Uberに公平交易法違反で100万新台湾ドルの過料、提訴するも敗訴

2017-10-25 2016年
■ 判決分類:公平交易法

I Uberに公平交易法違反で100万新台湾ドルの過料、提訴するも敗訴

■ ハイライト
    台湾宇博数位服務股份有限公司(以下「台湾Uber」)がサイト上でドライバーの募集広告を掲載したところ、公平交易委員会(訳注:日本の公正取引委員会に相当。以下「公平会」)からUberが合法であると誤解を招く可能性があると認定され、2016年6月に広告の内容不実を理由に初めて100万新台湾ドルの過料が科せられた。台湾Uberはこれを不服として過料取消しを求め提訴し、広告は客観的にドライバーの資格を述べたものであり、取引の勧誘を目的とするものではないと主張した。台北高等行政裁判所は、広告がプラットフォームを通じて利益を得ることができると誤認させるものであるが、公路法(道路法)違反で罰則を受ける可能性があることを適切に開示していないため、公平会の処罰決定は合法であると認定し、台湾Uberに敗訴の判決を言い渡した。さらに上訴できる。
    台湾Uberは2015年から「Uberドライバー情報サイト」にてドライバー募集の広告文を掲載し、「自分の車を運転。人気のシェアサイトに無料で加入。時間は自由。多ければ週1万台湾ドル以上の副収入」と記載している。「Uber X 菁英優步」(訳註:「菁英」はエリート、「優步」はUberの意)の募集条件は「満21歳、普通免許を所持し、車両は『菁英(エリート)』の条件に合うもの。前科や重大事故の記録が無いもの」としており、「菁英」が所持すべき書類は免許証、車検証、強制保険、運転免許証検証証明書(事故記録)、良民証(警察刑事記録証明)等の5種類としている。
    裁判所は、この広告は見る者に、加入条件に合えばUberのプラットフォームを通じて「合法」に乗客を乗せることができ、ドライバーが自分のリソースと時間を使い週に1万新台湾ドル以上の副収入を得ることができるという印象を与えると認定した。しかしながら、交通部の処分書という専門的見解によると、Uberは公路法に違反しており、Uberの派遣を受けた自家用車の所有者は5万乃至15万新台湾ドルの罰金並びに2乃至6ヵ月のナンバープレート使用停止という処罰を受け、たとえドライバーの加入条件を満たし、5種類の書類を所持していても処罰されるおそれがあるという。
    判決によると、台湾Uberは不実の内容で広告を打ち、サイトでドライバーを募集し続け、現在も広告をサイトから削除しておらず、見る者に合法であると誤解させ、さらにドライバーが加入する取引機会を増やすことでその他のタクシー業者の取引機会を排斥して競合者に損害を与え、不平等競争の効果を十分にもたらすため、台湾Uberに敗訴を言い渡した。(自由時報2016年11月16日)

II 判決内容の要約

台北高等行政裁判所判決
【裁判番号】105年度訴字第1232号
【裁判期日】2016年11月15日
【裁判事由】公平交易法

原告 台湾宇博数位服務股份有限公司
被告 公平交易委員会

上記当事者間における公平交易法事件について、原告は2016年6月20日公処字第105065号処分書を不服として行政訴訟を提起した。当裁判所は次のように判決する。

主文
原告の訴えを棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

一 事実要約
被告は原告が2015年「Uberドライバー情報サイト」(URL:http://www.driveuber.tw/)において、「自分の車を運転。人気のシェアサイトに無料で加入。時間は自由。多ければ週1万台湾ドル以上の副収入」という内容を掲載し、「UberX菁英」の募集条件については「満21歳、普通免許を所持し、車両は『菁英』の条件に合うもの。前科や重大事故の記録が無いもの」、「UberX菁英」に必要な書類は「1.免許証、2.車検証、3.強制保険、4.運転免許証検証証明書(事故記録)、5.良民証(警察刑事記録証明)」としている(以下「係争公告」)ことに対して、取引決定に十分に影響するサービス内容が虚偽不実又は人に誤解を与えるような表示であり、公平交易法第21条第4条の第1項準用規定に違反していると認め、2016年6月20日に公処字第105065号処分書(以下「原処分」)を以て、原告に原処分送達の翌日から直ちに前記違法行為を中止するよう命じるとともに、原告に100万新台湾ドルの過料を科した。原告はこれを不服として、当裁判所に行政訴訟を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告の請求:
1.原処分を取り消す。2.訴訟費用は被告の負担とする。
(二)被告の請求:
1.原告の請求を棄却する。2.訴訟費用は原告の負担とする。

