実用新案の請求項に構造的特徴並びに材料又は方法の特徴が記載されているときは、構造的特徴のみを対比し、材料又は方法の技術的特徴そのものは考慮しない
2018/09/25 | 2017年 前のぺージに戻る    
■ 判決分類:専利権

I 実用新案の請求項に構造的特徴並びに材料又は方法の特徴が記載されているときは、構造的特徴のみを対比し、材料又は方法の技術的特徴そのものは考慮しない

■ ハイライト
原告(係争実用新案権者)は2014年10月21日に実用新案登録を出願し、被告(知的財産局)の方式審査を経て実用新案(以下「係争実用新案」という)登録の許可査定が下された。その後参加人(無効審判請求人)は専利法(訳注:特許法、実用新案法、意匠法に相当)第120条の第22条第1項第1号、同条第2項準用規定に違反しており、実用新案の要件を満たさないとして、これに対する無効審判を請求した。被告が審理した結果、係争実用新案は上記規定に違反していると認め、無効審判請求成立により登録を取り消す処分を下した。原告はこれを不服として行政訴願を提起したが、経済部に棄却され、さらに不服として、知的財産裁判所に行政訴訟を提起した。知的財産裁判所が審理した結果、原告の請求はなおも棄却された。

原告は、証拠2、証拠3の組合せは係争実用新案の請求項1が進歩性を有さないことを証明するのには不十分であると主張した。

これに対して、知的財産裁判所は次のように指摘している。

一、実用新案は自然法則を利用した技術思想で、物品の形状、構造又は組合せに関する創作を保護するものであるため、実用新案の請求項に構造的特徴並びに材料又は方法の特徴が記載されているときは、構造的特徴のみを対比し、材料又は方法の技術的特徴そのものを考慮しない。また、材質の変更は実用新案の対象ではなく、材質の変更だけでは、専利法における実用新案の創作対象に対する特定には適合しないため、材料の変更を以って実用新案の進歩性を主張する論拠とすることはできない。

二、証拠2で開示されている「粘着方式(原文:黏合方式)」又は係争実用新案請求項1の「膠着方式(原文:膠合方式)」はいずれも接合の手段であり、たとえ接合の材料である「粘着剤」に違いがあっても、これらの「粘着剤」の接合材料は公知の材料に係る公知の性質に該当し、さらに製品の形状、構造又は装置に変化をもたらすことはなく、該材料の技術的特徴は対比する必要がない。さらに証拠3もすでに「膠着方式」を利用して材料を連接する技術手段を開示している。

三、証拠2、証拠3と係争実用新案の「靴ヒール成形機の冷熱圧縮モールド(原文:鞋後踵定型機之冷熱壓模)」とはいずれも靴製造機械である成形機に使用される成形モールドであり、同じ技術分野に属し、技術分野に関連性があり、かつ係争実用新案の解決しようとする課題を解決でき、その考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者には証拠2と証拠3の技術内容を組み合わせる合理的な動機付けがある。よって証拠2と証拠3の組合せによって係争実用新案請求項1が進歩性を有さないことを証明できる。原告の請求には理由がなく、棄却すべきである。

II 判決内容の要約

知的財産裁判所行政判決
【裁判番号】106年度行專訴字第15号
【裁判期日】2017年8月31日
【裁判事由】実用新案無効審判

原   告 裕銘機械有限公司(New Yu Ming Machinery Co., Ltd.)
被   告 経済部知的財産局
参 加 人 主典興業股份有限公司(True Ten Industrial Co., Ltd.)

上記当事者間における実用新案無効審判事件について、原告は経済部2017年1月19日経訴字第10506314820号訴願決定を不服として行政訴訟を提起し、当裁判所は職権により参加人に対して被告の訴訟に独立して参加するよう命じた。当裁判所は次のとおり判決する。

主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

一 事実の要約
原告は2014年10月21日に「靴ヒール成形機の冷熱圧縮モールド(原文:鞋後踵定型機之冷熱壓模)」を以って被告に実用新案登録を出願し、被告は登録許可を査定した。その後参加人は係争実用新案が専利法第120条の第22条第1項第1号、同上第2項準用規定により実用新案の要件を満たさないとして、これに対する無効審判を請求した。被告は審理した結果、係争実用新案請求項1乃至3が上記規定に違反しているとして「請求項1乃至3は無効審判請求成立により登録を取り消す」との処分を下した。原告はこれを不服として行政訴願を提起したが、経済部から棄却された。原告は訴願決定と原処分を不服として、その後当裁判所に行政訴訟を提起した。

