台湾の植物品種登録出願 EUが認める、農業委 ついに外交の壁を突破 中国への種苗横流し 当局は打つ手なし

J070529Z1 2007年6月号(J94)

 一年にわたる交渉を経て、植物の新品種の保護に関する国際条約(UPOV)の締約国でない台湾の国民でもEU植物品種庁(CPVO)に対する植物品種登録の出願ができることになり、優先権の主張も可能になった。品種の使用料をライセンス収入として受け取れるだけでなく、登録を受けた品種を他人が無許可で使用したり売買したりする場合、堂々と権利を主張し救済を求めることもできる。

 EUへの品種登録出願が受理されるのは、UPOV同盟国の国民によるものが前提となる。しかし、台湾は国連の加盟国でないため、UPOVへの加盟が認められず、品種登録出願も拒否される。現に、台湾の優秀な植物品種がどんどん中国へ横流しされ、農家に大きな損失を与えているのに、政府としては打つ手なしと農家に言えない。少なくとも比較的優位にある品種の主な輸出先である欧米、日本市場で品種登録を済まし、足場を固めなければならない。

 去年5月、農業委員会(農業行政の主管庁。以下、農業委)は第18回台欧交渉会議で植物品種の保護に関する議題を切り出し、EUから派遣された人員がこの1年間にたびたび台湾を訪問し関連制度を考察した結果、つい先日、台湾の国民である植物品種の育成者が自然人か法人の名義でEU植物品種庁に品種登録を出願できるとの朗報が伝えられてきた。二人以上の出願人が同一の品種に権利を主張するときは、台湾の品種育成者もEU域外での品種登録をもとに優先権を主張することができる。なによりもEUから優先権の主張が認められた国は台湾が初めてだというだけで、長い間努力した甲斐があった。

 この間、EU品種庁総裁バート・キューイット(Bart Kiewiet)が園芸領域の国際有力誌「Flora Culture International」のインタビューを受けたときに、台湾のEUへの品種登録出願について「かなりの数になるだろう」と見込んでいることから、台湾の品種育成能力が高く評価されている証拠である。

 EUのみならず、アメリカ、オーストラリア、日本とも交渉を通じて台湾国民による品種登録出願を認めるよう求めている。

 現在、農業委の指導を受けた品種登録の外国出願件数は17件、主に蘭と毛豆。胡蝶蘭と毛豆はいずれも輸出ランキングのトップテンにランクインしている。前者の去年の輸出金額は1.2億元(4億円相当)で、後者は8.8億元(30億円)。日本とアメリカへの輸出が最も多い。農業委によると、中国雲南省昆明市で台湾品種の蘭をよく見かけ、アメリカ市場シェアの三割を台湾品種や農業技術を不正に使用した中国業者に奪われたという。外国市場シェアが奪われるばかりか、逆輸入のことさえあった。植物品種の知的財産としての権利に対する認識が甘かったから、このような事態を招いたといわざるを得ない。

 「植物品種及び種苗法」は1988年に施行して以来19年間経過したものの、農家は植物に関する知的財産権を軽んじていたせいか、一昨年までの年間出願件数は30~40件にとどまった。ところが、去年には情勢が一変して、野菜や花卉を中心に出願が一気に84件に増えた。

 「植物品種及び種苗法」により、現在植物品種登録出願ができる植物は103種類ある。出願品種は、国内で販売して一年、国外では六年以内のものに限り、すなわち新規性が求められ、また安定した生産ができ、唯一無二の品種名称を持っているものでなければならない。木本植物若しくは多年生籐本植物の品種権(育成者権)の存続期間は25年、それ以外は20年とする。

 農糧署の統計によると、1991年から2006年まで受理した出願件数は581件で、うち412件が登録され、外国人出願で登録されたのも135件あった。その内訳は、花卉の登録件数が202件、果樹が9件、野菜が199件、その他が2件。この15年間の登録件数が400件余りだったが、市場価値がないと判断されたものについて、登録料の納付を中止したり育成者としての権利を放棄したりするケースは少なくない。これまで230件余りの品種登録が公告で取消されている。今のところ、有効な登録品種は177件あり、うち127件が花卉で、クリスマスシーズンの定番アイテムのポインセチアが41件、蘭の花が31件と最も多い。

 農業委国際処の話しでは、台湾はWTO加盟国としてTRIPSに基づきEU、アメリカや日本と植物の新品種の保護に関する交渉を行っている。しかし、同じWTO加盟国の中国とは政治上の対立のため、対話ルートが閉ざされ、台湾の貴重な種苗や植物品種が民間の交流などを通じて中国へ横流しされていることをどう解決するか、今でもテーブルに就いて話し合うことができないままでいる。(2007.05)

TIPLO ECARD Fireshot Video TIPLO Brochure_Japanese TIPLO News Channel TIPLO TOUR 7th FIoor TIPLO TOUR 15th FIoor