智冠「武林群俠傳」を剽窃、コンピュータゲーム会社に2400万新台湾ドルの賠償命令判決

2020-01-20 2019年
■ 判決分類:著作権

I 智冠「武林群俠傳」を剽窃、コンピュータゲーム会社に2400万新台湾ドルの賠償命令判決

■ ハイライト
コンピュータゲーム大手の智冠科技股份有限公司(Soft-World International Corporation、以下「智冠科技」)は河洛遊戯有限公司(Heluo Games Co., Ltd.、以下「河洛遊戯公司」)が制作したコンピュータゲーム「俠客風雲傳」が智冠科技のゲーム「武林群俠傳」を盗作したとして告訴した。知的財産裁判所は調査した結果、「俠客風雲傳」のキャラクター、会話、武器等がいずれも「武林群俠傳」に酷似していることを発見し、河洛遊戲公司が智冠科技の著作権を侵害していると認定して、判決において河洛遊戲公司及び代表者徐○○に対して2400万新台湾ドルの賠償金支払いを命じ、さらにゲーム「俠客風雲傳」の頒布を禁じるとともに、新聞第1面に判決主文を掲載するよう命じた。本件は上訴できる。

II 判決内容の要約

知的財産裁判所民事判決
裁判番号:106年度民著訴字第48号
裁判期日:2019年3月11日
裁判事由:著作権侵害に係る財産権の紛争

原告 智冠科技股份有限公司(Soft-World International Corporation)
被告 河洛遊戯遊戲有限公司(Heluo Games Co., Ltd.)
兼法定代理人 徐昌隆

上記当事者間における著作権侵害に係る財産権の紛争等事件について、当裁判所は2019年1月21日に口頭弁論を終結し、次のとおり判決する。

主文
 1. 被告河洛遊戲有限公司、徐昌隆は連帯で原告に対し、2400万新台湾ドル、並びにそのうち500万新台湾ドルに対する2017年6月23日から、1900万新台湾ドルに対する2018年6月1日から、いずれも支払い済みまで5部の割合による金員を支払え。
 2. 被告河洛遊戲有限公司、徐昌隆は自ら又は第三者を通じてコンピュータゲーム「俠客風雲傳」又はその原作品、複製物の頒布又は公開送信を継続してはならず、並びに自ら又は第三者を通じて複製、改作、頒布、公開送信等の原告のコンピュータゲーム「武林群俠傳」に係る著作財産権を侵害する行為をしてはならない。
 3. 被告河洛遊戲有限公司、徐昌隆は連帯で費用を負担して、本件の民事最終事実審の判決書における当事者、事由、主文を蘋果日報全国版第1面に5ポイントのフォントを用いて1日掲載せよ。
 4. 原告のその余の請求を棄却する。
 5. 訴訟費用はこれを3分し、その1を被告河洛遊戲有限公司、徐昌隆が連帯で負担し、その余を原告が負担する。
 6. 本判決第1項については原告が800万新台湾ドルを以って担保を立てたとき、仮執行できる。ただし被告河洛遊戯有限公司、徐昌隆が2400万新台湾ドルを以って原告に担保を立てたときは、仮執行を免脱できる。
 7. 原告のその余の仮執行宣言申立てを却下する。

一 両方当事者の請求内容
(一)原告の請求:
 1. 被告公司、徐昌隆は原告に対して64,061,281新台湾ドル及び2016年1月18日から支払い済みまで年5部の割合による金員を支払え。
 2. 被告公司、徐昌隆は連帯で費用を負担して、本件の民事最終事実審の判決書における当事者、事由、主文及び事実の要約を蘋果日報全国版第1面に5ポイントのフォントを用いて1日掲載せよ。
 3. 被告公司、徐昌隆は自ら又は第三者を通じてコンピュータゲーム「俠客風雲傳」又はその原作品、複製物の頒布又は公開送信を継続してはならず、並びに被告公司、徐昌隆が自ら又は第三者を通じて複製、改作、頒布、公開送信等の利用を行い原告のコンピュータゲーム「武林群俠傳」に係る著作財産権を侵害する行為をしてはならない。
 4. 原告は担保を立てるので、仮執行宣言を申し立てる。
 5. 訴訟費用は被告の負担とする。
(二)被告の請求:
 1. 原告の請求を棄却する。
 2. 訴訟費用は原告の負担とする。
 3. 不利な判決を受けたとき、被告は担保を立てるので、仮執行免脱宣言を申し立てる。

二 本件の争点
(一)原告は提訴根拠の著作物(以下、根拠著作物)の著作者又は著作財産権者であるのか。
(二)係争著作物は根拠著作物における言語の著作物、美術の著作物を侵害しているか。
(三)係争著作物が根拠著作物を侵害しているならば、原告はそれをいつ知ったのか。原告の損害賠償請求は時効が成立しているのか。
(四)係争著作物が根拠著作物を侵害しているならば、被告公司には権利侵害の故意又は過失があるのか。被告公司が賠償すべき金額はいくらか。
(五)被告公司が損害賠償責任を負うべきならば、原告が被告徐昌隆に対して公司法(会社法)第23条第2項規定により連帯賠償責任を負うよう請求することに理由はあるのか。 

