客房デザインを模倣、ファイブスターホテルに内装撤去の判決
2019-02-21 2018年
■ 判決分類:著作権
I 客房デザインを模倣、ファイブスターホテルに内装撤去の判決
■ ハイライト
雲朗観光公司(原告)は桂田璽悦公司(被告)に所属する台東桂田喜來登酒店の「尊尚豪華客房」等客室5タイプの室内デザインが雲朗傘下にある台北君品酒店のそれに酷似していることを発見し、権利侵害で告訴した。
知的財産裁判所の判決によると:
1.「建築の著作物」は三次元空間の構造物で思想や感情を表現する創作であり、外観のみならず、庭園、景観、空間設計のような内部を含む。また国内、海外を問わず、いずれも室内デザインの大きなコンペティションが開催されていることから、優れた室内デザイン作品は高度な芸術性と資産価値を有することが分かり、保護を受けるべきである。
2.被告代表者は2014年5月に2回にわたり君品酒店の「豪華客房(Deluxe Room)」に投宿するとともに、「雅緻客房 (Superior Room)」の参観を要求した。別途鑑定した後、両ホテルの関連する客室タイプには確かに高度な類似がみられるため、被告の関連する客室タイプはデザインが模倣されていると認め、関連する客室タイプについて取外し又は撤去するまでは消費者に客室を提供してはならず、並びに関連する写真を再び使用してはならず、さらには原告に500万新台湾ドルを賠償するとともに、《蘋果日報》の全国版第一面の下半面に判決の主な内容を掲載しなければならないとの判決を下した。
II 判決内容の要約
知的財産裁判所民事判決
【裁判番号】104年度民著訴字第32号
【裁判期日】2018年9月14日
【裁判事由】著作権侵害に係る財産権の紛争等
原 告 雲朗観光股份有限公司
被 告 桂田璽悅酒店股份有限公司
上記当事者間における著作権侵害に係る財産権の紛争等事件について、当裁判所は2018年8月8日に口頭弁論を終結し、次のとおり判決する。
主 文(摘録)
一、被告は連帯で原告に対し500万新台湾ドル及び2015年6月9日から支払い済みまで年5部の割合による金員を支払え。
二、被告桂田璽悦酒店股份有限公司は客室のデザインを、財団法人台湾経済科技発展研究院の「著作権鑑定研究報告書」に列挙された類似を構成する物品に基づいて取外し又は撤去しなければならず、被告は取外し又は撤去を行うまで消費者の宿泊に提供してはならない。
三、被告桂田璽悦酒店股份有限公司は原告の君品酒店の客室タイプ別室内デザインを侵害する写真を使用してはならない。被告桂田璽悦酒店股份有限公司は台東桂田喜來登酒店の名義で被告のサイト及びホテル予約サイトである易飛網、易遊網、雄獅旅遊網、Agoda.com、Booking.comに掲載している原告の客室デザインを侵害する写真(例えば原告証拠6)を削除しなければならない。
四、被告は連帯で費用を負担して、本件の最後の事実審の判決書における当事者、事由及び主文の内容を、蘋果日報の全国版第一面の下半面に標楷体(DFKai-SB)10ポイントのフォントを用いて一日掲載しなければならない。
一 事実の要約
原告の経営する「君品酒店」の客室デザイン及び家具、装飾品等の設置は、著名な室内デザイナーの陳○○氏が主導する「○○室内裝修有限公司」(以下、「○○公司」)に室内デザインを委託したものである。被告朱仁宗が経営する台東桂田酒店は、原告の客室デザインを模倣しようとして、2014年に原告君品酒店「豪華客房(Deluxe Room)」に2回投宿し、「雅緻客房 (Superior Room)」を見せてほしいと要求した。原告はその後、台東桂田酒店が原告の客室デザイン(壁の材質のセレクト、レイアウトのデザイン、家具の備付と設置等が含まれる)を模倣し、いずれも君品酒店の「雅緻客房 (Superior Room)」及び「豪華客房(Deluxe Room)」と同じであるのを発見した。その後被告を相手取り、著作権侵害及び公平交易法違反の訴訟を提起した。
二 両方当事者の請求内容
(一)原告の請求:被告及び会社代表者が連帯賠償責任を負うこと、侵害を排除、防止すること、侵害物の処分並びに廃棄をすること、及び判決書を新聞に掲載することを請求する。
(二)被告の請求:原告の請求を棄却する。
三 本件の争点
