牛乳の協調値上げで、3業者に対する3000万新台湾ドルの課徴金確定

2015-08-26 2014年

■ 判決分類:公平交易法

I 牛乳の協調値上げで、3業者に対する3000万新台湾ドルの課徴金確定

■ ハイライト
台湾の乳製品大手3社である味全食品工業股份有限公司(Wei Chuan Foods Corporation、以下「味全」)、統一企業股份有限公司(Uni-President Enterprises Corporation、以下「統一」)、光泉牧場股份有限公司(Kuang Chuan Dairy Co., Ltd.、以下「光泉」)は3年前、牛乳の販売価格について協調値上げを行い、関連商品の値上げブームを招いたため、消費者の不満が爆発し、行政院公平交易委員会(訳注:日本の公正取引委員会に相当)は上記3社に合計3000万台湾ドルの課徴金納付を命令し、牛乳メーカーに対する課徴金としては過去最高額を記録した。3社はこれを不服として行政訴訟を提起したが、2014年6月12日最高行政裁判所に上訴を棄却され、3社に対する3000万新台湾ドルの課徴金が確定した。
行政院農業委員会は2011年8月に生乳の買取価格を1キロ当たり1.9新台湾ドル引き上げることを承認し、同年10月1日から実施していた。しかし味全、統一及び光泉の3社は一致してコスト増加幅以上に販売価格に反映し、同時期に一致して6~12新台湾ドルを値上げした。
公平交易委員会が調査した結果、乳製品大手3社は国内牛乳市場において8割以上のシェアを占めており、協調値上げは公平交易法(訳注:日本の独占禁止法、不正競争防止法等に相当)の連合行為(共同行為)禁止規定に違反している。
台北高等行政裁判所は審理した結果、連合行為(共同行為)が「市場機能に影響をもたらすに十分な」程度に達していたか否かは通常、量と質の基準を総合的に判断する必要があり、3社が製造する牛乳は国内市場シェアが8割を上回っており、共同の販売価格の引上げはハードコア制限による競争手段の排除に該当し、また相互の価格競争も排除しており、牛乳市場の需給に影響をもたらすに十分であったため、公平交易法の禁止する連合行為(共同行為)に該当するとして、公平交易委員会の課徴金処分に不適正なところはなかったと認定し、乳製品大手3社に敗訴の判決を下した。
乳製品大手3社はこれを不服として上訴していたが、2014年6月12日、3社に課された課徴金3000万新台湾ドルは確定した。(2014年6月13日 中国時報 A6面)

II 判決内容の要約

最高行政裁判所判決
【裁判番号】103年度判字第294号
【裁判日期】2014年6月12日
【裁判事由】公平交易法

上訴人 統一企業股份有限公司(Uni-President Enterprises Corporation)
上訴人 味全食品工業股份有限公司(Wei Chuan Foods Corporation)
上訴人 光泉牧場股份有限公司(Kuang Chuan Dairy Co., Ltd.)
被上訴人 公平交易委員会

上記当事者間における公平交易法事件について、上訴人は2014年1月8日台北高等行政裁判所101年度訴字第573号、第575号及び第829号判決に対して上訴を提起し、本裁判所は次のとおり判決する。

