訴訟好きで知られる生態写真家に虚偽告訴罪で実刑判決

J070823Y3 2007年9月号(J97)

 台湾野鳥撮影学会前理事長の林○○氏は、自らが撮影した写真作品のスライドの利用をA社に許諾したのに、後になってA社を二度にわたって著作権侵害で告訴している。ところが、そのいずれも検察で不起訴になり、これを受けてA社は前理事長を誣告罪(日本でいう虚偽告訴罪)で逆告訴し、先日台北地裁から前理事長に懲役10ヶ月、5ヶ月に減刑する実刑判決があった。

 林前理事長は、A社は彼に無断でその撮影著作物を同社制作の「野鳥生態百科シリーズ」DVDに複製し、販売して利益を得たとして、2001年6月、2002年2月に二度にわたってA社責任者の王○○氏を相手取る裁判を起こしている。これに対し、検察は、被告王氏が提出した、林前理事長の署名が示されている係争著作物の利用に関する同意書を根拠に、双方の間に合意があったと認め、不起訴処分にした。同処分についての再議申立ても高等検察署で退けられた。

 前理事長によると、A社とは一部の作品の利用許諾について合意に達したものの、同意書を交わすことにまでは至っていないという。一方、王責任者が提出した同意書の内容から、係争著作物のスライドの利用について理事長の許諾を受けていることが証明される。裁判官は、前理事長が著作権保護という名のもとで王氏を繰返し誣告し、刑事訴追の危険にさらさせておきながら、事件後もなおその犯行を否認し続け、全く罪を悔いる態度を見せない、と責め咎める。

 林前理事長の野鳥生態写真作品は国内外各地を巡回して展示するほど高く評価されている。しかしその一方、彼は訴訟好きなことも世間に取りざたされている。検察で前理事長が提訴した事件をリストアップしたところ、告訴されたことも含めて彼に関連する刑事訴訟は全部で二百件以上、また民事事件も百件を超えていることがわかった。教育部長(日本の文部科学相に相当)から県知事や市長、大手企業責任者、学校、学生までがその相手になった。

 彼が提起した訴訟に敗訴判決が出されたことが多い。小学校の先生が郷土教育のために開設したサイトで台湾に棲息する鳥類の名前や資料に関する記載に理事長が取った写真が一枚引用されたということで訴えられた事件がある。裁判所は同サイトを「非営利的な」教育サイトと認定し、商業利益がないとして原告敗訴の判決を出した。このほか、学生が指導教授の審査を受けるため、理事長の作品を引用した論文やレポートを学校サイトにアップロードした結果、著作権侵害で告訴されたケースもある。

 著作権法第65条は、他人の著作物の合法的な利用に関する判断基準を規定している。フェアユースの範囲内での利用は著作財産権侵害にならない。ただ、合理的な利用かどうかは、事件ごとに判断される。一般的には、利用の目的と性質が判断の目安だが、教育、司法事務或いは公務上の利用、図書館の収蔵など営利目的でも商業用途でもない利用行為、例えば学術、報道、評論、公益のための利用はフェアユースに該当する。とはいっても、一の著作物において利用しうる内容は限定的なものであり、また著作者に経済的損失を与えてはならない。(2007.08)

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