「室内デザイン」は著作権法が保護するところの著作物であるのか。著作権法が保護するどの著作物類型に該当するのか。
(一)原告の主張理由:省略。決理由の説明を参照。
(二)被告の答弁理由:省略。決理由の説明を参照。
四 判決理由の要約
(一)室内デザインは著作権法が保護するどの著作物類型に該当するのか。
1.著作権法が1992年6月10日に改正された時点で、第5条第9号に「建築の著作物」が著作物の一つの類型として独立して列挙され、第3条第1項第5号の「複製」の定義において、「建築の設計図若しくは建築の模型に従って建築物を完成することもこれに属する」という文言が追加され、建築の著作物に対する保護が拡大された。「著作権法第5条第1項各号に係る著作物の内容例示」第2条第9号には「建築の著作物」に建築の設計図、及び建築の模型、建築物及びその他の建築の著作物が含まれると規定されている。経済部知的財産局(以下「知財局」)は2014年4月30日付電子メール0000000bにて「問合せの著作権法はなぜ建築の設計図に従って施工する行為を保護するのかとの一節について、建築物そのものが著作物の一種であり、他人の『建築物』を模倣して『建築物』を建造することは複製に該当し、或いは他人の『建築の設計図』を模倣して『建築の設計図』を製作することも複製に該当することはもとより問題がない。『建築の設計図』と『建築物』はいずれも建築の著作物の範囲に属するため、他人の『建築の設計図』を模倣して『建築物』を建造したことが複製に該当しなければ、建築の著作物の保護は周到ではなく、著作権保護の抜け穴となる。よってわが国の著作権法第3条第1項第5号では建築の著作物について、建築の設計図に従って建築物を建造することも複製に該当すると規定している。各国でも多くに、建築の設計図に従って建築物を建造する行為を特別に保護する立法例がみられる。」と指摘している。著作権法上の複製は原則的に同じ形態を以て著作物を複製することが必要であり、それによって始めて複製に該当する。平面の設計図に従って立体物を製作する(平面から立体へ転換する)ことは、「実施」に該当し、複製行為ではなく、著作財産権の侵害を構成しないが、建築の著作物においては保護の範囲に建築の設計図(平面図形)及び建設の模型、建築物(実体物)が含まれるため、「建築の設計図に従って建築物を建造する」(平面から立体へ転換)、又は「建築の模型に従って建築物を建造する」(立体模型から立体建築物へ転換)のいずれかに関わらず、いずれも建築の著作物の複製権侵害に該当する。建築の設計図(建築外観図、建築構造図等)は本質的には図形の著作物ではあるが、著作権法はすでに「建築の著作物」を著作物の一つの類型として独立させているため、もはや「図形の著作物」には該当しない。以上の説明から、本件の室内デザイン(室内設計図及びデザインを完成させた実体物)は「建築の著作物」と「図形の著作物」のいずれかという争いであり、室内デザインにとって著作権法で保護される範囲にあることは、重要な意味を持つ。
2.「著作権法第5条第1項各号に係る著作物の内容例示」では「建築の著作物」における「その他の建築の著作物」の具体的内容について、主務機関による更なる説明又は解釈がなされていない。建築の著作物と室内デザインの固有の意味は、一つが建築物の外部、構造に対して美感を表現する芸術上の創作であり、もう一つが建築物の内部空間に対して美感を表現する芸術上の創作である。ただし、両者の性質は近く機能上も互いに補い合うもので、しかも近年は国内、海外を問わず、いずれも定期的に室内デザインのコンペティションが開催され、受賞した室内デザイナーも受賞の経歴を以てその創作力が評価された証明としており、優れた室内デザイン作品は確かに高度な芸術性と資産価値を有することが分かる。室内デザインの創作が独創性を有するならば、建築の著作物と同等の保護を与える必要がある。