主文
上訴を棄却する。
上訴審の訴訟費用は上訴人の負担とする。

一 事実要約
被上訴人は2011年8月に行政院農業委員会(以下「農委会」)に所属する財団法人中央畜産会(以下「畜産会」)の乳価評議委員会で生乳の買取価格の1キロ当たり1.9新台湾ドル引上げが承認された件が新聞で報道されたのを受けて、生乳買取価格と乳製品の販売価格は密接に関連していることから、川上の乳製品業者がこれに便乗して牛乳価格を協調値上げすることを監視して防止するため、自主的に調査したところ、上訴人である味全食品工業股份有限公司(Wei Chuan Foods Corporation、以下「味全公司」)、統一企業股份有限公司(Uni-President Enterprises Corporation、以下「統一公司」)、光泉牧場股份有限公司(Kuang Chuan Dairy Co., Ltd.、以下「光泉公司」)は牛乳市場で8割以上のシェアを占め、共同で値上げを行っていた。相互の価格競争を排除し、不当に連合して利益を得ようとしたことは、牛乳市場の需給機能に影響をもたらすに十分で、消費者の利益に不利であった。上訴人等に2011年10月1日から生乳買取価格の引上げによるコスト上昇という値上げの要因があったとしても、それらが協調値上げをしたことで、国内乳製品市場の需給機能に影響をもたらすに十分であったため、公平交易法第14条第1項本文の連合行為(共同行為)の禁止規定に違反している。なお同法第41条第1項前段規定に基づき、2011年10月25日公処字第100204号処分書(以下「原処分」)を以って上訴人等に処分書送達の翌日から上記違法行為を中止するように命じると共に、上訴人の味全公司に課徴金1200新台湾ドル、上訴人の統一公司に課徴金1,000万新台湾ドル、上訴人の光泉公司に課徴金800万新台湾ドルの納付をそれぞれ命じた。上訴人等はこれを不服としてそれぞれ行政訴願を提起したが、いずれも棄却されたため、それぞれ行政訴訟を提起した。原審裁判所は101年度訴字第573号、101年度訴字575号、及び101年度訴字第829号判決(以下、併せて「原判決」とする)で請求を棄却したため、その後上訴人は本件上訴を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一)上訴人:原判決を取り消す。
訴願決定、原処分をいずれも取り消す。
訴訟費用は被上訴人の負担とする。
(二)被上訴人:上訴を棄却する。
訴訟費用は上訴人の負担とする。

三 本件の争点
1.上訴人の間に連合行為(共同行為)の意思連絡があったか否か。
2.被上訴人が上訴人等の連合行為について先行して行政指導、是正指導又は警告を行わず直接課徴金を決定したことには、裁量濫用の違法があったのか否か。

(一)上訴人の主張理由:省略。判決理由の説明を参照。
(二)被上訴人の答弁理由:省略。判決理由の説明を参照。

四 判決理由の要約
(一)公平交易法が事業者の連合行為(共同行為)を規範する目的は、複数の事業者が協議により共同行為の方法で相互の競争及び市場力の取得を制限することを防止することにある。連合行為の構成要件には、以下が含まれる。1.連合行為の主体:競争関係にある事業者間、即ち同一の生産・販売段階における水平的競争関係にある事業者間、2.連合行為の合意方法:契約、協定又はその他の方法による合意、3.連合行為の内容:商品又は役務の価格を共同で決定する、又は数量、技術、製品、設備、取引先、取引地区等に制限を加える等の事業活動を相互に拘束する行為、4.連合行為の特定市場に対する影響:同一の生産・販売段階における事業者の水平的統合が、生産、商品の取引或いは役務の需給に関わる市場機能に影響するに足るものに限る。連合行為に対する規範は、実質的な認定方法を採用し、即ち二又はそれ以上の事業者が明白かつ意図的な相互の意思の連絡によって、その今後の市場行為について法的拘束力を有しない共通認識又は理解を達成し、外形的一致性の行為を形成する場合、調査の結果確かに意思の連絡の事実があった、又はその他の間接的証拠(誘因、経済的利益、類似する値上げの時期又は数量、発生回数、持続期間、行為の集中度及びその一致性等)を以って事業者間に意思の連絡が確かにあったと判断し、かつ行為の外形的一致性による唯一の合理的解釈であるならば、それらの事業者間に連合行為があったと認定できる。いわゆる「意思の連絡」には、客観的にみて予定された計画案がある必要はなく、直接的又は間接的な方法で行われ、例えば市場情報の公開を利用する、間接的に競争に関連するセンシティブな市場情報を交換する、又は相互に営業戦略を伝達する、又は直接にビジネス情報を交換する等がいずれも該当する。

(二)次に、連合行為の違反事実を証明する証拠の認定については、直接的証拠に限らず、間接的証拠も含まれる。いわゆる連合行為の合意は当事者の内心にあり、外的に契約や協定の書面記録等の直接的証拠を残していないならば、主務官庁が法律の執行において事実の認定と証拠資料の掌握を行うことは容易ではない。このため連合行為の認定において、たとえ事業者間に連合行為の合意があったことを証明できる直接的証拠がなくても、間接的証拠の採用と分析によって、事業者間における連合行為の有無を合理的に推論することができ、さもなければ市場における一致性の行為であると合理的に解釈できない場合は、連合行為の合意の存在を推論できる、即ち連合行為が事業者間の行為の外形的一致性にとって唯一の合理的解釈である状況において、それらの事業間には連合行為があったと認定できる。いいかえれば、市場における多数の業者が同時に同じ幅の値上げを行ったが、市場における需給の変化等の客観的要因からそれを合理的に説明できないとき、その価格調整について業者間で連合行為の合意があったと合理的に推定できる。

