コンビニによるコーヒーの価格カルテル 第一次差戻審で処罰免除
2015-03-19 2013年
■ 判決分類:公平取引法
I コンビニによるコーヒーの価格カルテル 第一次差戻審で処罰免除
■ ハイライト
四社の大手コンビニが連合してレギュラーコーヒーを値上げしたことが、公平取引委員会により、価格カルテルの行為に関わるため、公平取引法第14条第1項の「連合行為の禁止」に違反すると認められ、過料に処された。それを不服として、コンビニ四社はそれぞれ裁判所に提訴した。これについて2012年12月19日に台北高等行政裁判所は公平取引委員会の敗訴と判決した。
公平取引委員会は上訴したが、最高行政裁判所では台北高等行政裁判所の認定について調査でまだ明らかになっていないところがあると認め、差し戻した。台北高等行政裁判所の第一次差戻審判決は、連合行為による違反の第一要件は、業者が必ず特定市場において独占または寡占していることだと認定し、消費者に代替性選択があるため、コンビニチェーンストア四社は市場を独占または寡占することができず、公平取引委員会が「調査を明らかになっていない」ため、コンビニチェーンストアのレギュラ-コーヒーを特定市場と誤って定義して位置付けたと指摘ていた。
判決ではさらに、事業者の間で意識的に同一外観の行動を取る場合は、二つの可能性があり、一つは公平取引法上のいわゆる「連合行為」であり、もう一つは事業者の間に連合行為の合意が存在せずに、ただ自身の利益を図り、競争相手の策略に応じるため、やむを得ず同じ行為を取ることであり、このような行為は「意識的な並行行為」または「価格の追随行為」と言い、連合行為を構成しないと述べた。
そしてコンビニが価格をNT$5ごとに値上げしたことは、マーケティングマネージメントの「習慣性定価」理論に合致し、ましてや公平取引委員会はコンビニ四社が「合意」、「互いの約束」による価格カルテルを行ったことを証明できないので、原処分及び訴願決定をすべて破棄し、上訴できると判決した。
II 判決内容の要約
台北高等行政裁判所判決
【裁判番号】102年度訴更一字第54号
102年度訴更一字第55号
102年度訴更一字第56号
102年度訴更一字第57号
【裁判期日】2013年12月04日
【裁判事由】公平取引法
原告 統一超商股份有限公司
原告 来来超商股份有限公司
原告 萊爾富国際股份有限公司
原告 全家便利商店股份有限公司
被告 公平取引委員会
前記当事者間の公平取引法事件について、原告が行政訴訟を提起した。本裁判所により101年度訴字第607号、第649号、第703号、第715号で判決した後、被告らから上訴があった。最高行政裁判所が原判決を破棄し、本裁判所に差し戻したので、本裁判所は以下のとおり判決する。
主文
原処分及び訴願決定(行政院2014年3月8日院第訴字第1010124932号、第1010125216号、2012年3月15日院台訴字第1010125344号、2012年3月28日院台訴字第1010125345号訴願決定)をすべて取消す。
第一審及び前上訴審に差戻しの訴訟費用はすべて被告が負担する。
一 事実要約
被告は原告統一超商股份有限公司(以下「統一」という)、萊爾富国際股份有限公司(以下「萊爾富」という)、来来超商股份有限公司(以下「来来」という)、全家便利商店股份有限公司(以下「全家」という)が連合して2011年10月にレギュラーコーヒーを値上げしたことが、コンビニチェーンストアのレギュラーコーヒーの需給機能に充分な影響を与えるため、行為時点の公平取引法第14条第1項連合行為の禁止規定に違反するので、同法第41条前段の規定により、2011年11月9日に公処字第100220号処分書(以下「原処分」という)をもって、被処分人らは処分書送達の翌日から、前項の違法行為をただちに中止しなければならず、更に原告統一をNT$16,000,000、全家をNT$2,500,000、萊爾富をNT$1,000,000、来来NT$500,000の過料に処した。原を告らは原処分を不服として、それぞれ訴願を提起したが、すべて棄却されたので、行政訴訟を提訴した。本裁判所は101年度訴字第607号、第649号、第703号、第715号で原処分及び訴願決定を共に破棄すると判決した。被告はその判決を不服として上訴したが、最高行政裁判所により102年度判字第251号判決で原判決を破棄し、本裁判所に差し戻して再審理するとの判決が下った。
