特許権の強制実施、法改正進む
J080715Y1・J080714Y1 2008年8月号(J108)
知的財産局は7月8日、特許権の強制実施に関連して関係政府機関、学識者、専門家、権利者団体及び利用者団体を招いて法改正の諮問会議を開き、七つの議題(下表一をご参照)で活発な討議を交わした。
法改正のポイントは次のとおりまとめた。
一. 用語及び定義の修正:「特許実施(強制実施)」という現行法の用語を「強制授権」に改めるとともに、再発明の定義の見直しを行う。
二. 強制実施事由の妥当性について検討する:「申立人が合理的な商業条件を提示し、相当の期間をかけてなお特許権の実施に関する協議が成立しない場合」を強制実施許諾請求の要件とすることが妥当かどうか?また、現行法により、強制実施で不正競争を救済するときは、判決又は公平取引委員会の処分が確定するのを待たなければならないことと、強制実施にするかどうかの処分は特許事務所管庁がすることになっているが、これははたして妥当なのかどうか?特許事務所管庁の知的財産局ではなく、強制実施請求の当否については、公平取引委員会或いは知的財産裁判所が判断すべきであるという意見が多く出されたが、指名された当の公平取引委員会も司法院も否定的な態度を示している。知的財産局によると、強制実施処分機関は現状を維持するが、公平取引委員会が処分で強制実施の必要があると認定することを明確にしたうえで、特許事務所管庁がこれを根拠に強制実施の決定をするという。
三. 強制実施処分手続き及び事後の監督体制について検討する:国が緊急事態に直面し、又はその他の緊急を要する状況に対応するために政府が強制実施を必要があるときに、特許所管庁は強制実施される特許権について実質的な審査をせず、直接緊急命令若しくは特許権の実施を要する機関の通知により決定する。政府が実施する場合とは、主に緊急事態若しくは公共利益のために直ちに当該特許権を実施する必要があり、総統が緊急命令を発布し、又は各主務官庁が職権により緊急状況があると認定する場合をいい、手続き上迅速な処理を要するものである。
このほか、現行法が定めた、三ヶ月以内という特許権者の答弁期間を指定期間に改めることと、強制実施決定と同時に適当な補償金を定めること、そして強制実施廃止の事由を明確に定めることも含めて法改正を検討する。
強制実施の廃止(日本でいう取消しに相当する。詳しくは下表二をご参照)については、三つの事由を新設する。一つ目は、強制実施許諾決定の基礎となっていた事情に変更があり、実施の理由が存在しないこと。二つ目は、実施権者が強制実施決定により適当に実施しないこと、三つ目は実施権者が裁定により補償金を支払わないこと。そのいずれかに該当する場合、知的財産局は特許権者の申立て又は職権により、強制実施処分を廃止にすることができるように強制実施処分後の監督体制を確立させる。二つ目と三つ目の事由は日本特許法第89条と第90条を参考に、補償金(対価)の支払い又は供託をしないときは、実施権を設定すべき旨の裁定は、その効力を失う。強制実施の処分をした後に、裁定の理由の消滅その他の事由により当該裁定を維持することが適当でなくなったとき、又は実施権者が適当にその特許発明の実施をしないときは、利害関係人の請求により又は職権で、裁定を取り消す(台湾では「廃止」という)ことができる。
表一
強制実施関連特許法改正の課題 | |
課題 |
主な内容 |
1 |
現行法律用語「特許実施」を「強制授権」(強制実施許諾)に修正する |
2 |
「申立人が合理的な商業条件を提示し、相当の期間をかけてなお特許権の実施に関する協議が成立しない場合」は引き続き強制実施の要件とすることが妥当なのか? |
3 |
不正競争を救済するため、強制実施は直接判決又は公平取引委員会処分の一部となることが可能なのか? |
4 |
強制実施の申請手続きを「政府使用」と「一般」に分けて別々に定める |
5 |
現行二段階式補償金は妥当なのか? |
6 |
強制実施後の廃止請求の事由 |
7 |
現行強制実施制度における再発明の定義の見直し |
表二
強制実施の廃止に関する現行規定及び法改正 | ||
|
現行規定 |
法改正の方向 |
廃止を主張できる場合 |
強制実施の原因が消滅し、又は目的に違反する場合、廃止の請求をすることができる。手続き上は、廃止の原因を釈明し、これを確認しなければならない。 |
1.強制実施決定の基礎となっていた事情に変更が生じた場合。 2.強制実施権者が実施許諾の内容に従って適当に実施しない場合 3.強制実施権者が裁定により補償金を支払わない場合 |
廃止の請求権を有する者 |
1.特許権者 2.特許事務所管庁(職権による廃止) |
1.特許権者 2.特許事務所管庁(職権による廃止) |
監督体制 |
未定 |
明文化 |
(2008.07)