人体標本は著作権の対象か? 裁判所と検察側の見解に大きな相違

J060909Y3 2006年10月号(J86)

去年、台湾各地を巡回してきた「人体の大探索展」に展示されていた人体の標本の一部が著作権侵害に関わったとして、人体標本に施されたプラスティネーション技術を発明し特許権を取得したドイツの解剖学者、ダンター・フォン・ハーゲンス博士が主催機関を相手に告訴した事件で、台中地方検察署の不起訴処分に続いて、これに対する不服申し立て(台湾では「再議」という)も高等検察署で棄却されたが、その後、ハーゲンス博士はさらに弁護士を通じて台中地方裁判所に対し、裁判に付するよう台湾でいう「審判交付」を申立てた。そして、ついに裁判所から博士の請求が認められる決定が下された。

 

裁判所の決定によると、著作権の対象から外される著作物でない限り、原則として著作権法が保護する範囲に含まれるものとして、著作権を享有すべきであるに加え、検察側が台湾経済研究院の鑑定結果を採用しないとした理由は何か?同研究院の鑑定に信憑性がないというのであれば、なぜ、ほかの鑑定機関に鑑定を依頼しなかったのか?不起訴処分書でこれをはっきりさせていないのは不当であるという。侵害に関わったとみられる6体の人体標本について、「明らかに盗作だ」「ハーゲンス博士が創作した人体標本をコピーした」「事実上類似し、盗作の疑いがある」といった表現で書き記したうえ、これらの標本を、公序良俗に違反しない、オリジナリティーのある著作物とし、検察側の不起訴処分を拙速な判断と指摘した。

 

 一方、台中地検と高検がそれぞれ不起訴、再議棄却とした理由に、「人体は『神聖で侵してはならないものである』。告訴人が人体標本を経済的利益を得るものとして展示し、こうした行為はわが国風習や民俗からすれば、許しがたいものであり、また死体解剖条例においても、人間の遺体は埋葬又は学術研究に供する以外、遺族による任意な処分が制限されている。ましてやこれを財産権の対象物とするのはなおさらのことである。」が挙げられている。

 

本件について、裁判所と検察側の見解に大きな相違があったが、裁判に付するとすると、公訴を提起したと同じ効果が生じる。(2006.09

 

訳注:第二審の検察長による再議申立て棄却に対する不服申し立てをするときは、告訴人は処分書を受け取った十日以内に弁護士を通じて理由状(趣意書)を提出し、管轄第一審裁判所に「審判交付」を申立てる。裁判所は合議で審理し、不適法又は理由がないものについてはこれを却下又は棄却し、理由のあるものは裁判に付すると決定する。これを「審判交付」という。この場合、公訴を提起するとみなし、決定の内容は申立人、検察官、被告に送達しなければならない。この決定に対し不服のあるものは、抗告を提起することができる。

TIPLO ECARD Fireshot Video TIPLO Brochure_Japanese TIPLO News Channel TIPLO TOUR 7th FIoor TIPLO TOUR 15th FIoor