告訴人は商標権または図形著作を単純に平面、非立体、グラデーションなしで撮影し、書籍にまとめて出版し、且つテキスト解説を追加したが、改作したところはなく、即ちこれは創作性を欠き、派生著作ではなく、元の図形と変わらないので、著作権法で保護されるものと認めることは困難である。

2023-08-11 2022年

■ 判決分類:著作権

I 告訴人は商標権または図形著作を単純に平面、非立体、グラデーションなしで撮影し、書籍にまとめて出版し、且つテキスト解説を追加したが、改作したところはなく、即ちこれは創作性を欠き、派生著作ではなく、元の図形と変わらないので、著作権法で保護されるものと認めることは困難である。

■ ハイライト
裁判所の判決は次の通りである。即ち告訴人の著作「台湾古董雜貨珍藏圖鑑」にある写真について、これをもって鉄製の広告看板が作成されたが、図鑑の写真は、初期の台湾骨董品の外観を忠実に表現しており、創作性がなく、著作権法で保護される写真著作ではない。告訴人は他人の商品名またはロゴ、即ち他人の図形著作をまとめて書籍を出版し、且つテキスト解説を追加したが、改作したところはなく、即ち創作性を欠き、派生著作ではなく、元の図形と変わらないので、著作権法で保護されるものと認めることは困難である。検察官によって提示された証拠は、被告人による写真機器を使用した前記広告看板の写真撮影、公開展示、及び公開伝送のどこが著作権法に違反する犯行なのかを証明するには不十分であり、無罪とすべきである。

II 判決内容要約

台湾彰化地方裁判所
【裁判番号】111年度智易字第4号判決
【裁判期日】2022年6月21日
【裁判事由】著作権法違反

公訴人 台湾彰化地方検察署検察官
被告人 詹桀秩

主文
詹桀秩は無罪。

一 事実要約
「台湾古董雜貨珍藏圖鑑」著書(王思迅、呉志鴻、胡紅明共著)の「花王洗髮粉」「公衆電話」…などの広告看板の写真はすべて書籍の共著者、即ち告訴人胡紅明が執筆したものであり、被告は写真機材を使って前記広告看板の写真を撮影し、更に大画像出力して鉄板に貼付する方法で、複製、公開展示、公衆送信によって、友人である彭彦翔が運営する「蒝味蔬食懷舊小吃」店内に掛け、更に「蒝味蔬食懷舊小吃」のFacebookソーシャルネットワーキングサイトのファングループで公開した。被告人が著作権法第91条第1項の無断で複製の方法を以て他人の著作財産権を侵害し、第92条の無断で公開伝送及び公開展示により他人の著作財産権を侵害したと告訴人は認識した。

二 本件争点
告訴人が執筆した「台湾古董雜貨珍藏圖鑑」は著作権法で保護されるか?

三 判決理由の要約
(一)写真の著作物は、主題の選択、光と影の処理、修飾、組み合わせ、またはその他の芸術的な造形方法をもって、カメラにより制作された作品であって始めて保護を受ける。単純にカメラで撮影した実物の写真は、著作権法でいう著作と認定することは難しい(最高裁判所98年度台上字第1198号判決要旨を参照)。

(二)告訴人が執筆した「台湾古董雜貨珍藏圖鑑」の内容は、台湾の日本統治時期及び台湾早期農業時代の旧時代の商品、広告看板または看板などを集めてまとめたものであり、写真を撮った後にテキスト解説を付けて編纂して出版したものである。その撮影内容または商標権がある他人の商標、実物商品、広告看板及び看板を対象とした内容であり、その目的は、旧時代の現物の実際の色彩と形を再現することである。そのうち、「花王洗髮粉」、「王子麵」、「森永」……等などの看板写真はすべて他人の平面商標または製品写真であり、告訴人は単に撮影しただけであり、他に「二次的著作物」にあたるフォント、色味の調整または改作等は行っていない。また「公衆電話」の看板の写真内容については、「公衆電話」の4文字、初期のダイヤル式電話の図形、英語「PUBLICTELEPHONE」及び赤い右矢印記号であり、単に公衆電話の位置を示しているだけであり、創作性があると認定することは難しい。よって、告訴人は、前記物件について平面、非立体、非カラーグラデーションの「実物を撮影したのであり」、これは各広告看板、看板の写真を単純に複製する行為であり、前記最高裁判所の判決要旨によれば、告訴人の前記図鑑にある広告看板、看板の写真は写真家の個性または独自性を表現するのに十分とは言い難い、または、写真家の内面の考えや感情を表現するのに十分な芸術的な形式であるとも言い難いものであり、創作性に欠け、著作権法で保護される写真著作と認定することは難しい。

(三)著作権法第6条では、「原著作物を改作した創作は二次的著作物であり、独立の著作物としてこれを保護する。二次的著作物に対する保護は、原著作物の著作権に影響を及ぼさない」と規定されている。「二次的著作物」は著作権法で保護されるが、それは改作された部分のみで、改作されていない場合、著作権は依然として元の著作権者に属する。本件告訴人は、他人の商品名称またはロゴ、即ち他人の図形著作を書籍にまとめ、且つテキスト解説を追加し、大変な工夫を重ねたので、高齢者は昔を懐かしむことができ、心が癒されるが、改作はなく(告訴人の図鑑内容はレトロ、ノスタルジックを標榜しているので、本質的に改作に適さない)、即ち創作性に欠け、二次的著作物でもなく、元の図形と変わらないので、著作権法で保護されるべきだと認定することは難しい。よって、検察官が提示した証拠だけでは、被告人が著作権法違反の罪を犯したことを証明するには不十分であり、被告人の犯行について立証することができないので、無罪判決を下すべきである。

2022年6月21日
刑事第八廷裁判官 梁義順

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