補正下着「維娜斯」責任者の商標法違反嫌疑 一審で無罪判決

2019-07-25 2018年
■ 判決分類:商標権

I  補正下着「維娜斯」責任者の商標法違反嫌疑  一審で無罪判決
 
■ ハイライト
国内で有名な補正下着メーカー「維娜斯」、「瑪麗蓮」の二社には、ここ数年侵害紛争があり、瑪麗蓮が維娜斯による「瑪麗蓮」という文字でのポータルサイトのキーワード広告の購入を告発した。公平会が2016年に維娜斯をNT$50,000の過料に処し、台北地検も維娜斯の商標法違反を認め、2017年4月に維娜斯の責任者葉○伶を起訴した。台北地裁は審理の後、同人が従業員を扇動したからであるとは証明し難いと認め、葉○伶を無罪とする判決を下した。本件は上訴できる。

公平会は2016年6月に審議を行い、維娜斯が在Google、YAHOO検索エンジンにおいて、競争相手瑪麗蓮のメーカー名称をキーワード広告語句として使用し、「維娜斯瑪麗蓮でご主人に一層愛される」、「あなたをパーフェクトにする瑪麗蓮」等文字を維娜斯の公式サイトのリンクにつけ、ネットユーザーが瑪麗蓮を検索すると維娜斯の公式サイトが出てくるので、公平会は維娜斯の公正取引法違反を認定し、NT$50,000の過料に処した。
公平会による調査では、2015年8月7日から11日まで維娜斯が作成したキーワード広告語句が、競争相手瑪麗蓮メーカーと並列の形式を通して、消費者による維娜斯サイトの訪問機会を増加させ、瑪麗蓮に潜在的消費者の流失というリスクを負わせたことがわかった。本件が北検の取調べに移送された後、検察側も維娜斯が商標法違反だと認め、葉○伶を起訴した。(自由時報2018年8月21日・即時新聞)

II 判決内容の要約

台湾台北地方裁判所刑事判決
【裁判番号】106,智易,23
【判決日期】2018年8月16日
【判決事由】商標法違反

公訴人 台湾台北地方検察署検察官
被告人 葉○伶

上記被告人による商標法違法の件について、検察官により公訴が提起され(105年度偵続字第483号)、本裁判所は以下のとおり判決する。

主文
葉○伶は無罪。

一 判決理由の要約
公訴趣旨は次のとおりである。被告人葉○伶は維娜斯国際有限公司(以下、「維娜斯公司」をいう)の責任者であり、告訴人瑪麗蓮国際実業有限公司とは同じく女性下着、産後の補正下着、ガードル、寝間着販売の著名会社である。「瑪麗蓮」という文字は告訴人の商標、すでに経済部智慧財産局に審決番号00000000、00000000、00000000号で、衣服、ブラジャー、下着、ガードル、寝間着などの商品および広告企画、広告デザイン、ネットワーク広告等のサービス使用に商標指定登録しており、かかる商標有効期間に、告訴人の同意または許諾なく販売目的により、前記と同一または類似商品、サービスに同一または類似する商標を使用できないことを知っていながら、販売を目的に他人の商標を使用し、2015年8月10日までの期日不明時期から2015年12月17日まで「瑪麗蓮」を広告検索フレーズとして、サーチエンジンGoogleとYahoo! Kimoウェブサイトより維娜斯公司の検索フレーズ広告を購入し、これらのウェブサイトにアクセスした不特定のユーザーがウェブサイトに検索フレーズ「瑪麗蓮」を入力すれば、サーチ結果が維娜斯公司のウェブサイトやイベントのウェブページ等のコンテンツに誘導されるようにした。このような形式で維娜斯公司ウェブサイトと商品イベントの露出を増やして消費者のアクセス数を増やすことによって、維娜斯公司のマーケティングアピール目的を達成したため、瑪麗蓮公司の商標権が侵害された。さらに、2015年8月10日に瑪麗蓮公司の従業員がGoogleのサーチエンジンで「維娜斯瑪麗蓮でご主人に一層愛される」等の文言を含む広告リンクをクリックすると、維娜斯公司が営む補正下着製品のウェブページに誘導されることを発見した。さらに同12月17日に、再びGoogle、Yahoo! Kimoサーチエンジンのウェブサイトで検索フレーズ「瑪麗蓮」を入力すると、維娜斯公司のホームページに誘導されることがわかり、係争商標の盗用が判明した。よって、被告人は商標法95条1号の違反に該当する云々。

