ソフトウェア発明審査基準が改定へ 欧米制度との不調和を懸念する声も

J060816Y1 2006年9月号(J85)

知的財産局はコンピュータソフトウェア発明審査基準を改め、出願の要件を調整することにしている。知財局が提案する基準調整の一方向として、出願時にクレームの表現形式によって、例えば、如何にハードウェア資源を用いてソフトウェアによる情報処理を実現させるかのステップを詳細に記述するなど、本来なら特許性のないものがその書き方によって発明と認められてしまうこともありうる、とソフトウェア産業の発展へのマイナスを懸念する声が出ている。

 

ソフトウェア発明審査基準に規定された発明の定義に従い、自然法則を利用した技術的思想の創作であるかどうかで、特許適格性が判断される。ソフトウェア発明に係る特許出願をするときは、特許明細書にフローチャートやブロック図を利用して技術的要素の構成を具体的に表現することが必要である。

 

改定案について、815日に開かれた公聴会で、ソフト業界からの参加者は、「ソフトウェア関連発明において、方法クレームに関して、ステップズ・プラス・ファンクション(steps plus function)形式で特許請求の範囲を特定することができるが、それでもメソッドの流れに従い、そのソフトウェアによる情報処理に必要なステップや操作、またハードウェア資源をどう取り込んでこれらのステップや操作を実行するかを具体的かつ明確に説明しなければならない」が最大の問題点となると指摘している。

 

知財局案は日本のソフトウェア発明審査基準を踏襲したところが多いとみられる。日本におけるクレームの記述スタイルは欧米のそれと異なり、欧米制度との調和性を重要視する観点から、ハードウェア資源をどう利用するかを具体的に記載することを必要とする日本式の書き方が結果的にソフトウェア特許の強さを弱めるのではとの見方がある。しかし一方では、日米欧特許庁が2000年に実施した「ビジネス方法関連発明に関する比較研究」では、仮想ビジネス方法関連発明に基き、審査結果の比較研究が行われたところ、ソフトウェア関連発明としてのビジネス方法の審査実務については、新規性、進歩性を含めた判断には差の見られるケースもあるものの、特許適格性の判断については、大きな差異が認められないとの結果をまとめており、翌年に日本特許庁はさらに幾つかの代表的なビジネス方法関連発明について、各国の審査状況を比較し、特に日米においては特許適格性の判断に大きな差は見られなかったとの発表があった。

 

先進国の中で、特許性判断については、アメリカが最も緩い。インターネットと電子商取引の拡大は、多くのソフトウェアやビジネス方法に関する発明の出願を増大させ、一般的に特許にならないと信じられていた対象に特許が認められることになった。1998年、米国のビジネス方法特許の分類とされるクラス705に分類される出願に特許が付与された件数がなんと31.3%にも達した。だが、最近、ソフトウェア発明に特許を付与する件数が大幅に減少し、705クラスの出願も過去の五年間で平均8.4%と特許数が著しく減ってきている。

 

欧州特許庁(EPO)では、1990年以降、技術的貢献アプローチと呼ばれる判断手法が採用されていた。その後、更なる技術的効果があるかないかによって評価される技術的性質の有無が特許対象となる発明かどうかの判断基準とされている。日本の運用指針においても、「進歩性」が認められない八つの態様を列挙するなど、発明の成立性の認定をより厳格にした。

 

近年、ソフトウェア関連発明の特許適格性の判断基準が次第に明確化されるにつれ、先進国におけるソフトウェア関連発明の訴訟事件では特許性を問題にするよりも、「新規性」「進歩性」の有無に攻防の焦点が集中する傾向を示している。ビジネス関連分野の先行事例の情報が不十分であると、「新規性」や「進歩性」に欠ける出願に特許権を認める恐れがあるため、ビジネス関連分野の先行事例データベースの充実化に関心が向いている。(2006.08

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