加盟本部が軽度な手段により加盟店の仕入数量に干渉した場合、たとえ契約締結前に開示がなくても著しい不公正行為を構成しない

2019-04-24 2018年
■ 判決分類:公平交易法

I 加盟本部が軽度な手段により加盟店の仕入数量に干渉した場合、たとえ契約締結前に開示がなくても著しい不公正行為を構成しない

■ ハイライト
原告統一超商(セブンイレブン)の加盟店が被告公平交易委員会に告発し、原告が指示に従い注文、仕入れをするよう加盟店に要求し、経営利益と一致しない商品を購入させたと指摘した。被告が調査したところ、加盟契約締結時に統一超商が強制仕入れの要求を完全に開示していなかったので、公平交易法第25条に違反したとし、500万台湾ドル罰金を科した。原告はこれを不服として、台北高等行政裁判所に訴訟を提起して原処分取消を請求した。
裁判所で調査したところ、原告が仕入れを加盟店に「強制した」ことはなく、「警告、検討会議への参加、運営スコアの評価、店への定期訪問」等軽度な手段により、加盟店の仕入状況を管理していただけであり、仕入について、加盟店は自由に決定する余地があったと認めた。原告による加盟店への監督は、商業的営業監督の許容可能な範囲であり、たとえ契約締結前に開示しなくても、著しい不公正行為ではないと認め、原告勝訴の判決を下した。

II 判決内容の要約

台北高等行政裁判所判決
【裁判番号】106年度訴字第616号
【裁判日期】2018年6月14日
【裁判案由】公平交易法

原告 統一超商股份有限公司
被告 公平交易委員会

上記当事者間における公平交易法事件について、原告は被告の中華民國106年3月17日公処字第106016号処分書を不服として、行政訴訟を提起したが、次のとおり判決する:

主文
原処分を取消す。
訴訟費用は被告の負担とする。

一 事実要約
加盟店は下記のように被告に述べた。つまり原告は、加盟契約及び管理規定の「営業内容と制限」及び「重大な違約」等規定により、その指示に従い注文、仕入れ及び他の経営事項を行うよう加盟店に要求し、経営利益と一致しない商品を加盟店に購入させたので、公平交易法規定に違反した。
被告は原告の加盟店募集過程の、関連重要な情報を把握するために、原告と契約を締結している委託加盟店をサンプリングして、アンケートを行い、更に前記アンケート回答者から一部の加盟店を選出してインタビューして結果を検証した。最後に被告は下記のように認めた。つまり、原告は指示に従うかまたは商品を注文するよう加盟店に要求し(例えば、シーズン商品またはお祝いギフト)、及び最低の注文数量または基準(例えば、生鮮食品類)を提案したが、その強制手段は加盟店の自由意思を拘束する程度に達し、強制的に加盟店の仕入れ等経営管理事項を不当に制限しており、また原告は加盟経営関係締結前に、書面により取引相手にこのような強制的制限を充分、且つ完全に開示しなかったので、公平交易法第25条規定に違反したと認定した。106年3月17日公処字第106016号処分書(以下原処分という)により、原処分送達の翌日から、前記違法行為を直ちに中止し、且つ2ヵ月以内に改正するよう原告に命じ、且つ500万台湾ドルの過料を科した。原告はこれを不服として、本件の行政訴訟を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告の請求:原処分を取消す。訴訟費用は被告の負担とする。
(二)被告の請求:原告の訴えを棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。

三 本件の争点
(一)原告が「提案」した注文数は、強制的注文(最低の注文量)の程度に達したか?
(二)原告は加盟経営関係締結前に、加盟経営期間の最低の注文数量の加盟経営関係制限事項について、書面により取引相手に充分、且つ完全に開示しなかったので、公平交易法第25条の「取引秩序に影響するおそれのある欺瞞的または著しく不公正な行為」を構成したか?

四 判決理由の要約
(一)適用法条及び法理
公平交易法第25条規定では、「事業者は、本法に規定するもののほか、取引秩序に影響するおそれのある欺瞞的または著しく不公正な行為をしてはならない。」となっている。所謂「著しく公正さを欠く方法」とは、著しく公正さを欠く方法により、競爭または営業取引に従事することであり、情報不対等を利用する行為は、よくある類型の一つである。
しかし加盟本部から言えば、加盟本部の商業的監督は本質的に必ず加盟店に高いまたは低い拘束力があり、規定、制限が既に加盟店の注文の自由意思を抑えているとは言えない。且つより重大な経営制限事項を予め開示しない場合のみ、著しく公正さを欠くと言える。もし重要ではない経営制限事項である場合(例えば、不適格な店員を雇用してはならない)、たとえ加盟本部が加盟契約締結前に予め開示しなくても、著しく公正さを欠くとは言えない。よって、もし加盟店が業者の「提案注文量」を遵守しない場合に、加盟業者が重度な手段を使用せず、軽度な干渉のみならば、「加盟本部による加盟店の経営管理監督」の本質内容であり、たとえ加盟契約締結前に予め開示しなくても、著しく公正さを欠くものではないと認めるべきであり、公平交易法第25条規定を適用しない。
その反対に、もし本裁判所105年度訴字第1686号の通り、「全家便利商店股份有限公司(ファミリーマート)」が公平交易法第25条案件に違反した場合、全家便利商店股份有限公司の「直営店の店長に訓告を与える」及び加盟店への内容証明通知にある「直ちに改正しなければならず、且つ書簡送達後即日より再度類似の案件発生を禁止することを保証すべきであり、さもなければ、違反として加盟契約規定により処理する」、「できるだけはやく改善するよう通知し、さもなければ、委任経営契約第39条第1項の関連約定により契約を解約し、且つ第41条約定により懲罰性違約金及び損害賠償を請求する」等類似文字により、「解約(契約不更新)、懲戒、内容証明書類」の重度な手段により強制的に加盟店の注文自由意思を抑えた場合、公平交易法第25条に違反すると認められる。

