
網路家庭公司の女性従業員、蔡○珊は2年余り前にコンピュータ販促資料を作成したが、その後同様の商品情報が競合者のサイト「燦坤網路商城」に掲載されていることを発見した。網路家庭公司は、燦坤公司が写真のリンク先が同じであり、「更『佳』舒適」という誤字(「佳」は「加」の誤記)、「看螢」という脱字(「看螢幕」の「幕」が脱落)まで同じであったため、これは違法な複製行為であり、すでに該社にとって潜在的な顧客の流出をもたらしている、と判断した。
網路家庭公司は告訴し、燦坤公司の資本金は50億新台湾ドルに達しているにもかかわらず、従業員に対して著作権(保護)の教育・訓練のみならず、創作力の育成も行っておらず、さらにはアルバイトに毎日商品100点以上の情報をサイトに掲載させ、アルバイトは自分で販促資料を作成できず、剽窃しなければ要求に応えられなかったものと推測されるとして、厳しい法的制裁を加えるよう裁判官に請求した。
II 判決内容の要約
台湾士林地方裁判所刑事判決
【裁判番号】102年度智易字第5号
【裁判期日】2014年1月20日
【裁判事由】著作権法違反
公訴人 台湾士林地方裁判所検察署検察官
被告 周○宏
被告 燦坤実業股份有限公司(Tsann Kuen Enterprise Co., Ltd.)
上記被告は著作権法違反事件により、検察官に公訴(101年度調偵字第267号、102年度偵字第3249号)を提起されており、本裁判所は次の通り判決する。
主文
周○宏は著作権法第91条第1項の著作財産権侵害罪を犯したため、罰金2万新台湾ドルを科し、労役に転換するときは1,000新台湾ドルを一日に換算し、執行猶予2年を付す。
燦坤実業股份有限公司の被雇用者が業務執行により、著作権法第91条第1項の罪を犯したため、燦坤実業股份有限公司に罰金25万新台湾ドルを科す。
一 事実要約
周○宏は2011年2月8日から2012年2月13日までの間に燦坤公司に雇用された。思いがけず周○宏は、網路家庭公司のサイト「PChome 24h購物」に掲載されたノートPC「Levono IdeaPad S205」の販促資料が、網路家庭公司が著作財産権を享有する言語の著作物及び編集著作物(以下「係争著作物」)であり、網路家庭公司の同意又は許諾を得ずに無断で複製してはいけないと明らかに知りながら、複製の形式で他人の著作財産権を侵害する犯意に基づき、網路家庭公司の同意又は許諾を得ずに、2011年5月12日午前11時21分14秒に燦坤公司にて係争著作物を複製し、燦坤公司が運営するサイト「燦坤網路商城」のバックエンドにアップロードした。さらに生年月日不詳で、事情を知らない燦坤公司の従業員が点検した後一般消費者に公開した。本件は、網路家庭公司の告訴に基づき、台湾士林地方裁判所検察署検察官が取り調べと起訴を行った。
二 判決理由の要約
(一)被告の燦坤公司は、係争著作物が告訴人の従業員により作成された事実を争っていないが、告訴人が係争著作物に対して著作財産権を享有することを否認した。さらに係争著作物の文字部分はノートPCの外観及びスペックを紹介したものにすぎず、図の部分もノートPCの全体又は一部の外観構造を対象としたのみだけであり、光と影の変化や構図等の主観的な創意が存在せず、著作権法で定められる独創性の要件を満たさず、告訴人は著作権を享有していない云々、と答弁した。
(二)著作法でいうところの創作とは即ち「独創性」を有する人間の精神活動における創作であり、「原初性」と「創作性」の概念を含む。これについて述べると、「原初性」は独立した創作を指し、著作者が創作するときに他人の著作物を盗用せずに、独立して創作物を完成することを指す。「創作性」は創作が少なくとも少量の創意を具え、作者の個性を表現するに足るものを指す。また著作権が要求する独創性は、独立して創作し、他人の著作物を盗用しないことだけ必要であり、その創作内容がたとえ他人の著作物と同一又は類似していても、独創性の認定に影響がなく、同じく著作権法の保障を受ける。次に、資料の選択及び編集・レイアウトに創作性があるものは編集著作物であり、独立の著作物として保護するものであり、これは同法第7条第1項規定を参照できる。したがって、資料の選択及び編集・レイアウトは、作者のある程度の創意と個性を表現できるときは、即ち編集著作物であり、著作権の保護を享有できる。
