国内優先権制度は専利出願日の例外規定であり、しかも出願日は専利制度の重要期日であるため、判断は厳しい解釈によるべきである

2015-04-09 2014年
■ 判決分類:実用新案権

I 国内優先権制度は専利出願日の例外規定であり、しかも出願日は専利制度の重要期日であるため、判断は厳しい解釈によるべきである

■ ハイライト
専利法第30条第1項第5号で定める実用新案特許出願において国内優先権主張ができない規定のうち、「既に拒絶査定が確定している場合」は、先願の査定後、期間中に証書手数料及び第1年分の年金の未納付、かつ前述費用の補充納付が認められない場合を含むはずである。先願が納付期間を超えても証書手数料及び年金未納付である場合、主務機関により先願が法に基づき公告され対外的に効力を発生させることができないことから、当然、拒絶査定が確定したことに該当し、出願者は係る先願に基づいて国内優先権を主張することができない。その他、国際優先権制度はそもそも先願の存在を前提要件としていないが、しかし、国内優先権と国際優先権の両者は制度制定の目的がすべて同じではない。しかも出願日は専利制度において専利要件を判断する際の重要期日であり、優先権制度が出願日の例外規定であるので、厳密に解釈すべきである。

II 判決内容の要約

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】102年度行専訴字第102号
【裁判期日】2014年01月16日
【裁判事由】実用新案出願案件の優先権主張

原告 和碩聯合技股份有限公司
被告 経済部知的財産局

前記当事者らによる実用新案の出願に関わる優先権主張事件について、原告が経済部2013年7月26日経訴字第10206104550号訴願決定に不服のため、行政訴訟を提起した。当裁判所は以下のとおり判決する。

主文
原告の訴えを棄却する。
訴訟費用は被告の負担とする。

一 事実要約
原告が「照明装置」を被告に対して実用新案(以下、係争実用新案という)を出願すると同時に第101203553号実用新案(以下、先願という)を基礎として、国内優先権を主張した。被告が形式審査を経た後、被告は先願が期間内に証書の交付を受けるための証書手数料と年金を納付しておらず、公告されない法効果を形成したため、先願を基礎として国内優先権の主張はできないとした。よって、係争実用新案が主張する国内優先権を不受理処分とした。原告がこれに不服のため訴願を提起したが、経済部が棄却を決定した。しかし原告はなお承服せず、本裁判所に行政訴訟を提起した。

二 双方当事者の請求内容
(一)原告の主張:原処分及び訴願決定を破棄する。
(二)被告の主張:原告の訴えをの棄却する。

三 本件の争点
本件の争点は、期限内に証書手数料を納付していないことによって実用新案権を取得できない実用新案の出願案件が専利法第30条第1項の関連規定に該当するため、国内優先権を主張することはできないかにある。