3.被告は、室内デザインは建築法第4条で規定される「本法でいうところの建築物とは、地上又は地下に定着し、屋根、柱梁若しくは壁を有するもので、個人又は公衆の使用に供する構造物又は雑項工作物」という定義には合わず、かつホテル客室の室内デザインは実用性を主たる目的としており、著作権法でいう「建築の著作物」には該当しない云々と抗弁している。しかしながら、著作権法の「建築の著作物」は建築法第4条及び第7条の「建築物」若しくは「雑項工作物(miscellaneous works)」の定義と同じである必要はない。しかも上記の狭義の解釈を採用したならば、著作権法が例示を以て規定する「その他の建築の著作物」が成立する可能性を有し難く、著作権法が例示の方法で著作物の類型を規定する立法の趣旨に違反する。室内デザインの創作が十分に作者の思想、感情を表現でき、従来存在する著作物と区別できる変化を有し、独創性を有するならば、著作権法の保護を受けられない理由はなく、また建築物は人々が居住し使用するのに供するものであり、本来実用性という目的を有する。さらには、著作権法第5条第1号各号の内容例示について、「美術の著作物」には「美術工芸品」が含まれると明示されている(第2条第4号)。著作権法は「実用性」の創作を保護しないとする被告の主張はなお非なる論であり、被告の前出主張はいずれも採用できない。
4.以上をまとめると、室內デザインの創作が独創性を有するならば、著作権法の「その他の建築の著作物」が成立し、かつ「建築の著作物」と同等の保護を享受できるべきであるため、室内デザインの著作物の保護範囲は室内設計図及び室内デザインの実体物(室内デザイン全体の表現方法)が含まれるべきである。
(二)原告が提出した証拠は、被告による原告の室内デザイン複製権の侵害を証明できるのか。
1.裁判所が著作権侵害の事実の有無を認定するときは、一切の関連する情状を斟酌して、著作権侵害の認定の二つの要件、即ちいわゆる「接触(Access)」と「実質的な類似」を慎重に調べるべきである。その中の「実質的な類似」は量の類似のみならず、質の類似も示すものである。図形、写真、美術、映画等の著作物のような芸術性又は美感性を有する著作物が摸倣されたかを判断するときに、言語の著作物と同じ分析・分解(dissection)の手法を用いて仔細に対比するならば、往々にして困難があるか、又はその公平性を失う可能性がある。よって質を考慮するときは、とくに著作物間の「全体の観念と感覚(total concept and feel)」に留意すべきである。
2.○○公司が君品酒店の全体の空間の企画とデザインを担当した。それにはホテルにおける全体の空間のレイアウト、宿泊に必要な設備の備付と企画、各家具のセレクトと設置の企画、各設備及び家具のサイズと動線の設計、採光の企画等が含まれ、客室タイプ別の室内デザインに止まらない。また室内デザインの設計図製作とそれに従っての施工に限らず、○○公司は君品酒店全体の室内デザインを行い、一つの完全な創作の成果であると見なすべきであり、客室デザインは全体の室内デザインの一部にすぎない。
3.原告が提出した設計図から分かるように、君品酒店内の家具物件の多くはデザイナーの陳○○氏が特別にデザインした特注品であり、既製品を買い付けたものではなく、施工主の要求と空間的な条件に応じて特別にデザインしたもので、君品酒店の室内デザインに対する創作のコンセプト、創作の過程及び○○公司の空間のレイアウト、設備の備付と企画、家具のセレクト、動線の設計、採光の企画等の表現方法を通じて、原告は創作者の表現しようとするフランス古典主義のルイ16世様式と現代のオリエンタル様式を融合した心地よく、優雅な雰囲気を利用者に感じさせていると認めることができ、すでに相当な証明を提出している。ただし、○○公司による君品酒店内部全体の室内デザインは、一つの完全な創作であるとみなすべきであり、各部分を分割して単独に著作権の保護を主張できない。原告は君品酒店の客室タイプ別の室内デザイン以外の部分の室内デザインに係る創作の過程と独創性等について、関連の証拠を提出していない。当裁判所は君品酒店の室内デザイン全体に「独創性」が有るか否か、並びに君品酒店と被告台東桂田酒店の室内デザイン「全体」について、実質的な類似(「質」の類似と「量」の類似を含む)を構成するか否かについて対比することができず、原告が被告等の係争客室タイプ別室内デザインの著作財産権を単独で主張することは、なお採用できない。
(三)被告桂田公司には公平交易法第25条違反行為があるのか。