(二)原告が「提案」した注文数は、強制的注文(最低の注文量)の程度に達しない。:
1. 軽度な監督手段は加盟店の自由意思を抑えることはない。
原告が「処罰、警告、検討会議への参加、運営スコアの評価」により加盟店の注文の自由意思を拘束したと原処分では認めているが、このような行為がいずれも「強制的」程度に達するかについては、議論の余地がある。統一超商加盟契約第25条第1項第16号約定では、「原告指導者による経営管理に関する指導を受けない場合に、補正を催告しても、補正せずまたは完全に補正しない場合、重大な違約とみなす。」となっている。所謂催告とは「内容証明通知」をいう。また原処分でいう「処罰、警告」とは、即ちアンケートの中の「処罰、警告」であり、アンケートでは定義していない。加盟契約、告発書及び告発者の陳述記録、告発者の陳述意見書内容を参照し、更に過去被告が処分を下した全家便利商店股份有限公司の類似案件を参照すれば、原処分でいう「処罰」とは重大な違約の「解約」、「懲戒」であるはずであり、また「警告」は内容証明通知以外の口頭及び書面通知による警告であるはずである。
 加盟店にとっては、「処罰、内容証明通知」の経営管理監督手段は、客観的に「重大な違約または契約不更新の高度な重大危険だと認められること」であり、加盟店の注文自由意思を抑えるに足りるものである。また「警告、検討会議への参加、運営スコアの評価、店への定期訪問」等監督手段は、客観的に加盟店が違約したと認められる軽微なリスクを構成するだけで、より軽度な手段であり、加盟店は「原告が提案した注文量」に従わない代価として軽度の損害(リスク)を選択することができ、注文するかは明らかに自由に選択する余地があり、たとえ予め開示しなくても、著しく公正さを欠くものではない。

