価格比較サイトが同意なく各業者のネット上公開情報を集めて整理しても、公平交易法第25条に抵触せず
2018-11-23 2018年
■ 判決分類:公平交易法
I 価格比較サイトが同意なく各業者のネット上公開情報を集めて整理しても、公平交易法第25条に抵触せず
■ ハイライト
被告の歐克斯科技股份有限公司(Oaks Technology corporation)はネット上で不動産物件の価格比較プラットフォームを運営し、「屋比-超省房屋比價(屋比-超お得な不動産価格比較)」サイト及び「屋比-超省房屋比價APP(屋比-超お得な不動産価格比較アプリ)」(以下「屋比比價平台(屋比価格比較プラットフォーム)」という)を構築し、各不動産仲介業者の同じ物件に対する販売情報を統合して、購入者が価格を比較できるようにするとともに、「呼叫屋比經紀人服務(屋比ディーラー呼出サービス)」を提供して、ユーザーがプラットフォームに登録している不動産仲介者に直接連絡を取れるようにしている。
原告である10社の不動産仲介業者は訴えを提起し、被告が無断で原告公式サイトのページにリンクして、他人の努力の成果を搾取し、公平交易法(訳註:不正競争防止法と独占禁止法に相当)に違反していること、「屋比經紀人(屋比ディーラー)」の機能は、連絡するディーラーが原告企業の物件仲介担当者であると閲覧者に誤解させ、取引秩序に影響し得ること、「屋比比價平台」に原告商標があることで、「屋比比價平台」は原告が提供する役務である又は原告と提携関係があると消費者に誤認させ得るため、商標法規定に違反していることを主張している。
裁判所は原告に敗訴の判決を下した。その主な判決理由は、「屋比比價平台」は公開された情報を検索するもので、一般的なサーチエンジンと異なるところはなく、情報を提供するのみで、ユーザーの選択を制約していないため、取引秩序に影響する著しく公正さを欠く行為があると認め難いこと、被告は「屋比經紀人」からプラットフォームに登録する費用を徴収しており、一般ユーザーとは関係なく、不動産賃貸売買の仲介料でもなく、被告は原告との市場における競争がないこと、「屋比比價平台」は原告社名を指示的にフェア・ユースしているに過ぎず、原告商標で被告の役務を表彰しておらず、誤認混同のおそれがないことなどである。
II 判決内容の要約
知的財産裁判所民事判決
【裁判番号】106年度民公訴字第9号
【裁判期日】2018年1月9日
【裁判事由】公平交易法の侵害除去等
原 告 二十一世紀不動産股份有限公司
原 告 太平洋房屋仲介股份有限公司
原 告 中信房屋仲介股份有限公司
原 告 台灣房屋仲介股份有限公司
原 告 全國不動産經紀股份有限公司
原 告 永慶房屋仲介股份有限公司
原 告 住商實業股份有限公司
原 告 東森房屋股份有限公司
原 告 信義房屋仲介股份有限公司
原 告 鴻毅服務股份有限公司
被 告 歐克斯科技股份有限公司
兼法定代理人 葉○○
被 告 江○○
上記当事者間における公平交易法の侵害除去等事件について、当裁判所は2017年12月5日に口頭弁論を終結し、次のとおり判決する。
主文
原告の訴えを棄却し、仮執行宣言の申立てを却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
一 事実の要約
被告は「屋比比價平台」を構築し、大手不動産仲介サイトの情報を集めて整理している。ユーザーが探したい物件のデータを入力すると、システムが大手不動産サイトの公開情報のうち条件に合う物件を集め整理してリストアップし、当該不動産仲介業者の販売サイトにリンクできるようにしている。同時に「屋比聊天室」(訳注:「聊天室」はチャットルームの意)、「屋比經紀人」の機能をそなえ、ユーザーはこのプラットフォームを通じて不動産仲介ディーラーに連絡を取ることができる。
原告等は不動産仲介業者であり、以下のように主張した。「屋比比價平台」が原告10社の同意を得ずに、無断で企業の公式サイト内のページにリンクし、企業が集めた不動産物件情報を容易に取得し、これにより自らの商品の販売を推進しており、他人の努力の成果を搾取することに該当し、公平交易法に違反している。さらに「屋比經紀人」の機能については、連絡するディーラーは原告企業の物件仲介担当者であると閲覧者に誤解させるに足り、取引秩序に影響するに足る欺罔又は著しく公正さを欠く行為を構成している。被告はビジネスの倫理に違反するただ乗りの行為を以って原告等企業10社の利益を侵害しており、故意に善良の風俗に反する方法で、他人に損害を加えるものであり、民法第184条第1項後段の要件に該当する。さらに、一般消費者が「屋比比價平台」を閲覧する時、原告企業の商標が容易に目に入り、「屋比比價平台」は原告が提供する役務である又は原告と提携関係があると誤認し易く、誤認混同のおそれがあり、被告は商標法第68条第1号又は第2号に違反している。原告は公平交易法第25条、第29条、第30条、民法第184条第1項後段、商標法第68条第1、2号、第69条第1、3項及び公司法(会社法)第23条第2項に基づいて、被告に侵害行為を停止し、損害賠償責任を負うよう請求するものである。