二 両方当事者の請求内容
(一)原告の主張:原処分及び訴願決定をいずれも取り消す。
(二)被告の主張:原告の請求を棄却する。
(三)参加人の主張:原告の請求を棄却する。

三 本件の争点
(一)証拠2と証拠3の組合せは、係争実用新案の請求項1が進歩性を有さないことを証明できるのか。
(二)証拠2と証拠3の組合せは、係争実用新案の請求項2が進歩性を有さないことを証明できるのか。
(三)証拠2と証拠3の組合せは、係争実用新案の請求項3が進歩性を有さないことを証明できるのか。

(一)原告の主張理由:省略。判決理由の説明を参照。
(二)被告の答弁理由:省略。判決理由の説明を参照。

四 判決理由の要約
進步性の判断は、特許(実用新案)全体を見るべきであり、個別又は一部の技術的特徴のみを審査すべきではない。その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者には先行技術を参考として組み合わせる合理的な動機付けがあり、かつ出願時における通常の知識を参酌して、先行技術を組み合わせてその特許(実用新案)を完成させる可能性が明らかにあるならば、その特許(実用新案)は進歩性を有さないと認めるべきである。

(一)証拠2と証拠3の組合せは、係争実用新案の請求項1が進歩性を有さないことを証明できる:
証拠2の該貼合シート(3)は実質的には1つのゴム層(31)と粘着剤及び牛皮層(32)とで構成される「三層」構造体であり、係争実用新案の請求項1で特定される冷熱圧縮モールドエアバッグの「二層」構造体であり、両案件の全体構造は異なるため、証拠2には係争実用新案の請求項1で特定される「受圧層4は該支持層3に重ねて設置され、膠着方式で連接される」という技術的特徴は開示されていない云々、と原告は主張している(当裁判所ファイル16頁を参照)。しかしながら調べたところ、以下の通りであった。

係争実用新案の明細書段落【0012】に記載されている「二層複合構造設計」の一節によると、実質的に係争実用新案の請求項1で特定される構造体の形態には、支持層、ニカワ接着剤及び受圧層の三層構造体が含まれるはずであり、これは証拠2の接合手段と同じである。よって係争実用新案の請求項1で特定される「支持層」と「受圧層」、又は証拠2で開示される「ゴム層」と「牛皮層」について、両者の構造体における層別の技術的特徵には違いがなく、証拠2と係争実用新案請求項1の全体構造は異なる云々という前述の原告による主張は採用できない。

