最高裁判所が《侠客風雲伝》が智冠の著作権を侵害するとの前審判決を棄却 《武林群侠伝》の著作権帰属はなお議論の余地があると認定
2023-04-24 2022年
■ 判決分類:著作権
I 最高裁判所が《侠客風雲伝》が智冠の著作権を侵害するとの前審判決を棄却 《武林群侠伝》の著作権帰属はなお議論の余地があると認定
■ ハイライト
最高裁判所は最近、河洛遊戲と智冠科技股份有限公司(以下、「智冠」という)との間の知的財産権争議事件について、新たな判決を下した。原判決で上告人の上訴を棄却した等について、知的財産及び商事裁判所に差し戻した。
最高裁判所は、前審において事実を調べて明らかにすべき部分がなお残っているのに、証人王美玲、王俊博の証言及び徐昌隆の労働者保険資料のみに基づいて直接《武林群侠伝》は徐昌隆が被上告人(智冠)に在職中に完成した職務著作だと認定したことには、議論の余地があると認めた。著作権がどちらに帰属するかについて、裁判官はさらに明確にする必要があると認めた。智冠に《武林群侠伝》の著作権があるのか、損害賠償、侵害排除、新聞掲載による名誉回復を請求できるかどうか及び請求権の時効等については、事実を究明してから結論を出すべきだと認めた。
II 判決内容の要約
最高裁判所民事判決
【判決番号】110年度台上字第1167号
【判決期日】2022年2月17日
【判決事由】著作権侵害における財産権争議
上告人 河洛遊戲有限公司
被上告人 智冠科技股份有限公司
前記当事者間による著作権侵害に関わる財産権侵害争議等の事件について、上告人は2020年7月30日付知的財産及び商事裁判所第二審判決(108年度民著上字第3号)を不服として上告したが、当裁判所は以下のとおり判決する。
主文
原判決の上告人による上訴及び訴訟費用部分を棄却し、知的財産権及び商事裁判所に差し戻す。
一 事実要約
被上告人は次のように主張した。2001年8月27日に発売されたゲーム「武林群侠伝」ゲーム著作(以下「武林群侠著作」という)は、その従業員である上告人徐昌隆が在職期間に職務上で完成させたものであり、当該著作のゲーム商品の外包装箱及び取扱説明書に表示されているように、著作財産権は上告人に属していると主張した。その後、徐昌隆は2014年3月7日に上告人河洛遊戲有限公司(以下「河洛公司」という)を設立した。同社が2015年7月頃に発売した「侠客風雲伝」ゲーム著作(以下「係争著作」という)が「武林群侠著作」を剽窃または改作し、その著作財産権を侵害した。さらに、徐昌隆は河洛公司の法定代理人として、被上告人が被った損害等について連帯賠償責任を負うべきである。
二 双方当事者の請求内容
(一)原告即ち被上告人の請求(1)上告人は、2400万台湾ドル及び500万台湾ドルを2017年6月23日から、1900万台湾ドルを2018年6月1日から共に法定遅延利息を付けて連帯して支払う。(2)上告人は自ら又は第三者を利用して係争著作のコンピュータゲーム又は著作物の原本、複製物の配布又は公開、伝送等を継続して行ってはならず、また、自ら又は第三者を利用して武複製、改作、散布、公開伝送等による武林群侠著作のコンピュータゲームの著作財産権を侵害してはならない。(3)上告人が連帯して費用を負担し、本件民事最終事実審の判決書の当事者、事由、判決主文をディリーアップル全国版の一面に5号字体で掲載する。
(二)被告即ち上告人答弁の請求:原告の訴えを棄却する。
三 本件の争点
1.被上告人は、武林群侠著作物の著作権を有するか。
2.被上告人は、いつ係争著作の内容を知ったか。
3.被上告人は損害賠償、侵害排除、新聞掲載による名誉回復を請求できるか。
(一)原告主張の理由:省略;判決理由の説明参照。
(二)被告答弁の理由:省略;判決理由の説明参照。
四 判決理由の要約
(一)被上告人は、武林群侠著作物の著作権を有するか。
そもそも、「版権」は正式な法律用語ではなく、民法債編第9節の「出版権」、著作権法第4章の「製版権」、または「改作権」、「公共放送権」等の著作財産権かもしれないが、これだけではない可能性がある。被上告人が資金を提供し、徐昌隆ら4名が自身でコンピュータゲームソフトを完成させるという条件において、完成できないならと被上告人に金銭を返還しなければならない契約の場合、徐昌隆ら4名は経済的、人格的、組織的において上告人との従属性を有するため、雇用されたと見なすことができるか?これには疑問がある。徐昌隆ら4名が、係争の制作委託契約を締結した後に「河洛工作室」を設立したことについては、双方当事者も争議しない。また、武林群侠著作の外包装箱の「研究開発制作」も「河洛工作室」と表示している(一審ファイル(一)46頁参照)。徐昌隆ら4名は、完成したコンピュータゲーム著作の著作者であり、上記約款第12条に基づき、被上告人に「版権」を譲渡することに同意しているようである。その他の約款においては、上告人の「発行出版」権限及び徐昌隆ら4名へのロイヤリティ支払い義務だけが規定されているのと考合わせて、当該「版権の譲渡」の真の意味は何か?「著作財産権の譲渡」に当たるか?これらについてはさらに明確する必要がある。原審が明確な推論分析をせず、係争の制作委託契約を論じずに、直ちに被上告人が係争表示のために、武林群侠著作の著作財産権を有すると認定したは、やや速断にすぎる懸念がある。
(二)被上告人は、いつ係争著作の内容を知ったか。
2015年1月頃被上告人は、すでに河洛公司がゲームソフト仮称「新武林群侠伝」を開発したことを知り、販売する目的で徐昌隆を訪問したが、河洛公司が宣伝物、包装デザイン原稿を被上告人に提供した等の間接証拠を見れば、被上告人が係争著作の内容をまったく知らない前提で、販売価格を880台湾ドルに設定したことは、情理及び経験法則に反していないと言えるのか?この点に疑義がなくもない。被上告人が主張する著作財産権侵害による損害賠償請求権の時効は、どの時点から起算すべきか?さらに、2017年6月13日に本件の訴訟を提起したことは、時効にかかっていないか?これらは、詳しく追究する余地がある。原審が詳細を追究せず、直ちに被上告人は係争著作の内容を知らなかったと認め、上告人に不利な判断を下したことは、理にかなっていない。
(三)被上告人は損害賠償、侵害排除、新聞掲載による名誉回復を請求できるか。
被上告人は2016年1月18日に河洛公司に書面で権利侵害行為の停止及び賠償を請求した後、当該公司のために付表二番号2、3及び付表二番号3、4の数量の係争著作物の販売を継続したことは過失相殺でき、裁判所がこの部分の賠償金額を免除することができることは、原審で認められている。よって、被上告人は、河洛公司が上記書面を受領するまでの所得利益についてのみ賠償を請求することができる。原審が付表一番号1、付表二番号1、2(共に2016年1月31日まで計算)の販売数量に基づいて、河洛公司の所得を計算し、前記書面を受け取ってから2016年1月31日までの期間の販売数量を控除していないことは、上記の論述に一致しないことに過誤があると言える。
以上をまとめると、本件の上告には理由がある。よって民事訴訟法第477条第1項、第478条第2項に基づき、主文のとおり判決する。
2022年2月17日
最高裁判所民事第5法廷
裁判長裁判官 袁静文
裁判官 陳静芬
裁判官 石有為
裁判官 許秀芬
裁判官 林金吾