台湾專利権侵害物品が外国で製品の一部として組み立てられ、当該製品が台湾に輸入された場合に、権利者は台湾で、当該輸入行為、及び/又は後続の販売ルートに於ける販売行為に対し、その権利侵害を主張することができますか? 2010-05-25

2013-09-17 特許実案意匠

20100525 / 20101118 revised.

問題:台湾專利権(特許・実用新案・意匠を含む)侵害物品が外国で製品の一部として組み立てられ、当該製品が台湾に輸入された場合に、権利者は台湾で、当該輸入行為、及び/又は後続の販売ルートに於ける販売行為に対し、その権利侵害を主張することができますか?

回答:
上記事情において、権利者は専利権(特許・実用新案・意匠を含む)が侵害されたと主張することができます。そのご説明は以下のとおりです。

 

一、法律規定

專利法(特許法)第56条規定によれば、物品権利者は、その同意を得ないで他人がその特許製品の製造、又は販売の為の申出、又は販売、使用若しくは上記の目的の為の輸入等の行為を排除する権利を専有することになっています。

特許権者は権利侵害事実を発見した時、同法第84条第1項規定に基づき損害賠償を請求することができ、その侵害排除も請求することができ、侵害のおそれがある時は、その防止を請求することができます。同条第2項規定に依り、特許権侵害の物品について、廃棄処分又はその他必要な処置を請求することもできます。また、実用新案権が侵害を受けた時は、同法第108 条準用第84条に基づき権利を実施します。

なお、損害賠償請求時には侵害行為者に故意又は過失があったことを前提とします。なお且つ專利法第79条の規定に基づき、権利侵害者が特許に関わる物品であることを知っていたか、またはそれを知り得たことを証明するに足りる事実がある場合を除き、特許物品には特許証書番号の表示が必要であり、そうして始めて損害賠償請求が可能となります。 

二、権利被侵害を主張した成功事例

(一)  権利侵害物品を使用して製品部品とすることは、権利侵害行為に該当します。

物品が権利出願の出願範囲に入ると鑑定された場合、直ちにそれは権利侵害物品となり、当該物品が単一製品、又はその他製品の一部分となっているどちらの場合かを問いません。例えば、板橋地方裁判所93年重智字第4号案件では、原告が中華民国第148732号実用新案「トランスミッションとモーターの連結構造」の権利者であり、鑑定の結果、被告製造の電動カートが使用した「トランスミッションとモーター」が、当該権利の出願範囲に入っていて、被告も原告製品が権利保護を受けていることを知っていました。そこで裁判所も原告が、被告に損害賠償金を請求し、また、被告による製造、販売、使用又は上述目的による原告上述権利物品の輸入を禁止することができると判決しました。

(二)  権利者の同意を経ずに、権利侵害物品を販売、又は販売の申出を目的として輸入することは、権利侵害行為に属します。

1.  特許権物品の輸入は権利者の同意が必要です。

専利(特許・実用新案・意匠を含む)保護は属地主義をとっており、販売又は販売の申出を目的とした権利物品の我国への輸入は、我国権利者の同意が必要です。例えば、士林地方裁判所92年智字第6号案件では、原告が中華民国第117663号実用新案「ブルーレイ駆動回路構造」の権利者であり、被告が輸入したSP4425集積回路が、鑑定によりその「回路構造」が当該権利の出願範囲に入るとされました。被告は当該集積回路について訴外人A社の米国パテントの許諾を受けており、許諾を経た製造販売であると抗弁しましたが、権利保護は属地主義をとっており、我国権利者は我国に於いて他人によるその権利の実施を排除する権利を専有するので、当該抗弁は裁判所に採用されませんでした。当該事例後、裁判所の判決により原告は、被告に損害賠償金を請求することができることになりましたが、原告の侵害排除請求の部分については、原告が起訴時に被告がまだ当該集積回路を製造又は販売していたことを証明できず、退けられました。

2.  販売と販売の為の申出の解釈

専利法(特許法)上の「販売の為の申出」とは、行為者が明確にその販売意志を示すことです。例えば、物品上に販売価格を表示して陳列したり、インターネット上で広告したり、電話で表明する等です(智恵財産裁判所97年民專訴字第66号)。なお、我国民法の規定では、売買契約が承諾契約である場合、当事者が対象物及びその価格についてお互いに同意すれば、その売買が成立することとなっています。

