著作権の独占的利用許諾契約が元来書面の要式契約ではなく、許諾者と被許諾者が契約の本質的な要素について意思表示が一致している場合、独占的利用許諾契約はすでに成立しており、双方が後日書面で許諾の内容を補充することは、独占的利用許諾関係の成立に影響しない。

2023-11-22 2022年

■ 判決分類:著作権

I 著作権の独占的利用許諾契約が元来書面の要式契約ではなく、許諾者と被許諾者が契約の本質的な要素について意思表示が一致している場合、独占的利用許諾契約はすでに成立しており、双方が後日書面で許諾の内容を補充することは、独占的利用許諾関係の成立に影響しない。

II 判決内容の要約

知的財産及び商事裁判所民事判決
【裁判番号】111年度民著訴字第40号
【裁判期日】2023年2月24日
【裁判事由】著作権侵害行為の排除

原   告 車庫娯楽股份有限公司(Garageplay Inc.)
法定代理人 邵光琦
訴訟代理人 黃翔瑜
      楊孟霏
      徐則鈺弁護士
被   告 蔣孟宏即ち觸電網工作室(Truemovie Studio)

上記当事者間の著作権侵害排除(差止請求)事件について、原告本裁判所は2023年1月18日に口頭弁論を終え、次のように判決する。

主文
1.被告は添付資料に示されている視聴著作物(訳注:「映画の著作物」に相当)について、添付資料の「利用許諾期間」の欄に示されている期間にYouTube(添付資料「YouTubeリンク」の欄に示されているリンクを使用してはならないことを含む)において、中華民国地区(台湾、澎湖、金門、馬祖)で公衆送信の方式により利用してはならない。
2.訴訟費用は被告の負担とする。

一 事実要約
原告は映画配給業者であり、本判決の添付資料に示されている合計118件の視聽著作物(以下「係争視聴著作物」と総称する)に係る独占的利用許諾の被許諾者であり、許諾期間において法に基づき係争視聴著作物の独占的利用権を有する。被告はYouTubeチャンネル「觸電網‐True Movie電影情報入口網」(以下、「係争チャンネル」という)の経営者であり、その経営方式は、各種映画の予告篇を複製した後に係争チャンネルにアップロードし、公衆送信の方式でYouTubeにおいて大衆の視聴に供するというものである。原告は2022年3月31日から、被告が原告の同意又は許諾を受けずに、即ち無断でそれが経営する係争チャンネルで係争視聴著作物を大衆がアクセスして視聴できるように提供していることを発見した。原告は2022年3月31日及びその翌日にそれぞれYouTubeに対して削除リクエストを通知し、係争視聴著作物はすでにYouTubeから一時的にブロックされたが、被告はなお2022年4月4日及び同年月10日にYouTubeに異議申立てとコンテンツ復元の要請を行った。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告の請求:
1.添付資料に示されている視聴著作物(訳注:「映画の著作物」に相当)について、添付資料の「利用許諾期間」の欄に示されている期間に、被告はYouTube(添付資料「YouTubeリンク」の欄に示されているリンクを使用してはならないことを含む)において、中華民国地区(台湾、澎湖、金門、馬祖)で公衆送信の方式により利用してはならない。
2.訴訟費用は被告の負担とする。
(二)被告の答弁:
1.原告の訴えを棄却する。
2.訴訟費用は原告の負担とする。

三 本件の争点
(一)原告は係争視聴著作物に係る独占的利用許諾の被許諾者であるのか。
(二)原告が著作権法第84条規定により侵害排除を請求することに理由はあるのか。

四 判決理由の要約
(一)原告は係争視聴著作物に係る独占的利用許諾の被許諾者である
1.「独占的利用許諾の被許諾者は許諾された範囲において、著作財産権者の地位を以て権利を行使することができ、また自らの名義で訴訟上の行為をなすことができる。著作財産権者は独占的利用許諾の範囲内において、権利を行使することはできない。」と著作権法第37条第4項に規定されている。これに照らして、第三者による著作権侵害について、独占的利用許諾の被許諾者は著作権侵害の被害者であり、告訴又は私人追訴を提起することができ、民事訴訟を提起して権利侵害行為者に損害賠償を請求する、又は著作権を行使することもできる。独占的利用許諾の被許諾者は利用許諾の範囲において、著作物の独占的利用を行う権限を取得し、許諾者は同じ利用許諾の範囲における内容を、第三者にさらに許諾することはできず、自らも権利を行使することはできない。独占的利用許諾の被許諾者が著作財産権を使用する権利を侵害されたときは、著作財産権者の権利が侵害されたものと異なるところはない。
2.原告は自らが係争視聴著作物に係る独占的利用許諾の被許諾者であると主張して、原告証拠一、二として動画利用許諾書を提出し、さらに本裁判の審理中に原告証拠十一として利用許諾証明書及び映画レイティング証明を提出して、係争視聴著作物は元来の著作権者が、許諾者に独占的利用を許諾し、許諾者がさらに原告に独占的利用を許諾したこと等を証明した。調べたところ、原告が本件訴訟において提出した原告証拠十一は、2022年11、12月に締結された利用許諾証明書であるが、著作権の独占的利用許諾契約が元来書面の要式契約ではなく、許諾者と被許諾者が契約の本質的な要素について意思表示が一致しており、独占的利用許諾契約はすでに成立している。被告は、原告証拠一、二の動画利用許諾書には許諾の範囲に予告編、メイキング映像、宣伝動画が含まれるのかが記載されておらず、著作権法第37条第1項規定により、独占的利用権を取得していないものと認めなければならない云々と答弁したため、その後原告は原告証拠十一の利用許諾証明書を提出し、それには原告が係争視聴著作物に係る独占的利用許諾の被許諾者であること以外に、その許諾範囲として「映画本編、並びに許諾者が提供した、被許諾者が改変した、及びその他の第三者が改変した利用許諾の映画の予告編、メイキング映像及び広告の素材等」、許諾の権利として「複製権、翻案権、頒布権、貸与権、公衆放送権、公衆上映権、公衆送信権等の権利」という内容が記載されているため、原告証拠十一の利用許諾証明書は原告証拠一、二の動画利用許諾書を実質的に補充するものであり、また原告が係争視聴著作物に係る独占的利用許諾の被許諾者であることとその許諾の範囲を証明しており、原告が原告十一を提出して原告証拠一、二の証明を補充することは、法律上許されないことではない。したがって、原告はすでに独占的利用許諾を受けており、係争視聴著作物について権利を行使することができる。原告証拠十一は訴訟に際して制作したものであり、原告が係争視聴著作物に係る独占的利用許諾の被許諾者であることを証明することはできない云々とする被告の抗弁は、採用できるものではない。

