テレビチャンネルの著作権を侵害、台湾安博の創業者に懲役4年、損害賠償1.3億新台湾ドルの判決

2024-11-21 2024年

■ 判決分類:著作権

I テレビチャンネルの著作権を侵害、台湾安博の創業者に懲役4年、損害賠償1.3億新台湾ドルの判決

II 判決内容の要約

台湾新北地方裁判所刑事付帯民事訴訟判決
【裁判番号】112年度智重附民字第3号
【裁判期日】2024年2月27日
【裁判事由】著作権法

原告  愛爾達科技股份有限公司(ELTA Technology Co., Ltd.)
被告  台灣安博企業有限公司(Unblocktech Taiwan Co., Ltd.)
代表者兼被告  黃博詮

上記被告は著作権法違反等事件(本裁判所112年度智訴字第3号)により、原告は刑事付帯民事訴訟を提起して損害賠償を請求し、本裁判所は2023年11月15日に口頭弁論を終え、次の通りに判決する。

主文
一、被告は、原告に対し、連帯で750万新台湾ドル、及び被告台湾安博企業有限公司は2023年8月7日から、被告黃博詮は2023年7月26日から、いずれも支払い済みまで、年5分の割合による金員を週ごとに支払え。
二、本判決第一項については、原告が750万新台湾ドルを以って被告に担保を立てたとき、仮執行をすることができる。ただし被告が750万新台湾ドルを以って原告に担保を立てたときは、仮執行を免れることができる。
三、原告のその余の請求及び仮執行宣言申立てをいずれも棄却する。

一 事実要約
被告黃博詮は中国大陸地区の氏名不詳、自称「許先生」(訳注:「Mr.許」の意味)という人物及びそれが属する中国犯罪グループのメンバーと、共同で販売を目的として無断で複製、公衆送信という方法で原告の「愛爾達體育一台」、「愛爾達體育二台」、「愛爾達體育三台」等のチャンネル番組の著作財産権を侵害するという犯意の連絡をとり、被告黃博詮が「愛爾達電視」の会員アカウントとパスワードを「許先生」に提供し、会員に配られる配信証明M3U8ファイルを取得し、これで上記チャンネルの番組の信号を収集し、デコーダーでネットワークパケットに変換して複製し、ネットワークを通じてサーバにアップロードし、「安博盒子」にインストールされた「UBTV」、「UBLIVE」等のアプリで上記チャンネルの不特定多数の者が鑑賞できるように公衆放送して、原告の「愛爾達體育一台」、「愛爾達體育二台」、「愛爾達體育三台」等チャンネル番組の著作財産権を侵害した。台湾新北地方検察署は110年度偵字第45656号、111年度偵字第50541号、111年度偵字第60128号、111年度偵字第60130号を以って公訴した。

二 両方当事者の請求内容
 (一)原告の請求:
1.被告等は、原告に対し、連帯して金1500万新台湾ドル及び起訴状副本送達の翌日から支払い済みまで、年5分の割合による金員を支払え。
2.被告等は、連帯して費用を負担し、本件判決書の主文及び事実の部分を、同日に、中国時報、聯合報及び自由時報の第一面の半十サイズ(訳注:新聞一面を縦横で割り四分の一にしたサイズ)に各1日掲載せよ。
3.第一項の請求について、原告は担保を条件とする仮執行宣言を求める。
4.訴訟費用は被告の負担とする。
(二)被告の答弁:
1.原告の訴え及び仮執行宣言申立てを棄却する。
2.不利な判決を受けたときは、担保を条件とする仮執行免脱の宣言を求める。