(三)調べたところ、上訴人の3社はいずれも国内の低温殺菌牛乳(以下「牛乳」)メーカーであり、同一の生産・販売段階において競争関係にある事業者である。公平交易法第5条第3項において、「特定市場」とは事業者が一定の商品又は役務について競争する区域又は範囲をいうと定義されており、特定市場には少なくとも二つの面があり、一つは「関連する商品又は役務の市場」、もう一つは「関連する地理的市場」であることがわかる。上訴人3社が生産する(低温殺菌)牛乳は国内牛乳市場において80%を越えるシェアを占めており、「国内牛乳市場」構造が「寡占市場」であることを証明するに足る。次に上訴人の川下にある複数の販売業者が被上訴人に陳述したところによると、同年9月初めから9月中旬までに次々と上訴人等から電話又は電子メールの方法で牛乳価格を引き上げる通知を受け取り、それぞれ9月21日、9月21日及び9月26日に電子メールでその参考小売価格表を通知、確認した。上訴人等は最後に川下の販売業者に調整した価格を通知、確認した時期が極めて一致しており、これにより上訴人3社が牛乳の参考販売価格を引き上げた行為は客観的に外形的一致性を有すると認定できる。また、上訴人等が被上訴人の調査を受けたとき、同業価格を参考として追随した事実を一致して否認しており、上訴人3社の上記一致性行為が寡占市場構造によりもたらされた意識的並行行為であることを原判決が排除したことについて法に合わないところはない。また、上訴人等が被上訴人の通知を受けた後にそれぞれ行った値上げの理由説明から、牛乳価格の調整は複雑で、考慮する要因が多く、かつそのコストには生乳調達価格以外に、生産原料費、包装材料費、人件費、輸送費、運営費等の経費があり、また販売業者の粗利益率を維持しながら消費者の認識(パーセプション)も考慮しなければならず、このような複雑な要因が交錯して影響する中、2011年10月初めに一致して値上げされ、値上げ価格が全く同じ又は酷似しており、これはすでに上訴人等が述べているそれらのコスト構造とコスト上昇の類似性が高いことによると解釈できるものではない。況してや上訴人等はそれらが生乳の買取価格の引上げが公告され、コストを価格に反映するため、乳製品の販売価格を調整することを決定したと主張しているが、経験法則からみて、すでに計画され計算された関連コストがあったはずであり、さもなければコストが不明である中、いかにコストを反映できるだろうか。上訴人等は被上訴人に価格調整した各商品の詳細な計算式を訊ねられた時、すぐに関連資料を提出できず、被上訴人が原処分を行うまで提出できなかった。したがって、上訴人等が互いに値上げ考慮の要因が異なり、コストも異なる状況において一致性を有する値上げ行為を呈したことについて、市場の客観的な合理的要因に基づく合理的な説明又は解釈を提出できないため、上訴人等に値上げに関する意思の連絡がなかったならば、前述の一致性を有する値上げ行為を合理的に解釈することはできないと、被上訴人は認定した。さらに上訴人等の値上げの決定はいずれも不確定な要素に直面し、競合相手の反応を予測する必要があり、値上げには本質的に市場の流出、競合相手の価格据置、価格競争というリスクを伴うが、寡占市場では企業数が少なく、逸脱や制裁を容易に検出できるため安定してカルテルを行うことができ、係争市場構造には共謀に有利な誘因がある。各紙媒体は8月15日から10月9日まで牛乳値上げ関連の情報を報道しており、そのうち9月6日には先行して「牛乳が来月から値上げ」と報道され、9月23日は続いて「10月から牛乳を12%値上げ」、9月26日には再び「生乳の買取価格引上げで、来月から牛乳が1リットル当たり6新台湾ドル以上値上げ」と報道されており、上訴人らがその後値上げした結果に十分対応している。これらの情報は競合相手の値上げを市場で検知するのに有利で、競合相手が追随しないリスクを低減でき、連合行為を安定化させるのに役立つ。よって上訴人等による一致性を有する牛乳の参考販売価格引上げ行為は意思の連絡によって為された連合行為であると推論でき、経験法則と論理法則に反するところはない。さらに連合行為における一致性行為は常に寡占市場における意識的並行行為(又は価格追随行為)と混同される。両者は客観的にいずれも一致性を有する市場行為であるが、前者は主観的に意思の連絡があり、合意に基づく一致性行為であり、これが後者との最大の相違である。つまり、連合行為における違法な一致性行為は事業者間で主観的に特定の共通認識行為を行う合意があり、この合意に基づいて同じ共通認識行為を行っているため、外形的一致性を有する市場行為をもたらす。経験法則により、寡占市場における追随行為はリーダーが方針決定を行った後、追随者が追随する。上訴人等3社は値上げを決定する時、それより少なくとも2~4週前に販売業者に通知して交渉を行う必要がある。2011年10月初めに味全公司が値上げし、統一公司と光泉公司がその値上げを見た数日後にはすでに値上げしており、追随した可能性はない。したがって被上訴人がこれに基づいて上訴人等の一致性行為が寡占市場による意識的並行行為(追随行為)であることを排除したことには根拠がある、と原判決は認定している。