被告は以下のように答弁した。「屋比比價平台」はスーパーリンク方式で、ユーザーがいずれも直接原告サイトで公開されている各種情報にリンクできるようにしており、一般的なサーチエンジン機能と異なるところはなく、情報を提供するのみで、ユーザーの選択を制約していないため、公平交易法第25条に違反していない。「屋比比價平台」における「屋比經紀人」は有料で自由に加入するシステムを採用しており、プラットフォームそのものは委託を受けて直接に不動産売買の仲介サービスを提供しておらず、ユーザーが各不動産業者又は屋比会員、第三者と取引又は交渉をするか否か、又はいかに行うのかはいずれも被告と関わりなく、さらに被告はユーザー又は屋比会員から費用も一切徴収しておらず、被告は明らかに不動産仲介業務を行っていないため、原告と競争する事情は全くない。原告が主張している商標権侵害の部分について、プラットフォームに情報を表示する形式により、誤認混同する可能性はないはずである。
二 両方当事者の請求内容
(一)原告の請求:
被告歐克斯公司の「屋比-超省房屋比價APP」及びサイト(URL:http://www.ubee.io/)において、原告公式サイトの不動産物件情報を再び使用してはならない。
被告歐克斯公司と被告江○○は原告に対してそれぞれ少なくとも143,200新台湾ドル及び訴状副本送達の翌日から支払い済みまで年5部の割合による金員を支払え。
被告歐克斯公司と被告葉○○は原告に対してそれぞれ少なくとも143,200新台湾ドル及び訴状副本送達の翌日から支払い済みまで年5部の割合による金員を支払え。
上記第二、三項のいずれか一名の被告が全額弁済したとき、他の被告も弁済の範囲において、弁済義務が同じく免除される。
原告は担保を供託するので、仮執行宣言を申し立てる。
(二)被告の請求:1.原告の訴えを棄却する。2.不利益な判決を受けたときは、担保を供託するので、仮執行免脱宣言を申し立てる。
三 本件の争点
(一)被告が「屋比比價平台」を構築した行為は、公平交易法第25条の「取引秩序に影響するに足る欺瞞又は著しく公正さを欠く行為」に該当するのか。又は民法第184条第1項後段の故意に善良の風俗に反する方法で、原告に損害を加えているのか。
(二)被告が「屋比比價平台」を構築した行為は、商標法第68条第1号、第2号(択一して請求)に違反し、商標権を侵害する行為であるのか。
(三)原告が被告に侵害の排除と損害賠償を請求することは正当か。原告が被告に連帯で賠償責任を負うよう請求することには理由があるのか。
四 判決理由の要約
(一)公平交易法第25条でいうところの著しく公正さを欠く方法とは、社会倫理に適合しない手段又は市場の相対的な優位を濫用する方面において表現されるもので、取引相手を不当に抑圧し、取引の要否と取引条項に対する取引相手の自由決定を妨害する行為を指す(最高行政裁判所94年度判字第1668号判決要旨を参照)。
(二)調べたところ、被告が構築した「屋比比價平台」は、被告がデザインしたソフトウェアシステムで原告各社の公開サイトの関連情報にハイパーリンクして、各不動産仲介業者サイトの公開情報から設定条件に合った物件を集め整理してリストアップし、ユーザーがその中の物件情報をクリックすると、当該不動産仲介業者の販売サイトにリンクして、ユーザーは原告企業がサイトで公開する各種情報を閲覧でき、それにはディーラーに連絡を取るための情報も含まれる。つまり、「屋比比價平台」は人力と資材を投じて、丁寧にデザインされたソフトウェアシステムであり、原告各社のサイトで公開された情報を検索することで、ユーザーが自ら条件を設定した後に、原告のサイトにハイパーリンクして、原告企業のサイトで公開された関連物件の情報を取得できるようにして、ユーザーに経済的観点からリーズナブルな選択を供するため、通常のサーチエンジン機能と異なるところはない。また「屋比比價平台」は情報を提供するだけで、ユーザーの選択を制約をするものではなく、被告が構築した「屋比比價平台」は同じ物件についてユーザーに複数の情報を提供するため、ユーザーは十分な情報を得て、適切な選択を行い、自己実現の機会を高めることができ、それは憲法による言論の自由の保障を受けるべきであり、社会倫理の手段と相容れないものではなく、取引秩序に影響するに足る著しく公正さを欠く行為とは認め難い。