1.公平交易法第25条には「事業者は、本法に規定するもののほか、取引秩序に影響するおそれのある欺瞞的または著しく不公正な行為をしてはならない。」(改正前は第24条、条番号の変更のみで、内容は同じ)と規定されている。本条でいうところの「著しく不公平な」とは「著しく不公平な方法で競争又は取引に従事するもの」で、他人の努力の成果を搾取したり、他人が相当な努力を投じて構築したサイトの資料を摸倣したり、高度に摸倣したりする行為等を含み、事業者の行為が該条でいうところの「取引秩序に影響するに足る」を構成するか否かの判断は、該行為の実施後に取引秩序に影響するに足る可能性があるだけで、抽象的な危険性の程度に到達するに十分である。
2.被告桂田公司の代表者である朱仁宗は前後して2014年5月2日、5月5日に2回にわたり君品酒店の「行政豪華客房( Executive Deluxe Room)」に投宿し、「雅緻客房(Superior Room)」の参観を要求し、その同伴者が撮影や現地での測量等の方法を以って、君品酒店の客室タイプ別室内デザインの内容を詳細に記録した。
3.原告と被告の客室タイプの対比写真等の証拠により、君品酒店と台東桂田酒店の客室タイプ別室内デザインが見る者に与える全体の感覚については、高度な類似度に達している。
4.双方は当裁判所が財団法人台湾経済科技発展研究院に「被告の台東桂田酒店の室内デザインは原告が経営する君品酒店の室内デザインを摸倣しているか否か」について鑑定を行うよう委託することに同意した。鑑定報告の第三節「鑑定分析」において次のように記載されている:「壱、対比の基礎の説明:一般的なホテル等の旅館業の客室内部デザインについては、多くが一つの部屋に必要な物件を取り付けるという事に基づいて企画され…よって、単純に一つの客室には類似の設置がみられることは、基本的に鑑定対象の室内デザインのレベルにおける『摸倣』があったと示すには足りない。それらのレイアウトとアレンジはすでに類似のホテル客室デザインにおける常態及び慣性となっており、さらには一部の建築物における慣習及び考慮も含まれるため、両者の全体の類似を判断する場合、逆に、例えば使用される特殊な物件と対応する物件の組合せ等のように基本物件コンセプト以外の外観の特徴に同時に注意を払うべきであり、いずれも思想以外における具体的な表現の結果を形成している可能性がある」、「弐、個別の物件の対比原則:室内装飾について、その具体的な表現は全体のデザインが完成した後に示される外観の結果であり、デザイナーの観点からいえば、通常は具体的な方向性とアイデアがある時点で(後に)、その既存の使用できることを知っている家具又は物件をデザインに応用するか、又は必要に応じて必要な家具や物件を新たにデザインする。…よって、単一の物件の使用と同異は、原則的に全体の室内デザインに同一又は類似があるか否かの判断において決定的要素とはならない」、「参、室内デザインの対比原則:…前項の説明によると、大部分の室内空間のレイアウト、宿泊に必要な設備の備付と企画、各家具のセレクトと設置の企画、設備及び家具のサイズと動線の設計、採光の企画は、通常のデザイナーにとって、往々にしてその処理において慣例がある。このため、実際の運用における特別な物件、ないし抽象的なスタイルの表現方法、物件の設置位置及びその他各物件の相対的な位置と関係は、逆に判断の鍵となる」、「肆、分析の説明:前章における対比分析と説明により、全体のレイアウト、同じ(又は類似の)視角の対応する外観から、君品酒店が提出した特定の物件の使用、対応する位置及びその他の組み合わされた物件の相対関係がわかり、桂田酒店の本件鑑定対象である3種類の客室タイプに示された室内デザインの結果において、一部の家具又は物件の設置における位置の違い若しくは極めて小さい部分の外観上の差があり、また単一の物件が同じであることで全体の設計が模倣を構成すると判断する依拠とすることはできないものの、君品酒店が提出した多くの物件の設置、及び位置と物件の相対関係はいずれも高度に類似している状況(壁紙さえも全く同じ模様である)、さらには桂田酒店の関係者が君品酒店の室内デザインの成果に接触(アクセス)した事実を以って、桂田酒店の対応する客室タイプ3種類の室内デザインは君品酒店が提出する客室タイプの室内デザインの成果を模倣し、自らのハードウェアの制約やデザインに基づいて些少の調整を行ったものと認定できる」。
