不当なキーワード文字列を作成、掲載し、競争相手を検索している消費者に誤って自己公式サイトにアクセスさせて取引機会を増やし、他人の努力成果を奪い、取引秩序に影響するに足りる著しく不公正な行為を構成するので、公平交易法第25条規定に違反する。
2020-03-02 2019年
■ 判決分類:公平交易法
I 不当なキーワード文字列を作成、掲載し、競争相手を検索している消費者に誤って自己公式サイトにアクセスさせて取引機会を増やし、他人の努力成果を奪い、取引秩序に影響するに足りる著しく不公正な行為を構成するので、公平交易法第25条規定に違反する。
■ ハイライト
補正下着ブランド業者維娜斯は、Google検索サイトにおいて競争相手ブランド名称「瑪麗蓮」を使用し、不当なキーワード文字列を作成、掲載し、「維娜斯瑪麗蓮、夫にもっと愛される」、「瑪麗蓮はアナタをパーフェクトにする」等文字により、維娜斯公式サイトへのリンクを添付した。
公平会は、維娜斯が作成、掲載したキーワード広告の内容は、瑪麗蓮を検索する消費者に誤って維娜斯の公式サイトにアクセスさせ、他人の努力成果を奪い、取引秩序に影響するに足りる著しく不公正な行為を構成するので、公平交易法第25条規定に違反するため、5万台湾ドルの罰金に処したと述べた。
維娜斯は一審敗訴判決を不服として行政訴訟を提起した。二審台北高等行政裁判所は受理した後、維娜斯が広告業者に依頼してキーワード広告関連業務を執行し、広告受益者であるので、広告の誤使用により公平法規定に違反することがないよう、当然後続の手続き監督責任を果たさなければならず、過失がないとは言えないと認定したので、上訴を棄却し、維娜斯敗訴の判決を下したため、案件が確定した。
II 判決内容の要約
台北高等行政裁判所判決
【裁判番号】107年度簡上字第41号
【裁判期日】2019年3月22日
【裁判案由】公平交易法
上訴人 維娜斯国際有限公司
被上訴人 公平交易委員会
参加者 瑪麗蓮国際実業有限公司
上記当事者間における公平交易法事件について、上訴人は台湾台北地方裁判所の中華民国107年1月2日105年度簡字第247号行政訴訟判決を不服として、上訴を提起したが、次のとおり判決する。:
主文
上訴を棄却する。
上訴審訴訟費用は上訴人の負担とする。
一 事実要約
参加者瑪麗蓮は、2015年8月10日に上訴人が、参加者の登録商標「瑪麗蓮」をキーワード文字列として一般的市民がGoogleサイトにおいて「瑪麗蓮」を検索した時、「維娜斯瑪麗蓮、夫にもっと愛される」、「瑪麗蓮はアナタをパーフェクトにする」等文字が現れ、上訴人サイトへのリンクが付されていることを知り、消費者が上訴人サイトを見る機会を増やしており、公平交易法(以下公平法という)第25条規定に違反したと被上訴人に告発した。被上訴人が調査したところ、上訴人が他人の努力成果を奪い、取引秩序に影響するに足りる著しく不公正な行為を構成し、公平交易法第25条規定に違反するので、105年6月27日公処字第105071号処分書により(以下原処分という)5万台湾ドルの罰金に処した。上訴人は判決を不服として、行政訴訟を提起したが、台湾台北地方裁判所(以下原審裁判所という)より105年度簡字第247号行政訴訟判決をもって(以下原判決という)その訴えを棄却されたので、上訴人は不服として、上訴を提起した。
二 両方当事者の請求内容
(一) 上訴の請求:1.原判決を破棄する。2.原処分を取消す。3.第一、第二審訴訟費用はいずれも被上訴人の負担とする。
(二) 答弁の請求:上訴を棄却する。
三 本件の争点
本件の公平交易法第25条規定の違反行為について、上訴人には故意、過失があるか?