(二)原告は著作権法第84条規定により、被告による係争視聴著作物に対する侵害の排除を請求することができる
1.「著作者は、本法に別段の定めがある場合を除き、その著作物を公衆送信する権利を専有する」という著作権法第26条の1第1項の規定、さらには「著作権者は、その権利を侵害した者に対し、その侵害の排除を請求することができる」という第84条の規定により、独占的利用許諾の被許諾者が著作財産権を使用する権利を侵害されたとき、著作財産権者の権利が侵害されたのと同じである。著作権法第84条に著作権が侵害されたとき、侵害の排除と防止を請求する主観的要件が規定されていないが、侵害の排除は不作為請求権であるため、客観的に侵害の事実又は侵害のおそれが十分であれば、侵害者の主観的要件を論じる必要はなく、かつ権利の内容の完全な実施において、ある種の事由の妨害又は妨害のおそれを受けたならば、権利の所有者は当然ながらその妨害の排除を請求して権利の完全性を保全する権利を有し、即ち権利侵害者の主観的要件とは関係ない。また侵害防止の請求権は、侵害行為がすでに発生していることに限るものではなく、侵害行為がまだ発生していないが、現在の危険な状態について判断し、権利が将来侵害を受ける可能性が高ければ、事前に防止する必要がある。
2.調べたところ、原告が係争視聴著作物に係る独占的被利用許諾者であることはすでに前述した通りであり、原告の係争視聴著作物に係る複製権、公衆送信権という権利が侵害された場合、著作権者の地位を以て訴訟で侵害排除の権利を行使することができる。被告は反論において、係争チャンネルの係争視聴著作物はいずれも映画が公開される以前に、映画制作会社が電子メールで提供した宣伝素材であり、映画制作会社の宣伝活動に合わせて、映画配給会社が電子メールで送信した宣伝素材であり、被告は事後に再びアップロードしておらず、係争視聴著作物は係争チャンネルでネット利用者の検索に供されているにすぎず、原告はこの部分の係争視聴著作物について被告に係争チャンネルにおける公衆送信を許諾したものであり、原告はその後再び許諾していないが、被告は再びアップロードしておらず、すでに権利侵害はない等と主張した。しかしながら調べたところ、たとえ原告がこの部分の係争視聴著作物について被告に係争チャンネルにおける公衆送信を許諾していたとしても、被告はこれが映画制作会社の宣伝活動であることを否定しておらず、また双方は被告が係争チャンネルで係争視聴著作物を公衆送信し続けてもよいと約定しておらず、ましてや被告は映画宣伝活動後において係争視聴著作物に係争視聴著作物のメイキング映像、予告編等を含むことを確認していない。原権利者が係争チャンネルに残すことに同意しているのか、又は他人に独占的利用を許諾しているのかという状況によって、被告の係争チャンネルが係争視聴著作物を公衆送信し続けることができるのかが左右されることは、疑いの余地がない。
さらに、本件原告はまずYouTubeに通報し、その後本件訴訟を提起していること等から、原告は被告が係争チャンネルで係争視聴著作物を公衆送信することに同意していないことは明らかである。よって被告が原告の同意又は利用許諾を得ずに、係争視聴著作物を係争チャンネルで公衆送信したことは、原告が係争視聴著作物を公衆送信する著作財産権を侵害するものである。これにより、原告が著作権法第84条に基づき係争視聴著作物の侵害排除又は防止を請求することには理由があり、認めるべきである。

以上の次第で、本件原告の訴えには理由があり、知的財産事件審理法第1条、民事訴訟法第78条に基づき、主文の通り判決する。

TIPLO ECARD Fireshot Video TIPLO Brochure_Japanese TIPLO News Channel TIPLO TOUR 7th FIoor TIPLO TOUR 15th FIoor