公平会が台北市記帳士公会の共同独占を処罰 公会が上訴するも敗訴
2015-09-25 2014年
■ 判決分類:公平交易法
I 公平会が台北市記帳士公会の共同独占を処罰 公会が上訴するも敗訴
■ ハイライト
台北市記帳士公会(TAIPEI CPB。訳注:「記帳士」は日本の税理士、「公会」は同業組合にそれぞれ相当)は理事会で全ての会員に対して顧客へ見積もる際に一致性を有する料金を採用するよう「提言」することを決議した。最高行政裁判所は、台北市記帳士公会のこのような行為は「事業者は連合行為(共同行為)をしてはならない」とする規定に違反しており、公平交易委員会(以下「公平会」。訳注:日本の公正取引委員会に相当)による行政処分には法律に反するところがないと認定し、台北市記帳士公会の敗訴を確定する判決を下した。
該公会は会員に最低料金を「提言」しただけだと主張したが、裁判所は、該公会の理事会の決議は需給に関わる市場機能に影響するに足る、と指摘している。
該公会は訴訟において、公平会は該公会に許可申請手続きを補う機会を与えずに行政処分を行うべきではなかったと主張していた。しかし裁判所は、該公会の理事会が会員間の価格競争を制限する決議をした行為は、事後に公平会に対して疎明や許可の申請をして合法化できるものではないと認定し、該公会の主張を採用しなかった。(2014年6月17日 工商時報A16面)
II 判決内容の要約
最高行政裁判所判決
【裁判番号】103年度判字第292号
【裁判期日】2014年6月12日
【裁判事由】公平交易法
上訴人 社団法人台北市記帳士公会(TAIPEI CPB)
被上訴人 行政院公平交易委員会
上記当事者間における公平交易法事件について、上訴人は2013年10月23日台北高等行政裁判所102年度訴字第751号判決に対して上訴を提起し、本裁判所は次のとおり判決する。
主文
上訴を棄却する。
上訴審の訴訟費用は上訴人の負担とする。
一 事実要約
被上訴人は上訴人が2010年12月14日第2期第4回理事会会議において上訴人会員の業務執行料金に対して、会員にできるかぎり財政部が定めた業務執行者所得基準(訳注:「税務機関による業務執行者所得の算出基準」、以下「業務執行者所得基準」と称す。ここでいう「業務執行者」は所得税法第11条で定められる弁護士、会計士、建築士、技師、医師、薬剤師、助産婦、著作者、ブローカー、公証人、職工、パフォーマー及び、その他技能で生計を立てる者を指す)、即ち台北市では一業者1ヶ月あたり2,500新台湾ドル、前台北県(訳注:現在の新北市)では2,000新台湾ドルを下回らないよう提言する決議を行い、該決議内容を2010年12月24日(99)北市記字第0078号通知書(以下、「係争通知書」)を以って会員全員に送達して事業活動を拘束し、かつこれは記帳士業務サービスの需給に関わる市場機能に影響するに足るため、公平交易法(訳注:不正競争防止法、独占禁止法に相当)第14条第1項本文規定に違反しているとして、同法第41条前段の規定に基づき上訴人に処分書送達の翌日から直ちに前項の違法行為を停止するよう命じるとともに、50万新台湾ドルの過料に処した。上訴人はこれを不服として行政訴願を提起し、行政院は前記処分の取消を行うよう決定し、被上訴人に対して本案件が関連する市場をいかに特定すべきか、上訴人の係争通知書が需給に関わる市場機能に影響をもらしたか否かを究明し、さらに公平交易法施行細則第36条に定められる過料処分に関する考慮要因を逐一斟酌した上で改めて適法な処理を行うよう命じた。その後被上訴人は、上訴人による上記理事会決議と会員に料金の最低基準を提言した係争通知書が、上訴人の会員間の価格競争を抑制したほか、間接的にその他の市場参入者が上訴人会員との競争に直面して料金値上げの追随又は誘因なき値下げを行うことを緩和したため、需給に関わる市場機能に影響を及ぼし、公平交易法第14条第1項本文に違反しており、さらに上訴人には営業収入がないものの、その所属会員は400人余に上り、連合行為(共同行為)の態様が価格カルテルであること等を考慮し、同法第41条第1項前段規定に基づき、2012年8月19日公処字第101096号処分書(以下「原処分書」)を以って上訴人に対して該処分書送達の翌日から直ちに前項の違法行為を停止するよう命じるとともに、40万新台湾ドルの過料に処した。上訴人はこれを不服として、順に行政訴願と行政訴訟を提訴したが、原審裁判所である台北高等行政裁判所は102年度訴字第751号判決(以下「原判決」)を以って棄却した。上訴人はさらに不服として、その後本件上訴を提起した。
