独リモワ(RIMOWA)による模倣品の提訴で台湾企業が敗訴

2017-09-22 2016年
■ 判決分類:公平交易法

I 独リモワ(RIMOWA)による模倣品の提訴で台湾企業が敗訴

■ ハイライト
ドイツの著名なスーツケースブランド「RIMOWA」を製造するリモワ社(RIMOWA GmbH)は1898年にドイツで設立され、1950年からは「グルーブデザイン(Groove design)」(訳註:スーツケースの本体に平行に入った凹凸のリブ加工デザイン)を各種スーツケースに採用してきた。リモワ社は、加賀精品、聯瑩、育丞、冶亮、沅大等の台湾企業が製造・販売する「Eason」、「LEADMING」等ブランドのスーツケースには約1インチ幅の平行な長い溝を有するデザインが施されており、溝同士が腰折れ模様で区画されている点がRIMOWAの「グルーブデザイン」に酷似していると判断し、知的財産裁判所に類似する模倣デザイン商品の販売中止を求めて提訴するとともに100万新台湾ドルの賠償を請求した。
それに対して佳賀精品等の企業は、リモワ社は1950年から溝模様のデザインをスーツケースに使用し始めたが、その外観は変化し続けており、さらに佳賀精品等の商品の創意は溝の幅、腰折れ模様の反射やコーナー金具等において突出しており、リモワ社の単純なグルーブから逸脱するもので、混同は生じないと抗弁した。
知的財産裁判所が審理した結果、リモワ社は台湾においてグルーブデザインを広告の主軸とするとともに、フラッグショップと支店を設立して、その業績は2003年の74万2850新台湾ドルから急成長を遂げ、2013年には7億1270万2400新台湾ドルに達しているほか、この「グルーブデザイン」のスーツケースが著名人にも愛用されており、RIMOWAスーツケースの外観である「グルーブデザイン」は商品出所を識別する機能をそなえていると認定し、加賀精品等5社に対して「グルーブデザイン」に類似する各種スーツケースの販売中止、並びにリモワ社への100万新台湾ドルに上る賠償金支払いを命じる判決を下した。本件はさらに上訴できる。(2016年9月27日中国時報 B2面)

II 判決内容の要約

知的財産裁判所民事判決
【裁判番号】104年度民公訴字第9号
【裁判日期】2016年9月5日
【裁判事由】公平交易法侵害排除等

原告 独リモワ社(RIMOWA GmbH)
被告 趙○卿即ち加賀精品行
被告 聯瑩国際有限公司(Lian Yin International Co., Ltd.)
被告 育丞国際有限公司(Y.C. Eason International Co., Ltd.)
被告 冶亮実業有限公司(Lead Ming Co., Ltd.)
被告 沅大国際有限公司(Yuan Ta International Co., Ltd.)

上記当事者間における公平交易法侵害排除等事件について、当裁判所は2016年8月8日に口頭弁論を終え、次のとおり判決する。

主文
被告等は付表1の「グルーブデザイン」と同一又は類似するものを各種スーツケースに使用してはならない。
被告等は付表1の「グルーブデザイン」と同一又は類似するものを使用した各種スーツケースを、販売、輸送、輸出又は輸入してはならない。
被告等は原告に100万新台湾ドル及び2015年9月19日から支払済み日まで年5部の割合による金員を支払え。
訴訟費用は被告の連帯負担とする。
本判決第3項について、原告が34万新台湾ドルを担保として供託した後仮執行できる。
ただし被告が100万新台湾ドルを原告に担保として供託したときは、仮執行を免脱できる。

一 事実要約
原告は1898年ドイツで創業され、1950年にはそれが販売するすべてのスーツケースの本体に独特な「グルーブデザイン」を採用し、半世紀以上にわたって変更しておらず、世界各地で販売している。台湾では15ヵ所の販売拠点以外に、台湾の北部、中部、南部の3箇所にフラッグショップを設置しており、多くの販売拠点の外観には「グルーブデザイン」が施され、早い時期から関連の業者と消費者が熟知し、出所を識別する依拠となっており、識別性が高いスーツケースのトレードドレスを有する。原告は被告等がその営業拠点で販売するスーツケースとそのサイトで販売する係争侵害疑義物品を発見し、係争疑義物品の外観にはいずれも原告の「グルーブデザイン」に高度に類似したトレードドレスが採用されており、他人の業務上の信用へのただ乗り、高度な盗用、他人の努力の利用により自らの商品又は役務を宣伝する行為に該当し、不正競争を構成すると判断し、公平交易法(訳註:日本の不正競争防止法や独占禁止法に相当)第22条第1項第1号及び第25条規定により訴訟を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告の主張:
1.被告等は「グルーブデザイン」と同一又は類似するものを各種スーツケースに使用してはならない。
2.被告等は「グルーブデザイン」と同一又は類似するものを使用した各種スーツケースを、販売、輸送、輸出又は輸入してはならない。
3. 被告等は原告に100万新台湾ドル及び本件起訴状副本送達の翌日から支払済み日まで年5部の割合による金員を支払え。
4.原告は担保を供託するので、第3項の主張について仮執行宣言を申し立てる。
(二)被告の主張:
1.原告の請求及びその仮執行宣言申立を棄却する。
2.不利な判決を受けたとき、担保を供託するので、仮執行免脱宣言を申し立てる。

