実用新案権者がもともと実用新案の侵害訴訟提起後に勝訴判決を受けて確定したが、その後実用新案権の取消が確定した場合、実用新案権の効力は初めから存在しなかったと見なし、判決の基礎となった行政処分も既に変更されたと認定すべきである。
2016/05/27 | 2015年 前のぺージに戻る    

■ 判決分類:実用新案権

I 実用新案権者がもともと実用新案の侵害訴訟提起後に勝訴判決を受けて確定したが、その後実用新案権の取消が確定した場合、実用新案権の効力は初めから存在しなかったと見なし、判決の基礎となった行政処分も既に変更されたと認定すべきである。

■ ハイライト
所謂「判決の基礎となった行政処分がその後の行政処分により変更された」という再審事由とは、確定判決が行政処分を判決の基礎としていたが、当該行政処分がその後の行政処分により変更された結果、原確定判決の基盤が揺らぐことをいう。それ故、実用新案権者がもともと実用新案権の侵害訴訟提起後に、勝訴の判決を受けて確定した場合、仮にその後実用新案権の取消が確定すれば、その実用新案権の効力も初めから存在しなかったと見なし、判決の基礎となった行政処分が変更されたと認定すべきである。

II 判決内容の要約


最高裁判所民事判決
【裁判番号】104年度台上字第407号
【裁判期日】2015年03月12日
【裁判事由】実用新案権侵害に関する財産権請求紛争等の再審

上告人 彦豪金属工業股份有限公司
被上告人 利奇機械工業股份有限公司

前記当事者間における実用新案権侵害に関する財産権請求紛争等の再審事件につき、上告人が2014年9月1日に知的財産裁判所の再審判決(102年度民専上再字第4号)に対して上告を提起したので、本裁判所は次の通り判決する。

主文
原判決において、上告人が台湾台中地方裁判所による97年度智字第8号、知的財産裁判所による99年度民専上字第16号判決に提起した再審の訴えを棄却し、及び当該訴訟費用の部分を破棄し、知的財産裁判所に差し戻す。
その他の訴えを棄却する。
第三審訴訟費用のうち、その他の上告を棄却する部分は上告人の負担とする。

一 事実要約

被上告人は前に上告人がその第227463号「Automatic positioning and clipping mechanism for disc brake lining of bicycle」実用新案(以下係争実用新案という)を侵害したとして、上告人に訴訟を提起し損害賠償及び侵害の排除を請求した。前記の訴訟手続きにおいて台湾台中地方裁判所(以下台中地裁という)は97年度智字第8号判決をもって、被上告人勝訴とした判決を下した。更に、知的財産裁判所による99年度民専上字第16号判決(以下原第二審判決といい、前記第一審判決と併せて確定判決という)、最高裁判所による100年度台上字第379号決定は上告を棄却し、確定した。しかし、上告人が2000年2月12日に係争実用新案の登録請求の範囲第一項から第三項までに進歩性又は新規性がないので、査定時の専利法第98条の1、第98条第2項等の規定に違反するとして、経済部知的財産局(以下知財局という)に対して請求した無効審判が成立し、同局により係争実用新案も取消された。被上告人がこれを不服として、訴願及び行政訴訟を提起したが、それぞれ棄却され、確定した。よって、上告人が敗訴の判決を受け、確定した原裁判所による101年度民専上再字第1号及び最高裁判所による102年度台上字第522号判決(以下併せて原確定再審判決)の裁判基盤が揺らいでいるので、民事訴訟法第496条第1項第11号により再審の訴えを提起した。


二 両方当事者の請求内容

(一)原告:
1、原確定判決及び原確定再審判決をともに破棄する。
2、前記破棄の部分について、被上告人が前の訴訟手続きにおける第一審の訴え及び仮執行の申立てをともに棄却する。
(二)被告:上告の棄却を請求する。


三 本件の争点

(一)原告による請求の理由:省略。判決理由の説明をご覧頂きたい。
(二)被告による答弁の理由:省略。判決理由の説明をご覧頂きたい。


四 判決理由の要約

「判決の基礎となった民事、刑事、行政訴訟判決及びその他の裁判又は行政処分が、その後の確定裁判又は行政処分によって変更されたとき」、再審の訴えによって確定した終局判決に対して不服を申し立てることができると民事訴訟法第496条第1項第11号に明文で規定されている。前記でいう「判決の基礎となった行政処分が、その後の行政処分により変更された」という再審の事由とは、確定判決が行政処分を判決の基礎とするが、当該行政処分がその後の行政処分により変更された結果、原確定判決の基礎が揺らぐことをいう。調べた結果、実用新案権は登録査定という知財局の行政処分の発効により取得するものであることから、実用新案権者は当該行政処分に基づき他人によるその実用新案権侵害を理由に侵害訴訟を提起することができる。実用新案権の無効審判が審理を経て成立した場合、その実用新案権を取消さなければならない。実用新案の取消しが確定したとき、実用新案権の効力は始めから存在しなかったものと見なすことは、專利法第82条、第120条の規定からも自明である。よって、実用新案権者がもとより、実用新案権の侵害訴訟を提起し、勝訴判決が確定しても、その後もし実用新案権の取消が確定した場合は、その実用新案権の効力は始めから存在しなかったものと見なすので、判決の基礎となった行政処分も既に変更されたと認定すべきである。調べた結果、原確定判決の判決理由を要約すると「被上告人は知財局による審査を経て、係争実用新案権の付与を受け、その存続期間は2001年12月11日から2012年3月9日までであり、2001年12月11日に公告番号468607で査定公告されたほか、2007年8月22日に係争実用新案の証書を取得したので、その実用新案権公示の効果が生じている。


上告人彦豪金属工業股份有限公司(以下彦豪公司という)は自転車パーツの製造販売業者であり、被上告人の同意を得ないで、無断で被上告人による係争実用新案権を用いて、係争IOキャリパー製品を製造、販売したことにより、被上告人による係争実用新案を侵害するに至ったので、専利法第108条において準用する同法第84条第1項、第85条第1項の規定により、被上告人に対して損害賠償の責任を負わなければならない。


上告人陳澤民は彦豪公司の法定代理人であり、彦豪公司は被上告人による係争実用新案権を侵害し、被上告人に損害を与えたので、会社法第23条の規定により、彦豪公司と連帯して損害賠償の責任を負わなければならない。」となっている。被上告人は知財局により付与された実用新案権をもとに侵害訴訟を提起し、原確定判決も上告人の実用新案権侵害を理由に、上告人に損害賠償の責任を負うよう命じたことから、原確定判決は知財局により付与された係争実用新案の行政処分を判決の基礎としたのではなく、その後、係争実用新案の無効審判請求成立、取消とした行政訴訟の確定によっていないので、原確定判決の基盤が揺らいでいることがないと言えるかどうかについて、推論の余地がないわけではない。又、上告人は前の第二審訴訟手続きにおいて係争実用新案が無効であると抗弁したが、原第二審判決において攻撃防御方法の提出期限を超えたことを理由に、棄却されたため、係争実用新案の有効性についても、原確定判決において判断されなかった。係争実用新案の有効性について原確定判決で知的財産案件審理法第16条の規定により自ら判断しなければならないことを理由に、上告人が再審の訴えを提起できないとした原審の認定は、議論されるべきである。原判決のこの部分について妥当性を欠くと指摘し、破棄を請求するとした上告の趣旨に理由がないわけではない。


2015年3月12日
最高裁判所民事第七法廷
審判長裁判官 高孟焄
裁判官 袁靜文
裁判官 鄭雅萍
裁判官 鍾任賜
裁判官 陳光秀