「真相達文西」特別展業者に不実の広告で50万新台湾ドルの過料、提訴するも敗訴

2017-11-21 2016年
■ 判決分類:公平交易法

Ⅰ 「真相達文西」特別展業者に不実の広告で50万新台湾ドルの過料、提訴するも敗訴

■ ハイライト
台北の華山芸文特区(訳註:正式名称は華山1914文化創意産業園区)で2015年6~9月に「真相達文西(The Face of LEONARDO)」と題する特別展が開催され、主催団体である京銓芸術発展股份有限公司(以下「京銓芸術」)は広告で「世界でたった一枚のダビンチの手描き自画像を近距離で楽しめる」と宣伝していたが、展示期間中に飲み物を持った男児が展示空間で1枚の絵画を破ってしまったため注目され、さらに展示された作品が本物であるのか等の疑義も生じた。
その後、公平交易委員会(訳註:日本の公正取引委員会に相当)が調査したところ京銓芸術のサイトやチケット販売情報の中に「70億のダビンチ自画像……」、「百億の名作、55点の絵画……」、「総額100億新台湾ドル近い本物の絵画の数々を一度に鑑賞できる」、「市価2億ユーロを上回る《ダビンチ自画像》」等の文言がみられ、役務に関連し、取引決定に十分に影響を与える事項について、虚偽不実又は人に誤解を与えるような表示があり、公平交易法(訳註:日本の不正競争防止法、独占禁止法等に相当)に違反し不実の広告に該当するとして、50万新台湾ドルの過料に処した。

Ⅱ 判決内容の要約

台北高等行政裁判所判決
【裁判番号】105年度訴字第865号
【裁判期日】2016年12月8日
【裁判事由】公平交易法

原告 京銓芸術発展股份有限公司
被告 公平交易委員会

上記当事者間における公平交易法事件について、原告は行政訴訟を提起し、当裁判所は次のとおり判決する。

主文
原告の訴えを棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

一 事実要約
原告は2015年6月27日から同年9月20日までの間、台北の華山芸文特区で「真相達文西(The Face of LEONARDO)」特別展(以下「係争特別展」という)を開催し、そのサイト、チケット販売情報において「70億のダビンチ自画像……」、「百億の名作、55点の絵画……」、「総額100億台湾ドル近い本物の絵画の数々を一度に鑑賞できる」、「市価2億ユーロを上回る……《ダビンチ自画像》」等の文言(以下「係争広告」)を掲載した。被告は、原告の係争広告が役務と関連し、取引決定に十分に影響する事項について、虚偽不実又は人に誤解を与えるような表示であり、公平交易法第21条第4項の第1項準用規定に違反していると認め、各情状を総合的に斟酌した結果、2016年4月15日公処字第105030号処分書(以下「原処分」という)を以って、同法第42条前段規定により、原告を50万新台湾ドルの過料に処すともに、2016年4月15日公競字第1051460437号書簡を原告に送り原処分を通知した。原告はこれを不服とし、すぐに本件訴訟を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告の請求:原処分を取り消す。
(二)被告の請求:原告の訴えを棄却する。

三 本件の争点
原処分で係争広告が公平交易法第21条第4項の同条第1項準用規定に違反していると認定し、50万新台湾ドルの過料を科したことに誤りはあるのか。
(一)原告主張の理由:省略。判決理由の説明を参照。
(二)被告答弁の理由:省略。判決理由の説明を参照。

四 判決理由の要約
(一)原告は2015年6月27日から同年9月20日までの間、台北の華山芸文特区で「真相達文西(The Face of LEONARDO)」特別展(以下「係争特別展」という)を開催し、そのサイト、チケット販売情報において「70億のダビンチ自画像……」、「百億の名作、55点の絵画……」、「総額100億台湾ドル近い本物の絵画の数々を一度に鑑賞できる」、「市価2億ユーロを上回る…《ダビンチ自画像》」等の文言(以下「係争広告」)を掲載した。しかしながら、原告の係争広告に表記されている上記の客観的価格は、市場における実際の取引価格である、又は公正で客観的な第三者が価格を査定した等の事実を根拠とするものではない。係争広告の客観的価格には根拠がない広告文言であり、役務と関連し、取引決定に十分に影響する事項について、虚偽不実又は人に誤解を与えるような表示を故意に為し、消費者の誤った認知又は決定を惹起するおそれを生じさせ、市場競争秩序が有する元来の機能を喪失させ、競合者に顧客を失う損害をもたらし、不正競争の効果が生じ、公平交易法第21条第4項の第1項準用規定に違反すると被告が認めたことは、根拠がないものではない。

(二)被告が芸術品に価格を付け、文物としての価値を有し且つ市場で競売にかけられたことがない芸術品の価格を査定することには如何なる意味もなく、また台湾の文化水準によると、消費者の展覧会鑑賞は客観的価値を重視するものではなくなっており、さらに国立歴史博物館も1億新台湾ドルを上回る価値を有する「星の王子さま」の手稿等の文言を展覧の宣伝としたこともある、と原告は主張した。ただし調べたところ、係争広告の内容には係争特別展が特定の客観的価値を有すると宣伝されており、一般人の鑑賞を誘うために、その絵画が希有で貴重であるという印象を作り上げることを目的としている。該客観的価値は相当な市場における実際の取引価格、又は公正で客観的な第三者による査定価格を根拠とすべきであり、これは芸術品からもたらされる主観的な価値観と同じものではない。また、原告は係争特別展の絵画について客観的価格を査定することに意味はなく、消費者は展覧会を鑑賞するときにこれに重視しないといいながら、係争広告が「総額100億台湾ドル近い」、「市価2億ユーロを上回る」等の客観的価格を宣伝の重点とすることは矛盾以外の何者であろうか。原告がこの客観的価格が消費者を十分に惹きつけ、消費者にとって展覧会を鑑賞するか否かを決定する重要な要素であることを知っていたことは明らかである。原告が指摘した他の展覧会が客観的価格を広告宣伝とした部分については、その個別の事案についてどのような宣伝文句であったか、そして価格の合理的根拠があったかによって判断すべきであり、一概に論じることはできず、原告が違法ではない根拠とできるものではない。

(三)以上をまとめると、原告が主張する各部分はいずれも採用できず、本件被告が為した原処分には誤りがなく、原告が以前からの主張にこだわり(原処分の)取消を請求することには理由がなく、棄却すべきである。

以上の次第で、本件原告の訴えには理由がなく、行政訴訟法第98条第1項前段により、主文のとおり判決する。

2016年12月8日
台北高等行政裁判所第五法廷
裁判長 劉穎怡
裁判官 林秀圓
裁判官 高愈杰

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