著作権主張の日本アダルトビデオメーカーが一審勝訴

2016-05-27 2015年

■ 判決分類:著作権

I 著作権主張の日本アダルトビデオメーカーが一審勝訴
台湾サイトが200本余を盗用しネットで有料提供、11億新台湾ドルの賠償請求に対して台北地裁はサイト業者の違法行為を認めるも賠償免除

■ ハイライト

日本のアダルトビデオメーカーである株式会社マックス・エー(MAX-A)が製作した200本以上のアダルトビデオが、次々と国内(台湾)のポータルサイトである天空伝媒股份有限公司(YAMEDIA Inc.)等12社のネットサイトにアップロードされ、ネットユーザーに有料ダウンロードサービスが提供された。MAX-Aは動画供給業者12社が利用許諾を得ていないと指摘し、海外から著作権法違反で私人追訴し、11億500万新台湾ドルの損害賠償を請求していた。

日本のアダルトビデオメーカーである株式会社マックス・エー(MAX-A)が製作した200本以上のアダルトビデオが、国内(台湾)の動画供給業者11社からポータルサイトである天空伝媒股份有限公司(YAMEDIA Inc.)に次々と供給され、同社のネットサイトに陳列され、ネットユーザーに有料ダウンロードサービスが提供された。MAX-Aは上記12社が利用許諾を得ていないと指摘し、海外から著作権法違反で私人追訴し、11億500万新台湾ドルの損害賠償を請求していた。

過去の判例のほとんどがアダルトビデオには著作権がないと認定していたが、台湾地方裁判所はこの見解を覆し、アダルトビデオも著作権法の保障を受けるべきであり、ネット業者が利用許諾を受けていないこと自体すでに著作権法に違反していると認定した。ただし裁判官は被告等がこの行為が法に抵触することを知らなかったため「正当な理由があり刑事責任を免除する」として無罪の判決を下し、賠償の必要はないとした。全案は上訴できる。

さらに日本の刑事訴訟法にはわが国の私人訴追(原文:自訴)制度が存在しない。わが国の私人訴追制度は、被害者が弁護士に委任すれば、直接裁判所に提訴でき、検察官による取調べと起訴を経る必要がない。ただし、私人訴追には法に定められた制限が設けられており、例えば、告訴や請求を親告する罪に対してすでに告訴又は請求をしてはならないとき、私人訴追することができなかったり、検察官がすでに取調べを開始している案件も原則的に私人訴追してはならなかったりする。

II 判決内容の要約

台湾台北地方裁判所刑事判決
【裁判番号】99年度自字第112号、100年度自字第66号、100年度自字第68号
【裁判期日】2015年5月8日
【裁判事由】著作権法違反等

私人追訴人 日本企業・株式会社マックス・エー(MAX-A)

被 告 人 天空伝媒股份有限公司(YAMEDIA Inc.)
兼 代表者 辜〇群

被 告 人 陳〇堯

被 告 人 鄭〇章

被 告 人 媚可国際多媒体有限公司

兼 代表者 王〇佳

被 告 人 古吉国際股份有限公司

兼 代表者 游〇惟

被 告 人 許〇淵

被 告 人 迪捷斯科技股份有限公司

被 告 人 林〇謙

被 告 人 宙霆有限公司

兼 代表者 王〇玲

被 告 人 易翔国際有限公司

兼 代表者 謝〇凱(原名は廖〇銘)

被 告 人 蔡〇佳

被 告 人 星空互動科技股份有限公司

兼 代表者 柯〇中

被 告 人 鄧〇貴(即ち飛龍科技資訊社)

被 告 人 鄌寶国際有限公司

兼 代表者 傅〇鑫

被 告 人 動感芸能数位媒体股份有限公司

兼 代表者 呉〇源

被 告 人 飯田科技有限公司

兼 代表者 方〇華

被 告 人 瀚濰有限公司

兼 代表者 林〇峻

上記被告人等は著作権法違反事件によって、私人追訴人から私人追訴され、台湾台北地方裁判所検察署検察官によって訴訟併合部分(併合事件番号:100年度偵字第3188号)が送検された。本裁判所は次のとおり判決する。

主文

媚可国際多媒体有限公司、鄧○貴についてはいずれも私人追訴を受理しない。

その他の被告人はいずれも無罪とする。

 

判決理由

壱.私人追訴の趣旨は概ね以下のとおりである:被告人辜〇群等はそれぞれ付表一に示すように被告人天空伝媒股份有限公司(以下「天空公司」)等会社の現任又は前任の代表者であり、付表二に示される視聴覚著作物(訳注:日本の「映画の著作物」に相当)は私人追訴人即ち日本企業・株式会社マックス・エー(MAX-A)が著作財産権を所有する著作物であり、私人追訴人の同意又は利用許諾を受けず、販売又は貸出を意図して無断で複製してはならない、又は無断で公衆送信により私人追訴人の上記視聴覚著作物の著作財産権を侵害してはならないことを知っていた。ところが被告人辜〇群等は著作権法違反の犯意に基づき連絡し、いずれも私人追訴人の同意又は利用許諾を受けることなく、先ずは付表一の2乃至12号に示される被告人の会社又はその代表者、業務執行者がそれぞれ付表二に示される契約の「許諾者及び被許諾者」欄に示される契約日から、不詳の場所において、コンピュータ及びネット接続設備を使用してインターネットに接続した後、付表二に示される視聴覚著作物を複製して被告人天空公司が指定するネット空間へアップロードし、さらに天空公司がネット上で再生できるフォーマットに変換した後、付表二の「陳列期間」欄に示される期間において「yam天空寬頻電視TV」サイトへ置き、それらの視聴覚著作物の一部内容を切り取り(キャプチャー)、宣伝写真としてサイトページに置き、サイト会員がインターネットへ接続し上記サイトにアクセスした時、それらの写真を見て視聴覚著作物の内容の概要を知ることができ、興味をもってさらに全部の内容を閲覧したい場合は、料金を支払うことでポイントに交換してポイントを計算する方法で「オンライン再生」をクリックすると、各コンテンツにリンクして閲覧することができ、即ち被告人辜〇群及び天空公司等はこの公衆送信の方式で私人追訴人の著作財産権を侵害した。その後私人追訴人は2010年8月3日異常を発見し、ネット接続して閲覧並びにコンピュータ画面の録画を行い、始めて上記の事情を知った。付表一2乃至12番に示される会社の現任代表者、前任代表者は被告人天空公司に利用許諾する契約を結んだ時から、著作権法第91条第2項の販売若しくは貸与を意図して、無断で複製することにより他人の著作財産権を侵害した容疑がある。被告人天空公司は付表二に示される視聴覚著作物を商品として陳列し、それら視聴覚著作物を切り取ったものをサイトで宣伝として公衆送信した時から、いずれもそれぞれ被告人陳〇堯、鄭〇章、辜〇群と共同で同法第92条の無断に公衆送信した容疑がある。付表一に示される各会社、独占資本商号はその代表者、被用者又はその他の従業員が業務の遂行のため前記の罪を犯し、いずれも同法第101条に基づき処罰と罰金を科すべきである云々。

弐.被告人辜○群等はそれぞれ被告人会社の前任又は現任の代表者であることを認めている。被告人会社は、被告人王○玲及びそれが責任者を務める宙霆有限公司(以下「宙霆公司」)、被告人王○佳が付表二の11号の視聴覚地作物について媚可国際多媒体有限公司(以下「媚可公司」)が被告人天空公司に利用許諾したことを否認していることを除き、その他の被告人は付表二1乃至10号、12乃至212号に記載の私人追訴された動画を被告人の天空公司に利用許諾し、yamサイトで放送し、費用を徴収した等の状況に間違いがないことを認めているが、いずれも著作権法に違反する犯行については堅く否認している。

参.無罪の部分:

一.手続部分:(略)

二.実体部分:

(一)わいせつな情報を含む著作物はわが国著作権法第3条第1項第1号でいうところの著作物に該当し、保護すべきである:

1.憲法は人民の言論及び表現の自由を保障し、さらに著作権法は言論と表現の自由に対する保障を具現化するものであり、憲法第23条に規定される状況においてのみ法律で制限することができる:

人民は言論、講義、著作及び出版の自由を有すると、憲法第11条に規定されている。この種の自由は集会の自由と同じく表現の自由の範疇に属し、民主政治を実現するのに最も重要な基本的人権であると司法院大法官会議釈字第445号解釈に示されている。次に憲法第11条における人民の言論と出版の自由に対する保障とは、意見の自由流通を確保して、人民が十分な情報と自己実現の機会を得ることを旨としている。性的言論の表現と性的情報の流通が営利目的か否かを問わず、上記憲法による言論及び出版の自由に対する保障を受けるべきであることも、司法院大法官会議釈字第617号解釈で示されている。著作権法が保障する対象とは、人間の精神における創作、知恵の結晶であり、財産権を付与する意味は、憲法における人民の財産権という基本的権利に対する保障を実現して、著作権法第1条に示される「国家の文化発展を促す」という目的を達成することにある。