維娜斯公司は2015年8月10日に掲載された広告文案にある「維娜斯瑪麗蓮でご主人に一層愛される」、「あなたをパーフェクトにする瑪麗蓮」は、そもそも艾得基思公司の従業員曹○諭氏が作成した置き換えキーワード型広告であり、維娜斯公司のデジタルマーケティング部門の従業員が作成したものではない。さらに、本案証人曹○諭氏は当裁判所の審理において、次のように証言した。即ち自分が前記広告文案を設計したときは「維娜斯補正下着でご主人に一層愛される」と、「あなたをパーフェクトにする補正下着」を表現しようとしたが、検索フレーズ機能の挿入によって広告の誤りが生じてしまった。つまり、証人曹○諭氏がバックグラウンドシステムに設定した文案は「維娜斯(キーワード:補正下着)でご主人に一層愛される」と、「あなたをパーフェクトにする(キーワード:補正下着)」、(キーワード)のなかに製品関連の検索フレーズを導入することである。しかし、バックグラウンドシステムでは競合品の文字も設定していたため、ネット上は「維娜斯瑪麗蓮でご主人に一層愛される」、「あなたをパーフェクトにする瑪麗蓮」のような文言不明な広告文案になった。そもそもGoogle Adwordシステムで提案された競合品検索フレーズに「瑪麗蓮」があったため、競合品検索フレーズに「瑪麗蓮」が織り込まれ、証人が「維娜斯(キーワード:補正下着)でご主人に一層愛される」と、「あなたをパーフェクトにする(キーワード:補正下着)」という広告文案を維娜斯公司の担当窓口、すなわち、証人吳○澄氏に提出し審査を受けると共に、副本を証人吳○澄の上司張○中氏にも送付した。維娜斯公司の担当窓口がかかるに広告文案に同意したため、証人曹○諭氏がこれオンラインにした。しかし、維娜斯公司の担当窓口に提供した広告文案にこの部分(キーワード)を提供したかどうかは記憶にないが、自分は今回の広告検索フレーズリストを提供しなかったと思う。その後、維娜斯公司がLINEで広告誤植を通知し、修正するよう要求して来たので、証人曹○諭氏がただち競合品の検索フレーズ文案を取り下げた。一方、維娜斯公司は証人である自分に「瑪麗蓮」を広告文案の検索フレーズにするよう要求しなかったと供述し、自分は業務上被告人と接触したことはなく、被告人と面識もなかったと供述した。さらに、証人曹○諭氏と証人吳○澄氏との電子メールやり取り内容を調べても、かかる広告文案には確かにもとより競合品検索フレーズ挿入の意図はなかった。かかる文案の内容は機能フレーズと製品フレーズがメインであり、前掲電子メールの受信者には確かに被告人の名前は入っていない。従って、前記の証人曹○諭氏の証言には根拠があり、真実として採択する価値がある。よって、維娜斯公司が2015年8月10日の広告文案内容に「瑪麗蓮」文言を使用していたことは、そもそも証人曹○諭氏の手違いによる結果であり、維娜斯公司のデジタルマーケティング部門の従業員がわざと艾得基思公司に「瑪麗蓮」商標を広告文案に使用させ、消費者を誤認させたことには当たらない。従って、被告人が弁明した、維娜斯公司の広告文案に「瑪麗蓮」商標が含まれることに心当たりはなく、従業員にそのような行為を指示した意図もない云々は、確かに根拠がある。

また、証人張○中氏と証人高○禕氏両氏の証言内容を突き合わせた結果が一致している点から、証人張○中氏が確かに外注の広告会社および維娜斯公司の従業員自らがGoogle、Yahoo! Kimoデジタル広告を処理するときに、「瑪麗蓮」検索フレーズを検索フレーズとして、維娜斯公司を広告することを許したことは信用できる。

証人張○中氏は当裁判所の審理において、次のように証言した。被告人が証人張○中氏に「瑪麗蓮」を検索フレーズとするよう指示したことはなく、Google、Yahoo! Kimoでの広告取扱い、デジタルマーケティング部門は艾得基思公司の従業員より提供受けた広告文案と検索フレーズリストを被告人に提出て審査を受けることはしなかった。証人張○中氏が被告人に報告した会議内容は広告効果を主としており、検索フレーズリストなどには言及していない。これらが証人吳○澄氏、証人高○禕氏の証言と一致していることから、維娜斯公司のGoogle、Yahoo! Kimoウェブサイトにおける検索フレーズ広告は、広告文案の内容を置き換え検索フレーズ型広告や、どのような検索フレーズをもって実行するなどの細かい部分に関して、すべてデジタルマーケティング部門の主管張○中氏と、部員吳○澄氏、高○禕氏が処理しており、被告人は関与していない。さらに、証人張○中氏の被告人に対する報告内容は広告効果を主とし、従業員に「瑪麗蓮」を検索フレーズとするよう指示したことはなく、会社が「瑪麗蓮」を検索フレーズとして広告に使用していたことすら知らなかったことは事実であり、採択する価値がある。

