知財権保護、専門裁判所と検察支庁を設置 組織法案が初審通過 07年3月の発足に間に合うか?争点の技術審査官資格?なお課題

J060529Y4 2006年6月号(J82)

529日、技術審査官の資格を定める第16条を除いた「知的財産法院(裁判所)組織法案」が一部修正されたうえ、法制委員会・司法委員会の合同会議で採決された。今会期の閉会を翌日に控え、臨時国会が召集されない限り、今会期成立の可能性は困難な情勢となっている、と同会議の議長を務る与党の立法委員は明言する一方、最大の争点となる第16条以外、与野党間で法案そのものに対して大きな意見の隔たりはないため、法案の審議は919日に始まる次の会期に持ち越される見通しとなるが、「成立のメドが立っている」との見方も示した。

 

法案第16条は、同裁判所に設置される技術審査官の任用資格を定めている。一定のキャリアを積み重ねた専利(特許、実用新案、意匠を含む)審査官又は商標審査官、大学や独立学院の知的財産関係学科・大学院の教官(講師、助教授、教授等)で、知的財産権に関する専門的な著書を持つ者が対象となり、しかも、実績があってその証明となる書類を提出できる者に限る。

判決の根拠となる専門的な技術問題の判断にあたり、裁判官に協力する非常に重要な役目の担い手であることから、任用資格をより厳しくしなければならないと唱える委員もいるし、資格を厳しくし過ぎると、専門家の意欲低下につながりかねないとの声も聞かれる。このため、委員会で同条の採決を本会議に保留するとしている。

 

知的財産裁判所は、次の通り知的財産権に関連する民事事件(第一、二審)、刑事事件(第二審)及び行政事件(第一審)を取り扱う。

1.民事事件

 専利法(日本の特許法、実用新案法、意匠法に相当)、商標法、著作権法、光ディスク管理条例、営業秘密法、集積回路回路配置保護法、植物品種及び種苗法又は公平取引法によって保護される知的財産権に関する第一審と第二審の民事訴訟事件。本案に関連する証拠保全手続、保全手続を含む。

2.刑事事件

刑法第253条から第255条まで、第317条、第318条の罪を犯し、又は商標法、著作権法、公平取引法第35条第1項における第21条第1項及び第36条における第19条第5号に関する事件について、通常の手続き、略式手続き若しくは協議の手続きにおいて為された第一審(地方裁判所)裁判への不服申し立てとしての控訴審又は抗告審。但し、少年がこれらに関する刑事事件に関与した場合は、少年事件処理法に基いて少年法廷が取り扱うことになっているため、知的財産裁判所の担当事件対象から除外する。

 【訳注:刑法第253条~第255条は登録商標・商号の偽造・模倣、販売・陳列・輸入、虚偽不実の表示などに関する規定。第317条は法令又は契約により業務上知った、又は保有する秘密を保持する義務がありながら、それに違反した場合の罰則規定。第318条は公務員が携わる職務で知った、又は保有する工商秘密を故なく漏えいした場合の罰則規定。第318条ノ1はコンピュータ等関連設備の利用で知った又は保有する他人の秘密を故なく漏えいした場合の罰則。第318条ノ2はコンピュータ等関連設備を利用して第316318条に定める罪を犯した者に対する刑の加重を定めている。

 

 公平取引法第35条、第36条はそれぞれ第20条第1項、第19条第5号に違反した場合の罰則規定。同法第19条は公正競争妨害にあたる禁止行為の態様を定めており、第5号は「脅迫、利益による誘引その他不当な方法により、他の事業者の製造販売に係る秘密、取引相手方の情報その他技術上の秘密を取得する行為」となっている。そして第20条第1項は次に掲げる模倣行為を禁じている。「関係事業者又は消費者に通常認識されている他人の氏名、商号若しくは社名、商標、商品の容器、包装の外観その他他人の商品を示す表示と同一若しくは類似のものを使用し、他人の商品と混同誤認を生じさせ、又は当該表示を使用した商品を販売、運送、輸出若しくは輸入する行為。」】

3.行政事件

 専利法、商標法、著作権法、光ディスク管理条例、営業秘密法、集積回路回路配置保護法、植物品種及び種苗法又は公平取引法における知的財産権に関する出願、取消し又は(処分)廃止手続き、不正競争その他公法上の紛争に関する行政事件の第一審及び強制執行事件。

 

裁判所はどこに設置すべきか、これまで司法院の案に反対する声もあったが、委員会で審議する際、双方の歩み寄りが見られ、最終的に場所は司法院が決めることで合意に達し、また地理的環境と案件数の多少により、知的財産法院分院(支部)を増設することも可能になった。このほか、高裁レベルと位置付けられる知的財産裁判所の創設に伴い、これに対応する高等検察署(検察庁)をも設置すべきであるという法務部(法務省に相当)の提案が受け入れられ、現行高等検察署の下に知的財産権に関する訴えを専門的に取り扱う知的財産分署(支庁)を設け、検察長一名、主任検察官二名、検察官十二名を置く方針が委員会の議決で固まった。最初の段階は、台北、板橋、台中、台南、高雄五つの地方検察署に設けられている知的財産専門チーム所属の現役検察官を基軸に、将来的には知的財産関連事件の増減をみて、定員を調整していくという。2006.05

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