この財産権実現の前提は人間の精神における創作、知恵の結晶が保護を受ける必要があること、即ち表現の自由の保障にある。表現の自由の保障によってこそ事実を探求し、真理を発見し、人類の思想が始めて伝承ででき、文化を継承でき、人そのものが対象であるという人間の尊厳が始めて具現化される。著作権法は第10条の「著作者は著作物を完成した時に著作権を享有する」という規定を以って創作保護主義(訳注:日本でいう無方式主義)を採用しており、創作又は実演が完成することにより如何なる事前審査、登録又は登記手続き等の形式要件も必要がなく、著作者又は実演家は法によって著作権を享有できる。これはいかなる主観的評価も伴わず、人間の精神作用における創作について一律平等に且つ全面的な保護を与え、表現の自由に対する保障を十分に具現化する。ただし、大法官会議釈字第617号解釈でも以下のように説明している。憲法における言論及び出版の自由に対する保障は絶対ではなく、その性質に応じて異なる保護範囲と制限の準則を有するべきであり、国家は憲法23条規定の趣旨に適合する範囲において、法律で適当な制限を明確に規定できる。そして人間の精神文化における創作は如何なる状況においても、立法者が憲法第23条で定められる他人の自由の妨害防止、緊急危難の回避、社会秩序の維持、又は公共利益の増進等の状況において必要だと認めるときは制限を加えなければならず、法律を以って為すべきである。これは即ち法律の明確性の原則であり、この状況において、表現の自由は合法的且つ合理的に制限を受ける。

  2.著作権法は著作内容が公序良俗に違反していることにより保護を排除するとは規定していない:

(1)司法院大法官会議の釈字第407号解釈で憲法による人民の言論及び出版の自由に対する保障が示されたこと、前記釈字第617号解釈で性的言論の表現及び性的情報の流通の自由に対する保障が示されたこと、そしてわが国が1985年改正前の著作権法では登録保護主義(方式主義)が採用され、登録手続きを経て始めて著作権を取得できるとしていたが、言論及び著作の自由を保護するという憲法の本旨に合わず、改正後は創作保護主義(無方式主義)を採用したこと、出版物の主務機関がすぐに1999年1月25日に廃止された出版法第32条第3号に基づいてわいせつ出版物の出版を禁止するのを避けたこと等の状況から常に強調されているのは、いずれも人民の言論、出版という表現の自由、つまり基本的人権は憲法の保護を受けるべきであるということである。この保護原則において、わいせつな情報又は物品もまた人間の精神文化の表現で、言論の範疇の一部であり、著作権法については積極的な保護を受けることができるか否かが、学術関係者と(司法)実務関係者との間で論争となった。

(2)「著作権法第3条第1号でいう著作物は、文学、科学、芸術若しくはその他の学術の範囲に属する創作物であり、ポルノ著作物を含まない。著作権法の立法趣旨によって個人と法人の知恵である著作物(の権益)を保障し、著作物を大衆によって公正に利用させる以外に、文化の健全な発展(促進)を重視するため、社会秩序の維持を害する又は公共の利益に反する著作物は、国家社会の発展を促すことはなく、かつ著作権法の立法趣旨に反し、既得権の保障は公序良俗の制限を受ける必要があるとする原則に基づき、ポルノ著作物は著作権法でいうところの著作物ではなく、著作権法の保障を受けない」(最高裁判所88年度台上字第250号刑事判決を参照)、また「係争映画は大部分に色情を強調したプロットを含み、公序良俗に反しており、著作権法が保護する著作物とは認め難い」、「係争映画は上訴人が利用許諾を受けた日本の映画であり、行政院新聞局の審査を経て『限制級(訳注:日本の「R18+」に相当)』に指定されたが、その内容は公序良俗に違反しているため、著作権法の保護を受けない」(最高裁判所94年度台上字第6743号刑事判決を参照)はいずれも司法実務において引用され、概ね「ポルノ映画」又は「色情を誇張したプロットの映画」は「公序良俗」違反により、著作権法の保護を受けないとされてきた。ただし、現代の時空環境において、「ポルノ映画」又は「色情を誇張したプロットの映画」に対する範疇が何であるか明確ではない他、実務的に「わいせつな情報又は物品」の実質的内容についても、その後の司法院大法官会議釈字第617条解釈のような代表的な実務見解がなく、深く検討されていない。且つ調べたところ次のとおりであった。

①    わが国の著作権法は現在著作権の有無に関する審査認定について、法律条文には「公序良俗」を著作財産権が積極的又は消極的要件を構成するか否かについて規定されておらず、わいせつ情報を含む著作物の保護も排除していない。もし「公序良俗」を著作権有無の審査の要件とするならば、明らかに法律に無い制限を加えることになる。

②    憲法第7条の平等原則の角度からみると、国家機関は事物の本質が同じ事件に対しては同じ処理を行う。平等原則からも恣意禁止原則(恣意的な行政権行使を禁止する原則)が導き出され、国家機関が決定を行う時、憲法の基本的精神と事物の本質に違反してはならない。著作権法が規定していない著作権取得の消極的要件を以って、気まぐれに又は独断的に個人の主観的な公序良俗でそれら著作物が享受すべき著作権を保護しないことがあってはならない。

③    また明確性の原則を参酌すると、わが国の専利法(日本の特許法、実用新案法、意匠法に相当)第24条第3号、第105条、第124条第4号及び商標法第30条第1項第7号で公序良俗に反するものは同法の保護を受けることができないと明確に規定しているのに対して、著作権法では逆にこのような規定がなく、人間の精神作用が言論の範疇で具体的に表現するものは、立法者が意図して規定しないものに属する。公序良俗違反は著作権を取得できない消極的要件ではないと認めるに足る。

④    さらにTRIRS第27条第2項においても、加盟国は公共の秩序又は道徳(善良な風俗)を守る必要(ヒト、動物若しくは植物の生命若しくは健康を保護し又は環境に対する重大な損害を回避することを含む)に基づき、一部の発明について自国領域内における商業的な利用(実施)を禁止し、特許を付与しなくてもよいと規定している。したがって、公序良俗の除外条項は特許出願の範囲に適用されるが、著作権が保護しない対象ではない。

⑤    さらに「公序良俗」を著作権の消極的構成要件とし、気まぐれに創作の内容に対して実体審査等をしてしまうと、創作者に創作内容に対して自制させてしまうだけではなく、創作に対する言論の審査、例えば政治的言論の審査のようになってしまうおそれがあり、さらに司法院大法官会議釈字第445号、第509号、第617号解釈が示した言論の自由には最大限の保障を与えるべきとすることに反する。「公序良俗」を著作権の消極的構成要件とし、それが著作権保護の対象であることを否定することは、法律適用の可理解性と予測可能性という前提において、法律に規定されていない制限を加えるものとなる。したがって、「公序良俗」を著作権の(消極的)構成要件とすべきではない。

3.「わいせつ情報」を含む著作物であっても、著作権法の保護を受けるべき著作物に該当する:

(1)「わいせつ出版物」とは、客観的に性欲を刺激又は満足するのに足るもので、普通人に羞恥心や嫌悪感を抱かせ、性的道徳・性的感情を害し、社会風紀を害する出版物である。わいせつ出版物と芸術的、医学的、教育的な出版物との区別は、出版物全体の特性とその目的について観察し、当時の社会の一般的観念で決めるべきである。風紀に関する観念は社会の発展、風俗の変化によって常に変わりつつあり、主務機関が示す解釈も変化せずにはいられず、憲法が人民の言論及び出版の自由を保障する趣旨を尊重し、善良な風俗と青少年の心身の健康の維持との両方を考慮して、随時見直しと改善を行うべきである(大法官会議釈字第407号解釈を参照)。