二 両方当事者の請求内容
(一)原告の主張:原処分で各原告の部分及び各原告に関わる訴願決定を取消す。
(二)被告の主張:原告の訴えを棄却する。
三 本件の争点
被告が原告らコンビニチェーンストア四社のレギュラーコーヒーを一つの特定市場に位置づけたことには違誤があるか否か。
原告ら四社はミルク入りのレギュラーコーヒーの価格を値上げしたが、原告等の間に連合行為の合意があったか否か。
(一)原告主張の理由:省略。判決理由の説明を参照。
(二)被告答弁の理由:省略。判決理由の説明を参照。
四 判決理由の要約
事業者による連合行為の関連市場の定義は、関連商品市場と地理市場の二つ方面で共同して位置づけるべきである。もし、消費者が二種の商品またはサービスについて、その価格、品質及び用途の代替が合理的であると認める場合、その二種の商品は同一市場に該当するはずである。被告は一般消費者がコンビニチェーンストアのレギュラーコーヒーとその他のコーヒーチェーンストアまたは飲食業のレギュラーコーヒーとの間に需要の代替性があるか否かについて、市場調査をしておらず、実証されていないのに、書面資料及び相当期間の観察を経ずに短期内に直接「コンビニチェーンストアのレギュラーコーヒー」は本件の商品市場とだと位置付けるのは速断の疑いがある。
需要の代替性について言うと、コーヒーチェーンストア業者にしろ、飲食(ファーストフード)業者にしろ、一般のコーヒー専売店または量販店、スーパーマーケット及び商店で提供しているレギュラーコーヒーはいずれも消費者のレギュラーコーヒーに対する需要を満たしているため、高度な相互代替性を有しているので、同一の関連商品の市場範囲に該当するはずである。被告はSSNIPテストも実施していないのに、どうやって「コンビニチェーンストアのレギュラーコーヒー」の市場をその他の業者が販売しているレギュラーコーヒーの関連商品の市場から独立させられたのかの外、被告が調査を尽くさないままに一方的コンビニチェーンストアのレギュラーコーヒーを一つの特定市場と位置付けたことには不合理な点がある。
さらに供給の代替性について、もしコーヒーの供給業者がすでにコーヒー生産の全ての設備、原料または技術をもっている場合は、二つの供給業者があれば代替性を有すると言える。コンビニチェーンストア、コーヒー・レストランチェーンストア(例えば、85度C、丹堤(ダンテ)、コーヒー、金鉱コーヒー(CrownFancy)、西雅図コーヒー(Seattle Coffee)、CAMAなど)、ファーストフードショップ(例えば、マグドナルド、モースバーガー、ケンタッキーなど)ないし一般のコーヒー専売店または移動式コーヒー販売店はすべて同一のレギュラーコーヒーを提供することができるので、代替性がある。「コンビニチェーンストアのレギュラーコーヒー」とその他廉価なコーヒーチェーンストア(例えば、85度C、丹堤(ダンテ)コーヒー、金鉱コーヒー(CrownFancy)、西雅図コーヒー(Seattle Coffee)、CAMAなど)が提供するレギュラーコーヒーの価格はほぼ同じであり、その他大衆向けのコーヒーチェーンストアがコンビにのように密集していないほか、規模の差も大きいことから、両者の市場は異なると認められ、その認定及び推断の過程も前述の説明に一致しない。
潜在的競争要素から言うと、関連商品の市場に競争者がいるか否かを調べる場合は、関連市場について、相当な時間を掛けて観察しなければならない。しかし、被告が「コンビニチェーンストアのレギュラーコーヒー」を他の大衆向けのコーヒーチェーンストアのレギュラーコーヒーと区別して、本案の特定市場と認定したことは不合理であることは前述したとおりである。よって、被告が原告らのコンビニチェーンストアを全体的に観察した結果、本案には潜在的な競争者が存在しないと認定したことは不当であることは明らかである。