智恵財産裁判所97年民專訴字第3号案件では、原告が中華民国第M302031号実用新案「顕微鏡の対物鏡装置」の権利者でした。被告は台湾で「USB Digital Microscope デジタル顕微鏡」を販売し、注文を受けて中国の工場に製造を委託し、それを被告が台湾に輸入して販売していました。上記状況に基づき、原告は被告にその同意を経ずに我国で販売の申出、販売、使用の為、及び前述目的で権利物品の輸入をしたと主張しました。その際、裁判所は審理後に以下のように認定しました。:

(1)販売の為の申出について:本件は、被告が台北国際コンピュータ展(COMPUTEX Taipei)で、カタログ掲載と実物展示の方法で係争製品をプロモートしたので、販売の申出に該当する。

(2)販売について:被告は台湾で顧客の注文を受けた時点で、既に売買の対象物及び価格について合意に達し、売買行為が直ちに成立しており、専利法規定の「販売」に該当する。

当該案件後、裁判所の判決により原告は被告に損害賠償を請求でき、また被告は原告権利侵害物品について、販売の為の申出、販売、使用又は上述目的による輸入をしてはならないこととなりました。

(三)    我国で販売の為の申出、又は権利侵害物品を販売することは、権利侵害行為に該当します。

上述の二、(二)、2の智恵財産裁判所97年民專訴字第3号の事実のように、我国で権利侵害物品について販売の為の申出又は販売をすることは専利権(特許・実用新案・意匠を含む)侵害行為になります。また特にご説明したいことは、販売業者が販売ルートで権利侵害物品を販売した場合も、その販售行為はやはり専利権侵害に該当するということです。例えば、高雄地方裁判所96年智字第5号案件では、原告が中華民国第130715号実用新案「気動ブレーキ装置」を有し、被告Aが当該権利を侵害して「シャッター保護裝置」を製造し、被告Bに販売し、被告Bが更にそれを他の訴外業者に転売しました。鑑定の結果、被告が製造販売した「シャッター保護裝置」は原告の権利出願範囲に入るとされ、その上被告はいずれも故意且つ不法に原告の係争実用新案権を侵害したので、裁判所が原告の請求に基づき、被告が損害賠償金を原告に支払うべきだと判決しました。

三、権利主張時の注意事項

(一)   特許権物品又はそのパッケージ上に特許証書番号を表示していないと、損害賠償を請求できない可能性があります。

専利法(特許法)第79条の規定では、権利侵害者がそれが特許に関わる物品であることを知っていたか、またはそれを知り得たことを証明するに足りる事実がある場合を除き、特許物品には特許証書番号の表示が必要であり、そうして始めて損害賠償請求ができることとなっています。特許証書番号の表示が明確であり、また、侵害行為発生時に特許物品又はそのパッケージに既に表示があったことを証明できるということに注意が必要です。上述の二、(一)で引用した板橋地方裁判所93年重智字第4号案件では、原告が「実用新案権を有するという警告」、「日本台湾で模倣しないよう警告……実用新案権取得と出願中」及び「模倣しないよう警告、実用新案権取得と出願中」とだけ表示されていたので、裁判所は原告が権利物品上に権利証書番号を表示していなかったと認定しましたが、被告が原告製品が権利物品であると知っていたので、やはり被告は損害賠償責任を負うと認定しました。智恵財産裁判所98年度民專上易字第18号案件では、被上訴人が販売した物品「頭部装着式ライト拡大鏡」が上訴人の中華民国第182254号実用新案「頭部装着式拡大鏡の装着構造改良」と第068722号意匠「頭部装着式拡大鏡」を侵害していると訴えられました。しかし、上訴人製品には権利証書番号がなく、上訴人は訴訟中に権利証書番号を印刷した外箱を提出したものの、当該外箱が上訴人が被告により権利侵害された期間に製造されたものであることが証明出来なかった為、裁判所に採用されませんでした。当該案件では、上訴人が権利物品に権利証書番号を表示していなかった為、被上訴人が上訴人製品に実用新案権があったことを知っていたと証明できず、その結果、損害賠償の請求も許されませんでした。

(二)   権利侵害証拠を提出しなければなりません。

我国民事訴訟法規定に依れば、原告は起訴事実について挙証責任を負うことになっています。高等裁判所96年度智上字第24号案件では、上訴人が被上訴人が代理、販売していたメモリー放熱構造に付属の「弾性夾具flexible clamping fixture」がその所有する中華民国実用新案第193238号「挟み固定式のメモリー放熱構造」を侵害したと主張しました。確かに製造業者A社が他国で販売した同型製品にはいずれも権利侵害嫌疑のあるflexible clamping fixtureがありましたが、上訴人は最後まで被上訴人が台湾で販売した製品にflexible clamping fixtureがあるという証拠を提出できませんでした。その為、裁判所も被上訴人は上訴人の権利を侵害していないと認定しました。