三 本件の争点
(一)原告が所有する付表1の係争「グルーブデザイン」は公平交易法が保護する商品の「トレードドレス」であるのか。
(二)被告等の企業が販売・販促又は輸入する係争侵害疑義物品は、原告が所有する付表1の係争「グルーブデザイン」と同一又は類似するものを使用し、公平交易法第22条第1項第1号(改正前公平交易法第20条第1項第1号)の商品「トレードドレス」を侵害する事情があるのか。
(三)被告等が販促・販売又は輸入する係争侵害疑義物品には、原告が所有する付表1の係争「グルーブデザイン」と同一又は類似するものを使用していることにより、公平交易法第25条(改正前公平交易法第24条)でいうところの取引秩序に影響するに足りる欺罔又は著しく公正さを欠く行為があるのか。
(四)原告は公平交易法第29条の規定により、被告等に付表1の係争「グルーブデザイン」と同一又は類似するものを各種スーツケースに使用しないこと及び「グルーブデザイン」と同一又は類似するものを使用した各種スーツケースを販売、輸送、輸出又は輸入しないことを請求できるのか。
(五)原告は公平交易法第30条の規定により、被告等に100万新台湾ドルの損害賠償責任を連帯で負うよう請求できるのか。

四 判決理由の要約
(一)原告が所有する付表1の係争「グルーブデザイン」は公平交易法が保護する商品の「トレードドレス」であるのか。

原告のスーツケース「グルーブデザイン」のトレードドレスが有する概念上の強さは高くないが、原告は当初から「グルーブデザイン」をスーツケースのトレードドレスとしており、関連のスーツケースの外観にはすべて「グルーブデザイン」を使用している。長期にわたり忠実にその「グルーブデザイン」の概念を伝え、広告・販促やメディア報道も広く正確に「グルーブデザイン」が原告のスーツケースのクラシックなトレードドレスであることを伝えている。さらに原告の売上高は大幅に成長し、ブランドイメージが関連の事業者と消費者に浸透している等の事情から、原告のスーツケースの外観にある「グルーブデザイン」のトレードドレスには高度な市場における強さがあり、関連する事業者と消費者に広く認知され、原告のスーツケースと結びついている。よって原告のスーツケースの外観にある「グルーブデザイン」は商品の出所を識別する機能を有し、著名なトレードドレスであると認められる。

(二)被告等の企業が販売・販促又は輸入する係争侵害疑義物品は、原告が所有する付表1の係争「グルーブデザイン」と同一又は類似するものを使用し、公平交易法第22条第1項第1号の商品「トレードドレス」を侵害する事情があるのか。

公平交易法第22条第1項第1号でいうところの「混同」とは、商品又は役務の出所に対する誤認又は誤信を指し、概念において商品のトレードドレスを模倣して消費者に誤認させるほか、模倣する商品と模倣された模倣品とのトレードドレス間である種の加盟、関連又は賛助の関係があると消費者に誤認させるという混同の状況を含む。さらにいわゆる混同は模倣行為で実際に混同を生じさせる必要はなく、混同を惹起する可能性があるだけでよい。
被告等の係争侵害疑義物品と原告のスーツケース「グルーブデザイン」は類似の使用であり、関連の事業者又は消費者が購入する時、外観について係争物品が原告のスーツケースであると誤認するおそれ又は両者に関連があると認識する可能性があり、さらに双方の商品には同質性があり、価格も完全に区別できず、関連の事業者又は消費者も販売ルートにより双方のスーツケースの出所を判別することが容易ではないため、被告等が販売、販促又は輸入する係争物品と原告のスーツケースには誤認混同のおそれがあると認めることができる。よって被告等が販売・販促又は輸入する係争侵害疑義物品は、原告が所有する付表1の係争「グルーブデザイン」に類似しており、公平交易法第22条第1項第1号の「その他商品に表示されるトレードドレスを同一の商品において同一又は類似的に使用することにより、他人の商品との混同ををもたらすこと、又は当該トレードドレスを使用した商品を販売、運送、輸出若しくは輸入すること」で原告の係争「グルーブデザイン」トレードドレスを侵害する事情を有する。

