飛碟ラジオ公司が実質的に中国ラジオ公司を支配し、違法な企業結合を構成したとして公平会が処罰。 高等行政裁判所がこれを取消し。中国ラジオ事件で飛碟公司が罰金300万元の支払いを回避。

2014-05-15 2011年

■ 判決分類:不正競争

I 飛碟ラジオ公司が実質的に中国ラジオ公司を支配し、違法な企業結合を構成したとして公平会が処罰。
高等行政裁判所がこれを取消し。中国ラジオ事件で飛碟公司が罰金300万元の支払いを回避。

■ ハイライト
公平会は、二年ほど前に中国ラジオと飛碟ラジオの企業結合の違法性を認め、また故意にNCCに申告しなかったとして、飛碟公司に対し罰金三百万元を科して即刻改正するよう求めた。台北高等行政裁判所は、公平会の処分について積極的な証拠を欠き、処罰基準が不明確だとして、昨日判決を取消した。
公平会は、飛碟公司が好聴、悅悅、播音員、広播人等四公司を通じて、実質的に中国ラジオ公司を支配し、趙少康氏が中国ラジオ董事長兼総経理を勤めて、同時に飛碟の幹部に中国ラジオの幹部に就任するよう指示したことが違法な企業結合を構成する上、直ちに公平会へ申告しなければならない義務を怠ったことには重大な違法性があると認定した。
また、もう一つの争点は、公平会が潤利公司による北部地区聴取率調査結果を元に、本件企業結合が申告すべき基準に達したと認めたことである。
台北高等行政裁判所は飛碟公司の売上高、市場規模が中国ラジオよりはるかに小さく、「市場」で同等地位の「事業者」であるとは言えないのにもかかわらず、趙少康が妻の梁蕾と共同で中国ラジオ株式を購入する前に、飛碟公司責任者の職を辞して購入したことは個人的行為であり、飛碟公司が中国ラジオ業務及び人事を支配したとは認め難いと指摘した。
公平会が提出した聴取率調査について、裁判所は客観的な事証を欠いている上、異なる時間のラジオ市場聴取率を市場占有率の依拠としており、また調査地域も実況に合致していないので、これを以って申告基準に達したとして飛碟公司を処罰することはできないと認定した。(2010-01-16/聯合報/A2/記者王文玲)

II 判決内容の要約

基礎データ

台北高等行政裁判所判決
【裁判番号】97年度訴字2191号 
【裁判期日】2010年1月14日 
【裁判事由】公平交易法

原告 飛碟ラジオ股份有限公司
被告 行政院公平交易委員会

上記当事者間の公平交易法事件について、原告は行政院2008年6月26日付中華民国院台訴字第0970086354号訴願決定を不服とし、行政訴訟を提起したが、本裁判所は以下のように判決する。

主文
訴願決定及び原処分をいずれも取消す。
訴訟費用は被告が負担する。

一 事実要約
国家通信通ラジオ委員会(以下、通伝会)は被告に書簡を送付し、中国ラジオ股份有限公司(以下、中国ラジオ公司)がその法人株主である華夏投資股份有限公司(以下、華夏公司)が所有する当該公司の株式を好聴股份有限公司(以下、好聴公司)、悅悅股份有限公司(以下、悅悅公司)、播音員股份有限公司(以下、播音員公司)及び広播人股份有限公司(以下、広播人公司)等の4公司に譲渡すると同時に責任者の変更を届出し、訴外人趙少康が中国ラジオ公司董事長兼総経理に就任すると当該会に申告した。趙少康の配偶者即ち訴外人梁蕾が原告34%の株式を有している上、好聴公司等4公司の一部の董、監事が原告又はその聯播ラジオ局の従業員であることから、本件は公平交易法規定の企業結合行為にあたるので申告が必要なのかが問題とされた。被告が調査した結果、原告が中国ラジオ公司の業務経営及び人事任免を支配したことは、公平交易法第6条第1項第5号に規定されている企業結合の態様に該当しするとともに、既に同法第11条第1項第1号及び第2号で所定の申告基準に達しているのにもかかわらず、事前に通伝会に申告しなかったので、公平交易法第11条第1項規定違反の事情があるとし、2008年1月14日に公処字第097003号処分書(以下、原処分)を以って、原告に処分書送達の翌日より、その行為を改正するか若しくは必要な是正措置をとるべきであると命じ、300万新台湾ドルの罰金を科した。原告はこれを不服として訴願を提起したが棄却するとの決定を受けたので、本裁判所に行政訴訟を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告声明:訴願決定、原処分の取消し。訴訟費用の被告による負担。
(二)被告声明:原告の訴えの棄却。訴訟費用の原告による負担。

三 本件の争点
本件双方の争点は原告が中国ラジオ公司の業務経営及び人事任免を支配し、公平交易法第6条第1項第5号規定の企業結合の態様に該当するかどうか?である。被告は潤利公司北区聴收率の調査結果を元に、係争企業結合が既に公平交易法第11条第1項第1号及び第2号所定の申告基準に達したと認めたことには、法的根拠があるか?
(一)原告側の主張:略。判決理由の要約を参照。
(二)原告側の主張:略。判決理由の要約を参照。

