ケーブルテレビ信号ソースをリッピングし、保存、データ変換、複製をした後、違法デジタルSTB業者へ転送し、これを以って映像等著作物を提供して、セットトップボックス(STB)をレンタル又は購入した消費者の鑑賞に供することは、著作権侵害を構成する。

2021-03-24 2020年
■ 判決分類:著作権

I ケーブルテレビ信号ソースをリッピングし、保存、データ変換、複製をした後、違法デジタルSTB業者へ転送し、これを以って映像等著作物を提供して、セットトップボックス(STB)をレンタル又は購入した消費者の鑑賞に供することは、著作権侵害を構成する。

■ ハイライト
王志遠は2015年1月に中国のデジタル犯罪グループ「何康寧」から提供された設備を利用して、新北市に機械室を設置し、三立公司、東森公司、年代公司等13社の同意または許諾を得ないで、相次いで機械室で設備を通じて、ケーブルテレビ信号ソースをリッピングし、保存、データ変換、複製をした後、「何康寧」の所属するグループが架設したクラウドサーバに伝送して、違法デジタルSTB業者へ転送し、これを以って映像等著作物を提供、公開放送してSTBを購入又はレンタルした消費者の鑑賞に供していた。王志遠は月あたり「何康寧」より3万~7万台湾ドルの報酬を受け取っていた。
台湾新北地方裁判所による108年度智訴字第18号判決は、被告人王志遠が販売またはレンタルを意図して無断で複製の方法で、他人の著作財産権を侵害したと認定し、懲役一年に処した。
また、台湾新北地方裁判所による108年度智重附民字第2号判決は、被告人王志遠が知識能力、豊富な社会経験を有している大人であり、あえて個人の利益のために、数多くのテレビ局が制作した、または合法的に許諾を得ている番組をはじめとする映像著作物を侵害し、その数量も膨大で、且つ侵害時間が長く三年あまりにわたっているほか、原告等である数多くのテレビ局が映像著作財産権の取得に支出したコスト、市場の経済価値、財産損害を受けた程度等を酌量したうえ、原告13社はそれぞれ被告人王志遠に賠償金として100万台湾ドルを請求することができると認定した。

II 判決内容の要約

台湾新北地方裁判所刑事判決
【裁判番号】108年度智訴字第18号判決
【裁判期日】2020年7月2日
【裁判事由】著作権法違反

公訴人 台湾新北地方検察署検察官
被告人 王志遠
選任弁護人  魯忠翰 弁護士      
                  周逸濱 弁護士      
                  黄詩婷 弁護士

主文
王志遠は、共同で販売またはレンタルを意図して、無断で複製の方法により、他人の著作財産権を侵害したので、懲役一年に処す。押収品はすべて没収する。未押収の不当利得205万台湾ドルを没収し、その全部または一部が没収不能または没収執行できない場合、その価額を追徴する。

一 事実概要
王志遠は2015年1月ごろより、中国で「何康寧」と自称するデジタル犯罪グループに加入し、且つ「何康寧」から機械室を設置するための設備及び費用の提供を受け、新北市に所在する自宅に機械室を設置し、且つホストコンピュータ、モデム、デコーダ、ルーター、信号ブースター、STB等を機械室に取り付け且つ当該機械室を管理、運用し、超級傳播股份有限公司、民間全民電視股份有限公司、壹傳媒電視廣播股份有限公司、聯利媒體股份有限公司、八大電視股份有限公司、三立電視股份有限公司、東森電視事業股份有限公司、年代網際事業股份有限公司、緯來電視網股份有限公司、飛凡傳播股份有限公司、中天電視股份有限公司、香港企業・福斯傳媒有限公司台湾支店、米国企業・国家地理頻道有限公司台湾支店の同意または許諾を得ないで、相次いで機械室で前記機械設備を利用してケーブルテレビ信号ソースをリッピングし、保存、データ変換、複製をした後、「何康寧」所属のグループが架設したクラウドサーバに伝送して、違法デジタルSTB業者へ転送し、これを以って映像等著作物を提供して、STBを購入又はレンタルした消費者の鑑賞に供し、これを公開放送していた。また、この方法により、公衆に著作物複製可能なコンピュータープログラムを提供したので、前記各社の著作財産権を侵害した。王志遠は月あたり「何康寧」より3 万から7 万台湾ドルの報酬を受けて不当利得を得ていた。

二 本件争点
被告人は著作権法所定の複製または公開放送違反により、他人の著作権を侵害したか?

三 判決理由の要約
(一) 著作権法でいう複製とは、印刷、複写、録音、録画、撮影、筆記その他の方法により直接、間接、永久又は一時的に再製作することをいう。また、公開放送とは、公衆に直接聞かせる又は見せることを目的として、有線電気通信、無線通信その他の設備の放送システムによる送信を行うことにより、音声若しくは映像を通じて著作物の内容を公衆に伝達することをいう。元の放送者以外の者が、有線電気通信、無線通信その他の設備の放送システムによる送信を行うことにより、元々放送されていた音声若しくは映像を公衆に伝達することもこれに属する。著作権法第3条第1項第5号、第7号にそれぞれ明文で規定されている。
(二) 被告人は、「何康寧」が所属しているグループが各告訴人から著作物複製及び公開放送の同意または許諾を得ていないことを明らかに知りながら、なおも「何康寧」の指示に従って、機械設備を利用してケーブルテレビ信号ソースをリッピングし、保存、データ変換、複製をした後、クラウドサーバに伝送して、複製可能のコンピュータプログラムを含むSTBを購入又はレンタルした消費者の鑑賞に供していた。被告人の行為は、著作権法第91条第2項の販売若しくは貸与を意図して、無断複製することにより他人の著作財産権を侵害した罪、同法第92条の無断で公開放送の方法により他人の著作財産権を侵害した罪、及び同法第93条第4号の同法第87条第1項第7号規定違反により、著作権を侵害した罪に該当する。被告人による一つの行為が複数の罪を犯し、且つそれと同時に、各著作権者の著作財産権を侵害したので、観念的競合犯に該当し、最も重い著作権法第91条第2項の販売若しくは貸与を意図して、無断複製することにより他人の著作財産権を侵害した罪で論断されるべきである。

2020年7月2日
刑事第五法廷審判長裁判官 許必奇
裁判官 許品逸
裁判官 宋泓璟
TIPLO ECARD Fireshot Video TIPLO Brochure_Japanese TIPLO News Channel TIPLO TOUR 7th FIoor TIPLO TOUR 15th FIoor