廃棄IT機器回收カルテル、業者の敗訴確定
2015-01-29 2013年
■ 判決分類:公平取引法
I 廃棄IT機器回收カルテル、業者の敗訴確定
■ ハイライト
2008年7月4日、緑電再生等の業者は廃IT機器共同回収処理協定書に共同で署名し、定期的に集会し、協定又はその他の形式の合意を以って、廃IT機器の買取価格、処理量、取引の相手方を決めていた。
公平交易委員会(日本の公正取引委員会に相当、以下「公平会」)は、業者の共同行為は国内廃IT機器処理市場の需給機能に影響を及ぼすに足るもので、公平交易法(日本の不正競争防止法、独占禁止法などに相当)における禁止規定に違反していると認定した。
2012年3月、公平会は、緑電等の業者13社を行政罰に処し、業者に違法行為を直ちに差し止めるよう命令した他、それぞれ20~240万新台湾ドルの過料(行政制裁金)を科したが、緑電、惠嘉電、博威特、宏青、緑建、大祈、大南方は、公平会の行政罰を不服とした。
緑電を始めとする業者は、環境保護署の委託を受けて廃棄物回収を行っており、政府にとって「行政助手(行政輔助人)」であるため、業者は「管理チーム」を共同で組織し、環境保護署の既定政策を徹底することを目的としている、と主張した。業者は環境保護署が発給した書簡を証拠として提出している。
しかしながら(行政最高裁判所の)裁判官は、業者が提出した書簡は環境保護署による権限委託とは関係がなく、環境保護署は業者に補助金の支払いや公権力の行使を委託していない、と述べている。
業者はさらに、行政院訴願委員会による公平会の原処分「取消」という訴願決定を証拠として提出し、公平会は訴願決定に基づいて処理していないと指摘していた。
しかしながら裁判所は、いわゆる訴願委員会による公平会の原処分「取消」という訴願決定は、公平会による廃家電回収業者の連合行為(カルテル)に対する処分の取消であり、本件の廃IT機器業者の連合行為に対する処分とは別件であると指摘している。
II 判決内容の要約
最高行政裁判所判決
【裁判番号】102年度判字第686号
【裁判期日】2013年11月14日
【裁判事由】公平交易法
上訴人 緑電再生股份有限公司
上訴人 惠嘉電実業股份有限公司
上訴人 博威特実業股份有限公司
上訴人 緑建股份有限公司
上訴人 大南方資源再生股份有限公司
上訴人 大祈環保科技股份有限公司
上訴人 宏青企業股份有限公司
被上訴人 公平交易委員会
上記当事者間の公平交易法事件について、上訴人は2013年6月27日台北高等行政裁判所101年度訴字第1730号、第1747号判決を不服として上訴を提起し、本裁判所は次の通り判決する。
主文
上訴を棄却する。
上訴審の訴訟費用は上訴人の負担とする。
一 事実要約
被上訴人は、上訴人の緑電再生股份有限公司(以下「緑電公司」)、惠嘉電実業股份有限公司(以下「惠嘉電公司」)、博威特実業股份有限公司(以下「博威特公司」)、宏青企業股份有限公司(以下「宏青公司」)、緑建股份有限公司(以下「緑建公司」)、大祈環保科技股份有限公司(以下「大祈公司」)、大南方資源再生股份有限公司(以下「大南方公司」)及び瑞原環保有限公司(以下「瑞原公司」)、久発環保工程股份有限公司(以下「久発公司」)、弘光環保有限公司(以下「弘光公司)、全亞冠科技股份有限公司(以下「全亞冠公司」)、城鉱資源股份有限公司(以下「城鉱公司)、佳龍科技工程股份有限公司(以下「佳龍公司)等13社(以下、まとめて「被処分者」)はいずれも行政院環境保護署(以下「環保署」)に設立を許可され、審査・認証を経て補助受給資格を取得した廃IT機器処分業者であり、それらが廃IT機器共同回収処理協定書(以下「協定書」)に共同で署名し、廃IT機器買取価格、処理量、取引の相手方を協定又はその他の形式の合意を以って取り決め、国内廃IT機器処理市場の需給機能に影響をもたらし、公平交易法第14条第1項本文の連合行為(カルテル)の禁止規定に違反したとして、同法第41条第1項前段規定により処分書(以下「原処分」)の被処分者に処分書送達の翌日から、直ちに前項の違法行為を差し止めるよう命じるとともに、過料(行政制裁金)を科した。上訴人の緑電公司、惠嘉電公司、博威特公司、宏青公司、緑建公司、大祈公司、大南方公司はこれを不服とし、行政訴願を提起したが、棄却された。さらに行政訴訟を提起し、原審裁判所は101年度訴字第1730号、第1747号判決を以って請求を棄却した。上訴人はなお不服として、その後本件上訴を提起した。
二 両方当事者の請求内容
(一)上訴人:訴願決定及び原処分における上訴人に関する部分を棄却する。
(二)被上訴人:上訴人の原審における請求を棄却する。
三 本件の争点
(1)上訴人等に公平交易法第14条第1項本文の連合行為(カルテル)に係る禁止規定に違反があるか否か。
(2)上訴人等は環境保護署の委託を受けて公権力を行使するものか、又は環境保護署の「行政助手」であるのか。