三 理由
(一)原告は根拠著作物の著作財産権者であるのか:
 1. 調べたところ、原告がリリースした根拠著作物の外包装箱に「©2001智冠科技股份有限公司」と表示されているほか、その操作マニュアル48ページにある著作権表示(コピーライト)には「本ゲームソフト及び説明書は著作権法で保護されており、図と文章は当社の許可を得ずにいかなる方法を以っても一部又は全部をコピー、転載又は改作してはならない。…©2001 智冠科技股份有限公司」と記載されており、「©」は通常、英語「Copyright」の略称であり、著作財産権の帰属を宣言するのに用いられ、原告は根拠著作物において著作財産権を表示する通常の方法で自らが著作財産権者であることを宣言しており、著作権法第13条規定により、原告が根拠著作物の著作財産権者であると推定する。
 2. 証人戊○○は「私は1988年から今までずっと原告公司に在職しており、業務内容は絶えず変わっている。1990年代に私は原告公司の総経理秘書を務め、被告徐昌隆と知り合った。原告はゲームソフトを開発する多数のスタジオを設立し、河洛工作室、謎像視覺工作室等のように各スタジオは自分で命名していた。私は開発チームと連絡を取り合い、被告徐昌隆はある開発チームの主要メンバーで、原告公司におけるベテラン従業員であり、中華職棒1、2、金庸群俠傳のようにヒットしたゲームをいくつか担当していた。根拠著作物は被告徐昌隆が原告公司のスタジオに所属していた時に制作したゲームである」等と証言している。調べたところ、原告は根拠著作物に係る操作マニュアルの最終頁に「軟體世界智冠科技股份有限公司…智冠・河洛工作室」と記載しており、また前記操作マニュアルに組み入れられているゲーム「仙狐前傳水火金雷」を宣伝する頁に「軟體世界智冠科技股份有限公司…智冠科技・北斗星工作室」と記載されており、さらに同じ操作マニュアルにあるゲーム「尋秦記」を宣伝する頁には「軟體世界智冠科技股份有限公司…智冠科技・全彩狼工作室」と記載されており、Wikipediaの資料には「河洛工作室は、…1993年に設立され、原名は台灣智冠科技遊戲開發組で…」と記載され、並びに被告等が提出した「電玩双週刊」(訳注:智冠科技が出版するゲーム雑誌)には「河洛工作室は1993年に設立され、前身は台灣智冠科技遊戲開發組であり、台湾のコンピュータゲームが一世を風靡した時代に誕生し…」と記載されており、いずれも前出証人戊○○が供述している原告が以前多くのゲームソフトのスタジオを設立したこと、被告徐昌隆がかつて原告に所属するスタジオのメンバーであったことと合致しており、証人戊○○の供述は信用できる。このほかに、被告徐昌隆が1991年5月4日から2005年6月1日まで原告公司で保険に加入していた資料がファイルされているので参照でき、被告徐昌隆が1991年5月4日から2005年6月1日までの間に原告に所属するスタジオのメンバー、つまり原告の従業員であったと認めることができる。そして根拠著作物は2001年(即ち民国90年)にリリースされ、根拠著作物の外箱前面のコピー及び操作マニュアルがファイルされており調べることができる。当時被告徐昌隆はまだ原告の従業員であり、著作権法第11条第1項、第2項規定により、被用者が職務上完成した著作物は、その著作財産権は使用者に帰属し、原告が自身は根拠著作物の著作財産権者だと主張することには理由がある。
    また被告徐昌隆が原告と1996年1月23日に結んだコンピュータゲーム委託制作契約書に「甲(即ち○○○、○○○、徐昌隆、○○○)は招集者の身分を以ってゲーム制作スタッフを招集し、共同で乙(即ち原告)に対して予算方式でコンピュータゲームソフトを制作する。双方の権益を守るため、双方は以下の約定により実行する。第一条 甲は招集者の身分で関連スタッフを集めて委託制作スタジオを設立し、乙に対する予算方式を以ってコンピュータゲームソフトを制作し、かつ本契約の関連規定を履行することに異議はない。第二条 甲が提出するコンピュータゲーム制作プランについて、乙が同意した後、乙は本契約の約定方式により予算を甲のスタジオに提供して、ゲームがリリースされるまでスタジオすべての費用を支払い、…第九条 乙は甲に仕事をする空間を提供し、水道・電気・新聞書籍等の関連費用を負担し、…第十条 乙の提供する予算額には甲の制作プランに必要な音楽ライセンス料、効果音と台詞の録音費用、脚本購入費、著作版権購入費等の関連費用が含まれている。…第十二条 甲が完成したコンピュータゲームの版権は無条件で乙に譲渡し、乙は実際の必要に応じて登記したり、必要なその他の処理を行ったりしてもよい。…第十五条 甲は制作したコンピュータゲームを担保として、そのプログラム、美術、映像及び音声の著作物は自ら創作し、決して違法に摸倣してはならない。第三者の許諾を得て使用する場合は、関連の証明文書を提示しなければならない。もし違法の事情が発生したならば、甲は完全に法律上の責任を負わなければならない。…第十八条 甲が制作したコンピュータゲームは、乙が実際の発行量に基づいて版権使用料を支払うことに同意する。