2. 本件は加盟店の証言により、「加盟店には注文するかについて自由に選択する余地がある」と認定できる
(1) 原告が提案した最低注文量の営業監督手段が、加盟店の注文自由意思を抑える程度に達するかについては、一般的加盟店の反応によるべきであり、少数の特例によるべきではない。特に原告が「警告、検討会議への参加、運営スコアの評価」行為をしてはならず、単に主観的に原告がこの監督手段を執行すると加盟店が思って、エリアマネージャーが提案した注文量に従う場合、実際は当該加盟店の個人主観的特質によるものなので、原告が提案した注文量が客観的に「加盟店の注文を強制する」行為だと認めてはならない。
(2) 調べたところ、原告が召喚を申立てた証人四名の証言は、代表とできる価値はないが、「いくつかの加盟店」の注文自由意思が抑えられていないと証明でき、原処分でいう「強制的仕入れ」行為はなかった。更に調べたところ、被告が面談した四名の加盟者は、被告が選択したアンケート内容の原告に不利なものをインタビューし、このような「原告に不利なサンプリング」について、もしインタビュー内容が原告に有利である場合、より高いサンプル代表性があると認めるべきである(他の原告に有利なアンケートが、もしインタビューであった場合、その結果は更に原告に有利である)。前記インタビュー結果について、四人の内、三人はほぼ「現在の提案仕入れについて協議することができ、強制性がない。過去提案量に従って注文しない場合、解約、書面による警告、内容証明通知または契約不更新はないが、店への定期訪問またはLineグループから在庫切れ、または検討会への参加の催促があり、心理的に少々強制力があるが、重大ではない」と述べ、その注文の自由意思が抑えられたとは認められないので、当然原処分でいう「強制的仕入れ」はなかった。また唯一強制的仕入れがあると認めた証人Aも、仕入れにより処罰を受けたことはなく、内容証明通知を受けたこともなく、エリアマネージャーが内容証明通知により、口頭で解約すると警告し、且つ店に来て問題点を見つけ、精神的プレシャーを与えただけであり、且つこの1年間、エリアマネージャーの要求程度は軽くなった等と証言した。
 よって、提案注文量について、2015年以前から現在まで、原告が「解約(契約不更新)、懲戒、内容証明通知」の重度な監督手段を使用したことは一度もなく、書面による警告をしたこともない。エリアマネージャーが採用した口頭警告、検討会議への参加、運営スコアの評価、店への定期訪問は、たとえ若干の心理強制性が生じても、損害は大きくなく、加盟店が自ら評価したうえで、提案注文量を受けない場合、加盟店の注文自由意思が抑えられたと認めるのは難しい。
(3) 被告はアンケートにより、注文を拒否した15人の内4人は本部による処罰を受けたと述べ(27%)、6人は本部による警告を受けたが、処罰を受けたことがないと述べ(40%)、5人は本部による警告を受けたことがないと述べた(33%)。且つ被告がインタビューしたいくつかの加盟店は、2015年以前は原告の要求または指示による注文が重大、且つ強硬であったので、処罰、警告、心理的プレシャー、関連検討会議への参加、加盟店運営スコアの評価等行為は、実に加盟店による注文商品の決定及び数量の自主意思を拘束していたので、2015年以前は、原告が主張した加盟店の注文指導は単なる注文商品提案ではないことが明らかであると主張した。しかし調べたところ、アンケートは「処罰」について定義しておらず、何の「警告」も定義しておらず(口頭または書面?)、調査を受けた者が「処罰された」と返答した場合、注文要求を拒否して「関連検討会議への参加を要求されたか、または店への定期訪問があった(調査を受けた者が受けた処罰の種類について説明したことを被告は立証していない)」の可能性があり、アンケートを受けた者が「警告された」と返答した場合、注文要求を拒否して「エリアマネージャーに口頭警告されて内容証明通知が送付される可能性があった(但し実際に受けた者はいない)」。且つ実際に四人にインタビューしたところ、三人は監督手段が厳しくないと述べ、一人は強制仕入れを要求されたが、仕入れにより処罰を受けたかまたは内容証明通知を受けたことはないと述べた。よって、前記アンケート結果と訪問結果を比較したところ、アンケート内容は不明確で、且つ比率が相当ではなく、代表性が足りず、加盟店の注文自由意思が抑えられたと証明するのは難しい。
 アンケートが「過去」加盟店はいつもエリアマネージャーと協議することができず、心理的強制があったと証明できたとしても、状況は深刻ではなく、注文の自由意思が抑えられた(強制的仕入れ)程度には達しておらず、前記説明の通り、過去の「口頭による警告、検討会議への参加、運営スコアの評価」等軽度な干渉は、加盟店の注文の自由意思を抑えるに足りず、商業的営業監督の容許できる範囲である。

3. 他の証拠では加盟店に注文を自由に選択する余地がないと証明することができない
告発人が提供した区組会議資料では、「エリアマネージャーの指示:パン類の五月の目標は10%成長、在庫切れ率15%(現在パンの在庫切れ率は17%)、今後類別A級品の在庫切れ率は5%以下要求の可能性がある」等要求があり、もし「提案」に従わない場合、エリアマネージャーは口頭で向上心がないと警告し、または成績で評価し、内容証明通知、契約不更新の手段により脅かしたとその証言は証人Aの証言とほぼ同一であるが、実際には原告は自発的に契約不更新または内容証明通知を送付したことがなく、且つ告発人が訴えても効果がなかったとの例もない。また前記エリアマネージャーによる口頭警告について、多数の証人は、現在存在しておらず且つ一種の心理的プレッシャーに過ぎず、効果は人によって異なり、加盟店の注文自由意思がいつも抑えられていたと認めることは難しい。また告発人の陳述意見では、「本店が完全にエリアマネージャーの要求に従う理由は、もし従わない場合、特許経営契約及び管理規章第25条により重大違約だとみなされるからである」とあるが、エリアマネージャーによる書面警告または原告の内容証明通知を受ける前に、エリアマネージャーの口頭警告を重大違約または契約不更新の高度な危険とみなして(実は低度な危険)、告発人がエリアマネージャーと論争、協議せず、訴えもせずに、全部従った場合、それは実は告発人の主観的特質によるものであり、注文自由意思がいつも抑えられていたと認めることは難しく、原告に強制的仕入れの事実があると証明することはできない。

(三)以上をまとめると、原告には強制的仕入れがなく、加盟店の仕入れの自由意思の軽度な干渉は、営業監督の許容できる範囲であり、たとえ契約締結前開示しなくても、明らかに公正さを失うような原処分の「原告の注文量の提案は強制的仕入れ(加盟店の注文自由意思がいつも抑えられた)について、原告は加盟経営関係締結前に、書面により取引相手に充分、且つ完全に加盟経営関係の制限事項を開示せず、取引秩序に影響する公正さを失う行為である」との認定は間違いないものではなく、原告が取消を請求したことには理由があり、主文の通り原処分を取消す。

以上の次第で、本件原告の訴えには理由があり、行政訴訟法第98条第1項前段により主文のとおり判決する。

2018年6月14日
台北高等行政裁判所第一法廷 
審判長裁判官 黃秋鴻
裁判官 陳心弘
裁判官 畢乃俊
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