誘いのメッセージをネット投稿 不法行為のため、女性に台湾ドル1.1万元の賠償判決
2016-10-26 2015年
■ 判決分類:著作権
I 誘いのメッセージをネット投稿 不法行為のため、女性に台湾ドル1.1万元の賠償判決
■ ハイライト
洪という女性が本屋に行って、家に帰ったあと、カバンに陳という男性が書いた誘いのメモが入れられていたことに気づいて、電子メールで返信したが、相手がどうかしていると思って、PTTという掲示板サイトで陳氏からの手紙を公開した。陳氏は著作権侵害に該当するとして台湾ドル10万元の賠償金を請求し、且つ公開された文章の削除を要求した。高雄地裁は審理したうえで、陳氏の書いた電子メールは同氏の性格及び創作性を表現したものであり、洪がこれを公開したことは、確かに不法行為に該当すると認定し、賠償金として1万1千元を支払うようにとの判決を下した。本件は、なお控訴することができる。
II 判決内容の要約
台湾高雄地方裁判所民事判決
【裁判番号】103年度訴第420号
【裁判期日】2015年08月31日
【裁判事由】損害賠償
原告 陳柏宏
被告 洪毓璘
上記当事者間の損害賠償事件につき、本裁判所は、2015年8月7日に口頭弁論を終結したので、次の通り判決する。
主文
被告は原告に台湾ドル1万1千元を支払わなければならない。
被告は批踢踢実業坊(Professional Technology Temple)という掲示板サイトで公開した添付一、添付二の原告による手紙の内容を削除しなければならない。
原告によるその他の訴えは、棄却する。
訴訟費用台湾ドル4千元は被告が五分の一を負担し、残りの部分は、原告が負担する。
本判決第一項は仮執行を行うことができる。
一 事実要約
原告は次のとおり主張した。被告が2011年10月15日22時ごろ、原告の同意を得ないばかりでなく、批踢踢実業坊というウェブサイトによる他人の手紙公開禁止規定に反して、Pコイン(批幣)を獲得するために、原告による手紙の著作物をその発表内容の大半として、批踢踢実業坊というサイトに投稿したことは、原告による手紙の著作権侵害に該当するとともに、女性の特質及びウェブサイトの虚実入り乱れた情況を利用して、文章の見出しや、内容とメッセージの中で皮肉、差別、侮辱且つ名誉毀損の言葉などをもって原告に嫌がらせをしたものである。被告は、原告の人格権をひどく侵害し、原告に精神上及び生活上著しい苦痛を与えたので、著作権法第84条、第85条、第88条及び第88条の1、個人資料保護法第29条、民法第18条、第184条第1項前段、第184条第2項及び第195 条第1項の規定により本件訴訟を提起した。
二 本件の争点
双方当事者の争点は、次の通りである。
(一)被告が原告の身心、健康、名誉、信用、プライバシー、人格権、肖像権を侵害したか、その情状が重大であるか、被告が侵害行為の損害賠償責任を負うべきであるか?もし責任があれば、その金額をいくらにするか?
(二)被告は原告の著作権を侵害したか?被告は損害賠償責任を負うべきであるか?もし責任があれば、その金額をいくらにするか?
(三)原告が被告に対し、被告が批踢踢実業サイトで発表した原告の手紙内容削除を請求したことに根拠はあるか?
三 判決理由の要約
(一)被告は原告の著作権を侵害したか?被告は損害賠償の責任を負うべきであるか、もし責任があれば、その金額をどのぐらいにするか?
著作権第3条第1項第1号、第5条第1項第1号、第10条の1、第9条第1項の規定から分かるように、著作権法の保護を受ける著作物とは、人間が文学、科学、芸術またはその他の学術範囲において、一定の客観的な表現方法をもって表す、創作性のある精神的創作物であり、且つ著作権を取得できない対象を除外したものをいう。また創作性とは、もともと自分の独自な思想、知恵、技巧に基づき創作し、作者の性格または独特性を十分表現し、最低レベルの創意があるものをいい、且つ他人の著作物を複製または改作したものでなければ、それに該当する。たとえ、同一または類似のものであっても、同じく著作権法の保護を受ける。言い換えれば、著作物に含まれている思想またはコンセプトが正しいかどうかを問わず、それらは著作権法による保護を受ける著作物に該当するかどうかの判断に影響しない。これが、著作権法第10条の1の真意であり、つまりこの法律により取得した著作権の保護は当該著作物の表現にとどまり、それによって表現しようとする思想、手続き、製造過程、システム、操作方法、概念、原理、発見には及ばない。調べたところ、本裁判所で添付一、添付二の手紙内容を検討した結果、これは原告が電子メールの方法で、自分の思想を外部に表現し、原告の性格または独特性を十分表現し、最低レベルの創意があるものであり、著作権法第9条所定の保護を受けない著作物に該当しないので、創作性がある著作物であり、当然著作権法の保護を受けるはずである。原告は電子メールを被告に送ったが、原告がなおも手紙の著作権者である。また、被告のカバンに入れた原告のメモは「こんにちは。私のメールアドレスは…お近づきになりたい」等との記載だけにとどまり、原告の思想創作物に該当しないので、著作権法の保護を受けないと認定された。
(二)本件被告は合理的な使用云々と抗弁したが、著作権法第52条、第55条も「既に公表された著作物」を要件としており、係争手紙の著作物は両当事者間でやりとりしたものであり、被告も係争手紙の著作物が既に公表されたものであることについて挙証しなかったため、著作権法第52条、第55条の規定に該当しないことはいうまでもないので、著作権法第62条第2、3項を適用する余地もない。
調べたところ、被告は無断で原告の手紙内容を使用し、原告の氏名を注記しなかったので、その著作人格権を侵害した。審理した結果、被告は著作権侵害を業としていないほか、原告も実際に損害を受けた金額などを証明しなかったので、著作権及び著作人格権侵害に該当する非財産的損害部分の賠償額をそれぞれ10,000元、1,000元にすることが適切であると認定した。前記を総じて、原告が被告に請求できる損害賠償金は合計して11,000元(1,0000+1,000)と計算する。
(三)原告が被告にその批踢踢実業坊サイトで公開した原告手紙の内容削除を請求したことについて、根拠があるか?
次に、「著作権者又は出版権者は、その権利を侵害した者に対し、その侵害の排除を請求することができる。侵害のおそれがあるときは、その防止を請求することができる。」と著作権法第84条に明文で規定されている。本件被告は原告による告訴の提起前に批踢踢実業坊サイトのシステムにより自動的に削除された云々と抗弁したが、被告がその抗弁について挙証しなかったので、この部分の主張は受け入れられない。よって、原告が被告に添付一、添付二に示すとおりの手紙内容の削除を求めたことには理由があるので、許可すべきである。
前記を総合して、原告が係争手紙著作物の著作権者として、著作権法第88条第1項前段、第2項、第84条の規定により、1万1千元の支払い及び添付一、添付に示すとおりの手紙内容の削除を被告に要求したことには理由があるので、許可すべきである。この部分を超えた請求は、理由がないので、棄却すべきである。
2015年8月31日
民事第六法廷裁判官 朱慧真