その計算式は(1)台湾地区での定価*(「×」の符号であるはず)実際の販売*15% …」と記載されていることから、前記原告と被告徐昌隆等とが結んだ前記委託制作契約書により、原告が被告徐昌隆等が設立したスタジオの場所、水道電気に必要な費用及びスタッフの給与を支払うとともに、ゲームがリリースされた後は実際の発行量に応じて一定の比率の版権使用料を被告徐昌隆等に支払い、被告徐昌隆等はそのスタジオが完成したコンピュータゲームの著作財産権を無条件で原告に譲渡することに同意することが約定されている。さらに証人○○○(元の氏名○○○)は、「私は二十数歳の時に原告のところに勤務し、ずっとゲームを開発していた。そこで一時期働いてからスタジオのメンバーとなるために原告公司を離れ、その後東方演算公司(訳注:被告徐昌隆が2000年に設立した会社)で働いた。原告公司のビルは南港にあり、我々の勤務地は台北市八徳路であり、これは原告の謝さん(女性)が借りてくれたもので、誰が家賃を払っていたのかは分からない。原告はスタジオに予算を出し、予算を使い終わっても続けて作業を完成しなければならなかった。当時原告は我々の起業を助けたいといっていた。スタジオ設立で予算コストをコントロールするとし、我々が一つのゲームを開発したいなら、原告は1万個分の版権使用料を支払うが、一括払いではなく、毎月支払うと表明した。スタッフは我々が面接を行い、原告に伝え、原告が直接スタジオスタッフの給与を支払った。原告証拠42のコンピュータゲーム委託制作契約書にある『○○○』は私の署名である。我々にとっては、契約に基づき我々がどれだけのゲームを完成したいかで、原告がどれだけの金銭と版権使用料を支払うかが決まる。原告は我々にゲームの著作財産権を原告に譲渡するよう要求した。ゲームは多くの人で完成され、契約に署名した我々数名が代表となっているため、原告は我々と連絡し、私が担当するゲームについては、どのように処理するか、どのように人を集めるかを私が決め、私がチームを代表して、ソースコード、美術画像等を原告に渡した。契約した後、2001年までに私は天龍八部、風雲、天子傳奇のゲーム3作を制作し、ゲーム制作が完了した後にマスターディスクを原告に渡して販売した。私の記憶では、ゲームをリリースすることになると、誰かがソースコードや美術画像等の資料を取りに来て、私に著作権移転の書類にサインするよう要求した。原告の販売額が我々の受け取った予算を超えたなら、さらに金銭が我々に支払われた」等と供述しており、証人○○○の供述は、前記委託制作契約書が約定するところの、被告徐昌隆等はそれらのスタジオで完成したコンピュータゲームの著作権を原告に譲渡するよう同意するが、原告は被告徐昌隆等が設立したスタジオの場所、水道電気に関連費用及びスタッフ給与を支払う必要があるとともに、実際の発行量に応じて一定の比率の版権使用料を支払って対価とするに同意するという約定内容と、互いに合致している。また、原告が提出した被告徐昌隆の河洛工作室スタッフのために加入した労働保険や小遣いに関する資料があり、ファイルされており、参照できる。原告と被告徐昌隆等が結んだ委託制作契約書、証人○○○の供述、労働保険資料及び原告の支払い資料等の関連証拠を総合的にみると、原告の出資と被告徐昌隆等の根拠著作物の完成が認められ、たとえ被告徐昌隆が原告との雇用関係を否認したとしても、双方が定めた委託制作契約書で、原告が出資して被告徐昌隆を招聘してコンピュータゲームの著作物を完成させたこと、そして著作財産権は原告に帰属することが約定されており、著作権法第12条規定により、原告は契約の約定に基づいて根拠著作物の著作財産権を享有する。
    被告等はまた、原告と被告徐昌隆は根拠著作物のコンピュータプログラム、美術画像を受け渡ししておらず、原告は根拠著作物の著作財産権を取得していない云々と主張している。但し前述委託制作契約書によると、すでに被告徐昌隆が完成したコンピュータゲームの著作財産権を原告に譲渡すると約定され、原告が著作財産権を取得するために書面への署名又は実際の受け渡しがないと発効しないとは約定されておらず、原告は雇用関係に基づくのか契約約定に基づくのかを問わず、いずれも根拠著作物の著作財産権を取得することは、前述したとおりである。また根拠著作物は2001年にリリースされ、通常の方法で原告が著作財産権者であることが表示されており、根拠著作物の外箱前面のコピーと操作マニュアルがファイルされており、調べることができ、著作権法第13条第2項規定により原告が著作財産権者であることが推定され、被告等が原告は根拠著作物の著作財産権を受け渡す関連の書面又は資料がない云々と争っているが、なお採用できない。
    被告等がさらに東方演算公司も著作財産権者であり、原告はオリジナル創作資料及び著作権契約を提出していない云々と主張した。但し調べたところ、根拠著作物の包装外箱、操作マニュアル等の箇所にはいずれも東方演算公司が著作財産権者であるとの表示はなく、さらに根拠著作物の著作財産権が東方演算公司に属することを認めるに十分ないかなる証拠もなく、被告の主張は採用するに足りない。また調べたところ、著作権法第13条第2項規定により原告が根拠著作物の著作財産権者であると推定でき、民事訴訟法第281条規定により、原告は自身が著作財産権者であることを証明する必要はなく、被告等は原告がオリジナル創作資料及び著作権契約を提出しておらず、それが著作財産権者であると証明できない云々と主張しているが、採用できない。