(三)本裁判所が証人の蔡○珊の供述した証拠内容を参酌し、係争著作物の文字部分を併せて参照したところ、例えば「Lenovo ideaPad S205は最新のAMD Brazo E350プロセッサを搭載し、2GB DDR3及び5400rpm 高回転速度500GのHDD、AMD Radeon HD 6310MのGPUを内蔵。11.6型HD(1366×768)スクリーンは明度を自動調整」、「グレア型スクリーン」、「チクレットキーボード」等のようにノートPCの規格と機能を客観的に述べているほか、さらに証人の蔡○珊は該ノートPCを使用した後、「銅版画のような質感を持つケース」、「デザインがシンプルなカバーCで、スクリーン(中国語でスクリーンの意である「螢幕」の「幕」が脱落)を見るのがより快適(中国語の「更加」を「更佳」と誤記)」、「傑出した外観:書籍の外観からインスピレーションを得ているため、Sシリーズの外観は書籍の形状を呈しており、全体的により個性的でよりスリムにみえる」、「陰刻した直線のデザインによって、全体の質感はワンランクアップしている!」、「すべての(キーボードの鍵盤)キートップは曲面を有し、指の曲面にフィットするため、人間工学を考慮したデザインであり、タイピングしやすい!」等のように個人の体験を基にして商品の外観、部材設計に対する主観的描写を加えており、さらには誤字もみられ、作者個人の創意と個性が十分に表現されているため、「創作性」の要件を満たしている。況してや、前述の添付されている商品紹介と対比したところ、係争著作における文字の内容には引用や引写しの状況はなく、証人の蔡○珊によるオリジナルの創作であることを証明でき、「原初性」を有することは間違いない。また係争著作物の図の部分については、証人の蔡○珊が告訴人の撮影した数十枚の写真から選んだ後,さらにそれが必要なノートPCの特定部分を切り取るか、拡大するかして、写真の上部、下部、中間又は左側に上記文字の著作物を適切に標示し、補助的に矢印で指示したり、文章の中に図を組み込んでレイアウトしたりしており、これにより消費者は読んだあと、証人の蔡○珊による該ノートPCの外観に対する評価や使用体験を容易に理解でき、購買の誘因を強化しているため、証人の蔡○珊の創意と作者の個性を十分に表彰している。係争著作物の文字及び図の部分は、それぞれ著作法でいうところの言語の著作物及び編集著作物の要件を満たしており、著作権の保護を享有すべきである。
(四)証人の蔡○珊は係争著作物を作成したとき、告訴人の被雇用者であり、係争著作物の著作財産権については著作権法第11条第2項前段の規定が適用され、告訴人が享有すべきである。
以上をまとめると、係争著作物は著作権法でいうところの「著作物」の要件を満たしておらず告訴人は著作財産権を享有していない云々、とする被告の燦坤公司の主張は採用できない。
(五)科刑部分:
被告の周○宏が本件の行為を為したとき、被告の燦坤公司のパートタイム労働者であり、給与は高くないが、毎日100件以上の商品販促資料を被告の燦坤公司が運営するサイト「燦坤網路商城」にアップロードしなければならず、合理的な作業量と負荷能力を超えている等の状況があり、さらに被告の周○宏は行為を為したときはわずか23歲で、知識と社会経験が浅く、告訴人と和解できていないが、なお犯行後に犯行を認めており、刑事前科がなく素行が良好である等の一切の状況を斟酌して、主文に示す刑に処す。
被告の燦坤公司は支払資本金が16億7463万730新台湾ドルの上場企業でありながら、パートタイム労働者である被告の周○宏に膨大な作業量の仕事を与え、また雇用者として被告の周○宏が職務を執行する際に監督するという注意義務について最善を尽くしておらず、告訴人の著作財産権を侵害し、現時点までに告訴人と和解できていない等の一切の状況を斟酌して、主文第二項に示す罰金刑に処す。
以上の次第で、刑事訴訟法第284条の1、第299条第1項前段,著作権法第91条第1項、第101条第1項,刑法第11条前段、第42条第3項前段、第74条第1項第1号により、主文の通り判決する。
2014年1月20日
刑事第五法廷裁判官 郭躍民
III 判決内容の要約
台湾士林地方裁判所刑事付帯民事訴訟判決
【裁判番号】102年度附民字第154号
【裁判期日】2014年1月20日
【裁判事由】損害賠償
原告 網路家庭国際資訊股份有限公司 ( PChome Online Inc. ),
被告 燦坤実業股份有限公司(Tsann Kuen Enterprise Co., Ltd.)
