商標法か公平取引法か 模倣行為への罰則が混乱 競合問題解決に台湾公取委、知的財産局が法改正検討中

J070528Y2・J070528Y4 2007年6月号(J94)

 台湾公平取引法(通称、公平法)、商標法とも模倣行為に関する罰則を設けているが、商標法より公平法のそれに対する罰則が重いから、権利者は公平法を根拠に相手の法律責任を追及することを好む傾向がある。このため、行政の資源が濫用されがちだという指摘がある。公平取引委員会(通称、公平会)はこれをどう受け止めているか。同会法務処処長により、商標権侵害は公平法ではなく、商標法で裁かれるべきであると二法の競合問題を法改正を通じて解決する考えを示した。

 最近、商標に対する保護範囲を拡大する傾向が見え始めている。不正競争防止法から商標法に立ち返って商標権への完全な保護を図るのもその傾向の一つである。台湾商標法でいう商標について立体的形状、商品の外観(トレードドレス)、色彩、音声、営業表示の概念が取り入れられたことにより、保護範囲が拡がり、著名表示のダイリューション(希釈化)防止も視野に入れられている。したがって、現行商標法で定義されている商標は、公平法が保護している商品表示に等しいと考えてよい。

 公平法に模倣行為を禁止し、罰則を盛り込んだのは、商標法を補足するためであった。しかし、たとえその目的は不正競争防止の概念から知的財産権への保護を補強することにあったとしても、罰則は民事か刑事で、不正競争防止法、知的財産関連法規のいずれを適用するかは裁判所の判断に委ねられている。台湾公平法のように、行政権の介入を定めていない。なぜなら、行政の見解と司法の判断が常に一致するとは限らないからである。

 次に商標法第62条と公平法第20条を比較しよう。公平法には行政罰や刑事罰、三倍(日本にいう四倍に相当)以下の懲罰的賠償金があり、商標法のそれをはるかに超えている重さである。これに加え、摘発・通報があれば、公平会は調査を始めることになる。公的機関に調査をしていただく気軽さからなのか?商標紛争を公平法で解決するのが早いというイメージが商標権者の脳裏に定着しているようだ。となると、商標法第62条の規定は形骸化し、行政の資源がこのようなところで濫用されている問題が生じる。さらに、利用の頻度は「不実・虚偽の表示」を定める公平法第21条に次ぐ第24条、台湾では言わば「帝王条項」(法曹界でこう呼ぶ。)も知的財産権紛争にかなり頻繁に利用されていることから、大きな問題とされている。

 WTOのTRIPS協定により、ある事業に係る商品若しくはサービスを他の事業に係る商品若しくはサービスから識別することができる標識又はその組み合わせは商標とすることができる。商標に対する保護範囲の拡大は世界の流れであり、台湾においてもこのような方向で法改正を検討している。図形、文字で表示することができ、かつ関連消費者がこの商品若しくはサービスの標識であることを認識し、また他人の商品若しくはサービスと区別することができるものは、商標法においていう商標に該当する。将来的には、匂いの商標、動く商標も登録ができる対象として認める方針である。

 知的財産局では台湾で未登録の著名商標を商標法が保護する範囲に加え入れる方向で検討していることについて、公平会は二法の競合問題に更なる混乱をきたすことを懸念し、公平法第20条を改正して商標に対する保護を商標法のみに求めるか、公平法における(模倣行為に対する)行政罰を削除し商標法と同様の罰則を設けるかを提言している。

 知的財産局関係者はこれについて、同局としては、同一若しくは類似の商品若しくはサービスにおいて他人の未登録著名商標と同一若しくは類似の標識を使用し、消費者に混同誤認を引き起こすおそれのあるものを、商標法第62条の定める「侵害とみなす」範囲に盛り込む方針であり、また商標保護に関する公平法上の規定の削除を公平会に要請する考えを示した。(2007.05)

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