(一)原告主張の理由:省略。判決理由の説明を参照。
(二)被告答弁の理由:省略。判決理由の説明を参照。

四 判決理由の要約
台湾の専利法は2001年10月24日の改正によって国内優先権制度が導入された。すなわち、2001年10月24日の改正専利法第25条の1において、次のように規定されている。「出願者が台湾で出願した許または実用新案に基づいて、専利を再出願するときは先願を出願したときの明細書または図面に記載された発明または創作について、優先権を主張することができる。ただし、次のいずれかに該当する場合は、優先権を主張することができない。一、先願の出願日から既に12ヶ月を経過した場合。二、先願に記載された発明又は実用新案において第24条又は本条の規定により既に優先権を主張した場合。三、先願が第34条第1項規定の分割出願、又は第101条規定の変更出願である場合。四、先願が既に査定されている場合。前項の先願は、その出願日の翌日から15ヶ月を経過したときに取り下げたものとみなす。先願の出願日から15ヶ月を経過した後は、優先権の主張を取り下げることができない。第1項により優先権を主張した後願が先願の出願日の翌日から15ヶ月以内に取り下げられた場合、同時に優先権の主張も取り下げられたものとみなす。専利出願人が1出願について2以上の優先権を主張する場合、その優先権期間の計算は最先の優先日の翌日から起算する。優先権が主張された場合、係る専利要件の審査は優先日を基準とする。第1項により優先権を主張しようとする者は、専利出願と同時に声明を提出し、出願書類に先願の出願日及び出願番号を明記しなければならない。出願人が出願のときに声明を提出しないか、または出願書類に先願日と出願番号を明記しなかった場合は、優先権を喪失する。本条に基づき主張する優先権日は、本法が2001年10月4日の改正施行日より早い日であってはならない。」。このほかに、立法院公報第90巻第46期院会議事録を参照すると、2001年10月24日に改正された専利法第25条の1について、行政院版の立法理由の趣旨は「...三、第1項の序文に国内優先権の基礎と先願の条件及び範囲を規定し、同項但し書きには国内優先権を除外する四つの場合を規定している。その一は、12ヶ月の優先権主張の除斥期間の規定。その二は国内優先権は累積による主張ができない。優先権期間が実質的に延長されるのを防ぐため、先願に記載の発明を国内優先権または国際優先権すでに主張したものは、後願で再び国内優先権を主張することができない。ただし、先願の内、かつて国内優先権または国際優先権を主張していない部分は、この制限を受けるべきでない……。その三は、個別出願、変更出願が元来の出願日をすでに引用している。その四は、係る出願が取り下げ、放棄、受理または査定されないものは、すでに特許所管機関に係属していないため、優先権を主張することができない。」となっている。(原処分ファイル第44頁を参照)。さらに、前記2001年10月24日に改正された専利法第25条の1はその後複数回の専利法改正を経て、2001年12月21日の専利法改正によって、専利法第30条に変更されたほか、今回の改正に伴い第4号が修正され、第5、6号が追加された。すなわち、「出願者が台湾で出願した発明特許または実用新案を基礎として再出願する場合は、先願明細書、特許請求の範囲または図面に記載した発明または実用新案特許を基礎として優先権を主張することができる。ただし、以下のいずれかに該当するものは、主張することはできない。…四、先願が発明であり、すでに公告したとき。または、先願が既に拒絶査定が確定している場合。五、先願が実用新案であり、すでに公告したとき。または拒絶査定が確定している場合。六、先願が取り下げられたか、または不受理処分を受けたもの。」その立法の趣旨は、「国内優先権の主張期間は12ヶ月といえども、先願がいつ査定または処分されるかについては、出願者の予測できないことである。実務において、出願が12か月以内にすでに査定または処分されこともあるため、後願が国内優先権を主張できない状況を引き起こす。特に、実用新案の審査は極めて速く、通常は5か月以内に処分書が交付されるため、出願者が12ヶ月以内に優先権の主張チャンスを喪失する可能性がある。さらに、専利出願者は査定書または処分書を入手した後に3か月の証書手数料と第1年分の年金納付期間を与えられ、必要なるときは公告を3ヶ月延期することができる。ここに発明と実用新案を号ごとに分けて規定した上、第4号に先願が発明であるものは、後願が国内優先権を主張できない期限を「査定が確定している場合」から「すでに公告または、先願が既に拒絶査定が確定している場合」に改正し、出願者に国内優先権の主張について、より余裕のある時間を与えるように緩和する。第5号の追加。先願が実用新案の場合は、後願が国内優先権を主張できない期間を「すでに処分」から「すでに公告または、先願が既に拒絶査定が確定している場合」に改正した。第6号の追加。後願で国内優先権を主張する点で先願の標的が存在しなければ、国内優先権主張の依拠が失われるため、先願が取り下げられたり、または不受理とされた場合、標的が存在しないことから、後願が主張する国内優先権も頼るところを失う…」は、前記した国内優先権の立法の趣旨を参照すれば分かる。行政院が2001年10月24日に改正された専利法第25条の1第1項第4号に提出した改正草案はもともと「先願が取り下げ、放棄、不受理または不査定のもの」という文言だった。立法院の審査会で「先願がいったん取り下げ、放棄または不受理となれば、係る出願はもはや存在しない、当然として優先権を主張することができないことから、改正草案の第1項第4号の関連規定を削除し文言を簡略化した」(原処分書ファイル第42頁を参照)、よって、専利法第30条第1項第5号で定める実用新案国内優先権を主張できない場合のうち「拒絶査定が確定している」は、先願が査定された後、証書手数料及び第1年分の年金を納付していない、かつ前述費用の補充納付が認められない場合を含むはずである。そもそも先願が証書手数料及び年金の納付期間を過ぎても納付しない場合、法によって先願を公告し対外的に効力を発生させることができないことから、専利の拒絶査定が確定している場合に該当し、出願者は係る先願を基礎として優先権を主張することができない。

調べによれば、本件において国内優先権を主張する実用新案が2013年1月4日に出願され、かつ2012年2月29日に出願された先願を国内優先権主張の基礎としているが、先願の実用新案は被告が2012年6月7日に形式審査により査定書にて、実用新案を付与する査定をしている。係る処分書も同月13日に法により送達されている。しかし、原告は係る処分書の送達後3ヶ月以内、すなわち、2012年9月13までに証書手数料及び第1年分の年金を納付しなかった。原告も証書手数料及び第1年分の年金が納付していない事実を否認していない。さらに、「実用新案を出願した場合、出願者が専利の査定書の送達後3ヶ月以内に証書手数料及び第1年分の年金を納付した後に公告される。期間を過ぎてもなお納付がないものは、公告されない。係る専利権はじめから存在しないと見なされる。」は、出願が許可された当時の専利法第101条第1項に明記されている。よって、先願が公告期間を過ぎても公告されない場合は、再び専利を付与することができず、拒絶査定が確定されている場合に該当するものである。

原告は先願の存在を要件としない国際優先権制度を挙げて、国際優先権も同じに扱うべきと主張しているが、そもそも両者の制度設計の目的は全く同一ではない。さらに、出願日は専利制度において専利要件を判断する重要な期日であり、一方、優先権制度はそもそも出願日の例外規定である。例外規定であれば、厳しい観点から解釈すべきで、なおかつ専利制度の立法政策問題に関わるので、法に明文規定がない現状では、強いて引用することができないことをここに説明しておく。

以上をまとめると、先願が期間中に証書手数料及び第1年分の年金を納付していないことから、査定当時の専利法により権利回復することはできず、公告することはできない。実用新案の拒絶査定が確定していることから、専利法第30条第1項第5号の規定により、国際優先権を主張することはできない。

以上を総じて論結すると、本件原告の訴えには理由がないので、知的財産案件審理法第1条、行政訴訟法第98条第1項前段により、主文のとおり判決を下す。

2014年1月16日
知的財産裁判所第二法廷
審判長裁判官 陳忠行
裁判官 曾啓謀
裁判官 熊誦梅

TIPLO ECARD Fireshot Video TIPLO Brochure_Japanese TIPLO News Channel TIPLO TOUR 7th FIoor TIPLO TOUR 15th FIoor