(三)  損害賠償請求は、侵害者が故意又は過失により権利者の権利を侵害したことを証明しなければなりません。

我国で権利侵害の損害賠償を主張する際には、権利者が侵害者による侵害行為について故意又は過失があったことを証明しなければなりません。(最高裁判所93年度台上字第2292号)上述の三、(一)で引用した智恵財産裁判所98年度民專上易字第18号案件では、被上訴人が自分は単に川上業者から仕入れて販売していた小売業者であり、権利侵害物品を製造しておらず、その販売物品「頭部装着式ライト拡大鏡」が原告実用新案を侵害していたとは知らなかったと主張しました。上訴人は権利物品に実用新案証書番号を表示していなかったので、被上訴人がその販売していた商品が権利侵害物品であることを知っていたと証明できず、損害賠償の請求は退けられました。権利侵害の損害賠償案件では、被告に故意又は過失があったことを証明できないことが、輸入業者/ルート業者に対する賠償請求不成功のよくある原因となっており、輸入業者/ルート業者も通常、権利侵害技術について専門知識が欠けていたか若しくは製造に従事していなかったので製品内部設計にも詳しくなかった等の理由を提出し、故意又は過失がなかったことの抗弁とします。関連案件としては、98年度民專上易字第18号、台北地方裁判所93年智字第87号、96年智字55号等の案件を参考にすることができます。

(四)  侵害排除は、権利侵害者の故意又は過失を証明する必要がありません。

侵害の排除及び防止については、行為者に権利侵害故意又は過失があったことを要件とせず、権利侵害の事実が存在すれば直ちに行使することができます。台南地方裁判所92智字第28号案件では、原告が中華民国第142007号特許「射製複色又は複料の裝置」を有する権利者で、被告が製造した「立式射出双色円盤交替射出成型機」がその特許権を侵害したと主張しました。原告が特許物品に特許証書番号を表示していなかったので、被告が原告製造の「射出成型機」が特許物品であることを明らかに知っていたか若しくは知り得たことを証明できず、原告の損害賠償請求が退けられましたが、被告が製造していた射出成型機は鑑定の結果、原告特許出願範囲に入るとされましたので、当該部分について裁判所は被告に対し、原告特許権を侵害する機器の製造、販売を自己で行ったり、又は第三者させてはならないと判決しました。

(五)   権利侵害者が恐らく提出するであろう権利消尽の抗弁

権利消尽の規定は専利法(特許法)第57条第1項第6号にあり、同条規定では「特許権の效力は、特許権者が製造、又はその同意を得て製造された特許物品販売後に、当該物品を使用又は再販売する行為には及ばない。上記製造、販売行為は国内に限らない。」(実用新案は108条準用本条規定を準用)となっています。ですので、特許権者が製造、又はその同意を得て製造された特許物品が第一次として台湾国内、又は国外で販売された後は、特許権者も他人による当該特許物品について我国への輸入、又は我国での販売、使用を禁止することができません。また、当該条文の同意には和解が含まれないことにも注意する必要があります。台湾士林地方裁判所94年度智字第27号案件では、原告が中華民国第586714号実用新案「アカウント自動作成装置及びそのプリンター」の権利者で、被告が訴外人A社に「無線インターネットTicket Printer(型號:DSA-3100P)」と「無線インターネット安全閘道器public/private Hotspot Gateway(型號:DSA-3100)」の製造を委託し、我国で組み立てて販売していたところ、原告からその権利を侵していると主張されました。被告が提出した抗弁理由のひとつは、A社が既に上述権利侵害製品の製造の件について原告と和解しているので、実際には既にA社が以前権利侵害製品を被告に販売したことは追認されているという合法性があるというもので、これにより被告は権利消尽原則に基づき、原告は被告に損害賠償請求できないと抗弁しました。裁判所は、権利消尽原則の適用前提は合法的に許諾を受けた場合であるとし、A社は単に特許権侵の件で原告と和解しただけであり、係争特許の許諾を受けておらず、その特許物品製造行為について未だ原告の同意を得ていないので、権利消尽原則の適用はないと認定しました。当該案件は、後日裁判所より、原告は被告に損害賠償請求できると判決されました。

