台湾のCD-R特許強制実施処分 EU調査報告は近く公表する見通し
J071011X1 2007年11月号(J99)
CD-R特許の実施を巡り数年にわたって内外で争ってきた、フィリップスと台湾中堅光ディスクメーカーの「国碩」がかろうじて和解にたどり着いたが、2004年7月に国碩の請求に応じてフィリップス保有CD-R特許に関する強制実施処分を台湾知的財産局が出したことについて、フィリップスの訴えを受けたEUは貿易障害規則に基づいて調査を進めており、その最終報告が公表されないかぎり、知的財産局としてはまだ油断が許せない状況であろう。
EU貿易障害規則(TBR、Trade Barriers Regulation)は、共同体企業および産業が、第三国またはEU域内市場へのアクセスを阻む貿易障壁に対抗するため、欧州委員会に対し、訴えを調査し、相互協定による交渉、WTOによる紛争解決あるいは制裁措置等のいずれかによる是正策を模索するよう要求する制度を規定している。第三国市場における取引が、ある域外国が課した障害により悪影響を受ける場合、または将来損害を蒙る恐れがある場合には、企業、企業グループあるいはEU加盟国は、公式に欧州委員会に調査依頼を申し立てることができる。欧州委員会の調査により、国際ルールに反し貿易障壁が存在し、損害または取引上望ましくない影響がEUの産業や企業に及ぶ場合には、欧州委員会は関係国政府と協議し、双方にとって妥当な解決策を見出すよう努める。当該第三国との間に友好的な解決が不可能なことが明らかである場合、通常、国際レベルでの手続に移る。すなわち、WTOの紛争解決手続またはその他の適切な国際紛争解決機構に当該紛争を持ち込む。
「国碩」が台湾専利法(日本の特許法、実用新案法、意匠法三法に相当)により強制実施許諾請求に踏み切ったのは、市場価格の大幅な落ち込みがあったにもかかわらず、CD-R特許の実施料率をめぐり特許権者フィリップスとの交渉が暗礁に乗り上げ、協議が達成できなかったためである。2004年7月、知的財産局が「国碩」の請求を認める処分を下したことを受けて、フィリップスは経済部訴願審議会、高等行政裁判所に対し不服申立ての救済手続きをとる一方、今年初めに欧州委員会にも提訴した。EUは5月に調査官を台湾へ派遣して事情聴取と資料収集にあたった。
強制実施処分についてはすでに司法手続きに入っており、また知的財産局においても、今年5月31日付けで「国碩」とフィリップスからの申立により同処分の廃止を決定した。調査報告が近く公表される見通しになったこともあって、同局は先日、EUが進めている調査手続きの結果しだい、国際ルールおよび国内法にのっとって適切に対応したいと表明している。経済貿易談判代表弁公室(経済貿易交渉代表部)の鄧振中代表も、「今のところは調査報告の具体的な内容が判らないが、8月下旬に国際交渉を専門とする検察官の支援を法務部(法務省に相当)に要請している。台湾に不利な結果が出たとしても『勝訴』を目指していきたい」との考えを示している。(2007.10)