二 両方当事者の請求内容
(一)上訴人:原判決を取り消す。
訴願決定、原処分をいずれも取り消す。
訴訟費用は被上訴人の負担とする。
(二)被上訴人:上訴を棄却する。
訴訟費は上訴人の負担とする。
三 本件の争点
1.専門職の業界団体(原文:職業団体)の行為は公平交易法の規範対象となるか否か。
2.係争通知書の「(料金の)見積額の提言」内容は事業活動を拘束するという効果、又は需給に関わる市場機能に影響するという効果をもたらすか否か。
3.本件の市場シェアはいかに算出すべきか。
4.上訴人に市場の秩序に影響をもたらす故意、過失があったか否か。
(一)上訴人の主張理由:省略。判決理由の説明を参照。
(二)被上訴人の答弁理由:省略。判決理由の説明を参照。
四 判決理由の要約
(一)公平交易法第2条、第7条第4項、第14条第1項前段及び同法施行細則第2条第3号にはそれぞれ「本法において事業者とは、次に掲げるものをいう。…3.同業組合(原文:同業公会)…」、「同業組合が、定款(会則)或いは会員大会、理事会会議、監事会会議の決議又は他の方法によって事業活動を拘束する行為も第2項の水平的連合行為(共同行為)にあたる。」、「事業者は連合行為をしてはならない。……」、「本法第2条第3号でいう同業組合は次のとおりである。…3.その他の法規の規定により成立した業界団体」と規定されている。次に、事業者が連合行為を行うとは、互いに商議し契約又はその他の方法を選択して合意により連合行為を行うことであり、また同業組合の決議により完成してもよく、二種類の方法が事業者の自由競争を制限することに変わりはなく、市場機能に対する影響の程度にも違いはない。また連合行為は完全に競争を消滅する又は実際に競争を制限することを要件としておらず、特定の市場条件において協議行為が競争の圧力を弱め、競争の程度に対して望ましくない影響をもたらす危険性があるだけで十分である。本件上訴人は記帳士法(税理士法)第4章規定に基づき結成された業界団体であり、その会員はいずれも記帳士資格保有者の身分を有し、かつ台北市に設立された記帳士の事務所である。上訴人は上記の公平交易法施行細則第2条第3号でいう同業組合であり、公平交易法第2条第3号でいう事業者である。調べたところ、上訴人の会議決議は会員の業務執行料金基準に関するもので、通知書で会員に見積額が1ヶ月当たり台北市は2,500新台湾ドル、台北県は2,000新台湾ドルをできるだけ下回らないよう通知し、個別の会員の価格決定を拘束、又は決定に影響した。該行為は共同価格設定という連合行為の類型に該当し、その制限対象である価格は競争パラメータの中でも最も核心的であり、経済の中枢神経系統という役割を演じるものである。かつ上訴人が召集した会議資料には「現在の業務執行環境において少数の会員が意図的で悪質な値下げ競争を行い、市場価格を破壊しており、職業道徳に反するため、公会が統一して処理するべきだとの意見が会員から常々聞かれていた」等の文言が記載されており、かつ上訴人が会員へ送達した通知書のタイトルには「本会会員料金の最低基準についての提言」と記載され、また上訴人は調査において会議の決議と通知書送達の目的は会員間の値下げ競争を解決するためだと認めている。よって上訴人の係争行為は市場競争を制限する目的に基づき、上訴人会員の自らの共同利益を維持するため、制限の対象を核心的な競争パラメータとした。上訴人は、係争通知書は提言の性質を有し、また事業活動に対する拘束力を有せず、かつ多くの会員は実質上すでに該基準に基づいて見積もっており、いかなる料金の引上げや制定も行っていない云々、と主張している。ただし、被上訴人が上訴人の会員に対して行った訪問調査の結果と上訴人会議資料から、上訴人の主張するように会員の料金基準はいずれも該通知書に基づいて見積もるよう提言するというものではなかったことが分かる。