以上をまとめますと、製品の一部の部品のみが権利侵害物品であっても、販売又は販売申出の目的により、当該製品が台湾へ輸入されたか、又は販売された場合、やはり権利者の権利侵害に該当します。権利者は権利主張の際、権利物品に明確に権利証書番号が表示されているかを確認し、証拠保全に注意すべきです。また、損害賠償請求時には、権利侵害事実について侵害者に故意又は過失があったことが前提となります。
 
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「セットメーカー関連の特許侵害事態」に関して

一、当該製造業者の日本国内での製造行為に対し、直接台湾で許可された特許権に基づいた権利を主張することはできません。

 特許権は属地原則の制限がありますので、その効力は許可国の領域内での行為だけに限ります。即ち台湾で許可された特許の特許権者は他人が台湾国内での製造、販売、販売のための申出、使用若しくは上記の目的のための特許物品の輸入などの行為だけの制限ができ、国外で発生した上記の行為に対し、台湾の特許権法に基づいた権利を主張することはできません。

 当該製造業者が日本国内で貴社が台湾で特許権を享有している物品を製造し、その後、組立業者がその物品を携帯電話に組み立て、台湾に輸出したという貴信の説明内容について、上記解釈からでは、直接当該製造業者の日本国内での製造行為に対しては、台湾の特許権法に基づいた権利を主張することはできません。

 もし貴社が台湾で当該製造業者に対し、特許権侵害の訴訟を提起した場合、たとえ当該製造業者が台湾での裁判に出頭しても、特許権の侵害行為は台湾国内で発生したものではないことを理由として、権利侵害を構成しない、と抗弁する筈と思われます。

二、当該製造業者の日本国内での製造行為に対し、特定の条件の下では、「共同侵害行為」として権利を主張することができます。

 目下、台湾の特許権法では「間接侵害」についての規定がありませんが、民法第185条第1項では「数人共同で他人の権利を侵害した場合、連帯して損害賠償の責任を負わなければならない」と、又同条第2項では「教唆者及び幇助者は共同行為者と見なす」となっていますので、民法に基づいて、間接侵害行為に対し、権利を主張することができます。但し、特許権の共同侵害を理由として、当該製造業者に対し権利を主張する場合、次の事項について注意しなければなりません。

(一)台湾で直接権利侵害行為が発生したこと

民法第185条の適用前提は、台湾国内で直接侵害行為が存在して始めて共同行為者が連帯して賠償責任を負うことになります。従って、訴訟においては、先に直接侵害行為を確認しなければならず、例えば「輸入」若しくは「販売」行為の有無を確認することです。

(二)当該製造業者が直接当該侵害行為に参加したり、介入したりしたこと

特許権は属地原則に制限されますので、日本国内での製造行為は台湾国内での製造、使用、販売、販売のための申出又は上記の目的のための輸入行為に直接参加したり、介入したりしたと認められた場合に限り、当該行為は台湾の特許権を侵害すると認められます。知的財産裁判所97年民専上字第20号判決では、特許権の共同侵害の認定について、次の通りの説明があります。即ち「特許法第84条第1項の規定によって、損害賠償、排除及び侵害防止などが請求できるのは、発明特許を侵害した直接行為者です。台湾の特許法制では未だ間接侵害責任(第三者の直接侵害行為に対し間接侵害責任を負う)の概念がなく、即ちその主観的意図及び行為態様を斟酌し、もし第三者の特許権侵害に直接参加したり、介入したりしなかった場合、第三者の侵害行為と関連があることを理由としてその者に侵害責任を負わせることができません。台湾の通常裁判所の実務見解では共同侵害行為が成立するか否かについて、各行為者の行為が共に損害発生の共同原因であることだけで足ると認めていますが、知的財産裁判所では特許権の共同侵害の成立要件については、より厳しい見方が取られています。

(三)ご質問いただいた状況においては、当該携帯電話は組立業者が台湾に輸出したものであり、製造業者が輸出したものではないため、組立業者を排除し、製造業者だけに対し、特許権を主張したいのであれば、当該組立業者が輸出者でもなく、販売者でもなく、且つ最も重要なのは当該製造業者と台湾の輸入業者又は販売業者との関連があり、侵害行為に直接参加したり、介入したりしたことが証明できて初めて「共同侵害行為」が主張できることになります。

三、この外、以上の説明からでは、当該製造業者の製造行為はただ直接侵害行為の幇助行為に属するものとだけ認められますが、前便二、(一)から(三)の何れかの行為にも属しないことについて、ここに併せて説明させて頂きます。

 

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