(二)係争著作物は根拠著作物である言語の著作物、美術の著作物を侵害しているか。
 1. 著作権法で保護される著作物が文学、科学、芸術若しくはその他の学術の範囲に属する創作物であることは、著作権法第3条第1項第1号に規定されている。著作権法が保護するところの著作物とは、著作者が創作する精神上の作品であって、著作者の思想又は感情の表現であるほか、独創性を有する必要がある。いわゆる独創性とは、原初性と創作性を含む。原初性は著作者がオリジナルに独立して完成した創作を指し、他人の作品を単純に摸倣、盗作又は剽窃するものではない。創作性はかつて古人が至ったことのない程度に達する必要はなく、社会通念によって前記著作物がすでに存在する作品と区別できる変化があり、著作者の個性又は独自性を表現できる程度で十分である。次に法律により取得する著作権は、その保護が当該著作物の表現にとどまり、それによって表現しようとする思想、手続き、製造過程、システム、操作方法、概念、原理、発見には及ばないと、著作権法第10条の1に規定されている。著作権の保護対象は表現に止まり、思想には及ばない。創作の内容にはすでに外面に形成され、一定の外面的表現形式を備えなければならず、それによって始めて保護要件を満たす(最高裁判所106年度台上字第1726号判決要旨を参照)。調べたところ、次のとおりである。
 (1)根拠著作物全体のあらすじは以下のとおり。【金庸群俠傳】(Heroes of Jin Yong)の主役である小蝦米が姿を消した百年後、主役の東方未明が洛陽城で小蝦米の彫像を仰ぎ見ていると、縁あって逍遙谷の兄弟子である谷月軒と出会った。東方未明は師叔(師匠の弟弟子)である玄冥子に毒をもられたため、逍遙谷に連れて行かれ、そして逍遙谷に加わった。弟子になって修行を積んだ後、少年英雄大会、武当派継承争い、荊棘の裏切り…等の事件を経て複雑な武林江湖(武術界)の世界に足を踏み入れた。天龍教(邪教)が中原(武林の覇権を争う場)を侵犯した時には、各門派に武林大会を招集して共に邪教に対抗しようと呼びかけた。その登場人物はキャラクターの個性、所属する組織、備えている能力と武功(武術の技)及びキャラクター間の相関関係に応じて具体的かつ明確に描かれている。またストーリーの展開にともない異なる場面背景を作り上げている。使用される各種の武術又は武器道具及びその他の要素はストーリー、キャラクターの特性に応じて組みあわせて過程のプロットに使われている。根拠著作物のあらすじ、特色あるキャラクター、場面背景、会話、武術及び武器道具等に関連する文字で描写されている構成全体に物語の連続性があり、著作物の思想、感情を完全に表現するに足り、その文字の説明部分は言語の著作物であると認めることができる。
 (2)根拠著作物のキャラクターは、それが作り上げる特性によって異なる造形画がある(添付資料のとおり)。それはコンピュータプログラムによって描かれているが、そのグラフィックは創作者の知恵とインスピレーションという精神作用を通じて様々なキャラクターの容貌の特徴が表現されたものである。例えば「東方未明」は髪が結い上げられ、額に髪がかかっており、袖の無い衣装を着て、手首には赤いバンドを巻いているのに対して、「史燕」の顔には錐形の入れ墨があり、段カットの短髪で、額の髪は片方の目を覆っている等。さらにキャラクターと事件場面が描かれた画面は物語のキャラクターとプロットを具体化して表現するもので、思想又は感情という精神作用を通じて示されなければならず、根拠著作物のキャラクター造形、物語のプロットの風景を描いたグラフィックは美術の著作物だといえる。さらに、根拠著作物における武器や道具、例えば、刀、剣、棍、杖、鏢(手裏剣)、琴、盔甲(鎧)、書、冠飾(頭部の装飾品)、彫像等のグラフィック(添付資料のとおり)は、客観的に武器や道具の既存の基本的特徴の外観を有し、もしその基本的特徴の外観のファクターから外れていたならば、通念の刀、剣、棍、杖、鏢、琴、盔甲、書、冠飾等と照らし合わせることは難しく、刀、剣、棍、杖、鏢、琴、盔甲、書、冠飾をデザインのコンセプトとする場合は、刀、剣、棍、杖、鏢、琴、盔甲、書、冠飾を表現できる構想は非常に限られ、その刀、剣、棍、杖、鏢、琴、盔甲、書、冠飾の外観という基本ファクターは原告が独占するべきではない。ただし根拠著作物が前記の武器と道具の基本的特徴以外に、さらに多くの細部の造形、色のデザイン、光と影の表現、背景の処理と視覚的角度の変化について、その独特な個性が突出しており、その基本ファクターを超える創作部分についてはなお思想という精神作用の表現があり、著作権法が採用する最低限の創意(Minimal requirement of creativity)原則により、前述部分のグラフィックは独創性を有し保護を受けるべきである。
 (3)根拠著作物はバーチャルな武林江湖の世界を創作したものであり、虚構の様々なキャラクターに応じて、さらにその個性やストーリーの必要に応じて、キャラクターの命名と造形デザインを行い、その主役はストリー構成により用意されたメインタスクとサブタスク(事件)、事件の順序、キャラクターと組織の関係によって、デザインされた多くのタスク、場面背景において、それぞれ異なるバーチャルな登場人物と会話し、オリジナルの場面名称(例えば逍遙谷、野拳門)、武術の技(例えば逍遙拳法、逍遙迷蹤腿)、武器と防具(例えば承影剣、青犢刀、離火玄冰鏢)、バーチャルな成長システムを用い、音楽等を組み合わせて表現している。これについてはサイトの資料、根拠著作物の操作マニュアルがファイルされており、調べることができる。根拠著作物は、映像(視聴覚)、音楽、美術、言語、プログラム等多くの著作物が組み合わされて表現された多元的著作物である。上で述べた美術の著作物と言語の著作物は根拠著作物の多元的著作物に組み込まれているが、それらの美術の著作物と言語の著作物が多元的著作物から分離されて、その言語の表現又は各グラフィックで単独に著作物とすることができ、いずれも独創性を有する。前述のとおり、それらの言語の著作物と美術の著作物はいずれも関連する独立の著作物により保護できる。
 (4)被告等は、根拠著作物のストーリーの叙述は武侠小説又はゲームにおける常套のパターンであり、短い会話とキャラクターの名称だけから作者の表現しようとする意思を知りえず、同じ地理的背景の名称、武術の技、武器と防具の名称は、中華武侠文化の創作で使用を回避できない事件、役柄、レイアウトであり、「アイデアと表現の融合」の範囲に入り、いずれも著作権法が保護する対象ではない云々と主張している。ただし、いわゆる「アイデアと表現の融合論」とは、アイデアとコンセプトに一種類のみ又は限られた表現方法しかないとき、その他の著作者に他の種類の方法がないため、又はごく限られた方法でしかそのアイデアを表現できないため、著作権法がそれらの限られた表現方法の使用を制限すると、アイデアは原著作者によって独占されてしまうので、その限られた表現はすなわちアイデアとコンセプトの融合によって著作権保護の対象ではない。ただし、創作者が同じ観念に由来して、各々異なる表現方法を用いて、その表現方法が唯一又はごく少数でなく、限られた表現という状況がないならば、他人の著作物を複製又は改作しないという状況において、それぞれ独創性と著作権を享受できる(最高裁判所103年度台上字第1544号民事判決趣旨を参照)。調べたところ、武侠江湖を物語の背景とするゲームは、バーチャルな武侠の世界で、物語のキャラクター、プロット、場面背景、ゲームの方法に固定的な制限はなく、創作者の思想又は感情という精神作用に応じて思いのまま流転してもよく、係争著作物は「武侠」というコンセプトをゲームの背景とし、物語のキャラクター、事件、場面背景、武術、武器・道具等の全体には無限の表現方法がある。一部の名称と現実又は慣用の事物が同じであるが、創作者が組み立てる物語のプロット、事件の変化、キャラクター間の関わり合い、変化する名前に応じて無限の創意の表現があり、根拠著作物によって表現方法が制限を受けることはなく、アイデアと表現の融合論の適用はなく、被告等の前述主張を採用できない。
