ゲーム業者が座談会でゲーム操作の成功率について虚偽不実の説明をしたことは、公平取引法第21条に違反する。

2024-09-23 2023年

■ 判決分類:公平取引法

I ゲーム業者が座談会でゲーム操作の成功率について虚偽不実の説明をしたことは、公平取引法第21条に違反する。

II 判決内容の要約

台北高等行政裁判所判決
【裁判番号】111年度訴字第1005号
【裁判期日】2023年8月24日
【裁判事由】公平取引法

原   告 株式会社ガマニアデジタルエンターテイメント
      (遊戲橘子數位科技股份有限公司)
代 表 者 劉柏園
被   告 公正取引委員会
代 表 者 李鎂(主任委員)

上記当事者間の公平取引法事件において、原告が2022年6月10日の公処字第111039号処分書に異議を申立て、行政訴訟を提起したことについて、本裁判所は以下の通り判決する。主文:原告の訴えを棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。

一 事実要約
原告はリネージュMというオンラインゲーム(以下、係争ゲームと称す)を販売しており、2019年12月14日に原告主催の「【リネージュM】NCSOFT韓国本社と台湾プレイヤーとの座談会」(以下、係争座談会と称す)に参加するようプレイヤーを招待した。係争座談会でモニターに掲示された質疑応答第17問(Q17)に「イベントの製作、抽せん、合成の成功率は公開できるか?現在これらの成功率設定はいずれも韓国バージョンのそれと同様か?」とあったのに対し、現場の公式回答は「台湾バージョンの成功率はすべて韓国と同様」としていた。被告が検証した結果、係争ゲームの「伝説の製作秘笈(刻印)」(以下、紫布と称す)に関する我が国のバージョン(以下、台湾バージョンと称す)の製作成功率は、韓国のバージョン(以下、韓国バージョンと称す)のそれとは異なると認定したため、111年〔2022年〕6月10日公処字第111039号処分書(以下、原処分と称す)を以て、原告が公言した「イベントの製作、抽せん、合成の成功率は公開できるか?現在これらの確率設定はいずれも韓国バージョンのそれと同様か…台湾バージョンの成功率はすべて韓国と同様」等は、取引決定に十分に影響する役務内容について虚偽不実及び人に誤解を与えることを表示したと認定し、公平取引法第21条第4項において準用する第1項の規定に違反したとして、200万台湾ドル(以下同)の過料に処した。原告はこれを不服として本件行政訴訟を提起した。

二 両方当事者の請求
(一)原告の主張:
1.原処分を取り消す。2.訴訟費用は被告の負担とする。
(二)被告の答弁:
1.原告の訴えを棄却する。2.訴訟費用は原告の負担とする。

三 本件の争点
1.係争座談会のQ17についての内容及び回答は、原告が商品若しくはその広告に、又はその他公衆に知らせる方法に該当するか、係争ゲームと関連して取引決定に十分に影響する事項であり、虚偽不実又は人に誤解を与える表示若しくは表記に該当するか?
2.原処分は、法的明確性の原則、比例原則に違反するか?

四 判決理由の要約

(一)関連法令と実務見解
1.「公平取引法第21条第1項の規定目的は、事業者の公正競争を確保し、消費者の権益を保証することであり、商品若しくはその広告において、若しくはその他公衆に知らせる方法で、虚偽不実又は人に誤解を与えるような表示又は表記を禁止している。同規定目的が非難するのは、虚偽不実又は人に誤解を与える集客方法を利用して取引機会を獲得しようとする不正競争の手段である。いわゆる『虚偽不実』とは、表示又は表記が事実と不一致で、その差異が一般的又はそれに関連する大衆に受容されることが困難であり、間違った認識又は決定を引き起こすおそれがあるものを指す。いわゆる『人に誤解を与える』とは、表示又は表記が事実に合致するかを問わず、一般の又はそれに関連する大衆の間違った認識又は決定を引き起こすおそれがあることを指す。したがって、仮に事業者が役務若しくはその広告において、若しくはその他公衆に知らせる方法で、商品の質、内容及びその他集客効果がある関連事項について、虚偽不実又は人に誤解を与えるような表示をした場合は、同規定に違反する。」(最高行政裁判所109年度判字第16号判決趣旨を参照)

2.「公平取引法第21条第1項の立法目的に鑑みると、それは、事業者が自身の販売する商品又は役務について、その広告、若しくはその他公衆に知らせる方法において真実の表示をしなければならないと事業者に求めており、それは、市場の公正競争の秩序及び市場の効率性を確保し、虚偽不実の宣伝内容による損害を防ぐためである。同立法目的が非難するのは、事業者がその商品について虚偽不実又は人に誤解を与えるような広告及びその他公衆に知らせる方法で取引の機会を獲得する不正競争手段のことである。これに基づき、もし事業者が商品若しくはその広告において、若しくはその他公衆に知らせる方法で、商品の質及び内容等について虚偽不実又は人に誤解を与えるような表示をする場合は、公平取引法第21条第1項の規定に違反すると認定すべきである。一方、宣伝を受け取った対象がそれにより欺かれたか、又は実際に損害を受けたかについては、問わないものである。」(最高行政裁判所111年度上字第212号判決趣旨を参照)

3.「公平取引法第21条における表示又は表記の虚偽不実に該当するか、又は人に誤解を与えるかについては、当該表示又は表記と実際の状況との差異程度が、通常知識と経験のある関連取引相手による合理的な判断また取引決定に十分に影響を与えるかを基準とする。」(最高行政裁判所108年度判字第232号判決趣旨を参照)

