ホテル客室デザインの模倣は著作権法が保護する建築著作に当たらなくても、なお公平取引法第25条の規定違反に当たる。
2023-10-25 2022年
■ 判決分類:著作権、公平取引法
I ホテル客室デザインの模倣は著作権法が保護する建築著作に当たらなくても、なお公平取引法第25条の規定違反に当たる。
■ ハイライト
被上訴人と上訴人による著作権侵害にかかわる財産権争議等の事件について、上訴人が2018年9月14日付知的財産裁判所104年度著訴字第32号第一審判決を不服として上訴し、知的財産裁判が107年度民著上字第16号判決でその上訴を棄却した後、最高裁判所が第一回目の差し戻しを行った。知的財産裁判所に差し戻された後、係争ホテル客室のデザインは著作権法に保護される建築著作に該当しないが、上訴人が被上訴人の係争デザイン成果を剽窃したことは、公平取引法第25条規定に違反すると認められた。
知的財産裁判所による判決は前述事件について、次の点を指摘した。
1.インテリアデザインは著作権法第5条第1項第9号建築著作の保護客体に該当するが、ただし、建築著作と無関係の家具調度品のレイアウト及び慣用レイアウトは排除すべきである。係争デザインは家具調度品のレイアウトに独創性があると言っても、それは建築著作の本質とは無関係であり、著作権法で保護される「建築著作」に当たらない。
2.さらに、上訴人より提出された桂田ホテルの現場写真、君品ホテルと桂田ホテルウェブサイトの客室との比較図、君品ホテル「デラックスルーム」と桂田ホテルダブルルームの実際の比較写真を見比べたところ、両者の客室内大部分の家具調度品ないしうがいコップデザインの選択及びレイアウト位置とも同様または類似性が高いことから、上訴人が君品ホテルの係争デザイン内容を現地で測量し、君品ホテルのルームデザインを模倣し、桂田ホテル客室の室内デザインに使用したと認められる。よって、上訴人は君品ホテルの独創性のある係争デザインを大量に模倣して桂田ホテルの「爵士ツインルーム」、「尊爵ダブルルーム」、「伯爵ツインルーム」の室内デザインに使用していると認定することができる。被上訴人の室内デザインを模倣したため、双方の間で私法上の利益分配不均衡が形成され、取引秩序に影響を与えたので、公平取引法第25条の規定違反は明らかである。
II 判決内容の要約
知的財産及び商事裁判所
【判決番号】110年度民著上更(一)第1号判決
【裁判期日】2022年10月13日
【判決事由】著作権侵害における財産権争議等
上訴人 桂田璽悅ホテル股份有限公司
兼上一人
法定代理人 朱仁宗
被上訴人 雲朗観光股份有限公司
法定代理人 辜懷如
前記当事者間による著作権侵害に関わる財産権争議等の事件について、上訴人は2018年9月14日当裁判所104年度民著訴字第32号第一審判決を不服として上訴し、当裁判所が107年度民著上字第16号判決で上訴を棄却した後、最高裁判所より第一回目の差し戻しがあり、被上訴人が訴えの変更を行った。2022年9月1日に当裁判所における口頭弁論が終結したので、以下のとおり判決する。
主文
一、上訴を棄却する。
二、上訴人は費用を連帯負担し、本件最終事実審判決書の当事者、事由及び主文の内容を聨合報全国版第一面下半面にコンピュータ標楷体10号字体で一日掲載しなければならない。
三、第一、二審(確定部分を除き)及び差戻し前の第三審訴訟費用はすべて上訴人が連帯負担する。
一 事実要約
上訴人朱仁宗(以下朱仁宗という)は上訴人桂田璽悦ホテル股份有限公司(以下桂田公司という)の責任者であり、2014年5月2日、5月5日に君品ホテルに泊まる機会を利用し、君品ホテルの係争デザインを複製し、その経営している桂田ホテルの客室デザインに使用した。
二 双方当事者の請求内容
(一)上訴人上訴の請求
1.原判決における上訴人に不利益な部分は確定部分(被上訴人による一審敗訴の新聞掲載にかかる部分)を除き、破棄する。
2.上記破棄の部分について、被上訴人の第一審の上訴及び仮執行の請求を棄却する。
3.被上訴人による訴えの変更請求を棄却する。
4.もし、不利な判決が下された場合、上訴人は担保を供託して、仮執行免除の宣告を請求する。
(二)被上訴人の答弁
上訴を棄却し、判決の掲載に関して、訴えの声明を以下のとおり変更する。上訴人が費用を連帯負担し、本件最終事実審判決書の当事者、事由及び主文の内容を聨合報全国版第一面下半面にコンピュータ標楷体10号字体で一日掲載しなければならない。
三 本件の争点
(一)被上訴人の係争デザインは著作権法により保護される「建築著作」に該当するか?
(二)上訴人は係争デザインを模倣し、公平取引法第25条(即ち改正前第24条)に違反し、取引秩序に影響を与える欺瞞または著しく不公正な行為があったか?