上記被告は本裁判所102年度智易字第5号の著作権法違反事件について、原告から付帯の民事訴訟を提起され、本裁判所は2013年12月20日に口頭弁論を終え、次の通り判決する。
主文
被告は原告に対し、40万新台湾ドル及びこれに対する2013年6月14日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
被告が費用を負担し、本件民事最終事実審判決の裁判所名、事件番号、当事者、裁判事由及び主文欄を13ポイントの細明体フォントを用い、聯合報、中国時報又は自由時報いずれか一つの全国版いずれかの面に高さ7.3センチ、幅32センチの大きさで一日掲載しなければならない。
その余の原告の主張を棄却する。
本判決第1項について仮執行をしてもよい。ただし、被告が40万新台湾ドルを原告に担保として供託した後、仮執行を免脱できる。
原告のその他の仮執行申立を棄却する。
一 事実要約
原告はオランダ企業のレノボ社(以下「レノボ」)が生産するノートPC「Lenovo IdeaPad S205」(以下「係争ノートPC」)を販売するため、レノボが提供する商品紹介を参考とした後に言語の著作物と編集著作物(以下「係争著作物」)を創作した。思いがけず、被告は原告から同意又は許諾を受けずに、それが運営し、同様に3C製品のオンライン販売サービスに従事するサイト「燦坤網路商城」に無断で係争著作物を貼り付けた。係争著作物における原告の不注意による脱字までも引写しされ、さらには被告が「燦坤網路商城」に掲載した写真のリンク先、URLも原告が掲載する係争著作物の写真のリンク先、URLと全く同じであり、被告が違法に係争著作物を複製し、原告の著作権を侵害する行為に至ったことは明らかである。
二 両方当事者の請求内容
原告:(一)被告は原告に対し、200万新台湾ドル及びこれに対する起訴状副本送達翌日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。(二)被告は費用を負担し、本件の最終審民事判決書の事件名、事件番号、当事者欄、裁判事由欄及び主文欄を13ポイントの細明体フォントを用い、聯合報、中国時報又は自由時報いずれか一つの全国版いずれかの紙面に高さ7.3センチ、幅32センチの大きさで一日掲載しなければならない。(三)担保を立てるので、仮執行宣言申立の許可を請求する。
被告:(一)原告の請求を棄却する。(二)不利な判決を受けた場合は、担保を立てるので、仮執行免脱宣言申立の許可を請求する。
三 本件の争点
(一)原告は係争著作権に対して著作財産権を享有するか否か。
(二)被告は周○宏の上記の複製行為について、原告に対し損害賠償金を支払い、費用を負担して判決書の内容を新聞に掲載すべきか否か。
(三)原告が被告に対して請求できる損害賠償金はいかほどか。
(四)原告が被告に費用を負担して判決書の内容を新聞に掲載するよう請求できる範囲はいかほどか。
(一)原告主張の理由:略。判決理由の説明を参照。
(二)被告答弁の理由:略。判決理由の説明を参照。
四 判決理由の要約
(一)著作法でいうところの創作とは即ち「独創性」を有する人間の精神活動における創作であり、「原初性」と「創作性」の概念を含む。これについて述べると、「原初性」は独立した創作を指し、著作者が創作するときに他人の著作物を盗用せずに、独立して創作物を完成することを指す。「創作性」は創作が少なくとも少量の創意を具え、作者の個性を表現するに足るものを指す。また著作権が要求する独創性は、独立して創作し、他人の著作物を盗用しないことだけ必要であり、その創作内容がたとえ他人の著作物と同一又は類似していても、独創性の認定に影響がなく、同じく著作権法の保障を受ける。次に、資料の選択及び編集・レイアウトに創作性があるものは編集著作物であり、独立の著作物として保護するものであり、これは同法第7条第1項規定を参照できる。したがって、資料の選択及び編集・レイアウトは、作者のある程度の創意と個性を表現できるときに即ち編集著作物となり、著作権の保護を享有できる。