(2)次に憲法第11条の人民の言論と出版の自由に対する保障は、意見の自由流通を確保する上で、人民が情報と自己実現の機会を十分に得られるようにすることを旨としている。性的言論の表現と性情報の流通は営利目的によるものであるか否かを問わず、上記憲法の言論と出版の自由に対する保障を受けるべきものである。ただし憲法の言論及び出版の自由に対する保障は絶対ではなく、その性質に応じて異なる保護範囲と制限の準則を有するべきであり、国家は憲法23条規定の趣旨に適合する範囲において、法律で適当な制限を明確に規定できる。立法機関は男女が生活の中で性的道徳・性的感情と社会風紀を維持するために法令や規定を定め、憲法解釈者は立法者による社会大多数の共通価値に対する判断を原則的に尊重すべきである。ただし憲法第11条の人民の言論と出版の自由を保障する本旨を貫徹するため、社会大多数に共通する性的価値の秩序を維持するのに必要な法律による制限以外に、少数の文化民族の性的道徳・性的感情と社会風紀に対する認知に基づいて形成された性的言論の表現又は性情報の流通に対しては保障すべきである。刑法第235条第1項に規定されている「わいせつな情報又は物品を頒布、放送、販売、公然と陳列する、又は他の方法で他人の観覧、聴聞に供する行為」は、暴力、性的虐待又は獣姦等が含まれ、芸術的、医学的又は教育的な価値を持たないわいせつ情報又は物品を伝布する、又は客観的に性欲を刺激、又はこれを満足させ、かつ普通人に公然陳列に堪えない、又は耐えられないと感じさせ、拒絶させるわいせつな情報又は物品について、安全隔離措置が採られずに伝布することで普通人に見聞できるようにする行為をいう。同条第2項に規定されている「頒布、放送、販売することを意図して、わいせつ情報、物品を製造、所持する行為」も伝布を意図して暴力、性的虐待又は獣姦等が含まれ、芸術的、医学的又は教育的な価値を持たないわいせつ情報又は物品を製造、所持する行為、又は客観的に性欲を刺激、又はこれを満足させ、かつ普通人に公然陳列に堪えない、又は耐えられないと感じさせ、拒絶させるわいせつな情報又は物品について、安全隔離措置を採らずに伝布して普通人にそれらわいせつ情報、物品を見聞させることを意図して製造又は所持する行為の状況を指す。製造、所持等は元来頒布、放送及び販売の予備行為であるが、性的情報又は物品の頒布、放送及び販売等の伝布という構成要件行為であると見なし、違法の程度は同じで、立法の形成の自由(立法裁量)に該当する。同法第3項に規定されている「わいせつな文章、図画、音声又は映像の定着物及び物品については犯人であるか否かを問わず、いずれも没収すべきである」ことについても、前二項規定に違反しているわいせつ情報定着物及び物品にのみ限られている。本解釈の趣旨に基づいて、上記の性的言論の表現と性的情報の流通に対して、過度の封鎖や差別はなく、人民の言論及び出版の自由に対する制限はなお合理的である。憲法第23条の比例原則に適合しないところはなく、憲法第11条の人民の言論及び出版の自由を保障する趣旨に違背しない。刑法第235条でいうところのわいせつの情報、物品については、その中の「わいせつ」は評価が不確定な法律概念であるが、いわゆる「わいせつ」は客観的に性欲を刺激又は満足するのに足るもので、その内容は性器、性行為及び性文化の描写論述と連結してもよく、且つ普通人に羞恥心や嫌悪感を抱かせ、性的道徳・性的感情を害し、社会風紀を害するものに限られ(本裁判所釈字第407号解釈を参照)、その意味は普通人が理解し難いものではなく、かつ規制を受ける者が予見できるもので、司法審査により確認してもよく、法律の明確性原則になお違背しない(大法官会議解釈釈字第617号を参照)。

 (3)大法官会議が第407号解釈で刑法第235条の「わいせつな情報又は物品」についてどのような行為を処罰するかを規定しており、客観的な部分に着目し、性欲を刺激又は満足するのに足るもので、普通人に羞恥心や嫌悪感を抱かせ、性的道徳・性的感情を害し、社会風紀を害するもので、さらに芸術的、医学的、教育的ではない出版物としているだけではなく、さらに出版物全体の特性とその目的を観察すべきであると説明し、人民の言論及び出版の自由を保障するという憲法の趣旨に基づき、さらに善良な風俗と青少年の心身の健康維持を前提として、大衆に「わいせつ」であると感じさせることの内容は社会の発展、風俗の変化によって常に変わりつつあり、当時の社会の一般的観念で決められるべきであり、変化できないものではないとしている。大法官会議解釈617号が出されて、さらに人民の言語及び出版の自由に対する憲法の保障が強調され、性的言論の性質や営利目的の有無によって除外されることはなく、その性質に応じて異なる保護範囲と制限の準則を有するべきであり、国家は憲法23条規定の趣旨に適合する範囲において、法律でこれに対する適当な制限を明確に規定できる。これにより刑法第235条で規定するわいせつ情報及び物品の利用は、一般的に性的言論の範疇に属すると認められ、刑罰という手段による介入で制限される必要があるならば、前記第407号解釈の示唆により、この内容は変化しないものではないと理解し、当時の社会の一般的観念による認定の基礎において、どのような「わいせつの情報又は物品」に対して頒布、放送、販売、公然の陳列、又は他の方法で他人の観覧、聴聞に供され、又は頒布、放送、販売を意図して製造、所持する等の利用行為が為されたのかを解釈する必要があり、それによって始めて刑罰に処す対象となる。前記第617号解釈において明確かつ具体的にいくつかの方法を提示し、各方面の観察を通じて認定できるようにしている。先ずは、刑法第235条第1項で規定されるわいせつな情報及び物品を「ハードコア」と「ソフトコア」に分けている。前者は暴力、性的虐待又は獣姦等が含まれ、芸術的、医学的又は教育的な価値を持たない(わいせつな)情報又は物品を指し、刑法第235条が規定し、処罰すべき客体である。後者はハードコアを除くもので、客観的に性欲を刺激、又はこれを満足させ、かつ普通人に公然陳列に堪えない、又は耐えられないと感じさせ、拒絶させるわいせつな情報又は物品である。ただし刑法第235条で規定される処罰の範疇に含まれるかどうかは、行為者がソフトコア性質の情報又は物品に対して「適切な安全隔離措置を採らず、普通人が見聞できるもの」であるか否かで判断する。もし適切な安全隔離措置を採らず伝布し、普通人が見聞の状態において随時接触できるようにして、同時に普通人が接触しないという言論の選択の自由も侵害するならば、上記法条を以って禁止するよう規定すべきである。いわゆる「適切な安全隔離措置を採る」について、同号解釈文の理由書では、密封包装、警告の標示又は法令による特定の場所に限る等の例が付されている。したがって「情報又は物品」が一般大衆に「わいせつ」であると感じさせるかの判断は、先ず「ハードコア」、「ソフトコア」の性質で区別し、すでに「ソフトコア」と判断されたならばさらに行為者がソフトコアの性質を有する情報又は物品に対して「適切な安全隔離措置」を採っているかを調べて、行為者が刑法第235条に規定されている行為を以ってそれら情報又は物品を利用する時の普通人が随時見聞できる状態の有無を明らかにする。現在知られている適切な安全隔離措置には、(1)わいせつな情報又は物品の外側に密封包装をつけ、それに含まれるソフトコアな性質を有するわいせつ内容を一望して知ることができない、即ち見ることができないようにする。(2)警告の標示を付け、接触しようとする情報又は物品にはソフトコアな性質を有するわいせつ内容が含まれることを理解させ、接触するか又は拒絶するかを選択する権利を持てるようにする。(3)法令に基づいて特定の場所に限定し、特定の場所に入っていかないと、ソフトコアな性質を有する情報と物品に接触できないようにして隔離する。上記措置は同時に並存しなくてはならないものではないが、安全隔離措置が多いほど、普通人が随時見聞できる状態をより回避できるようになる。

 (4)前記の釈字第617号の趣旨から、行為者がハードコアの性質を有する「わいせつの情報又は物品」を頒布、放送、販売、又は公然と陳列する行為、又は他人に観覧、見聞に供する、又は頒布、放送、販売することを意図してハードコアの性質を有する「わいせつの情報又は物品」を製造、所持する行為は、刑法第235条第1項又は第2項に違反することが分かる。ソフトコアの性質を有する「わいせつの情報又は物品」について上記と同じ行為を行った時は、行為者が適切な安全隔離措置を採っているか否かに応じて、刑法第235条第1項又は第2項に違反するか否かが決まることは前述のとおりである。しかしながらこれは行為者が「わいせつの情報又は物品」を利用する行為について刑法規定違反により処罰するか否かしか検討しておらず、いずれも「わいせつな情報」を含む著作物が著作権法でいう著作物に該当せず、著作権法の保護を受けるべきではないという結論を示していない。況してや刑法第235条規定においても単にわいせつな情報又は物品を製造、所持するだけの行為については処罰せず、これらの情報又は物品を頒布する行為、又は頒布を意図する行為を処罰するものである。したがって、創作が「わいせつな情報」を含む著作者が著作権法の保障を享有することを否認する理由はない。さらに著作権法第1条の立法趣旨から、著作者の著作物の権益を保障し、社会の公共的利益の調和を図り、国家の文化発展を促すため、特にこの法律を制定するとしている。それが保護しようとするものは、創作者の知恵の結晶であり、それが調和しようとするものは、権利者が他人又は社会との間で、それらの知恵の結晶を利用するか否かで衝突が生じた時、国家の文化発展という価値観を取り入れ、均衡を図り、権利の利用を取捨する問題である。同法第3条第1項において、いわゆる著作物とは、文学、科学、芸術若しくはその他の学術の範囲に属する創作物であると定義している。よって著作物が知識文化の創作物であり、知識文化の創作物に応用価値が有るか否かは著作権法が考慮すべき範疇にはない。著作物の品質と美感は創作性を考慮する際の要素ではなく、これは「美學不歧視原則(訳注:裁判所は著作物の美観だけで差別しないという原則)」の含意である。いいかえれば、著作権法は知的創作物を保護するためのもので、道徳や風俗、そして内容が違反しているか否かを審査するものはなく、著作権を取得するか否かは知恵の創作を有する著作物であるか否かによってのみ決まり、それが保護の判断基準となる。風俗が悪化するか、頒布できるかは刑法又は関連の法律が規範するもので、著作権法が処理すべき問題ではない。よって著作権法でいう著作物は、個別の案件の内容に応じて決まり、すでに著作権法で規定する構成要件を具えるならば、著作権法が保護する対象となり、司法実務において海賊版、販売される海賊版であるわいせつ情報を含む著作物に対して刑法第235条を適用し、行為者の刑事責任を課しているからといって、すぐに著作権法の保護を適用されないと認定してはならない。