四 判決理由の要約
(一) 調べたところ、上訴人が自らGoogle adWordsシステム番号を申請した後、艾得基思に依頼して当該番号を使用して係争「瑪麗蓮」キーワード文字列の作成、掲載業務の操作管理を行い、Googleのキーワード推奨ツールとインサートを採用し、システムにより「瑪麗蓮」等人気キーワードを自動的に業主、即ち上訴人のアカウントにリンクさせたので、インターネットの消費者がGoogle検索エンジンにより「瑪麗蓮」文字を入力すると、検索ページに「維娜斯瑪麗蓮、夫にもっと愛される」、「瑪麗蓮はアナタをパーフェクトにする」等内容が現れ、上訴人サイトへのリンクも付されていて、係争キーワード文字列の掲載期間は2015年8月7日から11日までであった。「瑪麗蓮」の中国語商標は既に参加者が申請して登録している。以下の通り原審は判決理由欄で説明している。:事業者自身がもし相当な努力を投入して顧客を獲得しようとせず、無断で他の事業者が努力した成果で勝ち取った取引機会にただ乗りし、他人の努力成果を奪うことは、商業的倫理の非難性があり、その行為は市場の公正競争取引秩序に影響するに足るので、当然公平交易法第25条規定に違反する。
係争キーワード「瑪麗蓮」は、参加者会社が登録使用している商標文字であり、参加者会社が女性補正下着商品市場に相当な努力を投入して得た経済成果を示し、また上訴人自身も女性補正下着の製造販売を主要な業務とし、参加者会社が経営している女性補正下着商品販売とは競争関係にあり、上訴人の前記行為は取引秩序に影響するに足りる著しく不公正な行為を構成すると評価できることに疑問はなく、他人の努力成果を奪う行為であり、公正競争取引秩序に影響する「著しく不公正な行為」を構成するので、公平交易法第25条規定に違反する。
(二) 次に調べたところ、上訴人は自らでGoogle adWordsシステム番号を申請した後、広告効果を高めるために、專業的広告代理人艾得基思に依頼してキーワード広告関連業務の操作執行を行ったが、上訴人は広告主であるので、広告受益者でもあり、広告代理人が提出したキーワード文件に審査、修正及び掲載同意有無等の決定権限があり、更に広告効果を達成する利益帰属者であり、「維娜斯瑪麗蓮、夫にもっと愛される」、「瑪麗蓮はアナタをパーフェクトにする」広告文言は上訴人が審査して同意し、係争キーワード「瑪麗蓮」文字も確かに艾得基思が選択したものであり、上訴人は参加者とは競争関係にあることを知っているので、上訴人またはその広告代理人は一旦係争商品文字をキーワード広告とした場合、参加者による告発または訴訟に巻き込まれる可能性があると予測できる。よって、上訴人は広告代理人を選任する時に、広告文言に誤って係争商品文字を使用することがない状況を確保するために、当然相当な程度の注意義務を果たさなければならず、選任後でも広告代理人と業務連絡を行い、且つ毎日自ら係争商品文字をキーワードとして検索し、たとえ上訴人が艾得基思が参加者の商標を広告文言のキーワードに使用することに同意していなくても、これは上訴人がその選任した広告代理人に対する監督責任を果たさないことが原因であり、代理での検索キーワードの購入に同意したが、広告代理人が購入したキーワード語彙について事後審査を行わず、艾得基思が代理でシステム番号を使用しても毎日関連情報を報告するよう命じず、上訴人は広告文言を審査しただけで、艾得基思が係争商品業者商標名称を選択してキーワードとしたことについて知らなかったとしても、上訴人が監督責任を果たしたため過失がないとは言えず、上訴人は艾得基思を選任してシステム番号を操作しているので、当然後続手続きの監督責任を果たさなければならず、且つ広告代理人が選用したキーワードが取引秩序に影響するに足りる著しく不公正な行為を構成するかについて、相応の内部監督規制を行わなければならない。しかし上訴人はキーワード広告操作を艾得基思に委任した後、そのインターネット販売部門も後続関連キーワード広告掲載について監督せず、広告代理人艾得基思がその所有しているGoogle adWordsシステム番号を操作することを容認し、公平法第25条に違反して処罰を受けたので、過失がないとは言えず、前記規定及び説明を見ると、原判決に法における錯誤はない。
(三) 更に所謂判決理由不備とは、判決に全く理由が記載されていない、または判決理由があっても、その記載理由が不明瞭または不完備であり、人が主文による根拠を知るすべがないことを言う。原判決では原処分及び訴願決定による理由を維持し、その判断の根拠を説明し、且つ判断して得た心証の理由を、判決に記載しているので、理由不備の状況はない。上訴要旨は、上訴人が国内女性補正下着ブランドのトップ企業であり、何年にも渡りPRを小S徐熙娣に依頼し、巨額の販売費用を投入しているので、実に参加者の信用評判にただ乗りする必要はないと指摘した。また艾得基思も審査のため係争広告を上訴人に渡すことはしていないと称しているのに、原判決は、不採用の理由を説明せず、上訴人が事前に艾得基思がキーワードの文言への插入機能等を使用することを知らなかったことを斟酌せず、明らかに判決が証拠法則及び論理法則に違反しており、台湾インターネットでの使用者によるキーワードの理解及び認知について説明していないので、本件の状況は当然前記外国実務見解の商標侵害と一致せず、他人努力成果を奪う可能性もないと上訴主旨で弁解したことは、いずれも採用できない。
(四) 最後に、裁判所は要証事実の実証特徴を斟酌することができ、当事者が提出した証拠方法の証明強度及び要証事実との関連性を考慮し、調査するかを決定する。原判決は既に本件事実証拠について説明し、明確にしていて、双方の他の攻撃防御方法も、斟酌したところ、本件判決結果に影響がないので、逐一論じない。原審裁判所は上訴人の申立てによる証人召喚をしていないが、召喚の必要がなかったことを考えても、原判決に法規適用不当の違法があるとは認定できない。
(五) 以上をまとめると、上訴要旨は、異なる法的見解により、原判決で詳しく論述して採用しない事項について再度論争し、原判決に法令違背があると指摘し、破棄するよう求めたが、理由があると認定するのが困難であり、棄却すべきである。
以上のように、本件上訴には理由がない。行政訴訟法第236条の2第3項、第255条第1項、第98条第1項前段により主文のとおり判決する。
2019年3月22日
台北高等行政裁判所第五法廷
審判長裁判官 林惠瑜
裁判官 黃莉莉
裁判官 張瑜鳳