四 判決理由の要約
(一)「本法においての結合とは、事業者が次の各号の一に該当する場合をいう。:……五、直接又は間接的に他の事業者の業務経営又は人事の任免を支配する場合。」、「事業結合が、次に挙げる場合の一に該当するときは、予め中央主管機関に申告しなければならない。一、事業者の結合により、その市場占有率が三分の一に達する場合。二、結合に参加した事業者の一の市場占有率が四分の一に達する場合……と、公平交易法第6条第1項、第11条第1項にそれぞれ明文で定められている。つまり、結合に参加した事業者がもし、公平交易法第6条第1項第5号、第11条第1項第1号及び第2号所定の事情に該当する場合、その支配する事業について当該法に基づき被告に事前申告する義務がある。いわゆる結合支配とは、市場に対し「経済力」を集中的に支配するものであり、大企業が結合した後は、たとえその種の製品の市場占有率がまだ低くても、巨大な財力及び市場支配の地位を有する為に、同じく他の同業者との競争を阻害し、競争効果を減損させるか又は消費者の利益を損う可能性があるので、規制する必要がある。
(二)本件被告による原処分は原告が間接的に中国ラジオ公司の業務経営及び人事任免を支配し、上述「結合」の関連規定に該当することを理由とし、原告を処罰したが、被告が原告の行為が当該要件に該当していることを挙証証明すべきであることについて、以下に論述する。
1.まず、原告と中国ラジオ公司が「市場」で同等の地位を有する「事業者」であるのかについて。
(1)ラジオサービス市場の生態は代替ニーズ及び代替供給の性質であり、取引市場上の潜在競争関係及び影響する可能性のある要素は単純ではない。つまり、被告は原告と中国ラジオ公司が同じく営業前にラジオ許可を取得すべきであることから、同一の「事業者」に属すると認定し、他に代替できる事業があるか及び全ての潜在競争関係を考慮斟酌しなかったので、本件の所謂「事業者」に適切な区別がなされているかどうかについて、確かに争議が存在する。
(2)中国ラジオ公司の市場範囲は全国区であり、その2005、2006年度売上高はそれぞれ747,259,000新台湾ドル、701,308,000新台湾ドルで、全国ラジオの占有率もそれぞれ63.92%、62.75%となっている。一方、原告は単なる中波放送局のラジオサービス業で、地域性の放送局であり、そのカバー範囲は台湾中部、南部及び東部には及んでいないことは、被告も否認しない事実である。原告と中国ラジオ公司はそれぞれ北部と全国区に分かれ、二者の市場も同様に論じることは難しいが(例え全国区が北部もカバーしているとしても)、被告は原告が放送局を置いている地点の大台北地区を地理市場として、北部「市場」を計算の基礎とし、その市場占有率を計算していることは、明らかに軽重の均衡を欠いている疑いがある。
(3)所謂市場占有率とは、一事業者が特定市場で販売する商品若しくは提供するサービスが、当該特定市場の全ての販売商品若しくは提供サービスに占める比率である。それは一定期間内に、ある事業者の特定市場における販売量若しくは売上高等の数字を以って、当該特定市場における全ての供給メーカー総販売量に占めるパーセンテージを計算するものであり、市場占有率は販売金額若しくは販売製品数量によって決まるものである。しかし、所謂「同類市場」については具体的な状況に基づいて定義しなければならず、例えば企業がターゲットを絞った販売計画を立てる際は、その特定地区市場、又はある特定市場等の占有率だけを考慮すればよい。よって市場占有率の実務上の評価は、一般社会通念によって市場占有率を計算する外、更に具体的な状況と要素を総合的に考えなくてはいけないことは、疑いないことである。
(4)しかし、ラジオ業が提供する聴取サービスは無料であり、一般実体販売ではないので、その販売量から市場占有率を算出することはできない。学者や専門家はラジオ業が売上高や広告收入を区別して統計していないので、財務報告も不透明であるとしている。つまり、聴取率はやはり業界で用いることができる市場占有率計算基礎等を根拠としている。
(5)調べてみると、被告は所謂「市場占有率」の定義について、確かに潤利調査研究センター【ラジオ聴取率】の調査を判断根拠としていると主張している。しかし、潤利艾克曼公司の上記調査は2005年及び2006年度第1、2四半期の聴取率調査に依拠しており、本件好聴等公司が中国広播公司の株式を買収した時期は2006年12月末であるので、同一ではない。被告は異なる時期の【ラジオ聴取率】を「市場占有率」の依拠としたので、既に時間上の問題が発生している。なお且つ原告の地理的市場はラジオ放送局区分で「北部地区」(即ち北区)の中の「大台北地区」だけであるのに、潤利調査研究センター【ラジオ聴取率】の調査研究方法は「北部地区」から「大台北地区」の【ラジオ聴取率】を分けていない。即ち上記ラジオ放送局区分による【聴取率】は明らかに原告の地理的市場所在である「大台北地区」の真の【ラジオ聴取率】を表すことができないことは、確かなことである。したがって、被告は経営範囲と市場競爭に関する重要な情報について、法に則った基本的資料の調査を行っていないのにもかかわらず、公正かつ客観的な事実証拠ではない【ラジオ聴取率】調査を引用して「市場占有率」の根拠とした。即ち被告は単純に潤利艾克曼公司北部地区聴取率の調査結果を基礎として係争企業結合が公平交易法第11条第1項第1号及び第2号所定の申告基準に達しているとして、原告に公平交易法違反の参考根拠があると認めてこれを本件処罰の基礎にして認定を行ったことは、実に軽率であったと言える。

