「ライセンシーへの製造設備リスト提出の義務付けは公平な取引秩序の維持に影響しない」台北高等行政裁判所

J081127Y4 2008年12月号(J112)

   フィリップス(PHILIPS)は、台湾CD-Rメーカーと結んだ特許実施契約で「製造設備リスト」及び「販売報告書」の提出を義務付けていたことが、公平取引法で禁じられている、取引秩序に影響し得る公平さを欠く行為であるとされ、600万元の過料処分を受けている。この処分を不服とした行政裁判で、台北高等行政裁判所はフィリップスの主張の一部を認め、製造設備リストの提出請求は違法ではないとし、公平取引委員会(以下、「公平会」)に新たな処分を命じた。

   この事件は20013月、フィリップスが新しいライセンス契約を提示することに端を発した。契約では、生産機器設備の機種タイプ、番号、サプライヤーや取付期日などを記載した「製造設備リスト」、さらに国別・品番ごとにバイヤーの身元と使用商標を明記した「販売報告書」を四半期終了後30日以内に提出することをライセンシー側に義務付ける。これについて、公平会はロイヤリティーの徴収と直接に関係することではなく、なおかつライセンサーのフィリップスは自社ブランドでCD-R製品を販売しており、市場地位を濫用してライセンシーに特許権の実施許諾と無関係な資料の提供を強要することが公平取引法第24条違反に該当し、同法第41条前段規定によりフィリップスに前掲違法行為の即時停止を命じた。

   フィリップスは行政裁判で、ライセンシーに「製造設備リスト」の提出を求めるのは、ライセンシーの最大生産能力を理解するためであり、生産能力が分かればCD-R生産量申告に漏れはないかを判断し、またその生産量に基づいて徴収すべきロイヤリティーを算定することができると主張する。これについて、公平会はライセンシーが生産管理において知りえた重要な知識と技術は営業秘密に属し、生産能力利用率及び経営コスト等市場競争に関係する重要な情報であり、ライセンサーのフィリップスは契約締結上優位に立つことを利用してリストの提供を要求し、これによってメーカー各社がコストダウンを実施する際に用いる技術・方法を知ろうとしたため、不正競争に該当すると反論。

   裁判長は、特許権者としてフィリップスはそもそもCD-Rの製造プロセス及び生産方法を熟知しており、ライセンシーから告げられるのを待つまでもない。たとえフィリップスはライセンシーの機器設備の機種・品番等情報がわかっても製造設備の実際の組合せ状態や機器の調整、生産能力等はいつでも変えることができ、ライセンシーがかかる資料を提出した後でさえ、新たに製造プロセスを組み直すことが可能だから、製造設備リストの提出要求は商業的に非難されることではない、と判示する。しかしその一方で、「販売報告書」については、フィリップスは特許権侵害誤認防止や通関手続きの迅速化、ロイヤリティーの二重徴収の回避などの観点からその必要性を主張するが、裁判長は、ライセンシーの取引相手方のプライバシーを侵害するおそれがあり、かつその主張とロイヤリティー算定との関連性について積極的な立証がなされていないため、根拠のない処分ではないとした。(2008.11
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