 2. 裁判所が著作権侵害の事実の有無を認定するときは、一切の関連する情状を斟酌して、著作権侵害の認定の二つの要件、即ちいわゆる「接触(アクセス)」と「実質的な類似」を慎重に調べるべきである。その中の「実質的な類似」は量の類似のみならず、質の類似も示すものである。図形、写真、美術、映像(視聴覚)等の著作物のような芸術性又は美感性を有する著作物が盗作されたかを判断するときに、言語の著作物と同じ分析・分解(dissection)の手法を用いて仔細に対比するならば、往々にして困難があるか、又はその公平性を失う可能性がある。よって質を考慮するときは、とくに著作物間の「全体の観念と感覚(total concept and feel)」に留意すべきである(最高裁判所97年度台上字第6499号刑事判決、94年度台上字第6398号刑事判決、103年度台上字第1544号民事判決を参照)。いわゆる「全体の観念と感覚」とは、両著作物を分解する方法で、それぞれの詳細部分を抜き出して対比するものではなく、両著作物間の類否は、一般的に理性を有する聴衆・観衆の反応又は印象を判断基準とすべきである。調べたところ、次のとおりである。
 (1)被告徐昌隆は根拠著作物の開発に参与したことがあり、かつ根拠著作物が公開販売されていることはすでに述べたとおりであり、被告等は根拠著作物を閲読又は聴聞する合理的な機会があり、すでに十分に「接触(アクセス)」を構成している。
 (2)係争著作物と根拠著作物とはいずれも原告の別のゲーム著作物である「金庸群俠傳」の主役、小蝦米が消えて100年後に起きた事を続けて叙述したものである。また、原告が提出した係争著作物と根拠著作物との対比資料について、被告等はいずれも係争著作物には添付資料に示される画面があることを争っていない。さらに調べたところ両者はキャラクターの性格並びにキャラクターと組織の関係、メインタスクの逍遙谷拜師修煉(逍遙谷での修行)、路救神醫(名医を救助)、史燕盜畫(史燕による絵泥棒)、討伐黑風寨(黒風寨の討伐)、少年英雄會(少年英雄大会)、武當掌門事變(武当派継承争い)、荊棘叛師(荊棘の裏切り)、武林大會(武林大会)、修煉養成教程(修行の教程)、江天雄壽宴(江天雄の長寿を祝う宴)、盂蘭盆法會之戦(盂蘭盆法会の戦い)、魔障初現(魔障の出現)、青城掌門之爭(青城派継承争い)、佛劍魔刀(仏剣魔刀)、邀請群俠(武侠たちを招く)、決戰天龍教(天龍教との決戦)等に事件におけるストーリー、順番のアレンジ、場面の名称、場面とキャラクターの連動と関わり合い、登場人物の会話の内容、武術の技の名称、武器と防具の名称等の主要な部分がいずれも酷似している。被告等は、係争著作物の会話文字数123万字、メインタスク191種、サブタスク112種、結末61種、キャラクター1028人に上るのに対して、根拠著作物は36万字、メインタスク73種、サブタスク53種、結末5種、キャラクター179人しかなく、量的に係争著作物は根拠著作物を大きく上回っているおり、原告が主張する台詞は重要な部分ではないため、両者は実質的な類似を構成していない云々と主張した。しかしながら調べたところ、被告等は根拠著作物を宣伝に利用して、係争著作物は根拠著作物のニューバージョンであると述べている。係争著作物のサイトのスクリーンショット、宣伝ビデオのスクリーンショット、被告公司のファンサイトのスクリーンショットがある。またニュースでは「鳳凰遊戲と台湾の開発チームである河洛工作室が、開発中の新作『河洛之新武林群俠傳』を正式に『俠客風雲傳』に改名すると発表した。『河洛之新武林群俠傳』は鳳凰遊戲と河洛工作室がコンピュータゲームとして共同開発したもので、2001年にリリースした『武林群俠傳』の続編である。新作のストーリーは『武林群俠傳』の続きであり、…ゲームの画面、美術ともに改良され、キャラクター設定とゲームシステムがさらに増えており、…」と報道されている。また、係争著作物の公式「微博(Weibo)」では「…河洛は『俠客風雲傳』の中の武林があのよく知られた武林であることを約束し、…」と記載されており、係争著作物が根拠著作物のゲーマーからの知名度や好感度を利用したものであり、新たなキャラクター、場面、会話を加えて創作しており、係争著作物のストーリー、キャラクター、会話の数量は根拠著作物より多いものの、根拠著作物に係る前述のストーリーのフレーム、キャラクターの性格並びにキャラクターと組織の関係、メインタスクの事件におけるストーリー構成、順番のアレンジ、場面とキャラクターの相関関係、キャラクターの会話の内容、武術の技の名称、場面の名称、武器と防具の名称等の重要な核心部分を利用し、係争著作物における言語部分の創作の重点としており、かつ根拠著作物を利用した言語部分の分量(添付資料のとおり)はすでに根拠著作物に対する連結をもたらしており、加えて係争著作物と根拠著作物はいずれもゲームという商品で、同じく商業目的で使用され、係争著作物による根拠著作物の前述言語部分の利用によって、原告の根拠著作物に対する努力が被告等に切り取られ、利益獲得のために使用されており、利用された根拠著作物における言語の著作物の質と量が実質的な類似の程度に十分に達していることから、係争著作物は根拠著作物における言語の著作物を侵害している。
 (3)係争著作物は「キャラクター造形」、「武器と道具」及び彫像等の美術の著作物の部分についても根拠著作物と高度に類似している。原告が提出した資料で対比できる。例えば主役の「東方未明」はいずれも青くて端が白い袖無しの衣装を着て、手首には赤いバンドを巻いて、左手の拳を握り締め、茶色の頭髪がなびいている造形であり、また「賭」は頭髪が逆立ち、イヤリングを着け、舌を出し、舌先にはサイコロが載っている。さらに「鷹形金冠飾」という道具は、いずれも帽子の上部に頭と首が青緑で、金色の翼を広げた飛鳥が付いており、あご紐がうねっているグラフィックである。よって両者は全体の構図、配色、髪型、顔の特徴、姿勢、道具のデザインの特徴等もほぼ同じであり、似ていてほぼ同じである変更のみで、その全体の外観と感覚は同じであり、実質的な類似を構成している。係争著作物と根拠著作物におけるストーリー背景のグラフィックには明らかに異なる表現方法があり、外観と感覚も異なる。原告が提出した図がファイルされており調べることができる。この部分の美術の著作物は類似を構成しないことを併せて述べておく。
 (4)以上をまとめると、被告等は係争著作物と接触があり、かつ係争著作物と根拠著作物との間には言語と美術の著作物の部分で実質的な類似があり、係争著作物の改作権と複製権を侵害している。