2.たとえ原告と中国ラジオ公司が「市場」で同等の地位がある「事業者」であると認められたとして、本件が投資若しくは経営による結合を構成するのか否かについて、以下のように述べる。
(1)本件被告は次のように認定した。即ち好聴等4公司は原告が華夏公司所有の中国ラジオ公司株式を譲受ける為に設立登記したものであり、原告従業員及び其聯播ラジオ局従業員を好聴等4つの公司の少なくとも過半数の董、監事に就任させることで、中国ラジオ公司の業務経営及び人事任免を支配したので、その行為が公平交易法第6条第1項第5号の結合態様に該当するとした。
(2)調べてみると、本件被告は原告が違反した法律が公平交易法第6条第1項第5号、即ち係争事業結合型態が『直接又は間接的に他事業者の業務経営又は人事任免を支配した場合』に、公平交易法第6条第2項「前項第二号の株式又は出資額を計算する時、当該事業と支配若しくは従属関係にある事業者が所有又は取得している他事業者の株式若しくは出資額も併せて計上しなければならない」という規定であり、同条前項第2号の事業者について「他事業者の株式を所有若しくは取得し、他事業者の議決権を有する株式若しくは資本総額の三分の一以上に達したもの」と認定し、事業(企業)「結合」の形態であるとした。これは所謂株式若しくは出資額の計算における規定であり、同条前項第5号を含んではいない。したがって、公司法第369条の11の投資額計算方式に対する基本法の規範は、本件においては認定の根拠にすることができないと言える。
(3)被告は次のように認定した。即ち好聴等4つの公司及び愛説話等4公司はいずれも原告が中国ラジオ公司株式を取得する為に設立され、趙少康(1996年に原告公司を設立)が1996年初めより、華夏公司と当該公司が所有していた中国ラジオ公司株式の譲受けについて交渉しており、2006年6月に配偶者である梁蕾等と共同出資により好聴、悅悅、播音員、広播人等4公司を設立した。更に2006年9月に梁蕾等と共同出資により愛説話、大面子、包中、大聲公等の4公司を設立し、好聴、悅悅、播音員、広播人等4公司の増資により、中国ラジオ公司株式を取得する際に支払う契約金とし、趙少康はその際に原告董事長の職務を辞任した。 
(4)しかし、自然人個人と法人(営利事業者)の人格はそれぞれ独立したものであり、性質も違うので、本来これらの行為を混同して論じることはできない。仮に、被告が趙少康及び梁蕾がそれぞれ22,766,915元、25,162,770元支出して、好聴等4つの公司銀行口座へ入金し、華夏公司所有の中国ラジオ公司株式を取得する契約金等に用いたことが事実であったと指摘しても、それは趙少康及び梁蕾個人自然人の行為と認められるだけであり、これを以って法人の原告がその公司の株式の三分の一を超える筆頭株主である梁蕾及び配偶者趙少康を通じて中国ラジオ公司株式を買収し、ひいては実質的に中国ラジオ公司業務経営及び人事の任免を支配したと認定することは困難である。この外、被告は原告が公平交易法第6条第1項第5号規定に違反したと認定したが、原告による規定違反行為の程度及び全部(趙少康、梁蕾等の出資を含む)の違反行為に占める比重の若干及び是正命令の審酌、裁量権の職権行使がいったい何についてなのか等について、今もって具体的な説明及び根拠を提出していないのに、違法程度及び占める比率が高いことのみを以って、原告を本件の結合申告義務人である等の大まかな陳述を行い、300万元の過料に処して是正命令した裁量権はいったい何を基準としたものなのか、実に疑問である。よって、被告が行った処分は軽率であり、原告による指摘には理由があると言える。以上の叙述をまとめると、本件被告の行った処分には誤りがあり、よく調べずに訴願決定を維持したことには遺漏があった。原告による取消し請求は妥当であり、許可されるべきである。したがって、本裁判所により原処分及び訴願決定を取消す。

以上について論結すると、本件原告の訴えには理由があるので行政訴訟法第98条第1項前段に基づき、主文のように判決する。

2010年1月14日
台北高等行政裁判所第六法廷
審判長裁判官 闕銘富
裁判官 許瑞助
裁判官 林育如
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