憲兵指揮部がコンピュータソフトを調達、下請け業者の紛争により権利侵害の損害賠償命令判決

2018-09-25 2017年
■ 判決分類:著作権

I 憲兵指揮部がコンピュータソフトを調達、下請け業者の紛争により権利侵害の損害賠償命令判決

■ ハイライト
国防部憲兵指揮部は2016年度情報処理設備メンテナンス計画を推進し、紘琦科技有限公司(Hon Chih Technology Co., Ltd.、以下「紘琦公司」)が落札した。契約に従い紘琦公司は「情報処理設備の故障報告・修理要請システム」を提供するため、15万新台湾ドルで欣富科技有限公司(以下「欣富公司」)へ下請けに出した。憲兵指揮部が検収して利用し始めた後に紘琦公司と欣富公司との間で紛争が発生し、紘琦公司が支払いを行わなかったため、欣富公司は内容証明郵便を送り、憲兵指揮部に2016年5月末で利用を中止するよう要求したが、憲兵指揮部は期限を越えて1ヵ月以上利用したため、知的財産裁判所は、憲兵指揮部が欣富公司の著作財産権を侵害したと認め、3万新台湾ドルを賠償するよう命じる判決を下した。(蘋果日報–2017年8月2日)

II 判決内容の要約

知的財産裁判所民事判決
【裁判番号】105年度民著訴字第56号
【裁判期日】2017年7月24日
【裁判事由】著作権侵害に係る財産権の紛争

原告 欣富科技有限公司
被告 国防部憲兵指揮部

上記当事者間における著作権侵害に係る財産権の紛争事件について、当裁判所は2017年6月19日口頭弁論を終結し、次のとおり判決する。

主文
被告は原告に3万新台湾ドル及び2016年8月20日から支払済み日まで年5部の割合による金員を支払え。
原告のその余の請求を棄却する。
訴訟費用は20%を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。
本判決第一項について仮執行できるが、被告が3万新台湾ドルを原告に担保として供託したときは、仮執行を免脱できる。
原告のその余の仮執行宣言申立てについては却下する。

事実及び理由
一、原告の主張
被告は原告によって開発された国防部憲兵指揮部「情報処理設備の故障報告・修理要請システム(以下「係争著作物」)」が台湾地区において原告が著作財産権を有する著作物であると明らかに知りながら、被告は原告の同意又は許諾を受けずに、該システムが該機関の財産であるとして係争著作物を利用し続けた。原告は2016年5月16日に内容証明郵便にて、受告知者である紘琦科技有限公司(以下「紘琦公司」)及び被告にそれぞれ通知し、該システムを紘琦公司に販売しないことを明確に告知した。さらに2016年5月23日に被告に書簡を送り、係争著作物を削除するよう請求するとともに、被告に該係争著作物が原告の許諾を受けていないことを明確に告知した。原告は2016年6月6日、再び内容証明郵便を以って紘琦公司と被告に対し、それらが前記システムの著作権に関する許諾を取得していないことを告知した。しかし被告は係争著作物の権利侵害事実についていずれも善意ある返答をしなかったため、本件の請求を行うものである。
請求:
1.被告は原告に15万新台湾ドル及び2016年6月28日から支払済み日まで年5部の割合による金員を支払え。
2.原告は担保を供託するので、仮執行宣言を申し立てる。
3.訴訟費用は被告の負担とする。

二、被告の抗弁
原告はそれが係争著作物の著作者及び著作財産権者であることを挙証していない。
被告は係争著作物を利用する権利がある。つまり被告は著作権法第12条第3項の規定により、係争著作物の公正利用を主張できる。
被告には著作財産権侵害の故意と過失がない。
原告は受けた損害について挙証していない。
請求:
1.原告の請求を棄却し、その仮執行宣言申立てを却下する。
2.訴訟費用は原告の負担とする。
3.不利な判決を受けたとき、担保を供託するので、仮執行免脱宣言を申し立てる。

三、心証を得た理由
原告は係争著作物の著作者及び著作財産権者であるか否か:
双方が前後してそれぞれ提出した紘琦公司の書簡(即ち内容証明郵便番号001776号)である内容証明郵便の内容から、紘琦公司は原告と協議して、紘琦公司が出資し、原告が係争著作物を完成することを口頭で約定し、その他の約定はないことがわかる(双方はその他の約定について挙証していないので、その他の約定がないものと認定する)。双方は「出資して他人に委嘱し、著作物を完成させた」ものに該当し、その他の約定という法律関係はない。よって著作権法第12条第1項、第2項後段により、原告は著作者及び著作財産権者である。

被告が係争著作物の公正利用であると抗弁することに理由はあるか否か:
委嘱を受けて著作物を完成する法律関係がすでに解除されているならば、出資者は著作物を再び利用する権利を享受することはできない。原告の従業員が紘琦公司の従業員としての身分で被告の基地内に入ったことは、単に原告と紘琦公司が別途委託関係を有するからにすぎず、これを以て原告が被告の利用権を黙認したと認定する根拠とすることはできない。

被告が係争著作物を公正利用したのでなければ、故意又は過失があったか否か:
被告はすでに上述書簡を受領しており、速やかに係争著作物の権利の帰属を調べる注意義務があったが、被告自らの抗弁によると、被告は紘琦公司に知らせて期限までに善処するよう要求しただけであった。それが定めた期限は原告からの上述書簡の指定期限を超えるものであり、係争著作物の権利帰属を調査する作為はみられなかった。被告はその当時何らかの調査があったという証拠も提出しておらず、したがって自らが確かに係争著作物を公正利用しており、係争著作物を削除する必要ないと主観的に確認したもので、これにより被告には少なくとも過失があったと認められる。被告はその後2016年7月6日に原告と紘琦公司を集めて処理の協議を行い、最終的には紘琦公司に期限を定めて係争著作物を削除するよう要求したが、それは原告が指定した期限を過ぎていたため、その過失責任を免除する根拠とすることはできない。

被告が故意又は過失によって係争著作物を公正利用していなかったのであれば、原告には損害があったのか。あったのならば、その損害額はいくらなのか:
係争著作物の取引価格が約15万新台湾ドルから18万5,000新台湾ドルの間であること、さらにこの徴収すべきであるが未徴収である公正な利用料は、著作財産権者の損害を補填するもので、「権利を侵害してでも、事前に許諾を受ける協議をしたくない」という逆の選択を避けるべきであり、低すぎる金額を許可するのは好ましくないことなどの事情、及び本件のその他の一切の事情を参酌して、原告が1日当たりの損害額を1,000新台湾ドルと主張しており、即ち1日の利用料が1,000新台湾ドルというのは公正であると認めるべきであり、認定できる。
被告は2016年6月1日から過失があったと認められ、これにより、本件が許可すべき賠償は2016年6月1日から2016年6月30日までの間の徴収すべきであるが未徴収である公正な利用料であり、合計30,000新台湾ドル(計算式:1,000X30=30,000)である。

2017年7月24日
知的財産裁判所第三法廷
裁判官  蔡志宏
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