以上をまとめると、被告人は維娜斯公司の従業員に「瑪麗蓮」を検索フレーズとして維娜斯公司を広告するようにと指示したことがなく、しかも、維娜斯公司の検索フレーズ広告に「瑪麗蓮」を検索フレーズを含めたことすら知らなかった等の弁明には根拠あり、公訴趣旨の主張にはやや早合点のところがあり、根拠があるとは認め難い。

公訴趣旨は次のとおりである。ウェブサイト広告の運営パターンとして、他人の商標文字または図案を使用した検索フレーズの購入手段は、他人の商標を消費者に直接表示するものではなくても、ネットユーザーが他人の商標を検索するとき検索結果に自らの商品ならびウェブページコンテンツに誘導し、自らの商品に他人の商標をリンクすることによって、消費者に表示する露出が増え、販促目的が達成される。このようなことは商標の使用行為に当たらないとは言い難いことから、本案の被告人が経営する維娜斯公司は商標法95条1号の違反を構成する。
しかしながら、調べたところでは、消費者がGoogle、Yahoo! Kimoのサーチエンジンで検索フレーズを特定して選択した後に、ウェブページの広告スペースに広告主または依頼を受けた専門家が企画した広告文案とリンクページが現れる。よって、検索フレーズ「瑪麗蓮」はそもそも消費者によって入力されたもので、広告主または依頼を受けた専門家は「瑪麗蓮」商標の使用を内部指示したに過ぎず、「瑪麗蓮」商標を外部の広告文案やリンクページには使用していない。消費者が「瑪麗蓮」を入力することによって、検索ページに維娜斯公司の広告が現れるものであり、かかる広告に「瑪麗蓮」商標を表示させる意図は認識できないことから、維娜斯公司の従業員または依頼を受けた艾得基思公司従業員による「瑪麗蓮」の検索フレーズへの連結行為は、そもそも内部による無形の使用であり、外部の有形使用ではなく、消費者がそれを商標として識別するのとはほど遠いことから、商標使用行為に当たらない。

さらに、広告文案とリンクページとも「瑪麗蓮」の文言を使用しておらず、かつ、前記Google、Yahoo! Kimoサーチページのヘッド部の維娜斯公司に関わる広告文案にはすべて「広告」や「関連広告」等の文字が表示される。このように、維娜斯公司の広告文案付近の場所にすでに「広告」と明記している以上、消費者が告訴人のウェブサイトと誤認してアクセスしたとは認め難い。たとえ誤認(購買前の混同)によってアクセスしたとしても、アクセスしたウェブページのコンテンツで販売しようとしている商品には「瑪麗蓮」の文字がを有しない。維娜斯補正下着を明確に表示しているほか、維娜斯公司はウェブページに「瑪麗蓮」商標を使用していないため、消費者がかかるウェブページで販売しようとしている商品について、告訴人の商品であると誤認するような誤認混合の恐れがあるとは認め難い。

確かに、艾得基思公司が「瑪麗蓮」商標を広告文案に使用することによって、消費者が告訴人のウェブページと誤認混同しアクセスしてしまう可能性がある。そして、消費者がリンクをクリックして、ウェブページに誘導された後、かかるウェブページで販売しようとしている商品には「瑪麗蓮」の文言がないので、消費者がウェブページで販売しようとしている商品の出所について、広告文案に「瑪麗蓮」文言が使用されているために誤認混合するかは、これをもって認定することができない。しかし、かかる広告はそもそも艾得基思公司の従業員の過失で誤って挿入されたものであって、被告人や維娜斯公司による指示でないことは当裁判所で前述通りに認定しており、本案被告人無罪の認定に影響がないことをここに説明しておく。

以上をまとめると、刑事訴訟法301条1項により、主文のとおり判決する。
本件は検察官陳思荔が取調べて起訴し、検察官朱家蓉が出廷して公訴を執行した。

2018年8月16日
刑事第23法廷    裁判官  廖棣儀
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