意匠特許に関わる主な設計特徴(視覚の正面)の認定について

2013-12-30 2012年

■ 判決分類:意匠権

I 意匠特許に関わる主な設計特徴(視覚の正面)の認定について

■ ハイライト
一、意匠は視覚性の設計である。意匠は六面視図で開示される図形によって構成される物品の外観設計であり、立体物でいうと、6つの視覚面の重要性は同等だが、一部の物品は6つの視面すべてが消費者の注意部位というわけではない。一例として、空調機の操作パネルと冷蔵庫の扉はともに視覚の正面に属する。この種の意匠出願審査のときは、視覚の正面および開示される新規性の特徴を主な設計特徴とし、他の部位に特別な設計がない限り、同一・類似の判断に影響しない。さらに言うと、出願意匠は肉眼によって観察でき、かつ視覚効果を備える設計でなければならず、裁判所または審査官は消費者の商品購入観点を模擬し、意匠全体の設計または主要部分と先行技術物品との同一性または類似性を比較、判断しなければならない。
二、係争の出願案件プッシュスイッチモジュールについて言えば、消費者が商品の購入または使用するときの、主な注意部位は「正面図」によって開示される正面の外観設計部分であり、左、右、または底面図、平面図で開示された特徴については、枠側面の特徴を除き、枠の背面に突き出た固定ベースとその突起部と留め金などの特徴は通常の使用状態において、各種の電気製品の構造内部に隠されているため外部から観察することができず、意匠特許の視覚の訴えによる外観設計の保護範疇に該当しない。【資料:知的財産局のまとめ】

II 判決内容の要約

知的財産裁判所民事判決
【裁判番号】101年度行専訴字第10号
【裁判期日】2012年6月28日
【裁判事由】意匠出願

原告 名笙旅館科技有限公司
被告 経済部知的財産局

前記当事者間による意匠出願事件について、原告は経済部2011年12月21日付経訴字第10006107020号訴願事件の裁決に対して行政訴訟を提起した。本裁判所は以下のとおり判決する。

主文
原告の訴えを棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

一 事実要約
原告は2009年3月4日「平面式プッシュスイッチモジュール(一)」を被告に意匠登録出願(以下、「係争出願案件」という。)したが、被告が第98300862号によって、拒絶査定を通知した。原告はこれを不服として審判請求をしたが、被告は2011年4月14日付(100)知専三(一)03011字第10020303610号拒絶審決書で「拒絶審決」を下した。原告がこれを不服とし、訴願を提起したところ、被告は訴願法第58条第2項により内部審理した後、2011年6月7日付(100)知専三(一)03011字第10020486250号によって、原処分を取消した。その後、被告はまず2011年6月7日付(100)知専三(一)03011字第10020486260号審査通知書により原告に答弁を要求し、原告より理由補充書が補充された後、再び審理した結果、同9月6日付(100)知専三(一)03011字第10020791480号にて「拒絶査定」を下した。原告はこの査定を不服として、訴願を提起したので、経済部は2011年12月21日付経訴字第10006107020号、訴願裁決によりこれを棄却したが、原告はこれを不服として、本裁判所に行政訴訟を提訴した。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告の請求:原処分及び原訴願裁決の取り消し及び被告による係争の出願案件について意匠登録の許可判決を請求する。
(二)被告の請求:原告の訴えを棄却する。

三 本件の争点
出願意匠に創作性があるかの判断は、まず意匠登録請求の範囲ならび先行技術全体の外観、図面および物品の種類などの特徴を解析し、分析比較の基準とすべきである。続いて、帰納法と目視法により、逐一同一性または類似性を分析・比較した上で新規性の特徴を有するかを判断する。よって、当裁判所は係争の意匠出願案件と引例1、2の技術内容とを逐一分析した後、続いて引用例1、2が係争の意匠出願案件が創作性を有しないことを充分に証明できるかどうかを検討する。そして、これが意匠出願の審査要件である。

四 判決理由の要約
(一)係争意匠出願案件と引例の技術内容分析

1.係争意匠出願案件技術内容分析
係争意匠出願案件は平面式のプッシュスイッチモジュールであり、主に扉外部のドアチャイムのプッシュボタンや屋内各種電気用品のプッシュスイッチに使用されている。外観の特徴は本判決添付図1に示すように、厚みを有した矩形の枠板と、前記枠板の内部に嵌め込むスイッチモジュールとを含む。

2.引例1と引例2の技術内容分析
引例1は元来の引用証拠2、日本意匠登録第D0000000号であり、日本語訳は「シーソースイッチ」である。引例2は元来の引例米国D586,762デザインパテント、名称は「SINGLE LIGHT SWITCH」で、日本語訳は「単灯式スイッチ」である。