(三)被告等が販促・販売又は輸入する係争侵害疑義物品には、原告が所有する付表1の係争「グルーブデザイン」と同一又は類似するものを使用していることにより、公平交易法第25条でいうところの取引秩序に影響するに足りる欺罔又は著しく公正さを欠く行為があるのか。

公平交易法第25条に「本法に別段の規定がある場合を除き、事業者はその他取引秩序に影響するに足りる欺罔又は著しく公正さを欠く行為を行ってはならない」と規定されている。成立要件は2つあり、つまり(1)欺罔又は著しく公正さを欠く行為、(2)取引秩序に影響するに足りること、である。いわゆる「欺罔又は著しく公正さを欠く」とは、欺罔又は著しく公正さを欠く方法で競争又は商業取引に従事して、他人の努力の成果を搾取することをいい、他人の業務上の信用へのただ乗り、高度な盗用又は他人の努力の利用により自らの商品又は役務を宣伝する行為が含まれる。
原告のブランドイメージは関連の事業者及び消費者に浸透しており、原告のスーツケースの外観にある「グルーブデザイン」のトレードドレスは高い市場における強さを有し、関連の事業者、消費者に広く認知され、原告のスーツケースとのつながりを有し、スーツケース業界にとって原告の「グルーブデザイン」は主にスーツケースの外観に使用される標識となっているため、被告等が販売・販促又は輸入する係争侵害疑義物品は高度な盗用と係争「グルーブデザイン」へのただ乗りがあると推認できる。被告等が販促・販売又は輸入する係争侵害疑義物品は、スーツケースに原告の所有する付表1の係争「グルーブデザイン」と同一又は類似するものが使用されていることにより、現行公平交易法第25条の取引秩序に影響するに足りる欺罔又は著しく公正さを欠く行為があるとする原告の主張には理由がある。

(四)原告は公平交易法第29条の規定により、被告等に付表1の係争「グルーブデザイン」と同一又は類似するものを各種スーツケースに使用しないこと及び「グルーブデザイン」と同一又は類似するものを使用した各種スーツケースを、販売、輸送、輸出又は輸入しないことを請求できるのか。

被告等が販売・販促又は輸入する係争侵害疑義物品は原告が所有する係争「グルーブデザイン」に類似しており、公平交易法第22條第1項第1号に定められる原告係争「グルーブデザイン」トレードドレスを侵害しており、公平交易法第25条の取引秩序に影響するに足りる欺罔又は著しく公正さを欠く行為を構成している。よって原告が公平交易法第29条規定により、被告等に付表1の係争「グルーブデザイン」と同一又は類似するものを各種スーツケースに使用しないこと及び「グルーブデザイン」と同一又は類似するものを使用した各種スーツケースを、販売、輸送、輸出又は輸入しないことを請求することには理由があり、許可すべきである。

(五)原告は公平交易法第30条の規定により、被告等に100万新台湾ドルの損害賠償責任を連帯で負うよう請求できるのか。

本件被告等が係争「グルーブデザイン」の識別性を毀損し侵害する行為は、係争「グルーブデザイン」に対する高度な盗用とただ乗りで係争「グルーブデザイン」のトレードドレスを侵害するものであり、「商標権」の侵害に相当すると認めるべきである。よって原告が商標法第71条第1項第3号に規定される「押収した商標権侵害に係る商品の販売単価の1500倍以下の金額を損害額とする。ただし、押収した商品が1500点を超えるときは、その総額で賠償金額を定める」を類推・適用して損害賠償額を計算し(当裁判所ファイル第315頁)請求したことには理由がある。原告が係争侵害疑義物品一、二の販売単価が1500新台湾ドルであることは、被告が争わない事実であることから、原告が被告等が100万新台湾ドルを連帯で賠償するよう請求していることについては、押収した被告等の「グルーブデザイン」トレードドレス侵害疑義物品の販売単価の666.67倍に相当し、商標法第71条第1項第3号に規定される押収した商標権侵害に係る商品の販売単価の1500倍以下の金額より低いため、理由があり、許可すべきである。

本件原告の訴えには理由があるため、智慧財産案件審理法(知的財産案件審理法)第1条,民事訴訟法第78条、第85条第2項、第390条第2項、第392条第2項により、主文のとおり判決する。

2016年9月5日
知的財産裁判所第三法廷
裁判官 范智達
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