その他の質的要素から言うと、社会科学の研究方法によれば、定量的研究方法と質的研究方法に分類できる。被告が行政院主計総処「中華民国業種分類基準」に基づき、その他のコーヒーチェーンストア飲食業者及び中華民国チェーンストア協会または専門学者によるコーヒーショップの分類基準などをその他の質的要素とし、コンビニチェーンストアのレギュラーコーヒーが個別に単独な市場を形成すると認めたことは、具体的な事実と証拠を欠いており、この要素も被告に有利な認定とすることは難しい。
従って、被告が本案の訴訟手続きにおいて、本案の市場を「コンビニチェーンストアのレギュラーコーヒー市場」に位置づけた考慮要素も、被告に有利な認定とするにはまだ不足である。
事業者の間で意識的に同一外観の行動を取る場合は、二つの可能性がある。一つは公平取引法上のいわゆる「連合行為」であり、もう一つは事業者の間に連合行為の合意が存在せず、ただ自身の利益を図り、ライバルの策略に応じるため、やむを得ず同じ行為を取ることで、このような行為は「意識的な並行行為」または「価格の追随行為」と言う。被告が本案で「コンビニチェーンストアのレギュラーコーヒー市場」を特定市場に位置づけた前提の下では、市場の集中性が高く、商品価格が公開かつ透明であり、販売形態は小売りで、商品内容も単純で、しかも高度な代替性などの市場形態があれば、値上げの行為はもともと風見鶏と見なすことができる。原告らは意図的な連絡を必要とせずに、前掲の結果を達成することができる。換言すれば、原告らの並行行為は実に高度な経済合理性を有しているので、原告らの間に連合行為の合意が存在していたとは認め難たいものである。
原告統一が提出した「市場の飲料価格に関する書面整理結果」から、台湾のレギュラーコーヒー市場の販売価格は、確かにNT$5を一つの区切りとして価格設定する習慣が存在している。もし被告が言ったとおり、原告らのコスト構造及びその他条件と異なる事業間の価格が一致していることによって、連合行為があると推論したのであれば、たくさんの事業者がすべて連合行為の管制を受けることになり、それが合理的ではないことは明らかである。
原告らの販売促進活動は消費者の値上げに対する敏感な反応を和らげるためであり、一斉に販売促進活動を行うことによって、原告らに値上げについて意図的な連絡があったと推定してはならない。被告が原告らに値上げした後に販売促進行為があったことから、意図的な連絡があると認めたことは、不適切なところがある。
係争の価格値上げ行為は、原告らがそれぞれ市場状況及び競争相手のマーケティング策略によって、経済の合理性と利益の最大化の追求に基づき、独自の意思で決定した経済行為であり、連合行為の適用から除外すべきである。
以上をまとめると、被告は処分を下す前に行った調査過程と事実証拠について、厳密な数字と事実証拠を提出していず、且つ需要の代替性についても、「コンビニチェーンストアのレギュラーコーヒー」市場はその他の業者のレギュラーコーヒー関連商品の市場から独立しているか否か、被告は調査に十分力を尽くしていない。供給者の代替性について、被告は関連市場に参入する能力があるか否かを判断するとき、供給者の立場に立っていない。さらに、被告は原告らコンビニチェーンストアを全体的に観察した結果に基づき、本案に潜在的な競争者が存在していないと判断したので、市場の位置付けは不適切である。又、原処分で提出された関連産業と原告事業の間接的証拠だけでは、原告らに連合行為の合意があったと合理的に推定するには足りないにも関わらず、被告がこれをもって原告らの連合行為を認定し、行為中止及び罰金の処分としたことは確かに事実の認定と法の適用に間違いがあり、そして訴願決定が詳細に確認しないままに裁定を維持したことも合理的ではない。
以上を総じて論結すると、本件原告の訴えには理由があるので、行政訴訟法第98条第1項前段により、主文のとおり判決を下す。
2013年12月4日
台北高等行政裁判所 第六法廷
審判長裁判官 徐瑞晃
裁判官 候志融
裁判官 陳姿岑