(二)「わいせつの情報又は言論」又は「公序良俗の違反」に関する著作物は、著作権法の範疇にあり、それら著作物の積極的な利用権のみ制限を受ける:

1.大法官会議解釈における「わいせつな情報又は物品」の実質的含意は著作権法の範疇において、著作権者の権利行使を制限することである:

以上の次第で、著作権の付与においては中立の認定を行い、価値の評価・判断は行わず、いかなる創作物が保護に値するか、いかなる創作物が保護に値しないかの評価・判断も行わず、一律に保護する。著作財産権を保障する範囲については、積極的な利用権の付与以外に、消極的な防衛権の提供がある。前者は著作人格権の表示又は不表示権、著作権財産権の譲渡、利用許諾等を指し、後者は侵害排除請求権、侵害防止請求権、損害賠償請求権等を指す。しかしながら大法官会議釈字第617号解釈では「わいせつな情報又は物品」の実質的な含意は、著作権者が権利を実施する時に、いかなる影響をもたらすかであり、刑法第235条を例に挙げて、行為者がすでにハードコアの性質を有するわいせつな情報又は物品を所持、製作し、譲渡又は他人に利用許諾する時、又は適切な安全隔離措置を採らずにソフトコアの性質を有するわいせつな情報又は物品を譲渡又は他人に利用許諾する時は、頒布行為に該当し、刑法第235条第1項の規定を受け、為してはならない。上記解釈の「わいせつな情報又は物品」に関する実質的な含意を、著作権法の範疇において運用する時は、著作権を構成するか否かの消極的要件とはせず、著作権の権利行使において制限するものであると判断するに足る。同様に、それらのわいせつな情報を含む著作物を創作、所持する過程において、その他の法律が保障すべき権利又は利益に抵触するとき、例えば児童及少年福利與権益保障法(訳注:日本の児童福祉法に相当)第49条、刑法の「妨害性自主罪」(訳注:強制わいせつ罪、強姦罪等の性的犯罪に相当)、「傷害罪」の章に関連する規定に違反するときは、それらの規定も著作権行使時の制限となる。したがって、大法官会議解釈における「わいせつな情報及び物品」の実質的な含意は、著作権法の範疇において、著作権者の積極的な権利行使の制限であり、消極的な防御権の剥奪ではないことが分かる。

 2.「公序良俗」も著作権を構成するか否かの消極的構成要件ではなく、著作権の積極的な利用権の制限である:

さらにいえば、この道理によって「公序良俗」の評価・判断に基づき、著作権の行使においても同じ結論が得られる。いわゆる法律とは、社会における最も水準が低い道徳であり、公序良俗は社会道徳の一部で、社会が許容できない、道徳や公序良俗に違反する行為が、法律の領域に入るかどうかについては、国家が関連の法令で規定し、立法者は時代の変遷、社会の動きにともない、時代とともに各法令を制定、改正、削除していく必要がある。当代の法令の存在は社会道徳のために引いた境界線であることに間違いはなく、当代の人民が受け入れることができる公の秩序、善良の風俗を法令で確立し、どの程度なら維持できるのかという最大公約数を規定する。この点からみて、「公序良俗」の尺度の下限を認定することは難しいことではなく、すべての法令規定が構築した「法の秩序」はいずれも「公序良俗」の範囲を含んでいる。刑罰の範疇、罪刑法定主義という原則の下、刑法は「公序良俗」スペクトラムにおける最下位のラインであり、このような公序良俗に違反しているか否かの認定は、最も厳しい基準で審査・認定を行い、厳しい刑罰で処罰すべきである。行為者が刑罰規定に違反したときは、同時に大衆が公の秩序に対して耐えることができる最低限度を超えており、生命、自由、財産を奪うという手段で公序良俗を維持するという目的を達成する必要がある。法秩序の規定において、いかなる法律の規定や権利の保護も原則的に刑罰規定に抵触又は矛盾しないことが好ましく、さもないと保護したい権利が実現できなかったり、処罰の機能を失ったりすることになり、取捨する必要がある。もし人の行為がすでに刑罰規定に抵触する程度に達しているが、特殊な考慮があり特別に保護を与える必要があるときは、刑罰規定には含まれない、又は刑罰罰則から排除することを文言で明確に記し、刑罰法規に抵触する懸念を免除する必要がある。そうでなければ、刑罰は公序良俗の最下位のラインへ戻り、刑罰と各該法律間の関係を考慮し、刑罰規定をその他法律の規定とするときは、誰もが知っている最低の「公序良俗」基準が各該規定の目的において保護対象の制限要件となる。これにより、著作権法の検討において「公序良俗」を権利行使制限の要件とし、著作権の有無の認定の基準とはすべきではなく、これによって憲法による人民の言論の自由、表現の自由等の権利を保障し、同法第23条各号の状況に該当するときのみ、明確な法律規定を以って制限又は禁止するという原理原則に適合する。

(三)本件私人追訴人が私人追訴している付表二の視聴覚著作物はいずれもわが国著作権法の保護を受ける著作物である:

       以上の次第で、本件は「公序良俗」或いは「情報又は物品がわいせつであるか否か」を著作権有無の基準とはせず、著作権の構成要件審査許可に回帰すべきであると認める。著作権法が定める規定を見ると、著作権の構成要件は積極的要件と消極的要件に分けられる。前者は著作権保護の取得に必須の要件、即ち「独創性」という要件である。一部の創作物は著作物の要件を有するが、社会の公益に関する考慮に基づいて、著作権法の保護を受けることができないと規定され、即ち具えてはならない要件であり、著作権保護の消極的要件に該当する。これにより、私人追訴人が所有する付表二に示された著作物が著作権を享有するか否かは、以下の構成要件をそれぞれ調べなければならない。

1.付表二に示される著作物は視聴覚著作物に該当する:

「本法(著作権法)第5条第1項に定められる各号の著作物について、その内容を次に例示する:……視聴覚著作物:映画、ビデオテープ、光ディスク、コンピュータディスプレイに表示される映像及びその他の機械又は設備で表現されるシリーズの映像であり、音声を付随するか否か、いかなる媒体に定着させるかを問わない著作物。」とする内政部1992年6月10日台内著字第8184002号書簡公告がファイルされている。視聴覚著作物の重点は視覚と聴覚の効果を同時にもたらすことであり、それには映画、ビデオテープ、光ディスク、コンピュータディスプレイに表示される映像及びその他の機械又は設備で表現されるシリーズの映像が含まれ、音声の有無又は定着するための媒体を問わない著作物であるため、視聴覚著作物は固定物であることを要件とする。調べたところ、付表二で示される動画の客観的な表現方式は、インターネットを通じてサイトにアクセスしクリックした後、磁気記録がコンピュータ又は携帯電話端末等の電子媒体に表示されるものであるため、著作権法第5条第1項第7号の視聴覚著作物に該当することに他ならない。

2.付表二で示される視聴覚著作物はいずれも独創性を有する:

(1)著作権法第3条第1項第1号には「文学、科学、芸術若しくはその他の学術の範囲に属する創作物」と規定されている。さらに第10条前段の「著作者は著作物を完成した時に著作権を享有する」という規定を以って創作保護主義(無方式主義)を採用している。いわゆる創作とは「独創性」を有する人間の精神活動における創作であり、広義的に解釈すると「原初性」と「創作性」の概念を含む。「原初性」は独立した創作を指し、著作者が創作するときに他人の著作物を盗用せずに、独立して創作物を完成することを指す。「創作性」は創作が少なくとも少量の創意を具え、作者の個性又は独自性を表現するに足るものを指し、必ずしも先人未踏の段階に達する必要はなく、社会通念に基づいて著作物がすでに存在する作品と区別できる変化があり、作者の個性を表現できるだけでよい。また著作権が要求する独創性は独立した創作であり、他人の著作物を複製したものでなければ、たとえその創作内容が他人の著作物と同じ又は相似していても、自らの独立した創作に該当し、独創性の認定に影響することはなく、同じく著作権法の保障を受け、専利(訳注:特許、実用新案、意匠を含む)の新規性とは異なる(最高裁判所90年度台上字第2945号、97年度台上字第1587号、97年度台上字第3914号刑事判決を参照)。

(2)付表二に示される視聴覚著作物は、著作者が完成した後、始めて発売して利益を得ることができるため、それら視聴覚著作物に人間の精神によって為されたものか否かは疑いの余地がない。付表二に示される視聴覚著作物はいずれも監督が場面をオフィス、レストラン、居間、台所、浴室、トイレ、教室、倉庫、病院、車両等に設定し、男優と女優がその場面により異なる役柄を演じ、1〜5個のプロットがあり、俳優が演じる役の間でプロットに基づきやりとりがあり、一人で、一対一で、一対多数での性行為へと進んでいき、撮影過程において、時には出演女優にストーリーや役柄への考えを訊ねるインタビューを挟んだり、作品の最後にインタビューを入れたりしており、その中から俳優の各プロットにおける性行為前後の物語のナレーション、俳優の表情や肢体による表現によって、登場人物が様々な場面において性行為を為す設定である時の心の動きや情欲を作者が表現していることがわかる。それら動画はいずれも男女の性行為を撮影のテーマ、そして叙事の主な素材としているが、具体的な進行の過程において、登場人物がいかに出会い、知り合い、付き合ったり性交に発展したりするかのプロット、性交の方法、過程、男優と女優の反応などについては、いずれも異なるナレーションとストーリー展開があり、主役と脇役の表現と様子も多々異なり、関連する登場人物のオーディション、撮影場所のアレンジ、ライトと角度の選択並びに撮影によって、各動画が独自性を有しており、それら視聴覚著作物はファイルされ調べることができる。したがっていずれも作者の個性や独自性を表現できるに足る最低限の創意を有する創作物であると認めることができ、わが国著作権法第3条第1項第1項でいう著作物に該当する。

    3.付表二に示される視聴覚著作物はいずれも客観的な表現方法を有する:

著作物は人の思想と感情を一定の形式で外部に表現する必要があり、それが著作権保護を受ける著作物の客観的な表現形式である。本件の付表二に示される視聴覚著作物は、私人追訴人のプロデューサーが外部の企業へ下請けに出し、監督、副監督、製作、脚本、照明、撮影、雑務の人員等がおり、さらに私人追訴人が配役、撮影した動画内容の審査、意見の提示を行っている。動画には「UP'S」、「カレン」、「サマンサ」、「アップス」、「ホイップ」等のシリーズがあり、これら視聴覚著作物は専門チームが企画し、まずは脚本家がいくつかの内容のストーリーと文案を編纂、設計し、脚本とセリフを書き、続いて監督が役者に対して演技指導を行い、プロのカメラマンが撮影し、さらにフィルムの編集とポストプロダクション及び広告マーケティングのプランを立て、多くのコストを費やして製作したものであり、これは独自性を有する人間の精神の創作物であると認められ、製作チームの個性と独自性が十分に表現されているものであることは明らかであるため、それは独創性を有する視聴覚著作物であり、わが国の著作権法の保護を受けるべきである。よって、付表二における各号の視聴覚著作物の内容は、著作者が構想又は概念を利用して、抽象的な思想及び情感そのものを具体的な連続映像を有することで、客観的な方法でポルノ著作物の内容を示すものである。

    4.付表二に示される視覚的著作物はいずれも消極的要件に適合しない:

社会の公益を考慮して、わが国著作権法第9条には著作権法の保護を受けない対象が次のとおり規定されている:一.憲法、法律、命令又は公文書であり、それには国内と国外で制定されたものを含む。公文書の範囲には公務員が職務上正式に作成した、又は草案として作成した令、呈、咨、函、公告、講演の原稿、新聞の原稿、及びその他の文書を含む。二.中央又は地方の官庁が作成した前号に掲げる著作物について作成された翻訳物及び編集物。三.標語、通用の記号、名詞、公式、数表、所定用紙、帳簿、及び暦であり、いずれも著作物が具えるべき最低限の創意という要件が欠落しているため、著作物とはみなされない。四.単に事実を伝達するための新聞報道であり、日常生活で起こった事実の報道であり、迅速に頒布する必要が有る他、思想又は感情の創作の表現が無く、言語の著作物の要件を満たさない。五.法令により行われる各種試験問題及びその予備用の試験問題であり、時に創作性を有することがあるが、学生又は受験者が利用及び接触して、試験の準備ができるように、著作権の保護範囲から排除する。

本件付表二に示される視聴覚著作物は法令又は公文書ではなく、法令又は公文書の翻訳物又は編集物でもなく、標語や記号ではなく、その創作の目的は単に事実を伝達するための事実でもなく、かつその性質又は内容は明らかにわが国法令により行われる各種試験問題又はその予備用の試験問題ではない。よって付表二に示される視聴覚著作物はいずれも著作権法が消極的に保護しない対象ではない。

     5.被告人等には私人追訴人が付表二に示した視聴覚著作物を「合理的に利用した」状況はみられない:

本件の付表二に示される視聴覚著作物は、私人追訴人が録画方式を利用し、視覚的及び聴覚的効果を生じ、機械設備によってシリーズの動画を表現し、いかなる電子媒体にも定着して表現できる性質によって、光ディスク、ビデオテープまたはインターネット上のサーバー空間で発表するもので、その製作の目的は営利である。被告人の王○佳等は取得及び利用を目的としており、またこれら著作物を営利に供することを認可している。先ずは取得した後、被告人陳○堯、鄭○章、辜○群がそれぞれ被告人天空公司を代表して契約する時に利用を許諾し、双方は権利金又は被告人天空公司が得た利益を分配する方式を約定している。またそれら著作物の性質は特定の学術領域が伝達する特定の基本概念ではなく、視聴覚著作物である。「量」と「質」において完全に私人追訴人の著作物を複製した状況がみられ、さらにわいせつな内容を含む視聴覚著作物を閲覧、聴聞する分野の関係者がいずれも観覧する可能性があり、被告人等が私人追訴人のそれら著作物を複製することで、私人追訴人の著作物の発行による潜在的市場と現在の価値に影響がもたらされることは明らかであり、著作権法第65条第2項で規定する各号を逐一調べ、一切の状況を斟酌して総合的に判断したところ、被告人等に合理的な使用の状況があったとは認め難い。

同じ磁気記録でも保存する媒体、読取及び再生のプログラムが異なることにより、そのファイルのフォーマットも異なり、被告人媚可公司、古吉国際股份有限公司(以下「古吉公司」)、迪捷斯科技股份有限公司(以下「迪捷斯公司」)、易翔国際有限公司(「易翔公司」)、鄌寶国際有限公司(以下「鄌寶公司」)、動感芸能数位媒体股份有限公司(以下「動感芸能公司」)、星空互動科技股份有限公司(以下「星空互動公司」)、飯田科技有限公司(以下「飯田公司」)、瀚濰有限公司(以下「瀚濰公司」)は取得した視聴覚著作物を被告人天空公司が指定したネット空間にアップロードして天空公司が読み取るのに供した後、ネット上で会員がオンラインで閲覧するのに適したフォーマットに変換されている。被告人天空公司の指示により、FTP方式で映像ファイルが大量に伝送されており、伝送前にファイルの保存フォーマットが変換されていたか否かに関わらず、いずれも忠実に原著作物の内容を呈しており、創作又は改作の余地はなく、この部分については、編集又は改作であって複製行為ではないとは認め難い。

(四)付表二に示される視聴覚著作物は刑法第235条條第1 項に違反していない:

本件の付表二に示される視聴覚著作物はロープ、ストッキング等の柔らかい物品で女性を縛ったり、複数の男性と女性が性交したりする画面があり、明らかに物語のプロットのアレンジに基づいて演技という方式で性癖へのこだわり、性的幻想及び役柄等のプロットを表現しており、「暴力、性的虐待又は獣姦等が含まれ、芸術的、医学的又は教育的な価値を持たないわいせつ情報を含んでいない」ため、大法官会議解釈でいうところの「ハードコア」の範疇には属さず、客観的に性欲を刺激、又はこれを満足させ、かつ普通人に公然陳列に堪えない、又は耐えられないと感じさせ、拒絶させる「ソフトコア」に該当する。被告人天空公司は被告人媚可公司、古吉公司、迪捷斯公司、易翔公司、星空互動公司、鄌寶公司、動感芸能公司、瀚濰公司、飛龍科技資訊社から付表二に示される視聴覚著作物を取得した後、それが経営するyamサイト上で公衆送信しているが、サイトは会員制を採用し、アダルトビデオ専用エリアを閲覧したい時、アダルトチャンネルをクリックするとウインドウが現れ、ユーザーが満18歳であるかを確認し、「はい」をクリックすると、サイトが自動的にユーザーの会員登録時の生年月日と対比し、満18歳以上の会員であると確認できたならば、該会員にアダルトチャンネルで関連の視聴覚著作物の宣伝用に作成した場面の切り取り画像やストーリーのあらすじを閲覧させ、18歳未満であったときは閲覧できないという警告を表示するようにしている。さらに会員がアダルトビデオのページにアクセスし、関連の視聴覚著作物の宣伝用に作成した場面の切り取り画像やストーリーのあらすじの内容を見た後、視聴覚著作物すべての内容を観覧することを希望するためクリックしたことを確認したならば、別途支払いのためのポイントを取得してyamサイトからポイントを差し引かれることにより、ユーザーはオンラインで閲覧することができる。また、私人追訴人はそれら視聴覚著作物を出版した時点ですでにモザイク加工により男女の生殖器を隠しており、付表二に示される視聴覚著作物には明らかにモザイク加工が含まれている。よって、被告人王○佳等が所属する媚可公司等の会社はそれぞれ付表二に示される視聴覚著作物を、被告人天空公司が要求するファイルフォーマットで特定のネット空間に伝送し、被告人天空公司がサイト内にアダルトビデオ専用エリアを設定し、サイバー空間をコンピュータプログラムで分けて、様々な警告で18歳未満が観覧できないようにし、さらにそれぞれアダルトビデオメーカーによる生殖器を隠すためのモザイク加工を保留しており、モザイク加工のデコードや削除を行っておらず、被告人等は付表二に示される該視聴覚著作物に対する安全な隔離措置を採用していると認められ、普通人がyamサイトを閲覧する時、全く隠していないわいせつな情報が露出されていないため、この部分については刑法第235条第1項に違反するおそれはない。

(五)被告人辜○群、陳○堯、鄭○章、王○佳、游○惟、許○淵、林○謙、王○玲、謝○凱、蔡○佳、柯○中、傅○鑫、呉○源、方○華はいずれも私人追訴人の付表二に示された視聴覚著作物を侵害していない:

    1.被告人辜○群、鄭○章、陳○堯、王○佳、許○淵、林○謙、王○玲、蔡○佳、柯○中、傅○鑫がそれぞれ会社を代表して業務を行ったのか、又は本件業務に関係者であるのかに関する部分:

     (1)被告人辜○群、鄭○章、陳○堯の部分:

    被告人辜○群、陳○堯及び鄭○章は被告人天空公司において契約、使用許諾に関する標準化手続を担当し、それぞれその業務担当範囲に基づき各動画供給業者と利用許諾、動画陳列に関する交渉を行い、各動画供給業者は被告人天空公司との利用許諾契約において動画の出所が合法であり、第三者が権利を主張したときの責任を負うと保証しているため、被告人天空公司を代表して各動画供給業者と契約し、また各動画供給業者が動画を供給する時も、動画の検査又は関連の検査確認手続きに参加していない。したがって被告人辜○群、陳○堯及び鄭○章等が被告人天空公司を代表して私人追訴人の著作権を侵害した動画供給業者と契約し、それが経営するサイトにアップロードしただけで、それらが私人追訴人の著作権を侵害した行為者であるとは認定できない。

      (2)被告人王○佳の部分:

    付表二1乃至10号、12号、212号の視聴覚著作物は被告人王○佳が媚可公司の代表者を務めた期間内に被告人天空公司に供給し、サイトに陳列して公衆送信したものである。

      (3)被告人許○淵の部分:

    被告人古吉公司が被告人天空公司に私人追訴された本件私人追訴の視聴覚著作物を利用許諾した業務は、確かに被告人游○惟によって処理された。

      (4)被告人林○謙の部分:

    被告人林○謙は迪捷斯公司の実際の運営については知らず、迪捷斯公司が利用許諾を受けた後、さらに天空公司に動画放送を許諾したことのみ知っていた。それは実際に上記動画を処理して、動画の利用許諾を受けた後、さらに被告人天空公司に許諾した行為者ではないと供述しており、信用できる。

     (5)被告人王○玲の部分:

    被告人王○玲は宙霆公司の登記上の代表者のみであり、会社の実際の業務はいずれも配偶者である被告人游○惟が担当、運営しており、さらに付表二の70~74号に示される動画は被告人游○惟が古吉公司の名義で天空公司に利用許諾を行ったことについて、被告人王○玲は行為者ではないと供述しており、信用できる。

      (6)被告人蔡○佳の部分:

    証人謝○凱の供述によると、それ(証人謝○凱)は易翔公司の運営と執行の状況をいずれも熟知しており、証人陳○宏が供述した天空公司に動画をアップロードする方法と一致しており、それが実際に易翔公司の運営に参加し業務を執行した者であることは明らかである。また本裁判所が直接に審理した時、被告人蔡○佳は本裁判所の訊問に対する応答が比較的緩慢だったほか、その表情の反応は明らかに普通人とは異なっていたことに気づいた。さらに証人謝○凱の前記供述における自らが実際の業務執行者であるという内容は自らの不当な行為を供述するもので、かつ沈着に供述していることから、擁護や誣言でないことは明らかであり、その供述は信用できる。被告人蔡○佳が易翔公司の業務を実際に処理する者ではなく、本件の私人追訴人著作権を侵害する行為者ではないとする供述は、信用できる。

      (7)被告人柯○中の部分:

    被告人星空互動公司が被告人天空公司に利用を許諾した動画は、証人蘇○正が担当して他人から取得したもので、星空互動公司の代表者、即ち被告人柯○中は確かにそれらの動画について合法的に許諾を受けたものだとして、関連のライセンス出所に関する書類を提示しており、さらに証人蘇○正がそれら動画について被告人天空公司と利用許諾契約について担当した後、天空公司に陳列・公衆送信させるために提供したこと等の詳細から、業務の担当、執行はいずれも証人蘇○正が処理し、自分は実際に関連の業務を執行していないという被告人柯○中の供述を信用でき、また被告人柯○中は本件の私人追訴人著作権を侵害した行為者ではないと認めるに足る。

      (8)被告人傅○鑫の部分:

 被告人鄌寶公司の動画取得部分については、証人聶○傑が鄌寶公司を代表してライセンス出所である波音数位科技有限公司と利用許諾の契約を結んでおり、その後、被告人傅○鑫が確かに合法に許諾を受けたとする関連の事項を述べ、関連の許諾書類を提示している。さらにその後証人聶○傑が被告人天空公司に対するそれら動画のサイト上での公衆送信を許諾契約について担当し、不定期に動画を被告人天空公司に提供して陳列・公衆送信した等の状況にあり、証人聶○傑が関連する担当の許諾過程について全般の事情を掌握し、詳しく知っていた。したがって業務の担当、執行はいずれも証人聶○傑が処理し、自分はこの部分を実際に執行しておらず、この部分の業務については良く知らないという被告人傅○鑫の供述は信用でき、被告人傅○鑫は確かに本件の私人追訴人著作権を侵害した行為者ではないと認定するに足る。

    2.被告人天空公司、媚可公司、迪捷斯公司、星空互動公司、鄌寶公司が付表二に示される視聴覚著作物は他人から利用を許諾され、対価を支払っていると抗弁している部分:

      (1)被告人天空公司の部分:

     わが国が著作物登記制度を採用していないため、視聴覚著作物が誰に帰属するのか、普通人が客観的に誰の所有かを確定することは難しく、動画供給会社の許諾、ライセンス出所の保証を証拠とするしかなく、さらに許諾事項は許諾方法や商業上の営業機密にかかわり、状況を斟酌すると、動画供給会社に対して著作権のさらに川上の会社との許諾契約を提出して出所の合法性を確認することを強要できないため、視聴覚著作物の産業特性から、被許諾者が許諾者から騙された後、この詐欺の結果に対して責任を強化するよう求めることは難しく、大量の許諾が行われる中では特に難しい。もし被許諾者が適切に著作権を取得したという許諾の証拠を提出でき、権利者が段階的に出所を突き止めるのに供するに足るのならば、被許諾者はそれが合法的に許諾されたものだと確信していたと認定でき、著作権侵害に対する主観的な犯意があったという認定を排除できる。本件付表二に示される視聴覚著作物は、被告人天空公司によってそれが経営するyamサイトで公衆送信されたものの、付表二に示される11号の視聴覚著作物は被告人天空公司の提出した利用許諾動画リストには被告人媚可公司の大小印鑑(会社印と代表者印)が無いため被告人王○佳が否認している(ファイルされている)のを除き、その他の視聴覚著作物はそれぞれ被告人媚可公司、古吉公司、迪捷斯公司、易翔公司、星空互動公司、飛龍科技資訊社、鄌寶公司、動感芸能公司、飯田公司、瀚濰公司と利用許諾契約を結んだものである。さらに上記各会社又は商号の利用許諾契約書をみると、被告人天空公司に公衆送信を許諾した動画はいずれも、許諾した会社又は商号がすでに許諾代理を取得した動画、又はすでに公開放送、公開上映、公衆送信を再許諾してもよいと許諾された動画であり、かつ契約対象の単独の著作権者、又は原著作権者から他人に契約対象の利用を許諾することに対する同意を得ていることを保証するもので、天空公司が利用許諾された動画を公開放送、公開上演、公衆送信することにより第三者から権利侵害でさらに利用許諾料を請求された場合は、利用許諾した会社又は商号が関連の損害賠償責任を負うほか、さらに利用許諾に対する対価を取得するため月毎に決算する利益分配、振込、料金算出方法などを約定している等の状況がわかる。被告人天空公司が付表二に示される11号以外の視聴覚著作物については、各該利用許諾した会社又は商号が合法的に権利を取得していることを確認してから各該利用許諾した会社又は商号と利用許諾契約を結ぶことに同意し、それが経営するyamサイトで公衆送信した事実を信用できると認定するに足る。よって、利用許諾を取得するための対価を支払っており、主観的にサイトで公衆送信する各該視聴覚著作物が著作権法に違反していることを知らなかったとする被告人天空公司及びその代表者辜○群、業務執行を担当した被告人陳○堯、鄭○章の供述を信用できる。

      (2)被告人媚可公司の部分:

     被告人媚可公司は付表二に示される1乃至10号、12号、212号の視聴覚著作権はいかなる出所からの利用許諾も取得していない。

      (3)被告人迪捷斯公司の部分:

    被告人迪捷斯公司は上記視聴覚著作物について、各該利用許諾した会社から合法的に利用許諾を取得する契約を結んだ後、被告人天空公司にサイトでの公衆送信を再許諾した事実を確認した。よって被告人迪捷斯公司の弁護人及び迪捷斯公司の前代表者である林○謙が合法的に利用許諾を取得しており、主観的にサイトで公衆送信する各該視聴覚著作物が著作権法に違反していることを知らなかったとする供述は信用できる。

     (4)被告人星空互動公司の部分:

    前記授権書をみると、それは日商「有限会社ホットスト-ム」が易刻派有限公司に対して利用を許諾したものであるが、いかなる利用許諾動画リストも添付していない。さらに被告人柯○中及び証人蘇○正も、易刻派有限公司が喜色公司に上記動画の利用を許諾し、喜色公司がさらに該動画の利用を星空互動公司に許諾し、星空互動公司がこれを以って天空公司がネットで公衆送信するのに供してもよいとする関連の契約書又は証拠を本裁判所の参考に提出することができず、付表二100乃至108号に示される視聴覚著作物について何段階にもわたり再授権されて被告人星空互動公司に許諾されたものだと確認することはできない。

      (5)被告人鄌寶公司の部分:

 前記許諾契約書をみると、「波音数位科技有限公司」が鄌寶公司に利用を許諾した視聴覚著作物の内容について、いかなる利用許諾動画リストも添付されておらず、それらの間で利用が許諾された対象が何であるのかを確認できないため、「波音数位科技有限公司」が確かに上記視聴覚著作物の利用を鄌寶公司に許諾し、被告人鄌寶公司が合法的に被告人天空公司に利用を再許諾してもよいとは認定し難い。

    3.司法の実務における過去の見解により、被告人辜○群等自然人は付表二に示される視聴覚著作物の複製と公衆送信は著作権法に違反しないと認識していた:

      (1)刑法第16条には「正当な理由があり避けることができない場合を除き、法令を知らなかったことにより刑事責任を免れることはできない。ただしその情状により、その刑を軽減することはできる」と規定されている。いわゆる「法令を知らなかった」とは、刑罰法令を知らず、かつその行動には悪質性が含まれないことを指す。説明すると、刑法第16条が規定する違法性の錯誤の状況は責任説を採用し、即ち違法性の錯誤の状況に基づいて、正当な理由がなく回避できなかった場合を区別して、その刑事責任を免除して、犯罪の成立を阻却している。回避できなかった場合ではないときは、犯罪の成立を阻却できず、その情状によりその刑を軽減する異なる法律効果を採用できる。法律の公布により、人民は法律を知り守る義務がある。回避できるか否かは行為者に民法上の「善良な管理者としての注意責任」があるようなもので、独断で判断し、主張してはならない。反社会性を有する自然犯はその違法性を皆知っており、回避できないものではない。行為者が本条の規定に基づいてその刑事責任免除を依拠とし、責任阻却の事由が存在すると主張し、それが法律を知らず正当な理由があり回避できなかった状況があると指摘する状況がある。違法性の錯誤が不可避の程度に達していない場合、非難可能性は通常より低く、その刑を軽減できるが、必ずしも軽減する必要はない。その減刑の酌量は、その行為の悪質性の程度及び一般社会通念に基づいて正当であると信じられるものにより判断する(最高法院20年非字第11号判例、88年度台上字第5658号、100年度台上字第156号刑事判決を参照)。さらに行為者に刑法第16条に定められる状況があり刑事責任を免除できる場合、行為者に違法性の認識がなかったことを前提とし、且つそれが客観的に正当な理由があり、一般社会通念に基づいて通常の者がそれを正当であると誤認してしまい、それに違法性の認識が欠落し、不可避の程度に達しているときにのみ該当する。その欠落がこの程度に達していないとき、非難可能性は通常より低く、その刑を軽減することのみできる。いかに違法性認識が欠落し回避できなかったか否かを判断するかは、行為者の社会的地位とその個人の能力を斟酌し、行為者がその認識力と法律・倫理価値思考を運用する範囲において、行為の違法性を意識できるかどうか否かをみる。さらには行為者がその行為が違法であるかもしれないと疑った時、行為者は調べる義務を負い、恣意に不確実な自己判断を主張してはならない(台湾高等裁判所97年度上訴字第2631号判決を参照)。つまり、行為者は行為が規定で禁止されているという認識がなく、その行為は法律で禁止されておらず合法であると誤認した場合、刑法の学説における禁止の錯誤に該当する。違法性の意識が欠落して禁止の錯誤が発生することに対して、正当性を有し、かつ不可避であったならば、行為の非難可能性を阻却し、さらに罪責を阻却して犯罪不成立となる。正当性を有しない又は回避できるときは、いずれも行為の非難可能性を阻却してはならないものの、一般的に構成された犯罪の非難可能性よりも低く、よってその刑を軽減又は免除できる。

      (2)過去において、実務上の見解ではいずれもポルノ著作物は著作権法の保護を受けるべきではないと認められてきた。最高裁判所88年度台上字第250号刑事判決では、著作権法第3条第1号でいう著作物は、文学、科学、芸術若しくはその他の学術の範囲に属する創作物であり、ポルノ著作物を含まないと認定されている。著作権法の立法趣旨によって個人と法人の知恵(の結晶)である著作物(の権益)を保障し、著作物を大衆によって公正に利用させる以外に、文化の健全な発展(促進)を重視するため、社会秩序の維持を害する又は公共の利益に反する著作物は、国家社会の発展を促すことはなく、かつ著作権法の立法趣旨に反し、既得権の保障は公序良俗の制限を受けるとする原則に基づき、ポルノ著作物は著作権法が支持する著作物ではなく、著作権法の製造又は販売等の保障を受けることができないとの見解を示している。まさに、最高裁判所刑事判決はポルノ著作物の内容がわが国の社会風俗を害し、わが国が規定する「限制級(日本の「R18+」に相当)」の尺度を越えており、公の秩序と善良な風俗に反するため、著作権法の保護を受けないと認定している。たとえ第三者がポルノ著作物を製造又は販売の行為を行ったとしても、ポルノ著作権者はそれに対して著作権を主張してはならず、民事又は刑事責任を追究できない。最高裁判所は94年度台上字第6743号刑事判決において、再び、ポルノ映画は大部分に色情を強調したプロットを含み、公序良俗に反しており、著作権法が保護する著作物とは認め難いとの見解を示した。即ちポルノ映画は著作権を享有せず、著作権法の保護を受けないという原則を再び示した。さらにアダルトビデオが著作権保護の対象であるか否かの論争について、台湾士林地方裁判所検察署、台湾新北地方裁判所のいずれも座談会を開催して検討したことがあり、アダルトビデオはわが国の著作権法の保護を受けないと認め(法務部81年7月(82)法検字第390号函、台湾新北地方裁判所82年6 月1日座談会決議を参照)、台湾新北地方裁判所は検討意見においてさらに、アダルトビデオは著作権法第3条第1項第1号に規定される著作物に該当せず、社会秩序の維持を害する又は公共の利益に反し、かつわが国著作権法の立法の趣旨に反し、既得権の保障は公序良俗制限の原則を受け、わが国において著作権法の保護対象に含まれないとの見解を明らかに示した。また法務部も函釈(訳注:行政解釈)を以って「わいせつ物品は公序良俗に反し、著作権法の立法趣旨に相反するもので、著作権法でいうところの著作物とは言い難く、著作権法の保護を受けない」(法務部82年8月25日(82)検(二)字第1121号函)と強調している。当時の実務見解の時空環境において、行為者が主観的にポルノ著作物又はわいせつ著作物も著作権法の関連する規定の保障を受けることについて、正確な認識をそなえることは難しい。