(三)被告公司と被告徐昌隆は原告に対して連帯で賠償責任を負うべきであり、原告の損害賠償請求権はまだ時効が成立していない。
 1. 被告徐昌隆、被告公司が制作、販売した係争著作物は根拠著作物に係る言語の著作物と美術の著作物の部分を盗作し、前述したように根拠著作物の改作権と複製権を侵害しており、原告に損害をもたらした。しかも被告徐昌隆は根拠著作物について原告とコンピュータゲーム委託制作契約書を結んだことがあり、根拠著作物の著作財産権が原告に帰属することを知悉しており、同意又は許諾を得ずにそれが経営する被告公司で無断で根拠著作物を使用したことは前述したとおりであり、権利侵害の故意はあったと認めるべきである。著作権法第88条第1項の規定により、被告公司は原告に対して損害賠償責任を負うべきである。
 2. 調べたところ、被告等が提出した2014年12月11日に原告従業員とやりとりしたメールによると、原告従業員が被告徐昌隆から問い合わされた係争著作物の仕切り価格と関連費用の負担に係る質問と、被告徐昌隆からさらに問い合わされた独占販売と支払い時期等の質問とに回答しているだけで、双方が係争著作物に触れている具体的内容は見られない。また、2015年1月に発売された「電玩雙週刊」第156期に掲載された被告徐昌隆のインタビュー記事には、開発中のゲームのヘックス戦闘画面しかなく、原告に係争著作物の具体的内容を分からせることはできない。さらに証人戊○○は「被告徐昌隆は始まったばかりの頃、従来の音楽を用いることを希望した。その後中国大陸のゲーマーは根拠著作物の音楽がとても好きなので、根拠著作物のスタイルに似た音楽を作りたいと言い出した。制作過程においてはそのニーズに合った感覚やスタイルで制作し、音楽制作が完了した後に、音楽を被告公司に渡して自分で組み込んでもらった。クライアントがリリースする前のゲームはいずれも彼らの機密であるため、我々はゲームの画面を見る必要も、見ることもなかった。我々は通常クライアントと契約してから音楽を制作するが、時にクライアントが急いでいるときは、先ず口頭で条件を話し合い、先に音楽を制作し、契約をさらにやり取りして修正したり、同時進行したりすることもある」と証言している。さらに係争著作物の音楽部分を斟酌すると、双方はそれぞれ2015年7月9日、21日に旧作、新作音楽について使用許諾契約書を締結し、原告が完成した新作の音楽を被告等に渡して係争著作物に組み込まれる前に、原告が係争著作物の権利侵害を判断するために係争著作物の完成版を取得したことを依然として確認できない。よって、上記資料は原告が2014年12月1日から係争著作物が根拠著作物の著作財産権を侵害していたと認定するには不十分であり、被告等の行為は時効であるとの抗弁は採用するには不十分である。