かりに証拠2で開示されている「粘着方式」と係争実用新案請求1の「膠着方式」の技術的特徴が異なっていたと認めたとしてみる。調べてみると、実用新案は自然法則を利用した技術思想が具体的に物品の形状、構造又は組合せに表現された創作を保護するものであるため、実用新案の請求項に構造的特徴並びに材料又は方法の特徴が記載されているときは、構造的特徴のみを対比する。材料又は方法の技術的特徴から製品の形状、構造又は装置で生じる変化がもたらされたときは、材料又は方法の技術的特徴からもたらされた製品の形状、構造又は装置で生じた変化のみを考慮し、材料又は方法の技術的特徴そのものは考慮しない。材料又は方法の技術的特徴から製品の形状、構造又は装置で生じる変化がもたらされないならば、材料又は方法の技術的特徴は対比しない。また、材質の変更は実用新案の対象ではなく、請求項にその他の物品の形状、構造又は装置に係る改良がみられず、材質の変更だけがあるときは、専利法第104条の実用新案の創作対象に対する特定には適合しないため、材料の変更を以って実用新案の進歩性を主張する論拠とすることはできない。このため、材料変更の実用新案性については、ある材料が初めて特定の物品に使用され、既存の物品とは異なる効果の創作を生み出したとき、当然進歩性を有するというものではない。公知の材料に係る公知の性質を単に利用したときは、物品の構造上に新規性があっても進歩性は有さない。逆に、この種の材料変更の実用新案の創作が進歩性を有するには、公知の材料において知られていない又は知悉されていない性質が必要であり、物品に新たな効果を付与することについては、単なる公知の材料の変更ならば進歩性を有さない。よって実用新案請求項の進歩性に関する審査は、請求項に記載されている非構造的特徴(例えば材質、方法)が構造的特徴に変化や影響を与えるか否かによって決まる。非構造的特徴が構造的特徴に変化や影響を与えているならば、先行技術に該非構造的特徴及び全ての構造的特徴が開示されていて、始めて進歩性を有しないと認定できる。調べたところ、証拠2で開示されている「粘着方式」又は係争実用新案請求項1の「膠着方式」はいずれも接合の手段であり、たとえ接合の材料である「粘着剤」に違いがあっても、これらの「粘着剤」の接合材料は公知の材料に係る公知の性質に該当し、製品の形状、構造又は装置に生じる変化をもたらすことはなく、該材料の技術的特徵は対比する必要はない。たとえ原告の主張するように証拠2に係争実用新案請求項1の「膠着方式」が開示されていなかったとしても、専利法第104条の実用新案の創作対象に対する特定に該当せず、実用新案が進歩性を有するとの論拠とすることはできない。さらに証拠3明細書5頁4乃至5行目に「該上層2、該下層3、及び該繊維層4を互いに重ね合わせた後、さらに熱融着して該熱圧縮モールドエアバッグ1を形成する」と記載されている。よって証拠3には「膠着方式」を利用して材料を連接する技術手段が開示されており、また証拠2、証拠3と係争実用新案の「靴ヒール成形機の冷熱圧縮モールド」とはいずれも靴製造機械である成形機に使用される成形モールドであり、同じ技術分野に属し、技術分野に関連性があり、かつ係争実用新案の解決しようとする課題を解決でき、その考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者には、証拠2と証拠3の技術内容を組み合わせる動機付けがある。その考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者には証拠2と証拠3の先行技術を組み合わせる合理的な動機付けがあり、かりに証拠2に係争実用新案請求項1に特定される「受圧層4は該支持層3に重ねて設置され、膠着方式で連接される」という技術的特徴が開示されていなかったとしても、依然として証拠2と証拠3の組合せにより係争実用新案請求項1が進歩性を有さないことを証明できる。原告の前記請求には理由がなく、採用できない。

(二)証拠2と証拠3の組合せは、係争実用新案の請求項2が進歩性を有さないことを証明できる:
証拠2と証拠3の組合せには、係争実用新案請求項2のすべての技術的特徴が開示されており、かつ係争実用新案請求項2は証拠2と証拠3の組合せに対して予期せぬ効果をもたらすことができず、係争実用新案請求項2はその考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者が証拠2と証拠3の組合せに基づいて容易になし得るものである。よって証拠2と証拠3の組合せは、係争実用新案の請求項2が進歩性を有さないことを証明できる。

(三)証拠2と証拠3の組合せは、係争実用新案の請求項3が進歩性を有さないことを証明できる:
証拠2と証拠3の組合せには、係争実用新案請求項3のすべての技術的特徴が開示されており、かつ係争実用新案請求項3は証拠2と証拠3の組合せに対して予期せぬ効果をもたらすことができず、係争実用新案請求項3はその考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者が証拠2と証拠3の組合せに基づいて容易になし得るものである。よって証拠2と証拠3の組合せは、係争実用新案の請求項3が進歩性を有さないことを証明できる。

以上をまとめると、証拠2と証拠3の組合せは、係争実用新案の請求項1乃至3が進歩性を有さないことを証明できる。したがって、被告が係争実用新案請求項1乃至3の許可時専利法第120条の第22条第2項準用規定違反を以って「請求項1乃至3は無効審判請求成立により登録を取り消す」との処分を下したことは、前記法令規定及び説明を参照すると、法に合わないところはなく、訴願決定が(処分を)維持したことにも誤りはない。原告が前述のとおり主張して、訴願決定及び原処分の取消しを請求することには理由がなく、棄却すべきである。

以上の次第で、本件原告の請求には理由がなく、智慧財産案件審理法(知的財産案件審理法)第1条、行政訴訟法第98条第1項前段により、主文のとおり判決する。

2017年8月31日
知的財産裁判所第三法廷
裁判長 林欣蓉
裁判官 魏玉英
裁判官 張銘晃