      (3)本件被告人媚可公司及びその代表者王○佳、古吉公司及びその代表者許○淵、古吉公司の業務担当者游○惟、迪捷斯公司前代表者林○謙、易翔公司及びその代表者蔡○佳、易翔公司の業務担当者謝○凱、星空互動公司及びその代表者柯○中、鄌寶公司及びその代表者傅○鑫、動感芸能公司及びその代表者呉○源、飯田公司及びその代表者方○華、瀚濰公司及びその代表者林○峻がそれぞれ付表二に示される視聴覚著作物を被告人天空公司がサイト上に陳列して公衆送信するのに供した時点で、最高裁判所及び実務座談会等がいずれもアダルトビデオ、光ディスク等の視聴覚著作物に対して著作権法で保護される著作物ではなく、著作権を有さないという見解を採用しており、その後も繰り返して高等裁判所、地方裁判所によって参照・採用されていることは、台湾高等裁判所94年度上訴字第1295号判決、本裁判所100年度智易字第75号判決を調べることができる。被告人等は本件行為において、わが国は著作権法があり、著作権を侵害する関連の行為に対する規定があり、刑罰条文を設置しているが、刑法第235条第1項で規定されるわいせつ著作物又は刑法上記条文の罰則の程度に達しないポルノ著作物がわが国著作権法の保護する「著作物」に該当し、関連規定の保障を受けることができるか否かについては、いずれも否定的な見解があった状況において、ポルノ著作物も著作権を有することに対して正確な認識をそなえることは難しく、かつ被告人等の当時の社会的地位、能力によって、その認識能力とその法律及び倫理価値観を期待できるという範囲内において、専門家に問い合わせたり、インターネットで当時の司法実務の見解を探したりして、恣意に不確実な自己判断、独断の主張という状況がみられず、業界において普遍的に認知される状況において、行為が違法であるとはあるとは意識できず、付表二に示される視聴覚著作物は著作権法の保護を受けないと考えて、関連の利用許諾及び公衆送信行為を為した。この時行為が主観的に法律を正確に認識する可能性を有することを厳しく求めることは難しく、それらの違法性の認識の欠落を認めることができ、正当な理由に該当する。たとえ後日知的財産裁判所が2014年2月20日に101年度刑智上易字第74号刑事確定判決を以ってポルノ映画がわが国の著作権法保護を受けることができると承認したとしても、被告人等が本件行為を為した時、実務見解がこのように変化するとは予測することを求めることは難しく、不可避の禁止の錯誤の状況が発生し、それらの行為の非難可能性を阻却し、さらに罪責を阻却して、犯罪は不成立となる。以上をまとめると、被告人辜○群等の刑法第16条規定に基づく答弁には証拠があり、採用するに堪える。

(六)被告人辜○群等自然人は無罪であり、それらが代表者又は業務担当者を任ずる法人部分について法により罰金を科す必要がなく、無罪を言い渡すべきである:

    以上をまとめると、私人追訴人から提出された前記証拠は、被告人辜○群等の各該会社の前任、後任の代表者、業務担当者等が私人追訴の趣旨で指摘されている著作権法に違反する犯行が有ったと証明するにはなお足りず、本裁判所は被告人辜○群等自然人が有罪という心証を得ることはできなかった。さらに調べたところ、その他に被告人辜○群等に著作権法違反の行為があったことを証明できる積極的な証拠はなく、前記の法条及び説明により、被告人辜○群、陳○堯、鄭○章、王○佳、游○惟、許○淵、林○謙、王○玲、謝○凱、蔡○佳、柯○中、傅○鑫、呉〇源、方〇華、林〇峻にいずれも無罪を言い渡す。また、上記自然人である被告人の犯罪は証明できないため、著作権法第101条第1項の規定により被告人辜○群等がそれぞれ代表する天空公司、古吉公司、迪捷斯公司、宙霆公司、易翔公司、星空互動公司、鄌寶公司、動感芸能公司、飯田公司、瀚濰公司に罰金を科し難く(そのうち被告人王○佳が代表者である媚可公司はすでに解散を登記し精算を終え、法人格が消滅しているため、別途不受理の判決を行う)、同じく無罪を言い渡す。

以上の次第で、刑事訴訟法第343条、第301条第1項、第303条第5項、第307条により、主文のとおり判決する。

2015年5月8日

刑事第二十法廷  裁判長 顧正德

                裁判官 古瑞君

                裁判官 黄玉婷

2015年5月15日

書記官  黃勤涵 

III 判決内容の要約

台湾台北地方裁判所刑事附帯民事訴訟判決
【裁判番号】100年度重附民字第10号、101年度智附民字第17号
【裁判期日】2015年5月8日
【裁判事由】著作権法違反の附帯民事訴訟等              

原   告 日本企業・株式会社マックス・エー(MAX-A)

被 告 人 天空伝媒股份有限公司(YAMEDIA Inc.)

兼 代表者 辜〇群

被 告 人 媚可国際多媒体有限公司

兼 代表者 王〇佳

被 告 人 古吉国際股份有限公司

兼 代表者 游〇惟

被 告 人 迪捷斯科技股份有限公司

被 告 人 林〇謙

被 告 人 宙霆有限公司

兼 代表者 王〇玲

被 告 人 易翔国際有限公司

被 告 人 蔡〇佳

被 告 人 星空互動科技股份有限公司

被 告 人 鄧〇貴即ち飛龍科技資訊社

被 告 人 鄌寶国際有限公司

兼 代表者 傅〇鑫

被 告 人 動感芸能数位媒体股份有限公司

兼 代表者 呉〇源

被 告 人 飯田科技有限公司

兼 代表者 方〇華

被 告 人 瀚濰有限公司

兼 代表者 林〇峻

上記被告等は著作権法違反事件(当裁判所99年度自字第112号、100年度自字第66号、第68号)により、原告から附帯民事訴訟を提起された。当裁判所は2015年2月4日、3月27日、4月9日に口頭弁論を終え、次のとおり判決する。

主文

原告の請求及び仮執行宣言申立をいずれも棄却する。

事実及び理由

一.原告側:声明、陳述及び証拠はいずれも添付の刑事附帯民事訴訟訴状に詳細に記載されている。

二.被告側:被告人の鄧〇貴即ち飛龍科技資訊社がいかなる声明又は陳述も行っておらず、いかなる書状も提出していないのを除き、その他の被告人天空伝媒股份有限公司等は、原告の著作権を侵害していないと主張し、その他の被告人はいずれも刑事訴訟手続の答弁内容を引用して、原告の請求及び仮執行宣言申立をいずれも棄却すること等を請求している。

三.刑事訴訟法第503条第1項前段に、刑事附帯民事訴訟の刑事部分が無罪、不起訴又は不受理の判決を受けたことが分かっているときは、判決を以って原告の請求を棄却しなければならないと規定されている。本件被告人天空伝媒股份有限公司等は著作権法第91条の1第1、2、3項、著作権法第91条第1、2、3項等に違反した容疑で訴えられたが、当裁判所は99年度自字第112号、100年度自字第66号、第68号判決を以って被告人鄧〇貴即ち飛龍科技資訊社、被告人媚可国際多媒体有限公司に対する私人訴追を不受理とし、その他被告人はいずれも無罪であることがファイルされている。前記規定に基づき、原告が提起したこの部分の刑事附帯民事訴訟を棄却すべきである。また本件原告の請求が棄却され、即ちその仮執行宣言申立も理由を失うため、併せて棄却すべきである。

四.以上の次第で、刑事訴訟法第503条第1項前段により主文のとおり判決する。

2015年5月8日

刑事第二十法廷  裁判長 顧正德

                裁判官 古瑞君

                裁判官 黄玉婷

2015年5月15日

書記官  黃勤涵

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