さらに、訪問を受けた会員は「我々はいずれもこの基準に基づいて料金を斟酌している」、「(係争通知書を参考に料金を調整)するだろう」、「できるかぎり(係争通知書を参考に料金を調整)する」、「(係争通知書を参考に料金を調整)する」、「(係争通知書を参考に料金を調整)してもよい」、「公会の決定を待つ」、「通知書に基づいて顧客と料金を交渉している」と述べており、上訴人が述べるように会員の料金決定に影響はもたらさないとする状況とは異なることが十分に分かる。また、被上訴人によるアンケート調査結果から、一部の会員は係争通知書の料金を参考とすると述べており、係争通知書の最低料金基準は(1)元来実際の料金が最低料金基準より低い場合、最低料金基準まで引き上げる、(2)通知書の最低料金基準に基づき元来の料金価格を維持することで、会員の値下げ誘因を低減させるという、競争制限の効果をもたらす可能性がある。被上訴人は上訴人の組織の特性を以って、該係争行為は確実にその会員に対して相当の拘束力を有し、事業活動を拘束する行為にあたり、その会員が該参考価格を会員間の多数の共通認識として信頼させるに足り、料金価格の正当化、合理化の依拠とする可能性があり、サービス料金を共同決定する競争制限の手段であるため、上訴人が公平交易法第14条第1号本文に違反していると認めることには根拠がある。
(二)上訴人は、憲法が專門職を保障しており、専門職と一般事業者とは異なり、高度の公益性を有するため、当然ながら一般営利事業者のために定められた競争法による管制規範は専門職に適用されるものではなく、記帳士法第24条にはすでに公会の自治権限が定められており、係争通知書を作成することができるが、被上訴人はこれに基づいて認定しておらず、さらに原判決はそれを維持しており、その判決は法令違背である云々、と主張している。憲法第86条第2号に「以下の資格は、考試院が法に基づき試験による選抜と評定を行うものとする:……2.専門職及び技術者の業務執行資格。……。」と定められている。上記憲法第86条第2号規定は、専門職と技術者が市場に参入する資格を管制し、関連試験の合格者が業務執行に必要な知識と能力を有することを確保するものであるが、憲法又は記帳士法はいずれも記帳士の選抜・評定を経た記帳士が市場に参入した後、「より有利な価格、数量、品質、サービス又はその他の条件で取引機会を獲得」してはならないと制限していない。よって専門職が法に基づいて選抜・評定されることによって始めて業務執行できることと、専門職者がより有利な取引条件を以って競争することとは互いに相容れないものではない。況してや自由に独立して取引条件を決定することは、それぞれの専門職者が経営の自由を実践するものであるだけではなく、社会全体の利益に適合するものであり、公平交易法が市場競争に影響する事業者の競争行為(又は反競争行為)を規範するものであることは、前述の専門職が法に基づいて選抜・評定されることとは異なるものである。専門職者が公平交易法第2条でいう「事業者」の概念に該当することにより、公平交易法のチェックを受ける対象であるべきである。また、公平交易法は一般競争法であり、適用範囲はすべての事業行為を含み、「一般営利事業者」か「非営利事業者」かを区別するものではない。さらに、公平交易法は「専門職」に対して別途特殊な免責規定を定めておらず、立法者は公平交易法第46条に「事業者の競争に関する行為について、他の法律に別段の規定がある場合は、本法の立法趣旨に抵触しない範囲内において、その他の法律規定を優先して適用する」と規定され、公平交易法とその他の法律の適用関係を確立している。これにより、もし公平交易法が一般営利事業者を対象として定められた競争規範であり、専門職に適用されないと認定するのであれば、公平交易法第46条以外に、別途「専門職の免責」規定を設定することになり、現行規定に違背するだけではなく、公平交易法の適用範囲を縮減してしまい、法に合わない。また、職業の種類は、それぞれの就業環境又は条件が異なるため、異なる主観的及び客観的就業条件が必要となるが、これにより職業によって競争法における評価の高低を認めるものではない。市場経済制度において、経済活動に参加する全ての者は、専門職の範疇にあるか否かを問わず、いずれも自身が持つ知識、経験、技術、労力で経済価値を有する商品又は役務を提供し、それぞれ有利な価格、数量、品質、サービス又はその他の条件で取引機会を獲得するもので、この自由競争システムが市場経営を運営する礎であり、各業界で適用されている原則であり、それぞれの業界の公益性によってそれが負う社会的責任又は職業に対する期待が異なるものではない。