CD-R特許の強制実施 処分が妥当か EU調査官が台湾入り フィリップスの不服申立受けて WTO紛争解決手続きへ発展か注目集まる

J070518Z1・J070514Z1 2007年6月号(J94)

 知的財産局によるCD-R関連特許の強制実施処分(以下、係争処分)が妥当かどうかを確かめるために先日台湾入りしたEU調査官は17日、マスコミに対し台湾の知的財産関連法規がWTO設立趣旨やTRIPS協定に反していないか、係争処分はフェアトレード原則に抵触していないか、また(強制実施権者の「国碩」が)フィリップスに支払うべき補償金に関して台湾当局はどのような解決案を出すかについて調査する方針を示した。調査報告は今年8月に欧州委員会に提出する予定。WTO紛争解決手続きで処理することになるかどうか、この報告はカギを握るとみられている。

 強制実施請求ができる要件の一つは、「合理的な」商業条件について合意が達成されない場合、がある。強制実施権を受けた者は知的財産局が定めた額の補償金を特許権者に支払わなければならないが、張本人のフィリップスは未だに補償金の給付申請をしていない。それより、フィリップスは「わが社は世界各国でメーカー69社と係争特許の実施に関するライセンス契約を結んでいる。そのうち、台湾メーカーは7社。これでもそのライセンス契約に合理性がないといえるのか?一社だけの主張を受け入れた強制実施処分こそ合理性がないのではないか」と係争処分の正当性を疑問視し、知的財産局に徹底抗戦する構えを崩していない。

 EU調査官は台湾の行政手続法、訴願(不服申立て)法、特許法等関連規定を逐一確かめたところ、係争処分を出すまでの過程に何らかの問題があると判断している。調査官はインタビューで、台湾当局の強制実施請求に対する全ての案件に共通する原則は何か、またこの原則はTRIPS協定に合致するか、本件以外の事件において同一原則が適用された場合、ヨーロッパ企業は不利益を受けることになるのか、がEUの関心事であると話している。

 「国碩」はCD-R特許のライセンス料をめぐってフィリップスとの交渉が破裂したため、特許法第76条第1項により、知的財産局に強制実施許諾の請求をした。知的財産局は2004年7月に請求を認める処分を下したが、フィリップスは直ちに不服を申立て、知的財産局との長期戦の構えを見せている(行政訴訟は現在、高等行政裁判所に係属中)。今年1月、フィリップスは台湾政府が公権力を以って民間企業の商業交渉、さらに特許権の強制実施に手を入れることは不適切であり、TRIPS協定第31条に反することを理由に欧州委員会に訴えた。これとほぼ同時に、「国碩」の強制実施条件の不遵守を理由に係争処分の廃止も求めた。一方、強制実施権を取得した「国碩」からもCD-Rの台湾での生産は5月31日を最後とすることで処分廃止の申立てがあったため、係争処分は廃止となった。(2007.05)

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