被告はもとより係争著作物が原告によって作成された事実を争ってはいないが、係争著作物は単純に商品の外観を描写した文字の部分と製造元が提供した商品の写真が組み合わされたもので、作者の個性と特異性を十分に表現しているとは言い難く、著作権法でいうところの独創性の要件を具えていないので、原告は著作権を享有できない云々、と主張している。しかしながら、証人の蔡○珊が供述した証拠内容に基づき、係争著作物の文字部分を併せて参照したところ、例えば「Lenovo ideaPad S205は最新のAMD Brazo E350プロセッサを搭載し、2GB DDR3及び5400rpm 高回転速度500GのHDD、AMD Radeon HD 6310MのGPUを内蔵。11.6型HD(1366×768)スクリーンは明度を自動調整」、「グレア型スクリーン」、「チクレットキーボード」等のようにノートPCの規格と機能を客観的に述べているほか、さらに証人の蔡○珊は該ノートPCを使用した後、「銅版画のような質感を持つケース」、「デザインがシンプルなカバーCで、スクリーン(中国語でスクリーンの意である「螢幕」の「幕」が脱落)を見るのがより快適(中国語の「更加」を「更佳」と誤記)」、「傑出した外観:書籍の外観からインスピレーションを得ているため、Sシリーズの外観は書籍の形状を呈しており、全体的により個性的でよりスリムにみえる」、「陰刻した直線のデザインによって、全体の質感はワンランクアップしている!」、「すべての(キーボードの鍵盤)キートップは曲面を有し、指の曲面にフィットするため、人間工学を考慮したデザインであり、タイピングしやすい!」等のように個人の体験を基にして商品の外観、部材設計に対する主観的描写を加えており、さらには誤字もみられ、作者個人の創意と個性が十分に表現されているため、「創作性」の要件を満たしている。さらにレノボ社が提供した商品紹介と対比したところ、係争著作における文字の内容には何ら、引用や引写しの状況がなく、証人の蔡○珊によるオリジナルの創作であることを証明でき、「原初性」を有することは間違いない。また係争著作物の図の部分については、証人の蔡○珊が原告の撮影した数十枚の写真から選んだ後,さらにそれが必要なノートPCの特定部分を切り取るか、拡大するかして、写真の上部、下部、中間又は左側に上記文字の著作物を適切に標示し、補助的に矢印で指示したり、文章の中に図を組み込んでレイアウトしたりしており、これにより消費者は読んだあと、証人の蔡○珊が該ノートPCの外観に対する評価や使用体験を容易に理解でき、購買の誘因を強化しているため、証人の蔡○珊の創意と作者の個性を十分に表彰している。係争著作物の文字及び図の部分は、それぞれ著作法でいうところの言語の著作物及び編集著作物の要件を満たしており、著作権の保護を享有すべきであることは明白である。よって、係争著作物が独創性の要件を有さず、原告は著作権の保護を享有できない云々、とする被告の主張は採用し難い。
証人の蔡○珊は係争著作物を作成したとき、原告の被雇用者で、証人の蔡○珊が職務上完成した係争著作物については著作権法第11条第2項前段の規定が適用され、原告が著作財産権を享有すべきものであると認められる。
(二)周○宏は被告の被雇用者で、被告のネットマーケティング事業部において雇用契約で定める職務を執行した際に、係争著作物が原告の享有する言語の著作物及び編集著作物(以下「係争著作物」)であり、原告の同意又は許諾を受けずに無断で複製してはいけないと明らかに知りながら、複製の形式で他人の著作財産権を侵害する犯意に基づき、原告の同意又は許諾を受けずに、2011年5月12日午前11時21分14秒にその就業場所において係争著作物を複製した後、被告が運営するサイト「燦坤網路商城」のバックエンドにアップロードし、さらに生年月日不詳で、事情を知らない燦坤公司の従業員が点検した後一般消費者に公開した等の事実については、すでに以上の通り認定されており、周○宏は著作権法第88条第1項、第89条の規定により、原告に対して損害賠償責任を負い、さらに費用を負担して、判決書の内容を新聞又は雑誌に掲載しなければならない。被告は周○宏の雇用者であり、原告が前記の民法第188条第1項前段の規定に基づき、周○宏が原告の著作物を違法に複製して原告の著作権を侵害した行為について、雇用者の身分を以って被告への損害賠償責任を負うよう請求することには根拠がある。