(四)損害賠償額に関する計算:
 1. 被告公司が故意に改作複製の方法で原告の根拠著作物の著作財産権を侵害したことは上に述べたとおりであり、原告が前出著作権法第88条第1項、第2項第2号により被告公司に賠償損害を請求することには法的根拠がある。
 2. 原告と被告公司が締結した委託販売契約書によると、原告はそれぞれ台湾と中国大陸地区において被告公司のために付表一、二に示される量の係争著作物を販売したとしている。ただし、原告は係争著作物に根拠著作物の著作財産権侵害のおそれがあることを発見した時点で、2016年1月18日付けで成全聯合法律事務所を通じて被告公司に権利侵害行為を停止するとともに賠償について話し合うよう書簡で通知しており、弁護士の書簡はファイルされ調べることができる。原告は前記書簡で被告公司に権利侵害停止を請求したが、係争著作物の販売を停止せず、被告公司のために台湾と中国大陸地区でそれぞれ付表一№2、3及び付表二№3、4で示される数量の係争著作物を販売し続けた。原告が該部分について、被告公司が故意に権利を侵害したとして損害賠償を請求することには根拠がない。本件原告が被告公司に対して権利侵害行為により得た利益を請求できるのは、被告公司が弁護士書簡を発送する前の付表一№1、付表二№1、2の販売で得られた利益に限る。
 3. 原告と被告公司との前記委託販売契約書第3条第1号に係争著作物1セットの定価は880新台湾ドルであること、同条第2、3号に原告が一般の店舗、コンビニで係争著作物を販売する仕切り価格は表示された定価の60%とすることが約定されており、即ち原告は被告公司のために販売した係争著作物1セットあたり定価の60%を被告公司に支払わなければならず、即ち被告公司は係争著作物が1セット販売されるたびに原告から528新台湾ドルを受け取ることができる。原告は中国大陸地区での販売についても前出の定価の一定の比率に応じて被告公司に支払っている。調べたところ、付表一№1の係争著作物の販売額は14,651,120新台湾ドルであり、原告は前出委託販売契約書により被告公司に60%の仕切り価格である8,790,672新台湾ドルを支払わねばならない。付表二№1、2の係争著作物の販売額は16,984,050人民元と1,199,350人民元、合計18,183,400人民元であり、原告による起訴日における台湾銀行のスポット・レートは1人民元あたり4.41で換算すると、80,188,794新台湾ドルとなる。原告が前出の委託販売契約書により被告公司に60%の仕切り価格、約48,113,276新台湾ドル(四捨五入)を支払わなければならない。被告公司が付表一№1、付表二№1、2に示される販売所得は56,903,948新台湾ドルとなる。
 4. 被告公司は、コンピュータゲームは多くの人件費を投入する必要があり、2014年と2015年における被告公司の給与を控除するよう主張し、しかも係争著作物には言語の著作物、美術の著作物、音楽の著作物、プログラムの著作物等を含んでおり、原告はその中の言語の著作物と美術の著作物についてのみ著作権が侵害されていると主張しており、係争著作物全体の販売価格を以って損害賠償額を算出する基礎とすべきではない云々と、抗弁している。調べたところ、以下のとおりである。
 (1)コンピュータゲームには大量の人力を投入して創作する必要があり、給与は必要経費であり、これについて原告は争っていない。また調べたところ、「電玩双週刊」のインタビューによると、被告徐昌隆は「家で『武林群俠傳』のキーワードを用いてgoogleで検索してみたところ、…この台湾でほぼ忘れられている古い作品には、思いがけずまだ活躍の可能性があった!…近年投資者に出会い、若いゲームの夢が再燃した。せっかくのチャンスを逃すわけにはいかないと、河洛工作室を再生させることを決めた。その日はちょうど3月31日で、夜11時に工作室の仕事を処理して、戸締りの準備をした時、つまりエイプリルフールにぶつかりそうな微妙なタイミングで、徐昌隆はなんとなく工作室の写真を数枚撮って、微博(Weibo)に投稿したところ、対岸(中国大陸)のネットユーザーの間でホットな話題となった。彼は『もちろんエイプリルフールの話題を作って騙したいと思ったが、重要なのはやはり河洛を再スタートさせるということだった!』と述べ…」と述べており、被告徐昌隆が代表を務める被告公司が係争著作物の制作に着手したのは2014年4月1日だと認定することができる。また、被告公司と原告との販売契約書は2015年6月1日付け、係争著作物に係る新旧の音楽利用許諾契約は同年7月9日、21日付けでそれぞれ締結されており、証人戊○○の前述供述によると音楽利用許諾契約は時に音楽制作前に締結し、時に音楽制作過程において同時に締結し、時に事後に補充して締結しており、また音楽は顧客が自ら(商品に)組み込んでいた等の諸事情から、被告公司は2015年6月1日前には係争著作物に係る言語の著作物と美術の著作物の創作を完了しており、その人件費はこの前に支払われるべきであるため、被告公司が係争著作物の人件費を控除すべきだと主張する期間は2014年4月1日から2015年5月31日までが妥当である。さらに調べたところ、被告公司は2014、2015年の給与支出が6,254,511新台湾ドル、8,681,646新台湾ドルであり、これは当該年度の損益及び税金計算表がファイルされており調べることができる。即ち2014年度、2015年度に被告公司はそれぞれ9ヵ月(2014年4月1日から同年12月31日まで)、5ヵ月(2015年1月1日から同年5月31日まで)を創作期間として投じており、期間の比率に応じて控除する給与額の支出はそれぞれ、2014年が4,690,883新台湾ドル(6,254,511新台湾ドル×9/12≒4,690,883新台湾ドル)、2015年が3,617,353新台湾ドル(8,681,646新台湾ドル×5/12≒3,617,353新台湾ドル)で、合計すると被告公司が支出した給与額は8,308,236新台湾ドルとなる。
 (2)被告公司が得た付表一№1、付表二№1、2で示される販売所得56,903,948新台湾ドルから、被告公司が主張する給与として支出した8,308,9236新台湾ドルの必要経費を控除すると、被告公司の利得は48,595,712新台湾ドルとなる。
 (3)調べたところ、係争著作物と根拠著作物はいずれも映像(視聴覚)、音楽、美術、言語、プログラム等多くの著作物が組み合わされて表現された多元的著作物であることは前述したとおりである。原告は根拠著作物に係る前出の美術の著作物及び言語の著作物の部分が侵害されたと主張しており、係争著作物全体で得られた利益を以って侵害された損害賠償額を算出してはならない。原告がすでに損害を受けたことを証明している。かつ係争著作物が根拠著作物に係る前出の美術の著作物及び言語の著作物の部分を侵害して得た利益をどのような比率にするかは実質上極めて困難である。よって前出規定により、被告公司による根拠著作物の利用が商業目的であり、その根拠著作物に係る美術の著作物及び言語の著作物の部分を利用した質と量の概況、原告のコンピュータゲーム市場における潜在力と今後の市場に対する影響、及び被告公司の販売量、地域等の一切の状況を斟酌して、被告公司が原告に賠償すべき所得利益は24,000,000新台湾ドルと認定する。
 (4)会社の責任者が会社の業務執行につき、法令に違反して他人に損害を与えたときは、その他人に対して会社と連帯して賠償責任を負わなければならない、と公司法(会社法)第23条第2項に規定されている。調べたところ、被告徐昌隆は被告企業の責任者であり、被告公司が販売した係争著作物は原告の著作財産権を侵害しているため、公司法第23条第2項規定により、被告徐昌隆は被告公司とともに連帯して賠償責任を負わなければならない。被告公司と被告徐昌隆に対して原告に24,000,000新台湾ドルを支払い、そのうち5,000,000新台湾ドルに対する起訴状副本送達の翌日、即ち2017年6月23日から支払い済みまで、19,000,000新台湾ドルに対する訴えの変更申立書副本送達の翌日、即ち2018年6月1日から支払い済みまで、5部の割合による金員を支払うように原告が請求することには理由があり、許可すべきである。