三 本件の争点
1.原告は係争広告の行為の主体であるのか。
2.係争公告は公平交易法第21条が規範する客体であるのか。
3.被告は原告が公平交易法に基づいて事前に取引のリスクを告知する作為義務があると認めた。ただし処分を以って原告に期限付の改善命令を出さずに、直接原処分を行ったことは、比例原則に適合するのか。
(一)原告の主張:省略。判決理由の説明を参照。
(二)被告の答弁:省略。判決理由の説明を参照。

四 判決理由の要約
当裁判所が審理したところ原処分に誤りはない。ここで「行為の主体」「広告掲載の時期」「Uberドライバー募集に関する広告を掲載した行為は、公平交易法第21条に違反している」という3つの部分に分けて、以下のとおり述べる。

1.行為主体に関する部分:
「虚偽不実又は人に誤解を与えるような表示又は表記」の行為主体については、広告行為を実施する行為全体を以て総合的に判断すべきであり、直接表示又は表記した行為者に限定すべきではない。つまり公平交易法第21条でいうところの広告行為の主体は広告の製作に限らず、広告内容の提供、製作から公衆に知らせる過程において、各事業者の広告行為に対する参与の程度に応じて決まる。事業者が広告を製作、掲載する行為、広告商品の取引過程に参与して且つ利益を得たならば、広告主としての責任を免れ難く、広告内容については真実を表示しなければならない。「Uberドライバー情報サイト」(URL:http://www.driveuber.tw/)は確かに原告が管理しており、広告の内容は原告が審査して掲載している。前述したとおり、原告は係争広告の内容について審査並びに実質的な支配力を有しており、関連する管理及び審査の業務により報酬を得ている。最高行政裁判所の100年度判字第348号判決趣旨からみて、原告は「Uberドライバー情報サイト」における広告に関連する行為の主体であると認めることができる。

2.「Uberドライバー情報サイト」の広告掲載の時期に関する部分:
原告は2015年から「Uberドライバー情報サイト」にUberドライバー募集に関する広告を掲載し、現時点でまだサイト上に掲載し続けている。

3. Uberドライバー募集に関する広告を掲載した行為が公平交易法第21条に違反していることに関する部分:
原告は「Uberドライバー情報サイト」に「自分の車を運転。人気のシェアサイトに無料で加入。時間は自由。多ければ週1万台湾ドル以上の副収入」、「加入方法に関するよくある質問……『UberX菁英』の……条件:満21歳、普通免許を所持し、車両は『菁英』の条件に合うもの。前科や重大事故の記録が無いもの」、「『UberX菁英』に必要な書類は1.免許証、2.車検証、3.強制保険、4. 運転免許証検証証明書(事故記録)、5.良民証(警察刑事記録証明)」等の文言を掲載しており、一般又は関連の大衆に加入条件に適合し、必要な書類を提出して、Uber APPプラットフォームに加入すれば、このプラットフォームを通じて合法的に乗客を搭乗させることができ、現有のリソース(自家用車)と時間を使い週に1万新台湾ドル以上の副収入を得ることができると誤認させ、Uber APPプラットフォームで派遣された自家用車の所有者は公路法等の関連規定に違反し、罰金及び車両ナンバープレートの使用停止又は取消のリスクがあることを知り得ることは難しく、原告はこの取引のリスクを適当な方法で開示していない。よって原告が「Uberドライバー情報サイト」に係争広告の内容を掲載したことで、自分の自動車が加入条件に適合し、必要な書類を提出して、Uber APPプラットフォームに加入すれば、合法的にサービスを提供でき、前記の公路法第77條第2項規定には該当しないと誤解させ、その表現と現行の法律との間の相違は、一般又は関連の大衆が受け入れられる程度ではなく、誤った認知や決定を惹起するおそれがあり、不正競争の効果をもたらすため、取引決定に十分に影響するサービス内容が虚偽不実又は人に誤解を与えるような表示であり、公平交易法第21条第4条の第1項準用規定に違反していると認める。

4.本件被告が処罰を決定する際に、法律の目的及び個別案件の実情を考慮して適切な決定を行い、多くの行政作為方法から二つを選んで行使し、最も有効に法律執行の目的を達成している。原告に対して違法行為を中止するよう命じるとともに、原告に過料を科す処分を下したことは、行政程序法(行政手続法)第7条で定める適合性、必要性、狭義の比例性等の比例原則に適合している。また被告が下した上記裁量には、法律で授権された目的とは異なる、若しくは関連のない事項の考慮によるという裁量の濫用はなく、消極的に裁量権を行使しないという裁量の怠慢もない。

以上の次第で、本件原告の請求には理由がなく、行政訴訟法第98条第1項前段により、主文のとおり判決する。

2016年11月15日
台北高等行政裁判所第五法廷
裁判長 許瑞助
裁判官 林玫君
裁判官 許麗華
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