(三)権利侵害行為の損害賠償に係る請求権は、なお被害者の実際の損害を補填するものであり、利益をもたらすものではない。よって損害賠償は実際の損害を成立要件とし、損害が無いならば賠償も無いとすることは、最高裁判所の19年度上字第363号判決の趣旨を参照できる。これはもとより権利侵害行為の損害賠償における一般原則である。ただし、著作権者は時に実際の損害額を証明することが容易ではないことを考慮し、著作権法第88条第3項では、被害者が裁判所に侵害の状況に基づく賠償額の算定を請求できることが規定されている。しかしながら、実際の損害額を容易に証明できないことがその要件であり、裁判所は賠償額を査定するときに、侵害の状況に応じて決定しなければならない(最高裁判所97年度台上字第1552号民事判決の趣旨を参照)。
本裁判所は、原告が係争著作物の使用を他人に許諾したことがなく、原告が受けた損害額算定の参考となるロイヤリティの金額がないこと、また係争著作物は商業上の用途で使用されるが、原告が係争著作物を創作した目的はノートPCを販促することで、係争著作物そのものを販売の対象とはしていないこと、況してや消費者が係争ノートPCを原告の運営するサイト「PChome 24h購物」と被告の運営する「燦坤網路商城網站」のどちらで購入するかは、価格、納品までの期間、アフターサービス、返品規定等多くの要因が考量され、係争著作で表示される内容は購買を決定する唯一の要因ではなく、ゆえにたとえ原告の販売量が減少したとしても、なおすべてが被告による著作財産権の侵害行為と関係あるとは認定し難いこと等の状況を斟酌して、本件は確かに原告が受けた損害又は被告が得た利益の金額を算定できないことがわかる。したがって、本件には著作件法第88条第3項に定める「被害人が容易にその実際の損失額を証明できない状況」があるため、損害賠償額を侵害の状況に応じて査定すべきである等とする原告の主張は、採用するに値する。
本裁判所は以下の通り斟酌する。双方はいずれも3C製品をネット販売しており、高度の競合関係にあり、かつ被告の資本金が50億新台湾ドル、払込資本金が16億7463万730新台湾ドルに上る株式上場企業であり、これは会社変更事項登記表がファイルされ証拠とするに足るものであり(本裁判所ファイル91~94頁参照)、知的財産権と業務上の信用に対する保障を重視すべきである。このために確実に法令を遵守する対策がとられているべきであるが、被告はパートタイムスタッフである周○宏に毎日100件以上の商品販促資料をサイト「燦坤網路商城」にアップロードするという不合理な作業量を分配し、また周○宏の販促資料を詳細に検査することができなかったため、本件の原告の著作財産権を侵害する状況を招いた。さらには係争著作物を複製した後に掲載した図の部分は、リンク先がいずれも原告のURLであり、これはサイトを印刷した資料がファイルされ証拠とするに足るものであり(本裁判所ファイル86~87頁参照)、ここからも原告のネットの資源を無断で使用した不正行為であることがわかる。ファイルされたサイトを印刷した資料から明らかである(他字ファイル81~91頁、105~133頁参照)ように、係争著作物は双方の係争ノートPCを販売する頁における掲載スペースは大きくない。本件被告が原告の著作財産権を侵害した状況は軽微ではないものの、重大という程度には至っていない。本裁判所は本件の侵害状況を斟酌して、原告が被告に対して請求できる損害賠償額は、係争著作物の文字の部分と図の部分についてそれぞれ20万新台湾ドルが適正であると認める。したがって。原告は民法第188条第1項の規定に基づき被告に40万新台湾ドルの部分を請求することには理由があり、許可すべきである。
(四)著作権法第89条は侵害者が費用を負担して判決書の内容を新聞に掲載するよう命じる規定であり、被害人が名誉回復を請求する処分である。どのような方法と範囲が適正であるかについて、裁判所は被害者の請求、その身分、地位、被害の程度等の各種状況を斟酌して裁量すべきである。本裁判所は原告が被告に本件民事最後事実審判決書の全文を掲載することを要求しておらず、被告に不必要な負担が生じないことを斟酌した結果、許可すべきものであると認める。
以上の次第で、本件原告の主張には一部に理由があり、一部に理由がない。刑事訴訟法第502条第2項に基づき、主文の通り判決する。
2014年1月20日
刑事第五法廷裁判官 郭躍民