(五)侵害の排除、防止に係る部分:
被告公司、被告徐昌隆には原告の根拠著作物の著作財産権に対する侵害行為があったことは前述したとおりである。原告が前記規定により、被告公司、被告徐昌隆に対して、自ら又は第三者を通じて係争著作物又はその原作品、複製物の頒布又は公開送信を継続してはならず、並びに自ら又は第三者を通じて複製、改作、頒布、公開送信等の根拠著作物の著作財産権を侵害する行為をしてはならないと請求することには理由があり、許可すべきである。

(六)新聞掲載に関する部分:
被告公司、被告徐昌隆が故意に原告の著作財産権を侵害したことは前述のとおりである。原告が、被告等に判決書主文を新聞に掲載するよう請求することは、著作権法第89条規定に適合しないところはない。当裁判所は、被告等が故意に原告の著作財産権を侵害したこと、その侵害期間、範囲等の情状を斟酌した結果、被告等に対して連帯して費用を負担し、本件の民事最終事実審の判決書における当事者、事由及び主文を、蘋果日報全国版第1面に5ポイントのフォントを用いて1日掲載するよう原告が請求することには根拠があり、その範囲を越える請求は許可すべきではない。

 以上の次第で、本件原告の訴えは一部に理由があり、一部に理由がなく、智慧財産案件審理法(知的財産事件審理法)第1条,民事訴訟法第79条、第85条第2項、第390条第 2項、第392条第2項により、主文のとおり判決する。

2019年3月11日
知的財産裁判所第三法廷
裁判官 杜惠錦
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