競争行為に関わる範疇において、専門職の社会的役割とそれが負う公益性を以って、競争法の規範を阻却する正当な理由としてはならない。本件の記帳士が従事する業務には公益性があるが、これは市場競争システムの運営と対立するものではない。上訴人は記帳士法に基づいて設立された業界団体であり、競争法規定に違反する行為に従事したならば、公平交易法の規範を受けるべきである。さらに、記帳士法第24条は上訴人に公会の定款を制定することを授権(権限委譲)する規定であり、上訴人が関連事務の運営を処理できるようにしているが、上訴人が記帳士料金の基準を制定又は提言することについては授権してない。上訴人は記帳士法第24条が公会に自治権を賦与しており、上訴人は係争通知書を作成することができる云々、と主張しているが、これは法規に対する誤解であると認められる。
(三)記帳士が専門職者に該当し、情報の非対称性による市場の失敗という現象がみられ、即ち記帳市場には情報の非対称性という外部性を有し、消費者は専門職が提供する専門サービスの品質の如何を判断することはできず、簡単に価格で判断するしかなく、自治的手段を以って解決すべきであり、上訴人が係争通知書を作成したことは専門職の業界団体の自治事項であり、公平交易法の規範を適用されるべきでないにもかかわらず、被上訴人は是認せず、原判決がそれを維持しているため、その判決は法令違背である云々、と上訴人は主張している。専門職には集中的な教育、訓練と長時間の経験育成が必要であり、それによって人的資本及び専門の判断力を蓄積してサービスを提供できる。社会の一般大衆にとって、従来型の商品や役務と比べ、専門職者が提供するサービスの品質の良し悪しをサービスを受ける前に判断することは難しい。前記の「情報の非対称性」に対する考慮に基づき、政府は「資格制度」を以って専門職者の資格を管制し、一般大衆が情報の劣勢にあることによってもたらされる「捜すコスト」を節約している。しかしながら、ライセンスは専門職者が業務執行の最低基準に適合するか否かを示すものであって、サービス提供に尽力するか、経験は豊富か、技術が優れているかについては、ライセンス取得の有無で判断できない。これにより、情報の非対称性は市場の各業界に普遍的に存在している。また前述の情報の非対称性は必ずしも市場機能の正常な動作に影響を与えるとは限らず、逆に競争市場は往々にして情報の非対称性を解決するシステムを発展させることができる。例えば、口コミや評判等の確立を通じて品質が優れているという情報を潜在的な顧客に伝達すること、品質保証の提供を通じて潜在的な顧客の品質に対する不安を解消すること、第三者の鑑定を通じてサービスの品質を透明化すること等はいずれも市場システムの運営において情報の非対称性問題に対する解決策となる。よって「情報の非対称性」という性質が存在することだけで特定業種を公平交易法の適用から排除する理由とすることはできない。情報の非対称性の程度が比較的高く市場の失敗をもたらす少数の状況に対する救済方法として買い手の「捜すコスト」を低減すること(例えば、専門職の資格制度)、又は情報の流通を促進すること(例えば、不動産取引の売り手による情報開示義務)があり、それによって買い手又は消費者がより十分な情報と、より多くの選択肢を得て取引前の評価を行うことができ、市場競争の力を通じて情報における劣勢を補うことができる。しかしながら、上訴人がいうところの自治方式を以って個別の業者が自由に商品又は役務の価格を決定することに干渉したり、統一された料金の下限を設定したりするならば、情報の非対称性がもたらす問題を解決できないだけではなく、逆にこれによって競争力の動作を制限し、市場における弱者が淘汰され強者が生き残るシステムを発揮させることができず、さらには情報の劣勢にある買い手や消費者は競争力を通じた保護を受けられずに容易に損害を受けることになってしまう。さらには、記帳士が提供するサービスの範囲には標準化された、ルーチンのサービスが含まれ、顕著な自然独占、外部性、情報の非対称性等の特性があると認め難い。よって、記帳士が専門職であるということだけを以って、該業種はその特殊性から公平交易法の適用を阻却できる云々、と上訴人が主張することは、なお根拠に欠ける。