(二)引例1と引例2を組み合わせることによって、係争意匠出願案件に創作性がないことを証明できる。

1.意匠は視覚性の設計である
出願意匠は肉眼によって観察でき、かつ視覚効果を備えた設計でなければならず、裁判所または審査官は消費者が商品購入する観点を模擬し、意匠全体の設計または主要部分と先行技術物品との同一性または類似性を比較し判断しなければならない。調べによると、係争意匠出願案件のプッシュスイッチモジュールについては、消費者が商品購入または使用のとき主に注意する部位が「正面図」によって開示されたスイッチ正面の外観設計部分である。係争意匠出願案件の左、右、または底面図、平面図によって矩形スイッチ枠側面の特徴が開示されているが、しかし、枠側面の幾何形状も矩形であるため、新規な視覚効果を有しない。

2.機能性設計は意匠を判断する範囲ではない
いわゆる機能性設計は、物品の外観設計の特徴がもっぱら機能のニーズによるものであって、かつそれ自体またはもう一つの物品の機能または構造のために設計されたものをいう。意匠特許によって保護される対象は物品外観の形状、模様と色彩など視覚効果の創作であるため、機能性設計は視覚によって訴える創作ではなく、よって、意匠の定義に合致しない。機能性設計に該当するかは、当該業者で係る技術を熟知する者のレベルで判断すべきである。係争意匠出願案件は固定機能の機構性設計構造であり、意匠による比較・判断の範囲ではない。よって、原処分機関と行政訴願機関が、係争意匠出願が「正面図」を視覚の正面として開示された設計の特徴をもって、係争意匠出願案件に創作性要件を有しているか判断したことは、前述説明によれば、不合理なところは見当たらない。

3.新規性特徴の認定について
意匠出願案件が先行技術と異なるかまたは類似しなくても、意匠の全体設計が意匠に属する技術分野の一般知識を有する者が出願前の先行技術から容易に想到できるものであれば、係る意匠は創作性を有しないと言える。容易に想到されるとは、意匠に属する技術分野において一般知識を有する者が先行技術に基づき、出願意匠を容易に創作できるものであり、特別な視覚効果を生じないものをいう。本件の意匠が属する技術分野で一般知識を有する者が先行技術、すなわち、引例1と引例2を基礎とする一般知識をもって、引例1と引例2のスイッチボタンブロックと枠外観の表面にある局部の修飾を同じ平面にすれば、係争意匠出願案件スイッチの外観特徴を簡単に実現できる。さらに、全体の視覚効果を観察したとき、係争意匠出願案件はスイッチボタンブロックの表面を枠の表面と同一平面に設けることにより、枠平面に平面状の設計構造が形成されることを強調しているものの、単に簡単な幾何学形体または矩形体を設計要素として配置しているだけで、特別な視覚効果は生じていない。係争意匠出願案件プッシュスイッチモジュールの創作特徴が強調しているポイントは、枠とプッシュボタンが同一平面の態様が形成されているところにあり、各設計要素または細かな局所部の特徴ではない。一方、係争意匠出願案件のプッシュスイッチモジュールを全体的に観察したとき、視覚正面の矩形スイッチブロックと、枠、枠の側部などの外観設計の特徴は引例1、2ですでに開示されており、よって、当該分野の一般知識を有する者はスイッチブロックと枠側面の外観表面の局部を修飾すれば、係争意匠出願案件の外観特徴を簡単に形成できる。さらに、係る外観特徴は特別な視覚効果を生じていないことから、意匠出願案件が創作性を有しない事実が浮き彫りになっている。
よって、意匠出願案件は当分野の一般知識を有する者が引例1、2の技術内容をベースに組み合わせれば、意匠出願案件が意匠を実現でき、特別な視覚効果を形成されないことから、係争意匠出願案件が創作性を有しないことが証明されている。

(三)以上をまとめると、意匠出願案件と引例案件との違いは、いずれも当該分野の一般知識を有する者が簡単に想到できるものであり、よって、引例1、2の技術内容を組み合わせにより、意匠出願案件が創作性を有しないことを証明できる。そのため、原処分機関による意匠出願案件に特許法第110条第4項による「本件拒絶査定」の行政処分には、不合理なところは見当たらない。また、訴願手続の裁決を維持したことにも間違いはない。原告が前述のように主張する原処分及び訴願裁決の取消し、及び被告に意匠登録許可を命じるよう請求したことには理由がないため、これを棄却する。

2012年6月28日
知的財産裁判所第二法廷
審判長裁判官 陳忠行
裁判官 曾啓謀
裁判官 林洲富

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