(3)原判決の「市場占有率の算出」、「原処分は比例原則と平等原則に違背せず」、「過料(行政制裁金)金額」の認定部分について、法規の誤適用、判決理由の不備又は判決理由の齟齬が有るか否か。
(一)上訴人主張の理由:略。判決理由の説明を参照。
(二)被上訴人答弁の理由:略。判決理由の説明を参照。
四 判決理由の要約
原判決は、2008年7月から2009年8月までの間において、主務機関に登録され、補助受給機関資格を取得して競争関係にあった廃IT機器処理業者は上訴人等を含む被処分者13社のみであり、それらは2008年7月に協定書に共同で署名し、上訴人等は上記の協定という形式で互いに事業活動を拘束しあう合意に達し、かつ協定書の約定に基づく管理チームと作業センターの運営によって実質上、上記の事業活動を互いに拘束しあったという事実によって、水平競争関係にある同業者間において競争機能は全く無かったといえ、また市場における回収価格が一致しており、回収業者の価格交渉能力は失われ、取引需給の市場機能に影響がもたらされたとしている。原判決が上訴人等を含む被処分者13社が公平交易法第14条第1項本文の連合行為(カルテル)禁止規定に違反していると認めたことには、確かに根拠がある。
廃棄物清理法(廃棄物処理法)第18条第5項及び應回收廢棄物回收清除處理補貼申請審核管理辦法(回収すべき廃棄物の回収清掃処理に対する補助金申請審査管理弁法)第3条規定に基づき、処理業者は主務機関の処理業者登録証と補助金受給資格を取得する必要があり、それによって初めて検査・認証(訳注:回収すべき廃棄物回収処理量の検査・認証)と補助金の受取を行うことができる。該補助金は補助金受給資格を有する処理業者に直接支給され、回收業者と処理業者との間の買取価格はいずれも市場システムによって決定されなければならず、環境保護署が処理業者に補助金の代理給付や公権力執行を委託するものではない。これは該署2011年11月28日付書簡の内容から明らかである。
原判決は、国内の廃IT機器処理市場に参入したい業者は、主務機関が発行する処理業者登録証を取得するとともに、法により補助金受給資格を取得しなければならず、それにより初めてそれが分解処理する廃IT機器について検査・認証と補助金受給を行うことができ、主務機関に登録を申請していないときは、廃IT機器の処理に従事してはならない、と説明している。上訴の趣旨において、上訴人は原判決が違法処理業者を市場シェアの計算に含めていないため、法規の誤適用と判決理由の不備などの違反がある云々と主張しているが、これは採用するに足らない。
原審は、被上訴人が上訴人に対して違法行為の差止めと過料に処すという裁量に斟酌した要因には、上記の公平交易法施行細則第36条関連事項を含むほか、被上訴人が所属する委員会議が討論した後、法律の授権範囲において、違法行為の差止めと過料に処す決定を行っており、さらに原処分には裁量の濫用や怠惰がみられないため、比例原則に違反しているとは認め難い。それが得た心証の理由を詳述しており、調べたところ法に合わないところはなく、原判決に判決理由の不備があるとは言い難い。
原審は廃IT機器処理業者が割当センターへの参加期間及び調査期間に合わせて提出した事実証拠リストの記載に基づき、過料金額の考慮要素には、参加期間、取得した補助金額及び被上訴人の調査への協力の程度が含まれると説明しており、年間利益の多寡は含まれておらず、法に合わないところはない。上訴人がこれにこだわり、原判決は上訴人の年間利益の多寡を本件過料を考慮する要素に含めていないことは、法規の誤適用である云々と指摘しており、誤解があるようだ。原判決の第40頁には「年間利益の多寡は本件過料金額の考慮要素ではない」と記載されており、上訴人が指摘するような「(原審が)先に年商を処罰基準の一つとし、後に過料金額の考慮要素ではないとした」という判決理由の齟齬はみられない。
原審は、廃家電業者と廃IT機器処理業者はそれぞれ異なる市場に属し、その事件の状況、違法事実、市場の状況、罰則の考慮などが異なっているため比較できず、上訴人が別件の廃家電業者の連合行為(カルテル)による公平交易法違反に関する訴願決定にこだわり、原処分が平等原則に違反していると指摘しているが、これは採用できず、法令の誤適用の違反はないと認められる。
以上をまとめると、原審は職権に基づき証拠を調査し、弁論の趣旨と調査証拠を斟酌した結果、論理法則と証拠法則により事実を判断して判決しており、判決には法規の不適用や誤適用の違法はなく、また判決理由の不備があったとも言い難い。
以上の次第により、本件上訴には理由がない。行政訴訟法第255条第1項、第98条第1項前段、第104条,民事訴訟法第85条第1項前段により、主文の通り判決する。
2013年11月14日
最高行政裁判所第五法廷
裁判長 黄合文
裁判官 林樹埔
裁判官 鄭忠仁