(三)被上訴人による上訴人に対する連帯損害賠償、侵害排除及び判決内容掲載の請求には理由があるか?
四 判決理由の要約
(一)インテリアデザインは著作権法第5条第1項第9号建築著作の保護客体に該当するものの、建築著作の本質と無関係の家具調度品のレイアウト及び慣用レイアウトは排除すべきである。
室内空間全体のデザインから見れば、君品ホテル客室の家具デザインや選定は、デザイナーのインテリアにおける芸術的美学の個性及び独特性を表し、並びにデザイナーが新しい芸術に満ちたスタイルまたは雰囲気を伝えようとする意図を関連消費者に感じさせる独創性を有する。しかし、前記家具やレイアウトは自由に移動したり部屋の構造から分離したりすることができ、且つ家具やレイアウトが形成する芸術美感も、建築著作物の本質とは無関係であり、建物の内部構造や使用上区別が難しい一部分には当たらないことから、前述に基づいて、建築著作の保護を受けるものとは認め難い。
上訴人は、君品ホテルの係争デザインが業界ではよくある慣用レイアウトであり、建築著作の本質とは無関係な家具及びレイアウトであり、独創性がないので、たとえそれが採用できるものであり、係争デザインは著作権法で保護される建築著作に該当しないと認めるべきだと抗弁した。したがって、被上訴人が係争デザインは建築著作であり、上訴人が不法に複製して被上訴人の著作財産権を侵害したと主張したことには、根拠がなく、採用することができない。
(二)係争デザインは、被上訴人が完成させたインテリアデザインの成果であり、並びに独創性及び経済利益を有する。
朱仁宗が君品ホテルに泊まった目的は宿泊ではなく、同行者が見学名目で、君品ホテルの前記客室の係争デザイン内容に接し、並びに写真撮影及び現場で測定できるようにして、実際の室内家具及びレイアウトを詳細に記録し、模倣の参考とするためであったので、このような手段は明らかに同業者間の正当な見学ではない。
台湾経済研究院が発行した鑑定書の結論は次のとおりである。「鑑定対象である桂田ホテルの対応する3つの客室タイプの内装デザインは、君品ホテルが提出した客室タイプの内装デザイン成果を剽窃し、並びに自社のハードウェア制限及びデザインに基づき、少々調整したものだと認められる」。したがって、上訴人は君品ホテルの独創性のある係争デザインを大量に模倣し、並びに桂田ホテルの「爵士ツインルーム」、「尊爵ダブルルーム」及び「伯爵ツインルーム」のインテリアデザインに使用し、被上訴人が完成させたインテリアデザインの成果を搾取したと認めるに十分である。
(三)本件上訴人桂田公司が被上訴人の係争デザイン成果を搾取したあきらかに公平でない行為は、すでに公平取引法第25条の規定に違反し、且つ桂田公司の責任者である朱仁宗は、職務の執行のため本件侵害行為を構成したので、会社法第23条2項規定に基づき、桂田公司と連帯して、損害賠償責任を負わなければならない。よって、被上訴人による上訴人に対する連帯損害賠償責任の請求には根拠がある。
(四)係争デザインをこのように大量コピーしたものが存在し続けることにより、被上訴人が受ける損害も継続又は拡大する恐れがあることから、被上訴人は、侵害排除又は防止請求権を行使し、上訴人に対し、台東にある桂田ホテル客室内における君品ホテル「パーラールーム(雅緻客房)」、「デラックスルーム(豪華客房)」、「エグゼクティブデラックスルーム(行政豪華客房)」の係争デザインを模倣した付表のとおりの物品を撤去・削除し、それを撤去・削除するまで、関連消費者にその使用を提供してはならないと請求したことには、根拠がある。
(五)被上訴人は、故意に現地写真撮影、測量の方法によって、係争デザインを高度に模倣し、並びに桂田ホテルの客室に使用し、被上訴人が努力したデザイン成果を不当に榨取したのみならず、模倣した客室デザインを現在まで保留しており、市場の公正競争秩序を破壊し、関連消費者の取引判断に影響を与えている。被上訴人の名誉を適切に挽回するためには、上訴人が公正競争違反の不法侵害事情があると認定されたことを社会に知らせる必要がある。よって、当裁判所は、上訴人が連帯して費用を負担し、最終事実審判決書の当事者、事由及び主文の内容を聨合報全国版第一面下半面にコンピュータ標楷体10号字体で一日掲載する旨の被上訴人の請求は、比例原則及び相当性原則の要件を満たしており、適切であると認める。
(六)結論:本件上訴人の上訴には理由がない。一方、被上訴人の訴えの変更には理由があるので、知的財産案件審理法第1条、民事訴訟法第449条第1項、同法第78条及び同第85条第2項の規定に基づき、主文のとおり判決する。
2022年10月13日
知的財産裁判所第1法廷
審判長裁判官 蔡恵如
裁判官 陳端宜
裁判官 呉俊龍