5.被告朱仁宗は自ら創作しデザインすることを考えず、君品酒店の「行政豪華客房( Executive Deluxe Room)」に投宿したことを利用し、「雅緻客房 (Superior Room)」を参観する機会を要求し、その同伴者が撮影や現地での測量等の方法を以って、君品酒店の客室タイプ別室内デザインの内容を詳細に記録し、模倣して台東桂田酒店の客室デザインに使用し、壁紙の模様さえも同じであり、消費者が一見すると、台東桂田酒店と君品酒店若しくは雲朗企業グループとが関連企業である、又は互いに加盟若しくは許諾等の関係があると誤認する可能性がある。被告桂田公司が君品酒店の客室タイプ別室内デザインを模倣した写真を台東桂田酒店の公式サイト及び各大手ホテル予約サイトに掲載して、消費者の宿泊を招来しようとした。被告が君品酒店の客室タイプ別室内デザインを不法に模倣した行為は、デザイン/創作及び内装の時間を節約できる他に、さらには巨額のデザイン料を支払う必要もなく、容易に内装を完成させて対外的に営業できる。その労せずして得る行為は、観光ホテル業の取引秩序に影響するに足り、公平交易法第25条に定める「取引秩序に影響するに足る欺瞞的な又は著しく公正さを欠く行為」を構成する。被告は、台東桂田酒店が「シェラトン」ブランド、さらには台東の風情や海岸の景色、ホテルの気配りが行き届いた施設と良質の食事とサービスで消費者を魅了しており、原告又は君品酒店とは全く関係がなく、本件において原告がいうところの公平交易法に違反する不正競争等は存在しない云々と主張した。しかしながら調べたところ、台湾は土地が狭く、各観光地の間を往来する交通が便利であり、消費者の旅行の選択肢は十分に多元化され、一つの観光ホテルグループが異なる観光地にホテルを開設する状況はよくみられるため、観光ホテル業者同士で激しい競争関係があり、被告が原告の君品酒店の客室タイプ別室内デザインを模倣した行為は、観光ホテル業界の取引秩序に影響するに足る欺瞞的な又は著しく公正さを欠く行為に該当するため、被告の主張は採用するに足りない。
(四)原告が被告等に連帯で損害賠償責任を負うように請求することに理由はあるのか。請求できる賠償額はいかほどか。
消費者がどのホテルを選ぶかは、宿泊の快適さを考慮する以外に、飲食に対するニーズ、地縁関係、交通の利便性、サービスの質等のその他の参考要素も含まれるため、被告の台東桂田酒店の宿泊収入が直接客室タイプ別室内デザインの模倣行為から得られたものとは認め難く、原告が受けた損害を証明しても、その実際の損害額を証明することや大きな困難があることを証明することは難しい。当裁判所は原告が○○公司に委託して行った君品酒店の室内デザイン総額が3000万新台湾ドルであること、交通部観光局が公布した各観光ホテル運営月報(Monthly Report on Tourist Hotel Operations in Taiwan)資料、財政部が公布した2013~2016年度同業利益基準表(The Profit Standard of the Same Trade Concerned)、本件被告の侵害行為が故意であり、しかも高度な模倣で、状況が深刻であること、台東桂田酒店は始終客室タイプの室内デザインを変更していないこと等の事情を斟酌し、原告が被告に対して損害賠償金500万新台湾ドル及び法定遅延利息を請求することは正当であると認める。桂田公司の代表者は公司法第23条第2項により、被告桂田公司と連帯で損害賠償の責任を負わなければならない。
(五)原告が公平交易法第29条により、侵害排除請求権を行使して、被告に対して台東桂酒店における君品酒店の客室タイプ別室内デザインを模倣した物品を取外し又は撤去し、取外し又は撤去を行うまで消費者の宿泊に提供することを禁じること、被告は原告客室デザインを侵害する写真を使用してはならず、被告が台東桂田喜來登酒店の名義で公式サイト及びホテル予約サイトである易飛網等のサイトに掲載している客室デザインの写真を削除しなければならないことを請求することは正当である。
(六)原告が公平交易法第33条規定により、被告に費用を負担して判決書を新聞に掲載するように請求することには、根拠がある。
2018年9月14日
知的財産裁判所第二法廷
裁判官 彭洪英