三 判決理由の要約
 (一)刑事訴訟法第500条には、付帯民事訴訟の判決は、刑事訴訟の判決により認定された事実に依拠しなければならないと定められている。本件被告黃博詮は2017年に「許先生」等と共同で販売を目的として無断で複製、公衆送信することにより他人の著作財産権を侵害するという犯意の連絡に基づいて、被告黃博詮が台湾安博公司を設立し、2017年9月29日から2021年10月7日に検挙されるまで、被告台湾安博公司、訴外人盛智公司、安博智能公司の名義でセットトップボックス(STB)を国家通訊伝播委員会、経済部標準検査局が委託する検査機関の検査に送って、検査に合格した後、NCC型式認証合格ラベル、BSMI商品検査マークの様式(訳注:認証マークや識別番号など商品に表示すべき内容などを含む)を「許先生」等に提供し、「許先生」等が中国大陸地区で生産した「安博盒子」に表示した後、黃博詮とライセンス契約を結んで輸入手続きを行う台湾地区の代理店に出荷し、代理店がさらに川下の販売店又は小売店に転売し、実体店舗又はネットサイトで消費者に販売して利益を上げた。被告黃博詮は原告等公司に許諾を得ず、友人である洪子喬、徐柏揚に「四季線上」、「愛爾達電視」、「LiTV」のオーバー・ザ・トップ・メディアサービス(OTT)会員アカウントを取得させ、「許先生」等はこの配信証明で原告の付表番号1に示されるチャンネル業者の映像著作物の有線テレビチャンネル信号を収集し、デコーダーでネットワークパケットに変換して複製し、すぐにインターネットを通じてクラウドサーバにアップロードし、さらに「安博盒子」にインストールされた「UBTV」、「UBLIVE」等の専用アプリでリアルタイムに放映されている番組を視聴する消費者に公衆送信し、「愛爾達體育一台」、「愛爾達體育二台」、「愛爾達體育三台」等チャンネル内の映像著作物の著作財産権を侵害した。この部分は本裁判所の112年度智訴字第3号刑事判決により明確に認定されており、原告等公司が被告には前述著作財産権侵害の事実があるという主張は認定するに堪える。
 (二)被告黃博詮にはすでに原告等の著作財産権を侵害した事実があり、原告等は著作権法第88条第1項、公司法(会社法)第23条第2項規定により被告黃博詮、台湾安博公司に連帯して賠償責任を負うよう請求することには、確かに根拠があるものである。
 (三)裁判所は当該規定(著作権法第88条第3項)により損害賠償額を斟酌して定める時、1985年7月10日制定及び1992年6月10日改正の原則を踏襲すべきであり、侵害された著作物1点当たりの下限を1万新台湾ドル、上限を500万新台湾ドルとして計算のベースとすることで、著作権法が裁判所による損害賠償額の斟酌算定に関する立法趣旨に適合するものとなる。調べてみると、次の通りである。
1.本件は被告黃博詮を除き、「許先生」は中国大陸地区の人民であり、かつ出廷しておらず、それらの本件侵害行為により得た利益の額は調査するのが困難であり、原告等はその実際の損害額を証明することが容易ではなく、原告等は著作権法第88条第3項の規定により、本裁判所に侵害の情状を斟酌して賠償額を算定するよう請求することは根拠があるものである。
2.このため被告黃博詮が「許先生」等の犯罪グループに参加して、権利侵害の垂直産業チェーンを共同で形成し、一般民衆の法令遵守の概念を混乱させ害し、その期間が4年以上に達し、著作財産権侵害の数量が多く、毎年100~200万新台湾ドルの利益を得たこと等と自供している。かつ被告及び「許先生」等は安博盒子を以って故意に国境を越えた信号窃取行為を行い、その期間は4年にも及び、原告の上記チャンネル内の番組に対して、故意に為され、且つ情状が重大である権利侵害行為である。原告は会社法人であり、被告黃博詮の学歴は大学卒業で、土地開発に従事していると自供しており、被告台湾安博公司の代表者であり、双方の経済力並びに本裁判所の刑事判決で被告人黃博詮に懲役4年、被告人台湾安博公司に100万新台湾ドル等の刑が科す判決が下されていること等の一切の情状を斟酌した結果、原告がそれぞれ被告に賠償を請求できる金額は、著作権法第88条第3項後段により、斟酌して1チャンネル当たり250万新台湾ドルと算定するのが妥当である。
 (四)著作権法第89条には、被害人は、侵害者に、費用を負担して判決書内容の全部又は一部を新聞紙、雑誌に掲載することを請求することができると規定されている。ただし本件はすでに審理を経て判決が下されており、本裁判所は被告が上記損害賠償責任を負うべきであることを斟酌すると、客観的に原告がこれにより受けた損害を補填するのに十分であり、また裁判所の判決はいずれもすでにネット上における大衆の自由閲覧や新聞報道に供されているため、双方の争議は十分に明確であるはずである。したがって、原告が被告に対し、連帯して費用を負担し、本件判決書の全部の内容を訴えの趣旨に示される新聞に掲載するよう請求することは、必要がなく、棄却すべきである。

以上の次第で、知的財産事件審理法第54条第1項、第63条第2項,刑事訴訟法第502条第1項、第2項により、主文の通り判決する。

2024年2月27日
刑事第十九法廷
裁判長  許博然
裁判官  王國耀
裁判官  洪韻婷

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