(四)さらに連合行為成立の核心的な要件は事業者間に合意の事実があったか否かの論証である。その一致性行為は同日、完全に値上げ幅が同じものに限らない。もし関連事実証拠でその一致性行為の合意が論証、証明できるならば、たとえ時差やわずかな値上げ幅の違いがあっても、違法性の認定の妨げとはならない。つまり事業者間に意思の連絡があり、それぞれ異なる時間内に値上げを行った、又は意思の連絡があり値上げ幅が異なっている場合、同時の値上げではない、又は値上げ幅が異なるような状況であっても、公平交易法でいう連合行為が成立する。もし上訴人等が自身のコスト試算により値上げを決定し、かつそれらが提出した値上げ理由が異なっており、それらが経営する販路の比率が異なっていれば、経験法則により、それらの関連する営業コストの償却は異なるはずである。生乳コストによる値上げ緩衝力と競争の誘因も異なるはずである。しかしながら結果的に一致して6新台湾ドルの値上げとなった状況について、これらの客観的事実から単純な並行行為とは解釈したり市場メカニズム作用の結果と認めたりすることはできない。上訴人等が最初に高度に一致する参考販売価格表を出しただけではなく、さらにいかなる価格修正もないことを再び斟酌し、理論法則に基づけば、このような安定市場を達成しようとしたものであり、もし以前に連合行為がなければ、これらの状況は説明がつかないことである。

(五)連合行為は事業者間における市場で相互に競争しないと約定する行為であり、該行為は市場競争を制限するのに最も簡単で、有効であり、かつよく見かけられる手法である。日本の独占禁止法における用語は「不当な取引制限」である。よって各国は競争法制において連合行為に対する取締を強化しており、先行して警告、是正指導等の行政指導をしているわけではなく、また当該違法連合行為が市場競争メカニズムに損害を与えることを放任しているわけでもない。したがって、被上訴人は競争法を所管する機関としての職責に基づき、市場において違法な連合行為であると確信できるものを発見したならば、迅速に処理すべきであり、それによって始めて公平交易(公正取引)所管機関が法に基づいて行政を行うという本務に適合できる。光泉公司の上訴理由において被上訴人が先行して行政指導、是正指導又は警告を行わず、長期的観測から連合行為であると論断しており、原判決は指摘を行わなかったため、判決に法規不適用の違法がある云々と主張しているが、採用するに足りない。また、上訴人が公平交易法の連合行為禁止規定に違反している事実証拠は明確であり、かつ行政程序法(行政手続法)では行政機関が具体的な個別のケースについて先行して行政指導、産業是正指導又は警告を行わなければならないとは規定されていない。行政機関は個別ケースに応じて、法律の目的及び個別ケースの具体的状況を考慮し、柔軟に適切な決定を行うよう対応し、多種の行政作為の方法から一つの行為を選ぶことにより、最も有効に法を執行するという目的を達成し、個別のケースの正義を実現することができる。行政機関が法律成立要件を実現する時、複数の法律が許可する措置の中から選択を斟酌されるいかなる措置も法律上は同等の評価を受けるべきであり、職権の濫用や越権のおそれはない。

以上の次第で、本件の上訴には理由がない。行政訴訟法第255条第1項、第98条第1項前段、第104条、民事訴訟法第85条第1項前段に基づき、主文のとおり判決する。

2014年6月12日
最高行政裁判所第四法廷
裁判長 侯東昇
裁判官 林樹埔
裁判官 江幸垠
裁判官 沈應南
裁判官 闕銘富

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