(二)原告が係争座談会を開催したのは、係争ゲームの宣伝、販売を目的とするものであり、公平取引法第21条第1項に規定の広告又はその他公衆が知悉できる方法に該当する。
原告は、係争座談会を開催して消費者に還元するために、ゲーム最適化の参考として台湾バージョンについての台湾プレイヤーのプレイ感想を把握しようとして、2019年11月30日にFacebookの公開ページに係争座談会の参加募集イベントを掲示し、ネット登録で係争座談会に参加できる方法をプレイヤーに提供してゲームに対する登録者の熱中の程度(主に過去の課金金額による評価)、ゲームとの相性(主にキャラクターのレベルによる評価)及びプレイヤーと原告との相性(主に厳しいクレームをしたかによる評価)に基づき選抜を行ったうえで、電話でプレイヤーの参加意欲を確認して現場に招待した。係争座談会の現場に来場した人数は45名であり、その内、ライバー「凹凹先生」を含め、計8名がライバーであった。原告が更に係争座談会当日に原告のFacebookを通じてライブ配信を行い、「#リネージュM二周年プレイヤー座談会の現場を直撃、いま、あらゆる分野の英雄たちが会場に集まった……次のチャンネルをクリックするとライブ配信が視聴できるよ!【令狐沖爺爺】……、【ACTT】……、【小屁】……、【DingDing】……、【凹凹先生】:http://www.youtube.com/channel/UCFiFskzx70N8ywFS4LjyG3A……」等の内容及びリンクを掲示した。これは、原告が不特定のプレイヤーを凹凹先生等5名のライバーのYoutubeライブ配信チャンネルへの係争座談会内容をライブ視聴するよう広くFacebookで招待したことを証明することができ、且つ原告は係争座談会の終了後、自身で運営しているリネージュM のYoutube公式チャンネルで係争座談会のハイライト動画も公開して大衆に視聴させた。原告は2022年1月17日に被告への回答書簡において「貴局書簡でご言及の楽点公司によりシェアされた生放送主座談会のライブ配信動画は、当社の座談会内容であるので、貴局もこの方式に沿ってご視聴いただきたい。なお、談話の部分については、直接楽点公司が公告したQ&A整理を参酌することもできる」等の情状も述べた。それらは、原告111年1月17日遊函字第1110101702号書簡、楽点公司公告のQ&A整理を参照することができる。以上から見てわかるように、原告が係争座談会を開催したのは、係争ゲームの宣伝、販売を目的としたことであり、広告又はその他公衆が知悉できる方法に該当することは明白である。

(三)係争座談会Q17の「イベントの製作、抽せん、合成の成功率は公開できるか?現在これらの成功率設定はいずれも韓国バージョンのそれと同様か?」これに対し、「台湾バージョンの成功率はすべて韓国と同様」等という現場の公式回答は、公平取引法第21条第1項の係争ゲームと関連して取引決定に十分に影響する事項における虚偽不実又は人に誤解を与える表示又は表記に該当する。
原告が係争ゲームの宣伝、販売を目的として係争座談会を開催し、ゲーム最適化の参考として台湾バージョンについての台湾プレイヤーのプレイ感想を把握しようとしたことは前述の通りである。原告が係争座談会の開催前、事前に出席プレイヤーの質問を整理して韓国本社に提供したことを自らも認めたことについて、起訴状を参照することもできる。したがって、係争座談会のQ17は係争ゲームのプレイヤーが関心を持っている質問であり、原告もこれは重要であり、質問として列記して更に回答するとプレイヤーがお金を使って台湾バージョンゲームを消費するかに影響するものであると認識していたので、それは確かに係争ゲームと関連して取引決定に十分に影響する事項であることがわかる。原告が紫布の製作成功率について、韓国バージョンの成功率は10%であり、台湾バージョンの成功率は5%であることを自らも認めたのは、リネージュMオンラインゲームの中の成功率説明公告と実際の状況との相違から派生した疑義の件、リネージュMのチャットグループ(技術+IA+運営)の対話履歴を参照することができるので、それは事実であると十分に信用できる。よって、係争座談会で公言した台湾バージョンの成功率がすべて韓国バージョンのそれと同様である云々は、明らかに虚偽不実又は人に誤解を与える表示又は表記に該当する。

(四)原処分は法的明確性の原則又は比例原則に違反していない。
公平取引法第21条第1項、第4項には、事業者は商品若しくはその広告に、若しくはその他公衆に知らせる方法で、商品に関する取引決定に十分に影響する事項について、虚偽不実又は人に誤解を与えるような表示又は表記をしてはならず、且つ事業者の役務にこれを準用すると既に明確に規定されている。本件の違法事実は、原告が係争ゲームというサービスを提供しており、それは性質上事業者の役務に相当し、そもそも公平取引法の規制を受けるものであることであり、原告が主張したような、法規又は被告の明示なしに予見できないために処分を受けるに至ったとの状況はなかったので、自ずと原告が主張したような原処分の法的明確性の原則違反はない。原告の払込資本金約17億台湾ドル、2019年売上高70億台湾ドル、2020年74億台湾ドル、2021年82億台湾ドル、係争ゲームの2019年売上高52億台湾ドル、2020年48億台湾ドル、2021年36億台湾ドル、紫布の2019年10月から12月までの売上高1,800万台湾ドル、2020年1億台湾ドル、2021年3,800万台湾ドルであった等の情状を考えると、原処分が200万台湾ドルの過料に処したことに、比例原則違反の状況はない。

以上の結論により、本件原告の訴えには理由がないので、行政訴訟法第98条第1項前段に基づき、主文の通り判決を下す。

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