(三)況してや「屋比比價平台」の情報は原告企業のサイトにハイパーリンクしたもので、ユーザーは入手した情報の出所がいずれも原告企業であると知っている。さらに「屋比比價平台」サイトには「屋比」の2文字と図案があり、原告各社のサイトの名称と図案とは明らかに異なり、区別するには十分であり、被告が構築した「屋比比價平台」には積極的な欺瞞又は消極的な重要取引情報の隠匿はなく、誤解を招く欺罔行為については、公平交易第25条を適用する余地はない。
(四)被告が構築した「屋比比價平台」には公平交易法第25条規定違反はなく、社会倫理の手段と相容れないところもなく、原告が被告には第184条第1項後段にある「故意に善良の風俗に反する方法で、他人に損害を加えたもの」の事情があるとして、原告に損害賠償の責任を負うように主張したことにも根拠がない。
(五)原告はさらに、「屋比比價平台」の中の「呼叫經紀人」機能は携帯電話端末を用いて直接に専門の不動産仲介ディーラーに連絡を取ることができ、屋比ディーラーが消費者に接触できる機会を創出するのと同時に、消費者が原告と連絡を取るのをすでに妨害する又は減らすものであり、原告は各物件に関する取引成立の機会及び仲介料取得の機会を喪失しているのに対して、被告は屋比ディーラーの入会費という利益を取得しており、原告との間に競争関係があるのは明らかである、と主張している。
行為が不正競争を構成するか否かは、行為者と取引相手の取引行為、及び市場における機能の競争が侵害を受けているか否かから判断できる。いわゆる「競争」とは「二以上の事業者が市場において比較的有利な価格、数量、品質、役務又はその他の条件によって取引の機会を求める行為」を指し、「市場(又は「特定の市場」)」とは「事業者が一定の商品又は役務につき競争を行う地域又は範囲」を指す(公平交易法第4、5条を参照)。前述の「屋比比價平台」で提供する役務は、原告企業のサイトが自ら委託を受けた物件を販売し、不動産の賃貸販売の取引成立を促す行為とは明らかに異なる。いずれも不動産に関連しているが役務の内容、性質、態様はすべて異なり、同一の市場ではない。また「屋比比價平台」にはもとより「屋比經紀人」の機能があり、会員制を採用して会費を徴収しているが、被告がディーラーから会費を徴収するのは「屋比比價平台」に「屋比經紀人」として登録する対価であり、「屋比比價平台」のユーザーとは無関係であり、不動産賃貸販売の仲介料ではなく、原告が徴収する物件取引仲介料と比べると、事業者が市場において比較的有利な価格、数量、品質、役務又はその他の条件によって取引の機会を求める競争行為には明らかに該当しない。「屋比經紀人」の存在は、消費者が原告各社と連絡を取るのを妨害したり減らしたりして、原告が各物件の取引成立の機会及び仲介料取得の機会を喪失するには至っていない。
(六)「屋比比價平台」における原告商標の表示形式をみると、いずれも楕円形の黒枠にシンプルな楷書で「21世紀」、「信義房屋」、「永慶房屋」、「住商不動產」等と記載されており、上記文字の後ろには「>」の符号が加えられており、その形式は原告の登録商標又は図形や外国語との組合せ、或いは楷書ではない文字の商標とは異なっている。さらに原告がいうところの商標はその名称が原告社名と同じであること、つまり「屋比比價平台」において原告がいうところの「商標の表示」が原告の「社名」又は「商標」であることには疑義がある。況してや被告は原告社名の後に「>」の符号を加えており、これは「前に進む」の意味があり、クリックすると確かに原告企業のサイトへつながり、原告がいうところの商標は実際のところ物件情報のある場所を示すもので、被告企業の役務を表彰するものではなく、販売を目的としてネットで役務に関連するビジネス文書又は広告に商標を用いるという事情とは異なる。たとえそれが原告がいうところの商標であったと認めたとしても、第三者が他人の商標を当該他人(商標権者)又は当該他人の役務の「指示的」フェア・ユースに該当し、関連の消費者に商標役務の出所を誤認させるおそれはなく、商標法第36条第1項第1号により、原告企業は商標権の効力に拘束されない。
以上をまとめると、被告が構築した「屋比比價平台」には公平交易法第25条、民法第184条第1項後段及び商標法第68条第1、2号に規定される事情はなく、原告が本件訴訟を提起し、(訴状の中の)請求の趣旨のように請求することには根拠がなく、棄却すべきである。
以上の次第で、本件原告の訴えには理由がなく、民事訴訟法第78条により主文のとおり判決する。
2018年1月9日
知的財産裁判所第三法廷
裁判官 魏玉英