(四)上訴人は、係争通知書でいうところの財政部が定めた業務執行者所得基準は記帳案件に係る所得を指し、被上訴人は上訴人の市場シェアが依拠とする税申告の資料は係争通知書の内容とは関係がなくその資料には誤りがあるとしており、また被上訴人が単純に案件の数量で上訴人の市場シェア算出基準としていることにも誤りがあり、さらに原判決は維持を決定しており、その判決には法令違背がある云々、と主張している。市場シェアとは、特定の市場参入者の販売量又は売上高が市場の全ての市場参入者の販売総量又は販売総額に占める百分率をいう。公平交易法施行細則第4条に規定される市場シェアは原則的に特定の市場範囲における販売値(量)を計算の基準としており、市場特性が特殊である時のみ例外的にその他の基準を採用してよい。本件の被上訴人は税申告の統計資料を参考として本件の市場シェア認定の資料としており、即ち特定の市場範囲における「販売量」を算出基準とするものに該当する。上訴人は、本件は売上高を統計すべきであり、それによって始めて前記規定に適合する云々、と主張しているが、前記法規に対して誤解がある。現行法令規定によると、「記帳士(税理士)」、国税局から登録認可される「記帳及報稅代理業務人(記帳及び税申告代理業務人)」、財政部から審査され税務代理人証書を発給される「會計師(会計士)」の三者は、いずれも記帳サービスと監査証明の必要がない税金の賦課及び徴収に係る案件の申告サービスを提供することができ、実質的に前記の記帳及び税申告の代理業務を提供することができる。よって上記三者が提供するサービスは、機能、特性及び用途において合理的な代替性を有し、本件の関連市場を記帳及び税申告代理業務と特定すべきであるが、監査証明の必要がある税申告代理は含まない。本件の関連する地理的な市場は台北市と新北市に特定すべきである。
(五)上訴人はさらに、財政部が定めた業務執行者所得基準に基づいて作成した係争通知書には主観的に市場の秩序に影響をもたらす故意と過失はなく、被上訴人が公平交易法違反の故意があったと誤認し、原判決がそれをなお維持しており、その判決は法令に違背している云々、と主張している。行政罰法第7条第1項でいう「故意」とは、人民が行政法上の義務行為に違反する事実に対して、明らかに知り、且つこれを発生させる意思を有する、又はその発生を予見し、且つその発生がその本意に違背しないことをいう。ここでいう「過失」とは、人民が行政法条の義務行為に違反する事実に対して、その状況に照らし注意すべきであって、且つ注意することができたにも関わらず注意せず発生させてしまった、又はその発生の可能性を予見したがそれが発生しないことを確信したことをいう。上訴人は、財政部が定めた業務執行者所得基準に基づいて作成した係争通知書には主観的に市場の秩序に影響をもたらす故意と過失はなかった云々、と主張している。財政部の返信によると、それが定めた「税務機関による業務執行者所得の算出基準」は税務機関が業務執行者の課税根拠とするためだけのものであり、記帳士の料金価格の決定とは関連性がない。また、上訴人の2010年10月26日第2期第3回監事会会議議事録にある臨時動議案一において、上記上訴人が理事会(訳注:2010年10月21日第2期第3回理事会会議))で決議した会員に対する最低料金基準の提言に関する公平交易法違反の有無について、上訴人のイメージを損なわないよう理事会に提言をさらに斟酌、検討するよう決議されている。以上のことから、上訴人が会員に一致した料金基準を採用するよう提言することが公平交易法の競争行為制限規定に抵触することを明らかに知っていたことが分かる。
(六)以上をまとめると、本件被上訴人が、上訴人が係争通知書で会員に料金の最低基準を提言したことは違反公平交易法第14条第1項本文にある「事業者は連合行為をしてはならない」との規定に違反していると認定し、原判決が現処分及び訴願決定を維持したことにいわゆる法令違背はない。以上の次第で、本件上訴には理由がなく、行政訴訟法第255条第1項、第98条第1項前段により主文の通り判決する。
2014年6月12日
最高行政裁判所第二法廷
裁判長 劉鑫楨
裁判官 呉慧娟
裁判官 許瑞助
裁判官 劉穎怡
裁判官 蕭忠仁